4月8日 晴れ
今日、心療内科で解離性同一性障害つまり多重人格ではないかと言われた。
実際に先生の前でその人格が現れていないのまだ可能性の段階だ。
原因としては、過度のストレスが原因の1つであると考えられているらしい。
過度のストレス・・・・・・・思いつくのは、先月あったとある大手会社とのプレゼンの失敗だろうか。
とりあえず、しばらくカウンセリングを毎日通うつもりだが、小さい会社だからみんなには迷惑をかけることになる。
そのことを話したらみんな私の心配をしてくれた、ありがたい。
早く完治するか、新しい『私』と和解なりなんなりして折り合いをつけなくては。
~遠見市在住のとある女社長の日記より~
魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章 27話
4月17日 13:10 コテージ
女が窓を勢いよく開け顔を出した。
「誰もいない?風で何かが・・・・・こんなでかい穴あったか?」
誰もいないことに安堵しかけた女だったが、ふと下を見ると人一人が容易に通れるほどの穴が出来ていることに困惑する。
「やっぱり誰かが?いやそれだったら、こんなでかい穴掘り出したら気づくだろ、普通。周りにも掘った土無いし・・・・・じゃあ、今の今まで気づかなかった?それこそ無いよな。なんせ玄関から見える位置だし――――」
不可解すぎる状況に判断に窮す女。
一方忽然と姿を消した晶はというと現在地中に潜んでいた。
『誰もいない?風で何かが・・・・・こんなでかい穴あったか?』
間一髪セーフ。とっさに昨日の夢を思い出せてよかったよ。そういえばあの夢―――
あの場からとっさに穴を掘ってコテージの下へと逃れたのである。
ところで晶が今朝見た夢であるが、それはどこかの林の中を走っている所から始まった。
ただ、今までと違い彼に並走して黒くて刺々しいもう一人のガイバーと一緒である。
彼以外にもガイバーがいるらしい。
2人はどこかへ向かっているらしく、その時に腰部の金属球を利用して地面をすごい速さで掘り進んでいった。
そして、地面の中の秘密基地で敵の服を2人で奪って潜入、何かを探しているようだった。
夢はそこで終わってしまい何を探していたのか、その後どうなったのか、初めて見るもう一人のガイバーの正体はっと気になることは多いものの、彼の見る夢には連続性が無いため今日の夢が昨日の続きとは限らない。
そのことに歯痒さを感じるが一方で安堵もしていた。
あの展開からして次は血生臭い戦闘がありそうなので、今日の夢が続きなら、夜になるのが怖くてたまらなかっただろう。
――っと夢のことは後回し。今はこの状況に集中ッ
へッドセンサーから女がしきりに外を気にし窓から離れようとしない様子が窺える。
そこで晶は、ふと気づいた。
女は今、窓側にいてアリサたちに”背”を向けている。
自身を見られてはいけない。
そう見られなければ良いんだ。
2人を助けるチャンスじゃないかッそれにいざとなったらコレを使えば良いじゃないか。それにジュエルシードも後でヴィータが来てから回収すれば良い。なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろ?・・・よーし行くぞぉ
晶は、穴を掘り進めアリサたちに近づいていく。
そして、2人が影になり女からは見えにくい位置で地面から両腕を出しコテージの床を地中を進んだ時と同様、極小ワームホールで静かに刳り貫く。
最後に右手を握り秘密兵器の存在を確認する。
『――無いし・・・・・じゃあ――』
『――今の今まで気づかなかった?――』
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
『――それこそ無いよな。なんせ玄関から見える――』
・・・・・・・・・・・・・・・・2・・・・・・・
『――位置だし――』
・・・・・・・3ッ
晶は、床から這い出て2人に手を伸ばす。
「「・・・・・・・・・・」」
こっち向くなよ・・・・こっち向くなよ・・・・・
「――見逃すはずな―――」
ッこっち向くなって!食らえッ
「ギャぁああッ」
「脱出ッ」
晶は、握っていた秘密兵器、砂を女の顔面に毒霧の様に撒き掛けた。
そして、目を押さえて苦しんでいる彼女を残して、2人を抱えて外へと逃げ出していった。
「くそっ目が・・・目がッどっかから入りやがった。こんなことしてただで済むと思うなよ!!」
女は、目を押さえながら包丁を振り回す。
「さっきの声ガキどもだな。気を失ってる2人を連れてそう遠くへ逃げられないはず、捕まえてぶっ殺してやる」
最後に聞こえた声から相手は子供。
さらにアリサたちを連れて逃げたことから複数いると予想した女は、まだ見ぬ相手を口汚く罵倒する。
「だってのにあーくそッ目が見えねえ、コレじゃ追えねえじゃねえか。どうにかしないと」
ドクンッ
女は、手探りでふらふらしながらも洗面所へ向かう。
しかし、目が見えないこと、逃げた晶たちへの報復を考えることでいっぱいの頭。
その2つが重なり彼女の胸ポケットから発せられた光と胎動に気づかなかった。
つづく