迷い人   作:どうも、人間失格です

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活動報告の方に書いていましたが、仕事の都合で書けませんでした。
やっと、ひと段落したので投稿を再開します。


エスパー少女と彼

 

 

 

 不覚だわ。

 

 

 

 黒髪ロングのアジアンテイストな赤い服を着た十代後半位の少女は唇を噛み締めながらそう思った。

 カントー地方最大のマフィアであるロケット団がヤマブキシティを襲ったのは、少女の記憶が正しければおよそ一週間前。

 少女はヤマブキシティのジムリーダーの務めを果たす為、一般人の避難誘導をしながらロケット団を追い払おうと戦った。

 だが、ロケット団は町の外へとつながるゲートを封鎖して誰も町の外へ出れないようにし、用意周到にも電話線を切ったり、妨害電波を流し外との連絡手段を断った後に襲ってきた様で、味方の統制も取れず、町中大混乱に陥ってしまった。

 

 幸い電気や水道等は止められていなかったので何とか、ポケモンセンターに籠城してポケモンを回復したり、ジョーイに手当てを受けて残っていたジュンサー達と抵抗したのだが、つい三日前に旅をしていた時から育てていた一番強いポケモン達を持っていたというのに、不覚にも敗北してしまった。

 

 黒い服を着た自分より年下の少年によって。

 

 

 

 そこから、ポケモンセンターが占拠されるのも早かった。

戦闘不能になったポケモン達を奪われ、連絡手段となる物、武器となる物等も奪われて一人必要最低限の生活が出来るであろう部屋に軟禁された少女、ナツメは悔しさでいっぱいだった。

 ヤマブキジムのジムリーダーでありながらロケット団と言う悪の組織にポケモンも奪われ、守るべきヤマブキシティも好き勝手にされている。

 

 そして、ナツメはロケット団のこの襲撃を予知できなかったのだ。

 

 今まで築き上げてきたエスパー少女並びにジムリーダーとしてのプライドが粉々に砕かれるのも無理はなかった。

 

 逃げようかと思ったが、この部屋には窓がない為、唯一の出入りができるところが扉一つなのだが、扉の外に見張りが最低二人以上いるようであったし、廊下を三十分毎に一人巡回がある。しかも、見張りの世間話を聞く限り、武装もしているようだ。

 長方形の換気口はあるのだが、小さなポケモンが通れるのがやっとの大きさだ。

 とてもナツメが通れそうな大きさではない。

 八方塞がりな状況で、時間ばかりが過ぎていく。

 

 

 

 カツカツ、と高そうな靴の音が見張りがいる扉の外の廊下から聞こえた。

 ナツメは時計を確認すると、まだ巡回の時間ではない事に気づき、怪訝な顔をする。

 未来予知をして予測しようとしても調子が悪いのか全くと言っていい程、未来のビジョンが見え無い。

 扉の外の見張りが少し動揺しているのか、声がひっくり返っている様に聞こえた。

 

 一体どうしたというのだろうかとナツメが思っていた時、ガチャ、と扉が開いた。

 ナツメが扉の方へ顔を向けると、そこには三日前にナツメを完膚なきまでに叩き潰した黒服を着た少年がいた。

 その時、ナツメは違和感を感じた。

 

 

 

 どうしてこの少年の未来のビジョンが見れないのだろうと。

 

 

 

 最初に会った時は速攻でポケモンバトルになった為、バトルに集中して見れなかったのかとも思ったが、直接会った人は必ずと言っていいほど何かしらの未来が見えるのだが、この少年からは何も見えなかったのだ。

 ナツメは得体のしれない少年に戸惑ったが、その考えを一端横に置き、少年を睨み付けたが、少年はさして気にしていないようであった。横にとぼけ顔が特徴的なピンクと白のボディにしっぽがヤドカリの様な貝がついているポケモン、ヤドランを連れて入ってきた少年は部屋にある椅子に座った。

 短い脚でのそのそと少年の横にヤドランが付いたタイミングで少年は口を開いた。

 

 

 

 「ヤマブキシティは制圧したよ。妙な事は考えないほうがいい」

 

