そもそも彼、カオルは元々は、“この世界の住人”ではなかった。
ごく普通の家庭に生まれ、ポケモンゲームにはまり、廃人と呼ばれる人種になったりもしたが、ごく普通の人生を歩んでいたのだ。
それなのに、何時もの様に朝起きたら、いつの間にか“この世界”に転がり込んでいた。
しかも、森の中にである。
当然、カオルは混乱した。
家の中にいたのに何故森にいるのだろうかとか、馴染みがあり馴染みのないポケモン達が当然のようにいる事だとか、自分が十歳そこそこに若返っている事とか上げたらきりがなかったが、漠然とした確信が一つだけあった。
もう、元の世界には帰れない。
そのあとの事は正直に言うとカオルはよく覚えていない。
水場や食料の確保、危険なポケモンが居座る縄張りの把握等を行いながら、一週間かけて森を抜けた。
森を抜けた当初は人工物の建物に安堵し、街に入ろうとした時、ふと思った。
カオルにとってこの世界には当然ながら身分証明となる物が無い。
そんな人間が助けを求めても、行き場所等到底ない。
ジュンサー等に行けば、孤児として保護されるかもしれないが、果たしてこの世界の孤児の扱いはどうなのか想像もつかない。ゲームやアニメの中ではそんな事は当然ながら描かれていないのだから。
そもそも、話を信じてくれるだろうか。
“違う世界から来たんです。この世界では身分証明もできませんが助けてください”なんて、どう考えても子供の戯言と思い、相手にしてくれない。仮に話を偽ったとしても、身分を証明できなければ、偽名で話をして大人をからかっていると思われても仕方ないのである。
カオルはここにきて唐突に理解した。
この世界はカオルの知る世界ではない。見た目は同じでも自分はこの世界の誰とも違う“たった一人”である事に。
カオルは岩陰から目の前に繰り広げられているポケモンバトルの様子を見ていた。
ここまで案内した男はハラハラしながらカオルの顔色を窺っている。
随分と人の顔を窺う腰の低い男だと思いながら赤いモンスターボールの帽子をかぶった新人トレーナーと思わしき男の子が操るポケモンに翻弄されながら無様に負けていく下っ端達を見て目を細める。
カオルは帰ったら下っ端の教育を見直す案を作り提出しようと決め、仕事が増えた事にうんざりしながら赤と白のモンスターボールからポケモンを出し、一つの命令を出すと岩陰から離れ、赤い帽子をかぶった男の子や下っ端達がいるポケモンバトルにはもってこいの広い場所にでる。
バトルは丁度終わり、何やら下っ端達がいちゃもんをつけているらしい。
赤い帽子をかぶった男の子は強かにも肩に乗るギザギザのしっぽを持つ黄色いネズミ、ピカチュウにほとばしる電撃を見せながらこの山、お月見山から出ていくように言っている。
カオルはその男の子の様子に内心で苦笑しながら、ゆっくりと近づく。
「随分と正義感あふれる子だね。よっぽど自分に自信があるのかな」
カオルが声をかけると男の子は怪しげにカオルを見る。
逆に下っ端達は見事に固まり、ギギギギッ、と音が出そうな動きでカオルの方へと振り向いた。
カオルはなるべく穏やかな表情を保ちながら優しく話しかける。
「随分と愉快なポケモンバトルだったね、君達」
「カ、カオル様、何時御出でに?」
「さあ、君のズバットが彼のヒトカゲに見事やられているのは見たよ」
下っ端達は顔を真っ青にし、ひどく混乱しているようだ。
カオルはその様子に心の中で見下しつつ、微笑の仮面をかぶり、男の子を観察する。
赤いモンスターボールの帽子、茶色に近い髪と目、肩にピカチュウ。
間違いなくカントー地方の男主人公にして頂点にして原点なんていわれている、公式レッドなのだが、薄くなりつつある記憶からパーティーメンバーがどうであったかは忘れてしまったが故にどう対応するか考える。
話し合いで解決するとは思っていないので、多少強引なやり方でも構わないだろう。
こちらを油断なく警戒してくるレッドを警戒心の高い猫が威嚇している様で微笑ましく思いながら、下っ端達に下がるように言う。
「君達は先に帰り給え。私はこの男の子と少し話がしたいんだ」
「し、しかし、このガキは」
「……なんだい、私の言う事が聞けないと」
少し声を低くし言うと、下っ端達に言うとビックッ!という吹き出しが出たんじゃないかというくらいに体を飛び上がらせた後、すぐに滅相もありません!と言ってカオルが出てきた通りを使い、急いで離れていく。自分を案内した男も彼らの護衛の為に離れさせ(彼らのポケモンはレッドに戦闘不能にされたから)、改めて、レッドに向き合う。
