光に私が包まれたとき、私は自分の天使の能力や精霊としての力の使い方を完璧に把握していた。
(これが、精霊の力…集中しなくても分かる。この体のなかを巡っている力が霊力なんだ…)
精霊は攻撃するときや天使などの能力を使いながら戦っているらしい…
「いこう、アズラエル。
私がその言葉を叫ぶと同時にそこから私の姿が
ドラゴンからすれば、何が起こったのか全くわからなかっただろう。そして気づいた時にはそのご自慢の尾が切り飛ばされていたのだから…
「!?グガァァァァァァ!!」
ドラゴンは、自分の尾を気飛ばされたのが分かった瞬間、近くにいるであろう私を吹き飛ばそうとそこらじゅうで暴れまわったが、すでに私はそこにはいない。
私は突然ドラゴンからある程度離れているところに現れた。
「はぁ…はぁ…」
(何…これ?消耗が激しすぎる…この能力はあまり使えない…)
この能力は単純だが、それゆえ強力だ。
その力を使って、私はドラゴンの尾の付け根に瞬間移動して、右手のアズラエルに霊力を込めながら袈裟懸けに剣を降り下ろし、尾を切り飛ばし、また瞬間移動しただけだ。
(この能力は絶対的な切り札に成りうる…。まぁそんなことよりも今は)
私はドラゴンを睨み付け
「この前の敵を全力で打ち倒すだけ…」
その言葉と同時に私はドラゴンに向かって駆けていった。
(速い…霊力を身体中に巡らすだけでここまで違うんだ…しかもこの霊装もまるで羽のように軽い…)
私は先程までとは比べ物にならないスピードで刹那の時間でドラゴンとの距離を詰め、ドラゴンに近づいた瞬間に右手の剣でドラゴンの足を切り落とし、ヒット&アウェイの要領で離れる瞬間に左手の剣でドラゴンの左足を切り飛ばした。
(天使が、アズラエルが軽い…しかも切るときの感触をまるで感じない…これなら、行ける‼)
「これで足は使い物にならなくなったはず…足が使えなくなれば当然相手は…」
足を切り落とされたドラゴンはすぐに巨大な翼を広げ宙に舞った。
「空を飛ぶしかなくなる‼」
そして私は推測した通りに空に舞い上がったドラゴンを錯乱させるように空を縦横無尽に空を駆けた。
(たぶん次が最後の一撃になる…ここで決めるしかない…いや、違う。ここで決めるんだ‼)
ドラゴンの上空で止まり、さらに霊力を込めることで全速力でドラゴンの首筋目掛けて降下していき、
ドラゴンは空を飛び回っていた私が上空で止まり、自分目掛けて落ちてくるのを好機とみたのか、最初に放ったものよりも確実に強力な雷撃を纏いながら私に向かって突っ込んできた。
私とドラゴンとの距離が縮まる。
(もう回避することはできない…なら全力で叩ききるだけ!!)
「これがもうひとつのアズラエルの力!」
今ある全ての霊力をアズラエルに注ぎ込み、両手のアズラエルを大上段に振り上げ同時に全力で袈裟懸けに降り下ろした。
「
霊力によってできたできた漆黒の斬撃は、雷撃を纏ったドラゴンを容易く真っ二つに両断しドラゴンは、そのまま消滅した。
「はぁ…はぁ…私の勝ち…だ…。」
その言葉を残して私は意識を失った。
目が覚めるとそこは知らない場所だった。
「知らない天井だ…」
そう呟いて体を起こし回りを見回してみたが特に気になるようなものは何もない。
だがここはただの病院などではないと、どことなく感じていた。
ベッドから立ち上がり部屋に備え付けられていた鏡の前になんとなく立ってみると、自分とは思えない天使のような姿が映っていたのだが…
「あれ?首輪がなくなってる…それにここが何処なんだろう?」
そう私が呟くと、
「DEMインダストリー本社の病室だよ」
そんな返答が自分の真後ろから聞こえてきた。とっさに後ろを向いてみるとそこには、ある一人の男と女が部屋の中に立っていた。その男が私には誰か分かった。いや、間違えようがなかった。そう、この男は…
「アイザック・ウェストコット…」
「いかにも…さて、気分はどうだい?殺し屋君…いや、ここは精霊君、と呼ぶべきかな?」
その言葉と同時に私は、この男を警戒しなければならない相手に位置付けた。
(私が精霊ということまで…一体どこまで知ってるの?)
自分が言葉を発してから警戒され始めたアイザック・ウェストコットは、近くにいたもう一人の女に問いかけた。
「嫌われてしまったのかな、エレン?」
もう一人の女はエレンと言うらしい。
「友好関係を築きたかったならばもっと順序を踏んでか関わっていくべきだったかと…」
(こいつが最強の
「でも僕としてはこれでも最大限優しくしているつもりなんだけどなぁ…まぁいいか。」
このままでは話が進まないと思い、
「これから私をどうするつもりなんですか?」
と、自分から問いかけた。
「どうするつもりですか…ねぇ、まぁその問いに答えるならば、
「え?」
(どうするつもりもないって、この人一体何を考えているの?)
