魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章 15話
4月3日 17:35 市街
路地裏から飛行魔法で飛び立ったヴィータとシャマルは、進路を魔力を感じた場所、海鳴神社へと向ける。
さらに路地裏から跳び上がる影があった。
ガイバーに殖装した晶である。
彼は、行き交う人々の頭上を人目を避けビルの屋上、看板、電柱、屋根を足場にヴィータたちを追って行く。
「・・・・やっぱり、空を飛ぶのって速い・・でも・・・」
―あたしらより早く着けたら任せる―
「ヴィータが約束してくれたんだ、負けられないッ」
晶は、電柱を蹴り前へと進んでいった。
そして、辛うじてヴィータたちより先に海鳴神社境内のオオカミの様な黒い獣とその姿に驚き失神した女性の間に降り立つ。
ただ、彼女らの飛行速度が、最初より遅く感じたのが気がかりであった。
「グルルル」
「思わず割って入っちゃったけど、この怪物って・・・」
「そいつがさっきの魔力の持ち主みたいだぜ」
「ヴィータちゃん」
晶は、上からの声に状況を忘れ思わず声の主を見上げてしまった。
安易なその行動は、彼と獣の睨み合いに動きを齎し、獣が飛び掛る。
「グルァアアアッ」
「う、うわぁあああ」
「ッギャウン」
「え?え、え・・・」
飛び掛ってくる獣に思わず突き出した両腕。
普通なら獣の重量に負け何の意味もなさない行動だったが、今の晶はガイバーである。
その能力は計り知れず、獣を弾き飛ばした。
そして、その事に本人も驚いているようだ。
そんな晶と対照的に落ち着いたヴィータたちの声が響く。
「”ちゃん”言うな。ったく約束通りお前に任せるわ。まあ、そいつに言葉が通じればの話だけどなって遅いか」
「ヴィータちゃんワザとでしょ?」
「お、分かるシャマル。あのまんまじゃ時間の無駄だったからさ、背中押してやったんだ」
「まあ、移動の様子からあれくらいは出来ると思いましたけどね」
「~~~~~ッ」
「な、なんかすごい怒ってるんだけど、あの怪物・・・・やっぱり助けてくれない?
「何言ってんだよ、男だろ?何とかしてみろよ」
「えぇ!?でも、僕ケンカなんてどうやれ・・・ば・・・・・・・・」
「?どうしたんだよ」
「・・・・・あの夢見たいにすればもしかして・・・・ねえ、この女の人を守っててくれないかな?」
「まあ、そんくらいなら良いか」
ヴィータたちは、女性を連れ晶たちから距離を取りその前に陣取る。
彼が彼女らと話している間、獣は思わぬ反撃に警戒し様子を伺っていた。
「グルルルル」
「よ、よし、とりあえずよく思い出して・・・・・・そう武器だ、よ、よしこれでも食らえッ」
「――ッ」
ジュバッ
晶が額の金属球部から連続で発したビーム、赤外線レーザーであるヘッドビームを本能的に獣は避け、代わりに地面を焼いていく。
「へえ、あいつあんな武器持ってたのか」
「あの連射性はすごいですけど、騎士服を破るには威力不足ですね」
「だね。でも、あの獣には効果はあるみたいだぜ」
「グゥゥウウウ」
「やった当たった」
まるでガイバーの力を測っているかの様な会話をするヴィータたち。
だが、その言葉を初の実戦である晶に聞いている余裕は無く、自身の攻撃が獣に掠った事に喜んでいる。
だが、この攻撃が獣の危機感を募らせている事に気づいていなかった。
「グルぅ」
「ッあいつ逃げるぞッて距離を取られずぎだバカッ」
「え?あ・・・」
「ーーーッ」
僅かな獣の変化とその動きからヴィータは、獣の次の行動を察知したが、晶のミスと反応の悪さの隙を着き、彼らに背を向けて獣は走り出していた。
「追いかけろ」
「う、うんッ――――――え」
「ギャウンッ」
「うわッ」
短距離走の様に全力で地面を蹴った晶は、獣にすぐに追いついたものの勢い余ってそのまま体当たりしてしまう。
「何やってだよ、あいつ」
「でも、あの距離を簡単に追いついちゃいましたよ」
「だからってあれは・・・あいつ自分の力をちゃんと制御出来てねぇのか」
「・・・・もしくは、ちゃんと把握できてないかですね。マスターの話じゃ、昨日始めてあの姿になったらしいですし」
「・・・・・ったくしゃあねえなおい、今だ止めを刺せ」
ヴィータは、頭を掻きながら獣と折り重なって倒れている晶に声を掛ける。
「グゥウウ」
「と、止め?でも、どうやって」
「そんなもん、頭を潰すとか首を折るとかあんだろうが」
「えぇ!?出来ないよそ「ガァアアアア」うわッ」
晶が迷っている間に獣が彼の首に噛み付く。
そこは、ちょうどガイバーの装甲が薄い箇所で牙が食い込んでいった。
そして、獣は頭を振り回し食いちぎろうとし、晶はその頭を手で押さえ防ごうとする。
「グルゥウウ」
「あ、あ、ああ」
「あーくそ、今行くッ死ぬなよ」
「あーーーーーッ」
グシャァ
「・・・・・・」
「はぁはぁはぁ」
死の恐怖に直面した時、晶は思わず手に力が入れてしまい、彼の頭部よりも大きい獣の頭を容易く握りつぶしてしまった。
「・・・・・やりゃあで「きゃあああぁあああ」ちぃ今度はなんだよ」
運悪くそのシーンを1人の少女が目撃したようである。
悲鳴を聞きその主に目を向けた晶は、呻くように少女の名を口にした。
「あ・・ぁ・・な・・のはちゃん」
つづく