魔導世界に墜ちた規格外品   作:苦朗

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願望石の章 39話

魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章 39話

 

 晶が八神家を追われて4日後。

 着の身着のまま無一文の晶は、高町家や友人たちの家に身を寄せたわけでもなく、昼は山へ、夜は人影の少ない雨風を凌げる場所を転々と寝床にする生活をしていた。 

 先に受けた心のキズが深く、他者を警戒し関わらないようにしているからである。

 だが、それでも身体は食べ物と水を欲し、時間と共に衣服や身体は汚れていくが、今の所晶はそのどちらにも不自由していない。

 なぜなら水は公園等の水飲み場で、朝昼晩の食事は毎食、衣服も朝と夕方にシャマルたちが交代で運んでくるからだ。

 ただし、彼に出て行くよう伝えたシグナムは姿を見せない。

 会わせる顔が無いのだろう。

 

「11・・・12・・・・13・・・」

 

 ジュエルシードの探索を止めた晶は、ひたすらトレーニングをし続ける。

 それは以前の様な身体を鍛えるという目的からではなく、何も考えない為の手段としてであった。

 

「40・・・・・・・41・・・・・・・42・・・・・・」

 

 考えないように思い出さないように腕立てが出来ないならランニングを、ランニングが出来ないなら腹筋を・・・というように睡眠、給水、食事、トイレ以外は動かせる部位を使って機械的に身体を酷使する。

 そうでないと八神家から追われた時や父に拒絶された時のことが脳裏に浮かんでくるからだ。

 だが、事情を知り見る方は溜まった物ではないだろう。

 だから、シャマルたちは食事を持ってくる時止めようとするのだが、彼女らの言葉に被せる様に晶は何事かを言い聞く耳を持たないのだ。

 そして、そろそろ夕暮れ時であった。

 

「ハァッハァッハッ・・・ッ」

「あ「こ、これ・・・今日の。せ・・・ん濯お願いしま・・す」え?」

 

 晶は、近づいてきた人の気配に気付き、相手を確認せぬままいつものように言うとその場で服を脱ぎ出す。

 困惑気味な声はシャマルたちとは違う声であったが、極度の疲労と考えないように心掛けていた所為でその事に反応することは無かった。

 そして、べちゃりと汗をいっぱい吸った衣類を置いた晶は、少女をその場に一人残し近場の川へ水浴びに歩き出す。

 だが、後にこの時のことを後悔すると彼はまだ知らなかった。

 

 

 20分程だろうか。

 晶がシャマルたちだと思っている人が立ち去る頃を見計らって、先ほどの場所―ここ3日、日中いる直径二メートルほどの岩がある場所へ戻って来る。

 

「・・・・な」

「晶君、またそんな恰好でッ!」

「なん・・・で、まだ居るんだよ」

「早く、身体拭いて服を着なさい。暖かいからってそんな恰好でいつまでもいると風邪をひきますよ」

「あ・・・・え・・・」

 

 想定外の事態に困惑していると業を煮やしたシャマルがタオルで晶の身体を手早く拭き、持ってきた服を着せていく。

 

「それで、洗濯物はどこですか?まさか川に置いて来たんじゃ」

「そ、それなら水浴びに行く前に置いて「無いですよ」え・・・でも、確かに」

「まさか、私たちと誰かを間違えたんですか?」

「・・・・・え゛」

 

  

つづく

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