そんな事を考えているとアイザック・ウェストコットが、
「そういえば、首輪ははずさせてもらったよ…。僕としてはこれで僕達は君に害を与えるつもりはないという意思表示なんだけど…」
(あぁ、だから首輪がなくなってたのか…)
「よし、改めて自己紹介をしようか。しっていると思うが僕の名はアイザック・ウェストコットだ。そして彼女はエレン。」
そしていきなり話を振られたエレンは動揺することもなく会釈をし、
「はじめまして、エレン・メイザースです。以後お見知りおきを…」
そう名乗ってきた。
「さて、こちらは名乗ったんだ。君の名前は何と言うのかな?」
(どうしよう、そんな事言われても…私名前持ってないし…)
少しの間部屋の中を沈黙が支配し、
「あれ?聞いちゃダメなことだったかな?」
そうアイザック・ウェストコットがいってきたが、
「いえ、すいません…私、名前持ってないんです。だから…。」
そう私が正直に答えると、
「だから、何て答えればいいのか分からなかった、と。そうか…君は名前を持っていないのか…そうか、なら今は便宜上"君"と、呼ばせてもらうよ。僕のことはアイク、とでも呼んでくれ。…さてここからが本題だ。君、DEMに入らないかい?」
「!?」
「アイク!?」
その質問は私の考えの遥か上をいっていた。どうやらエレンも聞かされていなかったらしい。
(この人が何を考えているのかが全く分からない。DEMなどのウィザード達にとって私は最大の敵のはずなのに…それに…)
「…どういうことですか?」
気がつけば、私はそんな言葉を発していた。
「ああ、少し分かりずらかったかな?要はここで働いて欲しいといってるんだ。君がもしここで働いてくれるなら、ある程度の自由と安全は保証しよう。」
そんな事をアイク…さんは言ってきたが私が気になっているのはそんな事じゃなかった。
「そうじゃないです。いっている事は分かります。でも、最初に私を殺し屋ってよんだってことは私の目的をしっているんですよね?
それに私は精霊です。貴方達ウィザードにとって最大の敵のはず…そんな私をウィザードの巣窟に入れるって一体何を考えているんですか?」
私にはこの男が何を考えているのか全く分からなかった。
「うん、頭の回る子は好きだよ。それで君をどうするも何も私は君が欲しいだけだよ…それに、君には選択肢はないんじゃないのかな?」
(確かに…ここは恐らくDEMインダストリーの本社…大勢のウィザードがいるはず。今の私には突破できない。それにもし突破できたとしても私には戸籍もお金も住む場所もない…ならこの私の扱いはこれから生活していく上で最高の条件かもしれない…)
「…エレン…さんはどう思いますか?」
「私はアイクが決めたことならそれに従います。」
…反対はしていないようだ。
「はぁ………分かりました。なら私はこれからどうすればいいんですか?」
そう私が返事をするとアイクさんは、
「そうだね…君にはウィザードになってここに入ってもらうことにするよ…まぁそんな事は後でいいか。とりあえず家などの生活に必要なものは全てこちらが準備しよう。そんなことよりも今は君の名前を考えようか。これから一番大切になるだろうからね。そうだな……エレン何かいい案ははないかな?
そこでアイクさんが唐突にエレンに話を振った。
そこで私に話を振るんですか…そうですね…シルヴィア何てどうでしょう?」
「シルヴィア…か。いい名だね。よしそうしよう。シルヴィアこれからよろしく頼むよ」
そう言ってアイクさんは手を出してきた。
「…こちらこそよろしくお願いします。アイクさん、エレンさん。」
そう言って私は頭を下げながら、アイクさんの手を握った。
「まぁ今日は休むといい。明日は色々やらなければいけないことだってあるし…君にも聞きたいことがあるからね。」
そういうとアイクさんとエレンさんは部屋から出ていった。
「ふぅ…疲れたなあ。今度はウィザードとして生活か…訓練とか大変そうだなぁ…。」
ぐぅー、と背伸びをして横になろうとしたとき、枕元に手紙のようなものが置いてあるにに気がついた。
(これは…なんか見たことあるような気がするなぁ)
内心そんなことを思いながらもその手紙を手に取り中身を出してみると、案の定それは神からのメッセージだった。
『久しぶりじゃの…お主がまず一つ目の歪みをなくしてくれたことを嬉しく思うぞ。お主が歪みを取り除いてくれたことへのお礼と、これからも他の歪みをなくすための手助けとしてお前さんの天使を少し強化しといたぞ。時間があれば少し能力を確認してみるといい。
…まだその世界にはいくつかの歪みが存在している。お前さん…いやシルヴィア、これからその世界を頼んだぞ。』
そして最後までメッセージを読みきるとそれは一瞬にして消えていった。
(はぁ…またあのしんどい戦いを何回かしないといけないのか…。)
「まぁ、今考えることじゃないか。今日は疲れたし寝よう…久々の柔らかいベッドだから気持ちよく眠れそう。」
そして私は横になりすぐに深い眠りについていった。