魔導世界に墜ちた規格外品   作:苦朗

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願望石の章 5話

魔導世界に墜ちた規格外品 願望石の章 5話

 

19:46 

 

 塾帰りの小学生たちと何度もすれ違いながら、晶はふらふらの足に力を入れて夜の街を抜ける。

 住宅街に差し当たり限界が近づいてきたのか、よろけて電柱やブロック塀に手をつく回数が増えてきた。

 

「ふぅふぅ・・あともう一踏ん張り・・・」

 

 常ならばすいすい進める道も今の晶には、急な坂を上っているような心地だった。

 それでも、懸命に足を前へ出し続けやっと高町家の門が見えた。

 同時に門にもたれているなのはの姿が目に映る。

 

「晶くん、お帰りなさい」

「ただいま、なのはちゃん・・・待っててくれたの?」

「うん、相変わらず汗でびしょびしょだね」

「まあね・・・それで、ただ出迎えてくれた訳じゃないよね?いつもは中で出迎えてくれるんだから」

「にゃはは・・晶くんは何でもお見通しだね」

「何でもじゃないよ・・・まあでも、なのはちゃんのことならそれなりに分かるようになったかな」

「にゃッなんかその言い方恥ずかしいよぉ」

「そう?」

「うん」

「そっか・・・・・っと脱線脱線。それで何があったの?」

「・・・・あのね今日、塾に行く時―――」

 

 なのはは、晶と校門で分かれた後の出来事を話した。

 アリサが見つけた塾への近道のこと。

 その林道が、朝見た妙な夢に似てたこと。

 そこでケガしたフェレットを見つけたこと。

 

「―――それでね、誰が獣医さんの所から引き取って飼い主さんが見つかるまで世話するかって話になったんだけど・・・」

「ああ、アリサちゃんのところは犬天国で、すずかちゃんちは猫屋敷だよね」

「でしょ?だから、2人の家にフェレットさんは無理だと思うの・・・・それで残ってる家なんだけど、食べ物屋さんだからペットは・・・どうしたらいいと思う?」

「んー・・・なのはちゃんはどうしたいの?」

「私は・・・助けたの私たちだから最後まで面倒みたいなって・・でも、我侭だよね」

「答えを急がないで。そのためにここで待ってたんでしょ?少し考えさせて」

 

 さすがにもう立っているのが辛いのか晶は、門の前に座り込み頭を悩ませ始める。

 なのはもその横にちょこんと座り、彼が何か答えを出してくれるのを待つ。

 だが、なかなか晶は口を開こうとしない。

 1分・・・2分・・・3分・・・・

 だんだん時間が経つにつれ、なのはは諦めようと考え始めた。

 

「・・・・・・・しょ「これならっ」にゃッ!?」

「ん?どうしたのなのはちゃん?」

「えっと・・もしかしていい案が浮かんだの?」

「まあね・・・そのフェレットが引き取りに行くのって明日だったよね?」

「うん、やっぱり急には無理だ「話は最後まで聞いても損はないよ?」・・・うん」

「でね、僕考えたんだけど飲食店っていっても、自宅兼店舗って訳じゃないから絶対ダメって訳じゃないと思うんだ」

「ほんとっ」

「うん、ただし預かってくれる所が見つかるまではって期限を定めておいて、その間に味方を増やせばいいんじゃないかな?桃子さんや美由希さんとかを」

「お兄ちゃんは?」

「難しいんじゃないかなぁ」

「でも、何で期限を?」

「やっぱり急に飼いたいって言っても難しいと思うんだ。でも、ある程度期限を定めることで士郎さんたちも承諾しやすいと思うんだ。まあ、あとはなのはちゃんの訴え次第だけどね」

「ありがとう。すごいね、晶くん。私じゃそんなことまで思いつかなかったよ」

 

 これも夢の影響なのか子供らしからぬ考えを示す晶。

 だが、それに素直に感謝と感心を口にしたなのはは、説得へと意気込みを露わにする。。

 

「私頑張ってみる」

「僕は口出しできないけど、頑張って」

「うん・・・・・はい、掴まって」

「ありがと」

「いっくよぉ・・うんんんっしょっと」

 

