湖の騎士が王妃じゃなくて王を好きになっちゃったら 作:天才になりたい
これはある日のことだった。長期に渡った戦争が終わり、平和な一時の事である。突然ランスロットがアルトリアとゲネヴィアの部屋に入ってきてこう言った。
「さあさ!お二方、街へ出かけますよ!」
「「へ?」」
当然呆然とした二人でした。
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ランスロットの急な誘いによりやって来ました!城下町!
因みにアルトリアさんには女性の格好してアーサー王だという事がバレないようにしました。まあその時にご活躍いただいたのが、ツンデレ義兄ちゃんと女性にモテモテランスロットくんなわけですが、服選びにハッスルしてたのは確かです。で、ツンデレ野郎は仕事が残っていたので一緒に行くことが出来ず泣く泣く諦め、認識阻害可能な服を着たランスロットとアルトリアとゲネヴィアの三人でやって来たのです。(マーリンは放置に決まってるじゃあないか!)
「ランスロット、いきなり何故こんなことを?」
城下町にやってきてアルトリアの第一声。素朴な疑問なわけで隣でゲネヴィアもうんうんと頷いている。
「いえ、最近はあまり楽しいこともなかったですし、偶には息抜きもどうかと思いまして。それにお二方女性なのですから、こういう方が楽しめるかなと思った次第です」
超ニコニコと話すランスロットは何処か楽しそうである。
「はあ。それはありがたいと思うのですが、私に女性としてというのは…」
「ま、偶には年頃の女性と同じことをするのもいいんじゃありませんか?それにアレですよ、民の生活を知ると言うのも大事な仕事だと思って、ね?」
「そう言われればそうなのですが…」
やはりこう言われてもずっと王として生きてきたアルトリアには中々受付難いものがあった。それに困ったような顔をする二人。
「言ったではありませんか、私の願いを叶えてくださると。その一つだと思ってお願いします」
「そこまで言われたらそうですね。分かりました。今日は楽しみましょう」
さすがのアルトリアもそこまで言われると何も言い返せなかった。
「あ、途中からグリフレッドも合流しますので」
最後に爆弾発言を落とすランスロットであった。
「って、ちょ⁉︎それは聞いてませんよ!ランスロット!!」
「あっはっは。まあ言ってませんからね〜」
それから三人でいろいろ見て回り、グリフレッドも合流した。もちろんアルトリアの姿を見て爆笑していた。それに怒ったアルトリアを二人で宥めたり、ランスロットがグリフレッドに女性に対して云々かんぬん説教したり四人で昼を食べた後、ふたり組に別れた。もちろんアルトリアとランスロット、グリフレッドとゲネヴィアのペアである。
ランスロット・アルトリア
二人は特に店に入ったりすることもなくブラブラとしていた。ランスロット的にはもうちょっとはしゃいでもらいたかったのだが、、。
するとふと、アルトリアの足が止まる。視線の先を見るとアクセサリー店のようだ。ランスロットはニヤけ顏が止まらない。しかし、流石は騎士様。すぐに元の表情に戻ってアルトリアに聞く。
「少しあの店を見たいのですが、一緒に入りませんか?」
ランスロットなりに考慮した結果である。ここでアルトリアに直接気になるのですか?なんて聞こうものなら絶対そっぽ向いて見たりなんてしないだろう。
「よ、よろしいのですか?」
案の定、こんな反応である。それを見逃すランスロットではござらん。
「何がですか?私はただ自分が見たいと思っただけですが?」
ちなみにもう笑いが堪えきれず、ニヤニヤしながらの問いである。
「っ!」
それを見て顔を真っ赤にする騎士王ww
その後、戯れ合いながら店を見て回ったのは言うまでもなく、それを周りの人間が温かい視線で見守っていたのも言うまでもないわけである。さらに外から見てた男どもは、リア充●ねと思ったのは言うまでもなし。
んで、丘。街から少し離れた丘で二人はのんびり寛いでいた。会話もなく無言だったが、それもまた二人らしいものでむしろ心地の良い無言だった。しかし、それを破る者がいた。アルトリアである。
「ランスロット、一つ聞いていいですか?」