 「……何のことかしら」

 

 「まあ、私の気のせいだという事にしておくよ。後、君のポケモンを部下がくすねようとしてね。嗚呼、安心し給え。君のポケモンは無事だ。その部下も“処分”したよ。私には必要のないものだから」

 

 

 

 ポケモンが盗まれていない事に安堵したが、ロケット団の一人である少年の言葉を信じてはならないと気づき、安心なんてできない、と言ったナツメに少年はそうだろうねと平然と言った事にナツメはさらに苛立つがぐッとこらえる。

 ナツメは何もできない今、少しでも情報がほしいのだ。それにより、この状況を打破できるかもしれないからである。

 この少年がロケット団の中で地位の高い人物であるという事は他のロケット団団員を見ていればわかる。故に、上手く聞き出そうとナツメは考えていた。

 

 

 

 一方、カオルは警戒しているナツメを見ながら、この状況に陥っても諦めないところはジムリーダーとして素晴らしい心がけだが、もはや詰んでいる状況であるという事には気づいていない様子に内心でジムリーダーとはこんなものかと冷ややかな目で見ながら思っていた。

 

 理解していないのであれば、理解させればいいと思い直し、ナツメにとってはある意味で最悪の選択をさせるために話を進める。

 

 

 

 「ナツメさん、取引をしよう。警察を利用してヤマブキシティからロケット団をうまく誘導して追い出してあげる」

 

 「な!?」

 

 「その代り、貴女が持っているであろう私が欲しい情報を渡してほしい」

 

 

 

 穏やかな表情で告げる少年にナツメは混乱した。

 それは少年にとってロケット団を裏切るに等しい行為であると思ったからだ。

 

 

 

 この少年は組織を裏切るというの?それほどその情報が欲しいのかしら。

 

 

 

 ナツメは使えると思った。

 少年が求めている情報が何かはわからないが、ヤマブキシティの人々とポケモン達を守れるならば、それを利用し、嘘の情報を伝えればいいと思ったその時だった。

 ナツメの足元に向かって蛇の様に蛇行しながら黄色い光が落ちた。

 

 少年の横にいるヤドランが突如、ナツメの足元に電磁波を放ったのだ。

 

 ナツメはぎょっとした顔でヤドランを見つめる。

 突然、電磁波を放たれたことももちろん驚いたが、タイミング的にまるで、

 

 

 

 「説明し忘れていたね。知っていると思うけど、ヤドランは水とエスパータイプ。エスパーポケモンは人の心を読んだりするだろう?特にこの子はヤドランの種族の中でも人の心に敏感な方でね。私に嘘をつく人には今の様に電磁波を放つんだ。だから、私に嘘をつかない方がいいよ」

 

 

 

 ナツメは最初、ヤドランを連れているのはこちらが暴れた時の為だと思っていたが、それだけではなくこの様に嘘をつかれているか否かを確かめる為でもあると今更ながら気づいた。

 これでは、ナツメの考えは筒抜けに等しい。

 

 ナツメが唇を噛み締めたところを見たカオルは甘い考えだと思った。

 カオルは先程、ヤドランを使わずともナツメの顔の変化で考えが手に取るように分かった。

 だが、あえてヤドランを使ったのはこちらが嘘を見抜いているという事を知らせ、かなわないという事を知らしめる為である。

 他にも言葉で少しずつねじ伏せる事は出来たが、それをしなかったのは単純にそこまでナツメに労力と時間を割きたくなかったのだ。

 カオルは対抗手段を思いつかれる前にナツメにたたみかける様に話す。

 

 

 

 「私はね、ボスにこのヤマブキシティの全権を任されているんだ」

 

 「!」

 

 「今更分かったのかな?私の言葉一つで()()()()()()()()()()()()()()()()。何ならここに誰かを連れてきて殺してあげようか」

 

 

 

 ナツメは言いようのない恐怖が足元から上へと昇ってくるような気がした。

 それは、ただ単に少年の言葉で自分の身の振り方を思ってではない。

 