 掴み返した晶の手を両手で持ち、力いっぱい引っ張るなのは。 

 

「――ッ!?」

グラッ

「にゃぁっ!?」

「「ッ!?」」

ドサッ

 

 だが、疲れから途中で膝から力が抜けしまった晶は、勢いそのままなのはへ倒れこむ。

 当然、そんな彼を彼女が支えきれるはずもなく2人揃って縺れるように地面へ倒れてしまった。

 

「・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・に・・にゃぁああああぁあ!?晶くん、放して放して!」

「・・うん・・・・・怪我無かった?」

「しょ、晶くんこそ」

「僕は大丈夫。それより僕の汗でなのはちゃんもべたべたでしょ?先にお風呂に入ってきなよ。僕は、この通りまだ膝に力入らないみたいだから」

 

 晶の腕の中からあたふたしながら出たなのはへ彼は、力を入れているのか震える膝を示し勧める。

 

「あ・えっと・・な、なるべく早く出るから晶くんも風引かないうちに入ってね」

「うん」

「お先にっ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もうなのはちゃん行きましたよ」

 

 なのはが玄関に飛び込んでいくのを見届けると呟いた。

 それに応えるようになのはの位置からでは、陰になっている見えづらい場所から恭也が姿を現す。

 

「・・・・・気づいてたのか」

「まあ、なのはちゃんを抱きしめた時、背がゾゾゾッてするいつもの感じがしたんでもしかしたらって」

「そうか。俺もまだまだだな」

「で、どうするんですか?聞いてたんでしょ、なのはちゃんと僕の話」

「最近のお前は、なのは同い年には見えなくなってきたな・・・・・・ああ、俺から父さんに話しておく・・・それはそうと右手見せてみろ」

「ッ」

「なのはならともかく、俺が気づいてないとでも思ったのか?」

「・・・・・」

「やっぱりか・・・・・」

「ッ――ッ」

 

 恭也が手の甲から手首の周辺までを触っていくと晶の顔が苦痛に歪む。

 なのはと縺れる様に倒れた時、彼女の頭と地面の間に咄嗟に右手を滑り込ませたまではよかったのだが、その際に変な落ち方をしたのか右手に違和感を覚えていた晶。

 うまく隠していたつもりだったが、恭矢には通用しなかったようである。

 

「痛みが引くまで素振りは止めておけ」

「でも「あとあと後遺症がでかねん」・・・はい」

「それと、無茶なランニングも止めておけ。今回は、この程度で済んだが、事故の元だぞ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・考えておきます」

 

 今度は明確に答えることはなかった。

 そして夕飯時、なのはの訴えにより、いろいろと条件は付いたがフェレットを高町家で世話する事となった。

 

 

23:43 高町家

 

 

「ふぅーーふぅーーーッ!?」

 

 今日も夢見が悪いのか荒い息で寝息と酷い汗をかいている晶。

 

「―――――はッ!?うっぷッ」

 

 突如、目を見開くとごみ箱へ飛びつき胃の中身を戻した。

 

「はぁーはぁー・・なんで、今更新しい怪物を見たぐらいで――おぇッ」

 

 脳裏にその姿を思い浮かべただけで気分が悪くなる、晶。

 その姿は、体毛に覆われた巨躯に虫に近い顔、背中に4本の触腕があるという特徴があるものの、別段今まで見てきた怪物と大差があまりない姿にもかかわらず。

 とりあえず、出る物が無くなり落ち着くと洗面所にうがいと顔を洗いに向かった。

 そして、うがいの最中妙な物音を聞いた。

 

「がらがら――ペッそろそろ寝「ガチャン」?」

 

 晶は、洗面所を静かに出ると足音を殺し音がした方へ向かい誰も居ない事を確認する。

 

「・・・・・・・・何も無いよな」

 

 さらに明かりを付けて玄関周りを見たが何も無かった。

 結局、風か空耳だと思い靴を片付けようとした時あることに気づいた。

 

「ッなのはちゃん靴がない・・・・そういえば、玄関の鍵が開いてたッ」

 

 晶は、ようやくさっきの物音の正体に気づき恭也たちを起こしに走った。

 

つづく

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