魔導世界に墜ちた規格外品   作:苦朗

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願望石の章  9話

魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章  9話

 

ふらふら覚束無い足取りの人影は、お世辞にも強そうには見えない。

 だが、彼が一歩近づくごとに強者たるトラの様な風貌の獣が怯えるように同距離を下がり威嚇を続けている。

 

「ガァアアアッ」

「―――」

「・・・アレなんやの?体中が融けとる・・・・・ってあの辺りって確か晶君が・・・いない・・・でも、あの怪我で動ける訳無い。それにあのスライム状のに捕まっと・・・・・・・もしかしてアレが晶君?でも、体の大きさからして全然違うし」

 

 はやての指摘通りであるが、まるで成虫になりたての昆虫のように時間が経つに連れ彼の体は徐々に整い始めていた。  

 だが、彼女が晶が居なくなっている事に気づいた頃、とうとう獣は痺れを切らして飛び掛ってしまった。

 

「グラァアアアッ」

「――ッ」

 

 振り下ろされた大きな前足をのろのろとした動きで受け止めようとする怪人。

 とてもではないが体格差的にも無理だと思われる行動にはやては思わず声を上げてしまう。

 

「無理や、避けてッ」

「ッ」

「グルガァ」

「言わんこちゃない」

 

 案の定ガードも間に合わず怪人は、獣の一撃に地面を何度もバウンドして弾き飛ばされた。

 それでも、諦めずのろのろと立ち上がろうとする彼に獣は容赦しない。

 前足で地面に押さえつけるとその牙と顎で引き裂きに掛かる。

 

「ッ」

「グルるラァッ」 

「あぁ・・・もうダメや」

 

 何度も何度も執拗に牙を立てる獣。

 

「・・・あかんあかん。諦めたらそれで終いや。這ってでも逃げな・・・でも、アレが晶君や「ゲガェエェエッ!?」なんやこの声!?」

「―――」

「~~~~~~~~ッ」

「うえ?化け物の方が倒れて・・ん?いつのまにか怪人が何か持っとるあれは・・・大きいピンク色の・・・・ッ引き抜いたいうんか」

 

 地面で口から血を吹き出させながらのた打ち回る獣に対してピクリとも動かない彼。

 いつの間にか握っていたそれに怪訝に思うはやてだったが、獣の様子からやがてそれが舌であることに気づく。

 一方、彼女がいろいろと考えている間に彼は、獣の舌を放し立ち上がっていた。

 

「――」

「あ、無事やったんか。ケガも無さっあんだけやられとってケガが無いって・・・・え?え?体の色が変わった」

 

 遠目に見ているはやてには、あれだけ爪や牙に晒されていた彼の身体にケガらしい物を見つけることが出来なかった。

 さら、融けていた部分も彼女の見ている前で消えていき、青みがかかった緑の装甲を纏った綺麗なフォルムへと変貌する。

 しかし、それから彼は行動らしい行動を起こさず立っているだけだった。

 

「―――」

「~~~~~~~ッ!?」

「・・・なんで、見とるだけなんや?逃げるな「―――――ッ」ほら言わんこっちゃない」

「kぁんjど;いあえwcッ!?」

「―――ッ」

 

 とうとう痛みに耐え立ち上がる獣。

 舌を失い声をうまく出せない獣は、それでも力を振り絞り彼へと渾身の力で襲い掛かった。

 それに対し、彼も獣へと走り出す。

 そして、彼らの姿が重なり、何かを貫く生々しい音の後、重々しい音が辺りに響いた。

 

ザシュッ

ズウゥウン

「―――」

「・・・・・・・・」

「・・・・倒したんか?はえ!?化け物の体が消えてもうた・・・」

 

 顎下から抉りこんだ彼の手刀に頭を貫かれ息の根を止められた獣の体や血は、光に砕けそこに今まで居たという痕跡一つ残すことは無かった。

 そして、光の中から一匹の猫が飛び出し、林の中へと姿を消す。

 

「にゃあぁああぁあああッ」

「・・・・もしかして、さっきの化け物、トラや無くて猫の化け物だたんか?」

「―――」

「・・・しょ・・・晶君なんやろ?」

グラ

「え?へ?」

「―――」

「ちょおッ!?今度はどうしたんやッ」

 

 突然地面へと倒れた彼にはやては、困惑の声を上げてしまった。

 

つづく

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