先ほどのポケモンバトルを見るとまだまだ未熟だが、このままバトルの実戦経験を積むと強くなる。そんな気がして、さすが主人公とカオルにしては珍しくほめる。
「そんなに警戒しないでほしいな、取って食いはしないさ」
「あいつ等の仲間である奴にそれは無理」
レッドが吐き捨てるように言うと、この時点で随分自分が所属する、ロケット団が嫌われた事に世間一般的ならその反応も仕方ないと諦める。
やれやれ、とでもいうように首をわずかに縦に振る動作をすると、レッドは少し怒ったような顔をし、ピカチュウは主人の感情をくみ取って、今にもカオルに飛びかかってきそうだ。
まだまだ子供らしい感情を見せるレッドに青いなと思いつつ、足元で自然な動作で警戒し、攻撃態勢に入りつつあるブラッキーの前に足を出し、攻撃するなと合図を出す。
とたんにブラッキーは攻撃態勢から警戒する程度に落としたが、油断なくレッドとピカチュウを見ている。
カオルは“そろそろか”と思い、口を開く。
「君の正義感は評価するけれど、それは時として無謀ともいうんだよ」
カオルがそう言うとレッドの体が突然、立ちくらみを起こしたかのように体がふらついた。
何とか踏みとどまっているようだが、顔が真っ青だ。肩に乗っているピカチュウは心配そうに鳴いた。
レッドがカオルに問いかける様に目線を投げてきたのを満足そうに笑みを浮かべながらその問いかけに答える。
「ゲンガーと言うポケモンを知っているかい?ゴースの最終進化形なんだけどね。人の影に入り込んで体温を少しずつ奪って殺そうとするんだ」
嗚呼、大丈夫。殺しはしないよと声をかけ、レッドに近づくが、ピカチュウが動いた。
カオルに電光石火を仕掛けたのだ。勿論、そんな事を指示していないレッドは驚愕の表情を浮かべるが、カオルは動じない。主人を思うポケモンはこれくらいの事は平気でする。
カオルの前に出たブラッキーは難なく守るでカオルを守り、ピカチュウにイカサマを仕掛ける。
イカサマにより吹っ飛んだピカチュウに追撃でどくどくを仕掛けたブラッキーを視界に入れつつ、レッドにゆっくりと近づき、耳元で囁く。
「今回は見逃してあげよう。次は無いと思い給え」
カオルがレッドの耳元から顔をはなすと丁度ピカチュウとブラッキーの戦闘が終わったらしく、ブラッキーが少し不満そうにしながら帰ってきた。
レベル差が激しく相手にならなかったらしい。ピカチュウはぐったりとした様子でゴツゴツとした岩場に倒れている。明らかに戦闘不能状態だった。
「ゲンガー、戻り給え」
声をかけてゲンガーをレッドの影から出てきてもらい、ボタンを押し、掌大になったモンスターボールをゲンガーに向けると、モンスターボール特有の赤い光線がゲンガーに当たり、包み込んでモンスターボールへと入っていく。
何度見てもオーバーテクノロジーだと思いつつ、モンスターボールを小さくし、腰のホルダーに装着する。
カオルはレッドに背を向け、その場を離れた。
レッドには先程のポケモンバトルで殆ど傷ついていないヒトカゲがいたのを知っているので、野生ポケモンに襲われても大丈夫たという事はわかっていたし、レッド自身はあと数分もすれば体力が回復する程度にとどめるようゲンガーにきつく言い渡している為、問題はない。
お月見山から下山しながらこれからの一年間は楽しくなるな、と満月を見ながらカオルは思った。
カオルの足取りは軽かった。
登場した我が家のかわいい子達
ブラッキー
技構成
願い事/イカサマ/どくどく/守る
特性
精神力
性格
穏やか
持ち物
食べ残し
解説
願い事ブラッキーです。
ブラッキーの強さは耐久力です。特性はシンクロだとこっちの毒が入れられなくなる可能性があるので精神力一択にしています。ガルーラとトゲッキスの怯みゲーは許しません。
願い事は発動までに一ターンかかってしまうので守るで攻撃をしのぎます。シングルでルカリオ等のフェイントを覚えたポケモンが出てきた場合は体力的に問題がなければ願い事orどくどくをした後に交代するか、即座に交代する事をお勧めします。
ゲンガー
技構成
滅びの歌/身代わり/ヘドロ爆弾/祟り目
特性
ふゆう
性格
臆病
持ち物
黒いヘドロ
解説
ブラッキーの弱点である格闘、虫、フェアリーをすべて半減以下にし、ゲンガーの弱点であるエスパーをブラッキーは無効にでき、悪も半減にします。我が家のブラッキーの相棒。
またゲンガーはHPが低く、黒いヘドロを持たせない限り回復手段を持たないポケモンの為、ねがいごとサポートとの相性は抜群。
ブラッキーの苦手な身代わりもち耐久にも滅びの歌によって対抗できます。
私はヘドロゲンガーを参考に育てました。