いきなりの問いにキョトンとした顔でアルトリアの方を振り向くランスロット。
「今日は何故このような事をしたのですか?」
「……言っではありませんか、偶には息抜きも必要だと」
その問いは先程もしたもの。けれどその時には周りに人がいた。ゲネヴィアもいた。本当のところを深く聞くことはできなかった。けれど今はランスロットとアルトリアの二人だけ。
「確かにそれも理由の一つでしょう。けれどそんな単純な理由で貴方がこんな事をするとは思えないのです」
それを聞くと困ったような顔でため息ひとつをついてランスロットは答えた。
「ここなら誰にも憚ることなくいろんな事が言えますよ?」
サラッとと言われた一言。でもその一言で理解する。ああやはり、と。彼は自分の為にこのような状況を作り出すためにやったのだと。ゲネヴィアの事も自分の事も考えて町に来させたのだと。
「アルトリア、何かお困りごとがあるのではありませんか?たとえマーリンやケイ、グリフレッドたちに言えなくとも私には吐き出してほしいものですね〜。受け止めますよ?例えそれが私たちを裏切るような発言だとしても。それがなんだというのです?」
「ランスロット……」
「さあ、ドンと来いです!」
笑っていうランスロット。
「ほんっとズルいですね」
「はは、お褒めの言葉として頂戴しますよ」
アルトリアはずっと誰にも言えなかった悩みを零した。
「最近、王というものが分からなくなってきたんです。王としての在り方とか王道といいますか、そういうものが分からなくなってきて……」
ランスロットは先ほどとは打って変わって真剣な表情で聞いていた。
「まあ確かに簡単に打ち明けられる問題ではないですね」
「すみません」
そういうとシュンとしたアルトリア。それを横目に見ながら、ランスロットは語る。
「別に謝る必要はありません。きっと誰もが通る道だと思いますので。まあ、その道は人それぞれですが」
「それは貴方も、ということですか?ランスロット」
「さあ?それはどうでしょう。でもそうですね。昔は自分が何者なのかとか、そういう葛藤はありました。けれど、貴方が私に居場所をくれた。だから悩むのはやめました。私は貴方の騎士である限り道に悩むことはないと思います」
それを聞いているうちにどんどんアルトリアの顏が赤くなっていった。
「まあ私のことはさておき。実に人間らしい悩みですね」
「え、」
いきなり言われたことが一瞬理解できずランスロットの方を振り向くと彼は笑っていた。ただ純粋に、嬉しそうに微笑んでいたのだ。
「マーリンがなんと言おうと、誰がなんと言おうと、王と言う人種も列記とした人間です。悩んで当然、失敗や間違いもたくさんあるものです。ですからもう少し貴方はそれを他のアホ騎士達にも見せることができたらいいのですがね。特にガウェインとかガウェインとかガウェインとか」
慰めてるのか貶しているのかイマイチわからない発言ではあったが、それが逆にアルトリアを和ませてくれた。
「それは私かそれとも他の円卓の騎士、というかガウェインのどちらを貶してるんですかね?」
なんて言い返せるぐらいには復活した。
「さあ?私は別に貶した覚えはありませんがね〜?」
そういうと二人してしばらく笑いあった。
「私ね、それぞれだと思うんですよ」
笑いあって暫くするとランスロットが口を開いた。
「王の在り方って言うのは、王だけでなく他の人の上に立つすべての人に言える事だと思うんですが、無限にあると思うんです。その国の文化や環境、時代だったり王の性格とか諸々があって、其れ等ひっくるめて王というのは在り方を探すんじゃないかと思うんです。だってそうじゃないですか?大昔、偉大な王は沢山いました。けれど彼等の治世が今のブリテンに適しているかといえばそれは違うと思います。彼等を否定する気はありませんし、その当時からして見れば彼等の治世は正しかった。けれど今そんなやり方をやったらそれこそトンデモないことになりかねない。
だから、王って言うのは人それぞれ。国それぞれ。そう思うんです。なのでそんな思い詰めることはないと思いますよ?」
長々と失礼しました、と冗談めかしながら微笑みかけるランスロットに対しアルトリアは何か大事な事を思い出したような顔をした。
