アヴェンジ・アンド・リベンジ 作:ジェームズ・ニンジャ・ボンド
「ヌゥ...」
「起きたかね?」
頭上から聞こえるのは仇の声...そう、ニンジャだ!
セイジが安らぎフートンから飛び起きると、キャプテン・ヤマトと名乗ったニンジャがチャブの方へ来いとばかりに手招きした。
「何故殺さなかった。情けをかけたつもりか?ニンジャの屑の分際で!」
「まぁまて。消耗しているだろう、先ずはスシだ。オリヅメにしてもらった」
「...もらおうか」
バイオバンブーの葉で包まれた上品なオリヅメの中にはタマゴ・スシやトビッコ・スシなどの温くなっても味の落ちないスシが詰められていた。先ずは、タマゴ。セイジのニンジャとしての回復力がスシによって高まるのが感じられた。スシは万能食なのだ。
「食べながらで良いんだが、君の家族を襲ったのは一体どこのニンジャなんだ?そもそもそんなにニンジャがいるのか?」
「...いつ頃からかは分からないんだが、ニンジャソウルが憑依する現象が頻発するようになったらしい。アンタがどうやってニンジャになったかは知らないけどな、今のニンジャは邪悪なソウル憑依者さ。そして僕の家族を襲ったのはソウカイヤ。クロスカタナのエンブレムのシンジケートだ。奴等はニンジャを集めて組織し、横暴の限りを尽くしていた」
「尽くしていた?」
「そうだ。我らの赤黒の復讐者の登場さ。ニンジャどもは次々と彼に狩り殺されていった」
セイジの言葉の通り、ソウカイヤは弱体化していた。赤黒の復讐者、ニンジャスレイヤーによって。それでも強大なヤクザクランを幾つも従えているのだからニンジャのパワというものが伺い知れる。
「その復讐者の名は?」
「・・・ニンジャスレイヤー」
ニンジャを殺す者、ニンジャスレイヤー。そのコトダマに潜む圧倒的カラテの気配にキャプテン・ヤマトは目を見開いた。コトダマからして圧倒的な気配を放つ復讐者。一体いかほどの暴虐と理不尽が彼を襲ったのか。何故それを正義は野放しにしているのか。守護を誓った天壌無窮の国体と、何より臣民をおほみたからとして慈しむあの御方の御心に背く存在が数多く蠢いていることを、キャプテンの鍛えられた軍人精神は許容することが出来なかった。
「君は、ニンジャスレイヤーになりたいんだな」
セイジは一瞬沈黙し、そして激発した。
「そうだ!僕はニンジャスレイヤーになりたい!家族を殺したニンジャの屑を皆殺しにしたい!ニンジャ殺すべし!ニンジャ殺すべし!」
セイジの身体から超自然の炎が吹き出て天井を焦がした。キャプテン・ヤマトの行動は早かった。瞬く間にエンハンスメント・ジツを身体に纏い、セイジをジュージツ奥義、ヨンノジ・ガタメにて制圧したのだ。桜色の燐光がセイジの身体から吹き出す超自然の炎の包み込み鎮火していく。直ぐにセイジは指一本動かせなくなった。
「落ち着け。君がニンジャスレイヤーの影を追っていることは理解できた。そして彼が行っている事は、本来的には帝国陸軍最後の軍人であり、唯一のニンジャ兵士である私の職務のはずだった。超人への戦術的対処は私の任務だ・・・すまんな、本当にすまん」
「うるさい!離せ!僕に触るな!僕はニンジャスレイヤーだ!」
聞き分けのない子供めいてセイジが叫ぶ。信じてきたモノを崩されるのを恐れるように、身体を動かせないかわりとばかりにセイジは同じ内容を絶叫し続けた。
「いいかい、君はニンジャスレイヤーそのものにはなれない」
「ヤメロー!ヤメロー!」
完全に制圧され、セイジは泣き叫ぶことしか出来ない。
「いいや、ぼんやりとした影を追い、そのものになろうとする事は君にとっても周囲の人にとっても不幸でしかない。その試みは失敗に終わり、君は致命的なダメージを負うだろう」
「ヤメロー!僕の周囲に人なんていない!僕はニンジャスレイヤーだ!ニンジャスレイヤーは孤独な復讐者だ!一人でニンジャを殺す!寄ってくる奴はニンジャの力と僕の金に引き寄せられただけの屑だ!ニンジャと同罪だ!」
「イヤーッ!修正イヤーッ!」「グワーッ!」
セイジの叫びを聞くやいなやキャプテンがヨンノジ・ガタメを解き、セイジの胸ぐらを掴み上げて二度三度往復ビンタを張った。
「何をする!」
「ダマラッシェー!」
セイジは竦み上がった。戦場で流した血が、そのままキャプテン・ヤマトのカラテに顕れているのだ。ニンジャ特有のパワワードのシャウトには常人を失禁させるだけの力がある。では、キャプテンのカラテが込められたシャウトにはどれほどの力が?
