魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章 37話
晶は、いつものように目を覚ますと、すぐに異変に気付いた。
指は動くが腕も足も上がらず、起き上がることも出来ない上に、口内に感じる不快感を吐き出すことも出来ない。
其れも当然である。
彼は今、何重ものバインドで拘束され、口に猿轡をされているからだ。
「あにほえ(なにこれ)?」
頭を左右に振ると自分が室内にいることに気付く。
晶が咄嗟に思い出したのは、衝撃、熱、激痛、笑い声の順である。
そして、室内で誰かが動く気配がした。
「ッふぁひはひゃの(アリサなの)!?」
「・・・・・」
晶が怯えていると視界に入ってきたのは、騎士服を纏い抜身のレヴァンティンを手にしているシグナムだった。
「ふぁんあ、ひぐぅなぅはうふぁ(なんだ、シグナムさんか)」
「・・・・・・」
「ほれほっへくふぁはい(これとってください)」
「レヴァンティン」
《了解― Explosion.》
「ふぇ?」
撃鉄の音がすると炎を纏ったレヴァンティンは、なぜか晶へと突き付けられた。
「ふぁいにふふんふぇすは(何するんですか)!?」
「・・・今から口枷を取るが、以降は私の質問への解答に関すること以外口を開くな。分かったら一度頷け」
「ふぁはふぁふぁんへッ(だからなんでッ)」
「・・・・・・ならば、ずっとお前はこのままだぞ?」
「ッ・・・・・・・・・・・んん」
シグナムの淡々とした口調にうすら寒い感じがし、不承不承頷く。
だが、晶は『例え剣を向けられていても本当に斬られることは無いだろう』とまだ楽観視していた。
例え、彼女がレヴァンティンで猿轡を切り落しても。
「ぷはッ何でこ「ッ」え・・・・・・いづッ」
「警告は一度だけだ。次に背いたら左耳を切り落とす」
「~~~ッ」
シグナムの腕が動いた瞬間、レヴァンティンが晶の鼻先を掠めていった。
彼には剣筋は見えていなかったが、遅れてやって来たカミソリで切ったような痛みと何かが焼けた臭いに何が起きたか理解させる。
そして、彼女の目を改めて見てやっといつもと様子が違うと気付いた。
「お前は何者だ?魔力無で騎士を超える身体能力を持ち、宙を翔け、我らの盾をその刃で絶ち、一般的な砲撃魔法を凌駕する手段をその身に秘めていたお前はナンだ?」
「?????」
身体能力や盾、防御魔法を高周波ソードで斬れる―シグナムたちとの訓練時に判明した―のは分かるが、それ以外には心当たりが無い晶に答えることは出来なかった。
そもそも、彼女の様子からそれを彼女の前で行った様だが記憶には無い。
「・・・・・お前は昨日のことを覚えているか?」
「あ、あのしゃべっても?」
「ああ、許可しよう」
「昨日って?というか僕は何でここに?ジュエルシードの暴走にアリサが巻き込まれてそれで、アリサがわ、笑いながらぼ、僕を滅多刺しに・・・・」
晶は、あの時の恐怖を思い出しながら最後の記憶をたどたどしく説明した。
そんな彼の様子と説明を聞いてもシグナムは剣を、警戒を解こうとせずに事実を口にする。
「そうか・・・だが、記憶が中途半端だな・・・お前のその記憶は昨日の夕方で、今は翌日の昼だ。そのバニングスなら、我らが到着した時には死にかけていたぞ」
「ッ!?」
「そして、ミッド式の黒い少女がお前から彼女を守っていた」
つづく