それと、『彼』と『彼女』が登場します。
~~前回までのあらすじ~~
新たに仲間となったクリスと共にノイズを撃破した喜びも
つかの間。リディアンがノイズに襲撃され、そんな中で
了子がフィーネとしての素顔を現した。月を破壊し、人類を
一つにした上で支配しようとするフィーネを止めるべく
立ち向かう響たち4人。
そんな中、クリスはカ・ディンギルを止めるべく絶唱を
放つ。しかし、彼女は重傷を負った上に、高高度から
地面に叩きつけられてしまう。それを見た響と明日夢の
絶叫が戦いの中で響くのだった。
『ピィッ!』
『ウホッ!』
『ワウッ!』
落下するクリスを見て、後ろで待機していたディスクたちが
慌てて彼女の元へと向かって移動を開始した。
響「あ、あぁ、あっ」
ショックで、地面に膝を、手を突き嗚咽を漏らす響。
明日夢「クリス、ちゃん」
そして明日夢も、ヨロヨロと森へと、足を進めてしまう。
響「そんな。折角、仲良くなれたのに……。
こんなの、嫌だよ」
涙を浮かべ、弱々しく呟く響。
ギュッと拳を握りしめながら、涙を流し、思いを独白する響。
その隣では、明日夢や翼が、呆然と立ち尽くしていた。二人とも、
響に掛ける言葉が無いからだ。
と、その時。
フィーネ「自分を殺して月への直撃を阻止したか」
近くの瓦礫の上に立つフィーネが、呟く。そして……。
「はっ、無駄な事を」
その呟きが、侮辱が、響の中の『獣』を呼び覚ましてしまう。
「見た夢も叶えられないとは、とんだグズだなぁ」
その言葉一つ一つが、響の堪忍袋を、獣を抑え込んでいた
理性の糸を着実に、少しずつ断ち切って行く。同じように……。
翼「嗤ったか?命を燃やして大切な者を守り抜く事を、
お前は無駄とせせら笑ったか!?」
明日夢「………!!!」
『ギュッ!!』
かつて、共に戦い今は隣に居なくとも、同じ思いで今も戦い
続けている盟友の姿を、一度は命を掛けて唄を歌おうとした
盟友の姿を侮辱されたかのような気分に、翼も憤る。
明日夢も、声にならない怒りをその仮面の下で燃やす。
剣を構える翼と、烈火剣を両手で握りしめ構える明日夢。
だが、その時。
響「それが……」
翼・明「「ッ!」」
どす黒い。まさにそんな言葉が似あう、いや、似合ってしまうような
響の声に、二人の背筋が一瞬凍る。
響「夢ごと命を握りつぶした奴の言う事カァァァァァァッ!!!」
そして、全身を黒く染め血のように赤くなった響が、『吠えた』。
「ヴヴヴヴヴヴヴヴッ!!」
暴走を始めるかの如く、うめき声を上げる響。それはもはや、
歌で戦うシンフォギアにあらず。
言の葉を交わす人間にあらず。
文字通りの、『獣』。
そしてフィーネは語る。
融合したガングニールによる体組織への浸食。このままでは
響がガングニールに呑まれ、人ではなくなる。と。
明日夢「ッ!響ちゃん!響ちゃん!しっかりするんだ響ちゃん!」
必死に呼びかける明日夢。だが……。
響「ヴァァァァァァァァァァァァッ!!」
獣の如くフィーネに跳躍しとびかかる響。
攻撃と防御がぶつかった衝撃が周囲を走る。だが、それでも
フィーネは傷つかず、パンチを繰り出そうとする響を
鎧の鎖が弾き飛ばす。
翼・明「「立花っ!(響ちゃんっ!)」」
二人の叫びが重なる。
フィーネ「もはや、人にあらず。今や人の形をした破壊衝動」
響「ヴォォォォォォォォォォッ!!!」
再び、フィーネにとびかかる響。
そしてそれを防ぐフィーネ。
フィーネは鎖を幾重にも編み込んだシールド、『ASGARD』を
展開した。ぶつかり合う拳とシールド。しかし暴走した響は
そのシールドを突破し、フィーネの体に突き刺さった。
次の瞬間衝撃波が周囲を駆け巡る。土埃から顔を守る翼。
そしてそれが晴れた時、翼と明日夢は瓦礫の上で膝をつく
フィーネを見つけた。
その体は、腹部から左胸の辺りに掛けて大きな裂傷を、いや、
裂傷などと言うより体が避けていた状態だった。
しかしそれでも……。
フィーネ「ふふふっ」
片目が二人の方を向き、笑う。余りの光景に絶句する二人。
明日夢『血が一滴も流れてこない!?いや、それ以前に
どうなっているんだあの体!?まさか、
ネフシュタンの鎧の効果で……』
と、その時。近くの瓦礫の下から響が、まだ暴走したままで
現れた。
翼「もうやめろ立花!これ以上は聖遺物との融合を促進
させるばかりだ!!」
このままでは響が危ない。そう思い叫ぶ翼。だが……。
響「ウゥゥゥッ」
声に反応した直後。響は……。