カラテ鍛練の足りないニンジャやニュービーニンジャにNRS(一種の恐慌状態)を引き起こさせるレベルのパワ。その答えがそこにあった。
「アイエェェ!?」
「キンカク・テンプルの高みに興味は無いか?」
「アイエ?」
「本当にニンジャスレイヤーは孤独なだけの復讐者なのか?君の周りの日本人は屑ばかりかね?」
「・・・・・・」
「来たまえ、青年。小官が君に、美しい我が国国体理論の実践を見せよう」
「・・・一体何を?」
「カラテ、そしてチャドーだ」
草木も眠るウシミツ・アワー、安宿付近の空き地は壮絶なイクサの開始点と化す!付近に人影はなく、飲み屋街の喧騒もカラテを構えて対峙する二人には関わりのないこと。これはインストラクションであり、その世界にはセイジとキャプテンの二人だけしかいない!
「そんなオチョコで何をするつもりだ」
意外!カラテと言いながらキャプテンが取り出したるは合金オチョコ!これで一体何をしようというのか!セイジは訝しんだ。
ところで読者の皆さまの中にカラテ段位が30段を超える方はいらっしゃるだろうか?もし、居るとすればそれはニンジャにあらぬ人の身においてはかなりのタツジンと言えるだろう!スゴイ!
そしてキャプテンの意図も推し測る事が出来るだろう。そう、これからキャプテンがやろうとしている事、それはオチョコガードだ!
オチョコガードとは平安時代の貴族ニンジャ、コシキベ・ニンジャとイミノ・ニンジャのハイク会の逸話で有名なカラテ奥義である。
ある時、ハイクのタツジンとして幼少のみぎりより名高いコシキベ・ニンジャがソガ・ニンジャ主催のハイク会に招かれた。コシキベ・ニンジャはハイクのタツジンではあるが、彼女のマスターであるイズミ・ニンジャもまたハイクのタツジンであった事から、コシキベ・ニンジャをマスター頼りのサンシタ、ないしは自身でハイクを作ったことはないのでは?という、ボブめいた疑いをかける者もいた。
そして、ソガ・ニンジャはそこにつけこみ物理・論理両面でコシキベ・ニンジャを陥れようと謀をめぐらしていたのだ!
「コシキベ・ニンジャ=サン、イズミ・ニンジャ=サンからオリガミメールはかえってきたかな?」
ナムサン!なんたる悪意に満ちた言葉か!ソガ・ニンジャはさも酔ったとばかりに笑顔で訊ねるが、ここでコシキベ・ニンジャが怒りを顕にすればそれはソガ・ニンジャの思うつぼ!酒の席の冗談を真に受け、主宰たるソガ・ニンジャへシツレイをはたらいたとしてケジメを強いられるだろう。コシキベ・ニンジャの思考力と忍耐力を奪い、自身の逃道を作るためにサケを用意する。狡猾な策略であった。
そして今まで以上のクオリティのハイクを咄嗟に返せなくてもコシキベ・ニンジャの名誉は地に落ちるだろう!おぉ、ナムアミダブツ!美しくたおやかなコシキベ・ニンジャはこのままソガ・ニンジャという政治的怪物の餌食になってしまうのか!?
