木々の生い茂る普段は散歩や近道として使う公園の林道。
そこで金髪の少年は落した物を探していた。
数は21、形状は宝石のような石。
今までに見つけられたのは1つだけで、つい先ほど追いかけていた石にも逃げられてしまった。
だが、彼は傷つき疲れ果てすでに追う力を残していない。
だから、呼びかけることにした。
『たすけて下さい。僕の声を―――』と・・・・・
少年と同じ力を持つ誰かにのみ聞こえるように。
高町家 武道場 5:47
美由希と恭也が朝稽古に汗を流している片隅で晶は素振りを行っていた。
しかし、同じ場所、同じ時間帯で稽古をしていても彼には、指導してくれる人が居ない。
何故か・・・それは、居候を始め1週間もしない内の出来事である。
ある夢を見てから晶は無性に『強くなりたい』っという思いにかられ、身近な士郎達へ剣を教えて欲しいと頼み込んだ。
だが、士郎たちからの返事は『NO』だった。
理由としては、『家の剣は門外不出だからおいそれと教えることは出来ない』という。
だが、晶は尚も食い下がりなんとか稽古を見学させてもらえるようになる。
見学を始めてすぐに、ただ見ているだけでなく見よう見真似で素振りを始めた、晶。
そして、その習慣は少しずつではあるが晶の実になっていく。
「はッ・・やッ・・・せいッ」
キィーーーーーッ
「~~~ッ・・・・・耳鳴り?」
突然の耳鳴りに訝しげに周囲を見渡したものの何も無い。
「・・・・っと続き続き。やぁッ・・・・はぁッ」
晶は、今日も懸命に汗を流す。
魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章 4話
私立聖祥大付属小学校 中庭 12:37
今日も4人は、各自の弁当を持ち寄りお昼を共にしていた。
「――んっく・・・晶君、最近どうなの?お友達できた?」
「・・・うん、前に比べれば話す子も増えてきたよ。でも、それで・・そのぉ・・・・・」
「?」
「・・・・からかわれるんだよ。皆と一緒にご飯食べてる事」
「どうしてそれでからかわれるの?」
「・・・・・・えっと」
「つまり、男子のアンタが女子と一緒に食べてる事をからかわれるんでしょ?」
「・・・・・・うん、女々しいヤツだって」
「なにそれ・・」
「あっきれた、そんなこと言う奴ほんとに居るんだ、しかもこんな身近に」
「もしかして・・晶君、私たちともう・・・」
「うんうんッ僕は今のままでいいんだ。言わせたいヤツには言わせておけばいいし、言うのも少数派だから」
「そっかぁ」
「うん、そうなんだ」
「・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「あぁー止め止め、話題を変えましょ!はい、なのは何かない?」
「え、え~っとう~っと・・・」
沈黙に耐えられなかったアリサがなのはに話を振る。
しかし、振られた当人は突然すぎてあたふたして考える内に朝の出来事を思い出した。
「あ、そういえば今日の朝、変な夢見たの」
「どんな夢だったの?」
「なんかね、何処かの林の中で男の子の声が聞こえるの『たすけて』って」
「何処かの林ねぇ・・・見覚えは無かった?」
「うんうんないの。だから、少し不気味で・・・」
「・・・・晶君、何か思い当たる事ない?」
「え、なんで僕なの、すずかちゃん?」
「・・晶君、いつもいろんな晶君自身の夢見てるんでしょ?なのはちゃんの力になってあげられないかなって」
「まあ、そうだけど・・・たまに怪人になってるよ、夢の中で僕」
晶は、不安そうに自身の手を見る。
目に映るのはいつもの小さな手だが、夢の中では度々それが生物の組織が剥きだしの大きな手であることがある。
「だからだよ。不安になる夢を見てるっていうのは一緒でしょ?それに夢に関しての難しい本を読んでたってはやてちゃん言ってたし」
「・・・・はやてのおしゃべりめ」
「ね?」
「・・・いいけど、気休め程度だよ、ほんとに」
「それでもいいよ、なのはちゃんのために」
「・・・うん」
すずかに説得され、アリサと不安そうに話しているなのはに声を掛けた。
「・・・ねえ、なのはちゃん」
「何、晶君?」
「夢ってね、記憶を繋ぎ合わせてできるんだって。だから、以前なのはちゃんに助けを求めた子やドラマとかで見たセリフや風景を繋ぎ合わせたのが、夢に出てきたんじゃないかな?」
「そういうものなの?」
「らしいよ、本に書いてあったから」
「・・・・じゃあ、晶君がいっつもうなされてるのもそのせい?」
「・・・・・・・・・・・うん」
でも、僕のはきっと違うよ。あんな感触、ただTVや本で見て得られるわけないんだ
全てが生々しいのだ、夢の何もかもが。
最たるは、怪物の頭を握り潰す感触、晶が怪人になる際に全身の毛穴等から染み込んで来る何かの感触、腕を食いちぎられる感触・・・・etc。
それを思い出しながら、晶は弁当に入っていた肉を残し蓋を閉じる。
一方で、なのはは彼の言葉に安心したのか表情が明るくなり、彼女らの話題も二転三転と変わっていく。
それにいつものように相槌を打つ晶だが、内心では憂鬱な昼を過ごすのだった。
放課後 16:34
なのはたちが塾のため今日は1人で下校する、晶。
彼は真直ぐに帰宅すると荷物を置き、着替えを済ませとスポーツ飲料入りのペットボトルを手に持つと再び外へ出た。
「いっちに~・・・さんしっ・・・ごうろっくし・・っちはち・・・きゅう~~じゅうっ!」
門前で入念な準備運動しながら今日の行き先を考えていた。
「今日っッはいつもよりはやい・・・からっちょっと遠出しようかっな」
そして、準備運動をしっかりと済ませランニングへと出かけた。
「行って来ます!」
晶のランニングは、とにかく限界まで走る事だった。
もうダメだっという所まで走り続け、そこから5分ほど歩きながらのクールダウン。
その後、また限界まで走り、5分の歩きながらのクールダウン。
それをふらふらになるまで繰り返してから歩いて帰宅する。
とてもではないが、子供どころか大人でさえも無茶だというような内容をいつも欠かさず行っていた。
「はぁはぁはぁはぁ」
晶をそんな無茶に駆り立てるのは、やはり夢だった。
自分や仲間、幼馴染似の2人が光の奔流に飲み込まれ消えていく夢。
胸の内から込み上げてくる見知らぬ想いに突き動かされ今日も晶は走り続ける。
「はっはっ・・んぐはっはっ」
どんどん荒くなっていく息遣い。
ランニングにコースは決まっておらず、晶の気の向くままに走る。
だから、たまに普段人が出入りしないような場所へ辿り着く事もあった。
そう例えば、今日の終点で晶が辿り着いた周囲をビルに囲まれてできた僅かな空き地。
「はっはっはっ・・・はっはっ・・・んぐんぐんぐ・・・・ぷはっ」
残ったスポーツ飲料を仰ぎ飲み、一息をつく晶。
「はぁ~・・ずいぶん・・・・と変なとはぁ~はぁ~こに着いたな」
息を整えながら周囲をぐるりと見渡していると隅にキラリっと輝く何かを見つけ、訝しげに近づきそれを手にした、晶。
「はぁはぁ・・・きれいな石だな・・・・・・・・なのはちゃんにあげたら喜ぶかな?」
ふと昼間のなのはを思い出しそんなことを思った晶は、石をポケットにねじ込みふらふらと帰途へと着くのだった。
つづく