「それに正しい王の在り方を探していらっしゃるなら既に成していると私は思いますが?」
「え?」
その言葉にアルトリアは顔を傾げる。
「国を、民を想い、悩む。
それこそ王として正しい姿だと私は思います。どんな暴君であれ、賢君であれ、それが民を思うものならばそれが正しい治世でないのだとしても正しい王の在り方なんです。飽くまで自論ですがね」
「いえ、そう言ってもらえると助かります。民を想い悩む。ええ、それこそが一番大切な事だと思います。ありがとう、ランスロット。霧が晴れたような気分です。ありがとうございます」
そういうとアルトリアは満面の笑顔を浮かべた。それを見て、ランスロットも微笑む。その笑みは大きな慈しみをもっていた。
「お役に立てて光栄です」
その言葉を聞いてアルトリアは立ち上がる。そうして、
「貴方がいてくれて良かった」
その言葉と笑顔は生涯を通して裏切りの騎士の
心に残る。色褪せた想い出に残る光だった。
「そう言えば先ほどの宝石店。何かを買われていたようでしたが、どんな物を買われたのですか?」
それはただの好奇心。けれどアルトリアにとっては勇気あることである。
「へ?あ、ああ、はい。いやその、、、」
「??別に見せたくないのなら構わないのですが?」
それを聞いてアルトリアは慌てて手を振る。
「そ、そう言うわけじゃないんです!……その、これはプレゼントで………」
最後の方は顔を真っ赤にしながら小さい声で言った。
「プレゼント?あ!ケイにですか?」
「ち、違います!」
あまりにも速攻で勢いよく断るもので、ケイ義兄貴ほんと不憫。でも仕方がない。
「ではマーリンとか?」
「…!なんでそうなるんですか!そ、そうではなくて、その……ランスロット、貴方にです」
「え?」
それを言うとまるで沸騰したかのように顔を真っ赤っかにさせた騎士王様wは袋をランスロットに差し出した。
「そ、その、いつもお世話になってますし、そのお礼です。あなたに似合うかと思って。こんな時ぐらいしかないですし…」
そう目を逸らし、必死に語るアルトリアを見てランスロットは吹き出しそうになった。これはランスロットが悪いわけではない。多分この光景を見たら男女構わずランスロットと同じ心境になったであろうから。
(な、何なんですか!この可愛さは!いやいやいやいや、ちょっと待って!これ私の理性持ちますかね⁈アルトリア可愛すぎ!周りに誰もいなくてよかったぁ)
テンパってました。byランスロット
「ランスロット?あの?」
脳内でテンパりすぎてなかなか落ち着いてないランスロットだが、表では顔から表情と言うものが抜け落ちていた。いや、テンパりすぎだろアンタ。
で、それを不審に思ったアルトリアは顔を覗き込む。
「へ?あ、いやその何でもないですよ?」
呼びかけられてようやく気づくアホ。
「あの、それで、、受け取ってもらえますか?」
最後の方はまた小さい声になったが、ここには彼ら以外誰もいない。しかもの近距離。届かないわけがない。
アルトリアのその可愛すぎる姿を見て少々思考が再び停止しかけたが、なんとか思いとどまることのできた円卓最強騎士(アホ)。
「…ええ、ありがたく頂戴致します。私のために選んでおられたとは。申し訳ありません、その、私は何も用意していませんので、、、」
「あ、いえ!私がお礼をしたいと思っただけですし。それに!今日ここに連れて来ていただいた、それだけで十分嬉しいです!……ありがとう、ランスロット」
「そう言っていただけると幸いです。これ、開けてみてもイイですか?」
「あ、はい。その、気にいるかわからないんですが…」
「気に入りますよ、絶対。あなたが選んだのならどんな物でも私は気に入ると思います」
そうしてランスロットは袋を開けた。中には十字架のペンダントが入っていた。
「その、どんな物がいいのかよく分からなかったので、貴方に似合いそうな物を選んだのですが…」
それは淡い紺色の光を放つ十字架だった。
「ええ、綺麗だ」
ランスロットはそう言いながら自分の首に掛ける。
「一生大事にします。ええ、これはいい」
二人の間をそよ風が吹く。
穏やかな午後の出来事だった。
感想待ってます。