 最初に少年に感じた違和感が再び、沸き上がる。

 得体のしれない未知の生物にでもあったかのようで、ただひたすらに恐ろしかった。

 そして気づく、拒否権の無い名ばかりの取引である事に。

 

 カオルは穏やか笑みを消して、無表情で話を続ける。

 

 

 

 「誰かを殺されたくなければ、話してくれないかい?貴女が知っているミュウツーの話を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カオルはナツメの元を去った後、ヤドランをモンスターボールに戻し、一時的に拠点としているシルフカンパニー社へと足を向けながら、ナツメから得たミュウツーの情報を整理する。

 殆どはカオルが元々知っている情報ばかりであったが、フジ老人がミュウツーの居場所を知っているようだという話は初めて知た事だった。

 ミュウツーを捕まえる場所を忘れてしまったが故にこの様な回りくどい事をしてしまっている自覚はあるが、自業自得である為、何とも言えない。

 

 フジ老人の事はミュウツーの生みの親として知っていたが、まさか居場所まで知っているとは思いもしなかった。

 ナツメの情報によるとシオンタウンに住んでいるらしい。

 

 

 

 「カオル様」

 

 

 

 カオルがシルフカンパニーに入ると、ランスが急いだ様子で駆け寄ってくる。

 周りをよく見ると、どことなく慌ただしく感じた。

 近寄ってきたランスにカオルは問いかける。

 

 

 

 「何かあったのかい?」

 

 「それが、本部が襲撃され、現在壊滅状態だという知らせが届いています」

 

 

 

 ランスからの報告にカオルはふと思い出した。

 主人公、レッドのロケット団本部襲撃事件だと。

 

 

 

 「ボスは無事かい?」

 

 「無事にお逃げになられたようです」

 

 「他の幹部と本部に残されていた資料や権利書は?」

 

 「アポロ様とアテナ様も逃げ切ったようです。資料や権利書は一部を除いて持ち出すことに成功しました」

 

 

 

 それならいいよ、とランスの言葉に返事をして、思ったよりも被害が出ていない事に安堵する。

 本部は今、警察が捜索に入っているようで近づくことすら難しいらしい。

 カオルはそんなんことよりもレッドの行き先が気になった。

 もしも、ヤマブキシティに向かう為に、シオンタウンに向かうのであれば、鉢合わせる可能性がある。そうなると絶対に邪魔をしてくるだろうという事は予測できた。

 カオルは明日にフジ老人に会いに行こうと思っていたが、今から行くことに決めた。

 

 ランスに適当に何人か下っ端を今すぐに集める事と、テレポートかヘリコプターを用意する様に指示すると、ランスはすぐさま動いてくれた。

 数十分で下っ端数名と貨物用の大型ヘリコプターを用意してくれた。

 カオルはランスにヤマブキシティを任せ、下っ端数名とヘリコプターに乗り込んだ。

 

 

 

 小さくなるヤマブキシティを見ながら、何かが急激に動くような気がした。

 

 

 




登場した我が家のかわいい子達パート2

ヤドラン

技構成
サイコキネシス / 大文字 / 冷凍ビーム / 電磁波

特性
再生力

性格
図太い

持ち物
ゴツゴツメット

解説
ごつめヤドランです。
格闘タイプ対策です。今の格闘ポケモンの中でも使用率が一番高いルカリオにも強いです。
ヤドランは特殊耐久もそこそこにはあるので、特殊ルカリオ相手にもある程度役割を持てます。具体的には電磁波を撒く程度。メガルカリオから素早さを奪えば、相当相手をしやすくなります。
またバシャーモにも強く、バシャーモガルーラのバトンタッチ構築に対して、バトンタッチのタイミングで電磁波を入れることにより、ガルーラに対してブラッキーが上からイカサマを入れることができるようになります。
 性格はアタッカーなら冷静or控えめの方がいいのと思いますが、私は防御面を強化したいので図太いに。

※今更ですが、赤い彼と黒い彼のあとがきで書いたゲンガーの技構成ですが、あれはメガゲンガーの技構成でした。済みません。
 正確にはシャドーボール/身代わり/金縛り/鬼火です。
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