魔導世界に墜ちた規格外品   作:苦朗

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願望石の章 26話

 4月6日 曇り

 

 今日から日記をつけようと思う。

 4日前から記憶が飛び飛びになることが頻繁に起きているからだ。

 短いと数分、長いと半日も過ぎていることがある。

 昨日も社長室で仕事をしていたのに、気づくと3時間ほど経っていて自宅で株取引をしていて50万以上稼いでいた。

 会社の人間に聞いてみると突然、副社長に残りの案件を押し付けて帰ったそうだ。

 ひどく乱暴な口調だったらしい・・・・・やはり記憶にない。

 先ほど医者に見てもらったが脳に異常は無いそうだ。

 この日記も医者の勧めもあり書き始めた。

 4日前と言えば、少し話が変わるがベランダでクリスタルの様な物を拾った。

 おそらくカラスが落としていったのだろう。

 片付けようと手に持ったら、気づくとその石を握り締め部屋の中で開けられていた金庫の前にいた。

 あわてて時計を見たら数分経過していた。

 金庫の中は無事だったものの不可解だ。

 玄関は鍵が閉まっているし、ここは12階だ。

 ベランダから不審者が侵入したとは思えない。

 やはり私が開けたのだろうか?

 

                    ~遠見市在住のとある女社長の日記より~

 

 

魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章 26話

 

 

 

 

 4月17日 13:05

 

 乱暴に床へ転がされているアリサたちを見下ろしながら口を開いた。

 

「ふむ、バニングス家の一人娘を見つけて思わず誘拐しちまったけど、デビットの野郎にどう仕返ししてやるか・・・それに一緒にいたこいつもついでだから連れてきたしな」

・・・・ごめん、アリサ

 

 男のような口調で話しながら、気を失っているアリサの頭を踏みつけながらすずかを見やる女。

 どうやら、アリサの父親に恨みがあるようで、すずかは巻き込まれたらしい。

 その様子をヘッドセンサーで覗いていた晶は、助けられるのに助けられない自身の不甲斐無さに心の中で頭を下げる。

 

「・・・・あん時の損害分の補填に身代金でも・・・・いやダメだな。それじゃあこっちの身元がばれるリスクが高いか・・・・・・だったら、こいつら主演のポルノでも作って、世の好きモノどもに売りさばくか」

ポルノって何だろ?

「とりあえずっだ、あの野郎に娘の一部でも送ってッ―――チィ、まだ”いた”のか」

?何言ってるんだ、僕ら以外いないのに・・・・っていうか今、2人に何をしようとしてたの?

 

 突然ビクリっと肩を震わせると心底驚いたという様子でソファーへ乱暴に座り足を組むと、次に首の力が抜けたのか頭が下がってしまった。

 

何やってるんだ?・・・・・もしかして、今が2人を助けるチャンス?

「―――ッ!?ここっていったい・・・・私、また・・・・・・・」

?何かさっきまでと様子が違う

「今度は、わたッ―――――――」

 

 女は、周りをきょろきょろと見渡し床に縛られ転がされているアリサたちにもすぐに気づき、絶句した。

 

「こ、この子確かバニングス家の・・・・・まさか私ッとにかく警察にれんらな、何?」

 

 携帯を取り出し110番をプッシュしようとする右手を横から伸びてきた手が掴む。

 

「何で私の左手が勝手に動いて邪魔をするのッ!?」

 

 女は、恐慌状態で自身の左手を引き離そうともがくがびくともしない。

 

《そんなことさせねえよ》「だ、誰?」

《俺はお前だよ》「何言ってるの!?そんなことある訳無いじゃない」

どうしたんだ、今度は?独り言なんか始めて

《さあ、もう気が済んだだろ?さっさと寝てろ》「い、いや来ないで・・・来なイデェエエエエエエ・・・・・・・・・・・・・はは、これであいつはしばらく出て来れねえだろ。さてっと」

 

 元の口調に戻った女は、すっきりしたという顔で引き出し中を此れでもない、そいつでもないと漁り出す。

 

「・・・・・・・・・ちぃ置いて無いのか・・・仕方ない」

食器棚に移動した?え、ちょまさかそれで何かするつもりなの

 

 女が食器棚の引き出しから取り出したモノを視て慌てる晶。

 彼が潜んでいると知らない彼女は、ソレを持ってアリサの髪を掴み引っ張り上げる。

 

「うぅ」

「さ~てすぐに済むからなァッ」

 

 女が手にしたモノ、包丁が勢いよく振り降ろされる。

 だが、それを視て慌てた晶は、物音を立ててしまった。

 

ガタッ

し、しまったッ

「誰だ!?」

ドンッ

「うぁ・・・・・」

どんどん近づいてくる!?

 

 幸い振り下ろされた包丁はアリサの髪の一部を切り取っただけだったが、髪を女から開放されたことで床に軽く叩きつけられうめき声を上げる彼女を心配する余裕は、女に気づかれた晶には無かった。

 女は包丁を手にしたまま物音のした方、晶が屈んで潜んでいる近くの窓へと近づいていく。

 

どうしよう・・・・どうしよう・・・・

「・・・・・・・・この辺りか」

逃げる?い、いや、ダメだ。そしたら、この人また別の場所に逃げてちゃうかも。もしかしたらその前にあの包丁で2人を・・・・ッ

「ふ~は~・・・・・・・・誰だ!?」

 

 女は、息を整え窓を一度覗き外の様子を窺ってから、勢いよく窓を開けた。

 

つづく

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