ハプニングから15分は経っただろうか。
晶の心情を表すように空が急に曇り、雷鳴が轟き始めている。
「あの様子・・・ヒーローさんに嫌われたんだ・・・」
悲しげな視線の先には、洗濯して綺麗になっていた晶が昨日来ていた服一式。
だが、それも今は土の上に散らばっている。
「まだ、ヒーローさんにあの時のお礼言えてないよ・・・」
「――――――み――たぁ」
「今度からは僕を避けるようになるんだろな。それに、僕もどう話しかければいいかわかなクシュン」
いつもほどで運動をした訳ではないが、汗をかいていることに変わりはなく、身体が冷えてきていた。
そして、目の前には多少汚れてはいるものの乾いた自分の服がある。
失意の中だが、風邪を引けば動けなくなると理性が働き、それに手を伸ばした。
「―――こっんのぉ」
「街の方にヒーローさんいん?」
「フェイトをいじめるなぁああああ!!」
「ぎぃへ」
女性の怒声と共に晶の意識は刈り取られていた。
「あ、ヤリ過ぎた」
魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章 41話
「ん・・」
晶が気を失ってどのくらい経っただろうか。
ゆっくりと目を開き見えたのは、どこかの天井だった。
あれ?僕、外にいたはず・・・
「ここどこ?」
身体を起こし辺りを見渡すと、さらに頭を捻ることになった。
「何か部屋の様子が古めかし「あ、目が覚めたんですね」?」
だれだろ、この人?っていうかこの人の格好も変わってる
「アルフが慌てて、あなたを連れて来た時はびっくりしましたよ」
「え?あの・・」
アルフってだれ?
「あ、そうです、フェイトにも心配してましたし知らせないと」
え、また新しい名前・・っていうか
「あのッ」
「え、はいどうしました?あ、もしかしてお腹が空いたんですか?」
「そうじゃなくて、ここどこですか?それにあなたも」
「え・・・ああ、そうでしたね。私ったら・・・私はリニスといいます。そして、ここは時の庭園です、安心してください」
トキの庭園・・・ああ、動物園か
晶は、鳥の『トキ』と勘違いしたらしくここを園内の医務室か何かだと思ったようだ。
気を失う前は、山中にいたことが頭から抜けているようである。
「僕、どうしたんですか?」
「・・・家のアルフがごめんなさい、あなたを殴って気絶させてしまったんです。あの子も悪気があったわけじゃないんですけど、フェイトが泣いて帰ってくるものだから・・・・」
「え・・・僕、殴られたんですか?」
あ・・・そういえば顔が痛いような・・・
「ケガは、魔法で治したんですけど、なかなか意識が戻らなくてちょっと心配しちゃいました」
「魔法でですか?」
「あ・・・・・・・・・・・・」
「ミッドチルダの人だったんですか」
「よかった、同郷の人だったんですね。私はてっきり、現地の人だとばかり」
「あ、いえ僕は違いますよ。ちょっと事情があって知り合いに魔導士がいるんで」
「そうなんですか?魔法の事は、本来管理外世界では秘密なので誰にも言わないでくださいね」
その後、リニスは空間投影でモニターを出し何処かへ連絡し、さっきから度々出てくるフェイトさんとアルフという人を呼んだ。
どうやら、色々と隠すのをやめたようである。
僕を殴ったらしい人をさん付けで呼ぶもんか
まだ顔も分からぬ誰かに対して、密かにそう決めた。
「ところで、あなたのお名前を聞いてませんでした」
そういえば・・・・
「僕は、深町晶です」
「えッ!?本当にフカマチショウなんですか?」
「僕、深町晶じゃだめなんですか?」
そんなッ
自身の証とも言える名前を否定されたように感じ、自然と晶の目に涙が浮かんでくる。
父と思っていた人に否定されたことや八神家を追われたことが彼の胸に去来し重く伸し掛かる。
そんな晶の様子に、リニスは慌てて弁明する。
「そうじゃなくてですね、私たちが探してる人と同じ名前だったので」
「・・・・ぼくはふかまちしょうでいいんですか?」
「はい、いいんです。ごめんなさいね、私がひどいこと言って」
晶の事情を知らないリニスだったが、自身が彼の中の闇に触れてしまったことに気付き抱きしめ宥める。
すると彼は、これまでため込んでいたものを吐き出すように声を上げて泣き出したのだった。
つづく