魔導世界に墜ちた規格外品   作:苦朗

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願望石の章 28話

『4月16日

 

 怖い・・・・・・。

 どんどん『私』で居られる時間が短くなってる。

 前は日に数時間だけ私が眠っていたのに、今じゃ1日に私が出ていられるのが多くて数時間だ。

 次に入れ替わったら私は消』

 

 女は、そこでペンを置き、書きかけの日記を閉じた。

 

「・・・ああ、そうだよ。お前は消えてオレがお前になる」     

 

 焦燥し怯えながら日記を書いていた先ほどの『私』を嘲笑う。

 

「まあせいぜいそれまで怯えてろ」

 

 女はそう呟くと日記をごみ箱へ放り捨て部屋を出て行った。 

 

 これは、アリサたちが誘拐される前日に遠見市のとあるマンションで起きたことだった。

 

 

魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章 28話

 

 

 森の中を走ること数分。

 アリサとすずかを抱えた晶は、コテージからある程度離れた所で2人を気にもたれさせた。

 

「これぐらい離れれば、普通の人ならそう簡単には追いつけないはず・・・ほんとは2人を街まで送ってあげたいけど、ジュエルシードが近くで発動したからみたいだから・・・ごめん」

 

 晶は、まだ気を失っている2人に謝ると来た道を戻って行く。

 だが、すぐにヘッドセンサーが知らせる相手の位置情報に呻きながら立ち止まることになってしまう。

 

「うぇ!?なんでジュエルシードの方から来るのさ。まだ2人からそんなに離れてないのにッ」

 

 他にもヘッドセンサーから四足歩行でなかなかのスピードで木々の間を抜けてくること、熊以上の巨体であることを知らせてくれるが、こちらにまっすぐ向かってくる理由を特定する情報は得られない。

 そして、そうこうしている間に等々その姿を目視で捕えた。  

 

「熊?」

「プギィイイィイイイイ!!」

「ブタ?そ、それより何だろ、あいつを見てからすごく気分悪くなってきた」

 

 晶が目にしたのは、今までの異相体の中でも異様な姿だった。

 熊の様な巨体(なぜか肩の後ろは異様に盛り上がっている)を白い体毛が覆い、前足と後足の爪は長く鋭く、長く太い尾の先端は衝角様な物がついている。

 そして、そんな体躯の首の上には鋭い牙を持つ豚鼻の頭部が乗っていた。

 そんな豚鼻の異相体は、先手必勝とばかりにスピードをそのままにタックルをしてくる。

 

「ギィイイイイッ」

「ッんぬうぅうぅ」

  

 その姿に動揺し、反応が遅れた晶はそのタックルを真っ向から受け止める。

 地面に少し足を擦った跡ができたものの跳ね飛ばされることなくスピードに乗った自身より一回り以上大きい巨体を受け止める。

 

「こんっのぉおおッ」

「プ、プギィ!?」

ズン

 

 晶は、豚鼻の異相体を持ち上げ投げ飛ばす。

 異相体もまさか彼の細い体躯に持ち上げられるとは思っていなかったのか、動揺した鳴き声を上げ地面に叩き付けれれる。

 だが、投げた方も何かダメージを受けたようだ。

 地面に両膝をつき、口元を抑えている。 

 

「うっぷ・・・・・どんどん気分が悪くなってきた」

「・・・・・・プギィ!!」

ガリッ

「ッ」

 

 そんな晶の様子を好機と見たのか異相体は、静かに体を起こし彼に忍び寄り、爪による一撃を放つ。

 だが、寸前で彼は転がるように回避した。

 

「ピギッギィッギギィ!!」

「ッッッ」

 

 さらに長い尾の先端にある衝角が、尾を鞭のように払う、打ち付けるなどの攻撃を連続して放つ異相体。

 立ち上がる暇もなく転がり続け回避する晶だったが、それにも終わりが来た。

 

ガン

「ッ!?」

「プギギギィイ」

「ぎゃッ」

「プギャギャギャ」

 

 晶の体が木に阻まれてしまったのだ。

 それを見た異相体は、痛烈な尾の打撃を連続して打つ。

 そして、それは突然起こった。

 

「ブッギィイ!!」

「ギッ」

「ピィ?」

ドン

「ぎゃッ」

 

 

 原因不明の不調とダメージが起因しているのか分からないが異相体がさらに強く尾で晶を薙ぎ払った時だった。

 宙で跳ね飛ばされ、殖装が解けてしまった彼は生身のまま地面に強く叩き付けられてしまう。

 

「うぅ・・・・ガイバーッ」

「??・・・・ギィギィ」

 

 晶は呻きながらどうにか再殖装をしようとする。 

 一方、突然姿を変えた彼に困惑する異相体だったが、すぐに好色そうな鳴き声を上げ、涎をダラダラと溢しながら近づいていく。

 

「な、なんで?ガイバーッどうしたんうっぷ・・・げぇえええ」

 

 殖装、それは晶の意思に従い異空間から呼び出されるガイバーを纏うこと。

 だが、今回は彼の意思に反応しない。

 そして、異相体と相対してからの不調はそのままで彼は、訳が分からないまま昼に食べたものを戻してしまう。 

 

「ギギィ」

「なんで、なんで来ないんだよ・・・ガイバー・・」

 

 酸っぱい臭いが漂う周囲に異相体の鳴き声と消沈した晶の声が響く。

 そして、異相体が彼の前に来ると口を大きく開け、彼の頭に涎を落としながら襲いかかる。

 

「プギィ」

「ひっ」

「プキィッギゲッ!?」

 

 食われると思った晶は恐怖から目を閉じてしまう。

 だが、異相体の異相体の鳴き声以降彼の身に何か起こることはなかった。

 恐る恐るそーっと彼が目を開けると、いつのまにか離れた位置にいる右側頭部を破壊された異相体と空からそれを見下ろしている女の子の姿が映った。

 

つづく

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