いや、そうはならなかった。
「オホエ・ヤマ 実際遠い アマノ・ブリッジ」
ゴウランガ!シキブ!周囲のニンジャの嘲笑や下卑た笑い、奥ゆかしくないアトモスフィアが一瞬にして霧散し、沈黙の帳が下りた。師が庵を構えているオホエ・ヤマは実際遠く、私は会いにいくことも出来ない。あの美しいアマノ・ブリッジが懐かしいことだなぁ。という想いがひしひしと伝わってくるヤバイ級の返歌であった。ソガ派閥のニンジャの中にも思わず落涙するものあり!
「トウイ・・・」
観念したようにソガ・ニンジャが呟く。
「ソクミョ!」
それを聴き逃さずにイミノ・ニンジャが拍手を送る。今、この豪華絢爛な茶室のアトモスフィアを掌握しているのはコシキベ・ニンジャだ。彼女は先陣を切ってソクミョ・コールを入れてくれたイミノ・ニンジャに黙礼した。
「いやコシキベ・ニンジャ=サン、見事だったぞ!あれほど素晴らしいハイクを詠まれては後に続く者が辛かろう。サケ樽とスシをもて!」
ソガ・ニンジャは瞬く間に主導権を取り戻した。ここからはブレイコという名前のキリングフィールドだ。コシキベ・ニンジャの味方はイミノ・ニンジャのみ。しかし彼もシ・ニンジャの名代として参加している以上、ウカツな事は出来ない。広間の下座に控えていたマスターイタマエが素晴らしい手際でスシを握り、美しく豊満なオイラン達が樽からサケを汲み取り、ニンジャ達に供する。
エンモ・タケナワ。酒の席が温まってきたことを示す言葉であり、大抵はその会の中心人物がそのコールを発する。この場合はソガ・ニンジャがこのコールを発することになる。
「エンモ・タケナワ!」
「イヨーッ!」
「イヨーッ!」
トントントトン!トントントトン、トントントトン・・・
中庭に屈強なスモトリ・ウォリアー達が現れ、小気味良いタイコの音を響かせる。
「サケの肴に剣舞でも如何でしょうか?」
言葉とともに不敵な笑みを浮かべるのは邪悪なニンジャ、キャリバーンである。 彼は常人の三倍を優に超える筋力、超自然の金属でツルギを産み出すジツで名を知られる、ツルギ・ニンジャクランのニンジャだ。
「おぉ、これはいい!」
キャリバーンはソガ・ニンジャに一礼すると即座にイアイ斬撃を繰り出す。そのどれもがカラテに満ちた強力なものだ。コシキベ・ニンジャは気付いた、剣先が徐々に自分に近付いてきていることに。アブナイ!ソガ・ニンジャの策略だ!
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
おぉ・・・ブッダ!このまま美しくたおやかなコシキベ・ニンジャはボーリングのピンめいて首をはねられてしまうのか。
そうはならなかった。
「イヤーッ!」
「ヌゥーッ!?」
必殺の突きが繰り出される瞬間、キャリバーンの剣先に現れたるはオチョコ!オチョコである!
「オットット!酔ってしまいました!」
欺瞞!イミノ・ニンジャがタツジンそのもののワザマエでコシキベ・ニンジャを守ったのだ。
このように平安時代より、オチョコガードは受け継がれてきたのだ。そしてサクラ色の燐光、キャプテンはそのイミノ・ニンジャの流れをくむニンジャ存在なのだ。
「どこからでもかかってきたまえ」
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
遠慮容赦の無いセイジのカラテストレート連打!しかしキャプテンが手に持ったオチョコにいなされてしまう!
「何故だ!何故オチョコなんかで!?」
「カラテ、そしてチャドーさ」
イミノ・ニンジャを彷彿とさせる笑みでキャプテン・ヤマトは応えた。