魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章 31話
晶の復帰により活気を取り戻した一同は、急いで彼の昼食を用意するとはやての料理に舌鼓を打つ。
特に晶は、2日ぶりの食事ということもあり何杯もおかわりをしてしまう。
その様子を嬉しそうに見る者、呆れる者、いきなり無茶をする彼を心配そうに見る者、彼の様子を観察する者。
各々見方は違えど、彼の回復を喜んでいた。
「ゲップゥ」
「うわっこっち向けてすんなっ」
「あ、ごめん」
「晶汚い」
「行儀が悪いですよ」
「まったく・・・」
「・・・・・」
そして、全員が昼食と食休みを終えると各々の動き出した。
だが、晶はさすがに食べ過ぎたのか少し苦しそうにお腹をなで動こうとしない。
そんな時だった。
それまで皆より一歩引いた場所で彼を見ていたザフィーラが声をかけた。
「・・・・深町」
「あ、ザフィーラさん」
「今の体調はどうだ?」
「今は調子いいです。起きた直後は、いつもの夢のせいかで吐きそうになりましたけど・・・あ、今はいいですよ、ほんとですよ・・・まあお腹はパンパンですけど」
「ふっ、あれは食べ過ぎだ。気を付けろ」
「・・・・はい」
普段は寡黙なザフィーラが、恥ずかしそうに答える、晶。
「あ、そうだ。みんなにはもう言ったんですけど、ザフィーラさん心配をおかけしました」
「・・・・気にするな、家族を気に掛けるのは当然だ。が、同じ失敗は繰り返す・・・どうした、笑ったりして?」
「いえ、僕のことも家族って言ってくれるんだなって・・・それにみんな同じこというんで」
「そうか・・・繰り返しになるが、同じ失敗を繰り返すなよ?主が心配する。俺も含めた皆もな・・・」
「はい」
「それにだな・・・・しゃべるなとヴィータには言われていたんだが・・・お前が運ばれてきた時、運んで来たヴィータもだが主も泣き取り乱していた。あれは見ていて堪える」
「・・・・・・」
「お前が傷つき倒れれば、泣く者がいることを忘れるな」
「はい!」
「それでだな、少し確認したいことが――」
夕方
封鎖領域を展開した八神家前の道路で、ザフィーラは騎士服に、晶はジャージを着て向かい合っていた。
その姿を2階の窓から見ていたはやては、屋根の上で臨戦態勢でその様子を見ている者へ尋ねた。
「なあ、これってホンマに今日やらなあかんことなん?」
「・・・私にもザフィーラが何を考えているのか・・・・ですが、何の意味も無くこんなことをするとは考えられないのでここは・・・」
「むぅ~~・・・やったら、危ななったら止めてな、シグナム」
「はい」
窓際で交わされる2人の会話から分かるように、はやてはもちろん、付き合いの長いシグナムたちですら困惑顔である。
ただ、何があってもすぐに対処できるようにシグナムたち3人は、騎士服とデバイスを起動状態でいた。
「深町、始めるか」
「はい・・行きます!ガイバーッッ」
晶は走り出しながらガイバーを呼び、アスファルを砕きザフィーラの懐に飛び込んでいった。
「ッ」
「やっはッせいっ」
「ックッ」
連続した拳撃を放つ晶に対し、ザフィーラは両腕にそれぞれに展開した障壁で拳撃を防ぐ。
なぜ、障壁を張る必要があるのか。
それはガイバーに比べ魔法で強化していても筋力が劣り騎士服だけでは、ガイバーの拳を受けただけで容易くザフィーラの腕が破壊されてしまうからだった。
「ッハッ」
「うっ」
ザフィーラが放った足払いに体勢を崩され、拳撃を止めてしまった、晶。
その隙をザフィーラが見逃すはずもなく、障壁を展開した拳を放った。
「ォオオッ」
「ッ」
「ッ!?クッ」
「え・・・・・」
ザフィーラの拳は、直前に軌道がずれ晶の横の何もない空を打つ。
「・・・・・・やはりか・・・・・深町、仕切り直しだ」
「え、あの・・・・」
「殖装してもう一度だ」
「は?・・・あれいつの間に?」
最初何のことかわからなかったが、晶は自身がいつの間にかガイバーを纏ってないことに気付くと困惑する。
なにせ、殖装を解いた自覚が無かったからだ。
その後、日が沈むまで同様の立ち会いを何度も行うものの殖装が途中で勝手に解け、仕切り直しを繰り返していった。
「なんで?何したんですか、ザフィーラさん?」
「・・・・・・殖装時間15秒、次殖装まで約3分か」
「え?」
「俺は何もしていない。2日前お前が遭遇した異相体の力だったのかどうかは不確かだが、今のお前は殖装して15秒後に自動で殖装が解け、次に殖装が可能になるのが約3分後という状態だ」
「・・・知っていたんですか?」
「いや、お前の話を聞き疑問に思ったのでな、今回の立ち会いで見極めようとした。さすがに異相体の前で無自覚に殖装を解けるのは、シャレにならんからな。無理を承知で急いで正解だった」
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
「何もするな。お前はジュエルシードの回収に関わるな」
つづく