「ヴァァァァァァァッ!」
二人に向かって飛びかかってきた。
翼「くっ!?」
咄嗟にそれを弾く翼。
明日夢「響ちゃん!やめろ!やめるんだ!このままじゃ
もう人間に戻れなくなる!ガングニールを解除
するんだ!」
必死に呼びかける明日夢。だが……。
響「ヴァウッ!」
再びとびかかって来る響。
『ガキィィンッ!』
明日夢「ぐっ!?うぅぅっ!」
繰り出された拳を、音撃棒をクロスさせて防ぐ明日夢。だが……。
次の瞬間。
『バキバキバキッ!』
「ッ!?」
『バギャァァァッ!』
音撃棒に罅が入り、柄の少し上部分から先が折れた。
飛び散る木片。更に……。
響「ガァウッ!」
『ドゴッ!』
明日夢「ぐはっ!!」
連続で繰り出された拳が明日夢の腹部を捉え、吹き飛ばした。
瓦礫に背中から衝突してしまう明日夢。
翼「先生っ!?やめろ立花!それは明日夢先生だぞ!!」
明日夢「うっ、ぐ、く……」
彼は、その声を聴きながら、ほんの僅かな間意識を
手放してしまった。
そして、その時別の場所でも動きがあった。
ディスクたちは、クリスの落下地点へと急ぎ駆けつけた。
だが、そこでは明日夢や響たちの予想外の事が起きていた。
ディスクたちが落下地点に駆け付けると、そこには……。
???「イテテテテ。ったく、焦ったっての。いきなり
空から女が落下してくるなんてなぁ」
地面の上に、クリスを受け止めた姿勢のまま倒れている青年の
姿があった。
『ピィッ!』
そんな青年の元に駆け寄るディスクたち。
???「ん?このディスクたちって。……そうか安達の。
心配すんなディスクたち。この子はこの俺、
キョウキが助けた。だから心配すんな」
そう言いつつ、気絶しているクリスをお姫様抱っこするキョウキ。
そう、実はあの時、ギリギリの所で駆け付けたキョウキ、彼が
空中でクリスを抱きかかえてキャッチ。しかし勢いを殺し切れずに
地面に盛大に激突したのだ。
キョウキ「にしても。さっきの光と言い獣みたいな咆哮と言い。
お前も結構危ない所に居るんだな。安達」
そう言って、遠くに見えるリディアン跡地に目を向けるキョウキ。
やがて……。
「ったく、しょうがねえ!俺も加勢してやるか!」
自らを鼓舞するように叫ぶと、キョウキはクリスをおんぶ
してリディアンに向けて移動を開始した。
そして、リディアンでの状況も推移していた。
僅かに気を失っていた明日夢が目を覚ました時、彼の目には
フィーネの攻撃を受けながらも『火鳥極翔斬』で天を駆ける
翼の姿が映った。
明日夢「つ、翼、ちゃん」
まだわずかに歪む視界の中、立ち上がる明日夢。そして、彼の
小さな声が、翼に届いた。
そして……。
翼「先生、立花を。皆を。頼みます」
明日夢「止め、ろ」
震える手を、必死に伸ばす明日夢。影縫いで動けないながらも、
涙を流す響。
「止めろ。ダメだ」
翼「これが!私達防人の!矜持だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
明日夢「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
蒼い炎の火の鳥となって、カ・ディンギルへと突撃する翼。
そして、明日夢の悲痛な叫びが響いた、刹那。
『カッ!』
『ドドドォォォォォォォォンッ!』
カ・ディンギルから光が溢れ出し、周囲を覆って行った。
そして、その光の中で……。
翼『ごめんね奏。もしかしたら、私、先に行くかも、しれない』
光に包まれながら、そこで翼の意識は途絶えた。
そして、その光が、更に周囲を飲み込んでいく。フィーネも、
響も、明日夢も。
そして、その光が消えた時、響の縛っていた影縫いの刃も、
砂となって消えた。
同時に、変身が解かれてしまう響。
響「あ、あぁ、あ。つ、翼、さん」
呆然と、その目に涙を浮かべながら残ったカ・ディンギルの基部を
見上げる響。
そして、彼女はそのままその場に膝を、手を突く。
同じように、呆然とカ・ディンギルの残骸を見上げていた明日夢。
その時。
『バゴォォォンッ!』
彼の耳に、クリスタルの鞭を地面に叩きつける音が聞こえて来た。
フィーネ「どこまでも忌々しい!!月の破壊は、バラルの呪詛を
解くと同時に重力崩壊を引き起こす!惑星規模の
天変地異に人類は恐怖し、狼狽え!そして
聖遺物の力を振るう私の元に帰順するはずであった!」
怒りも冷めやらぬまま、響に近づくフィーネ。だが。
『ザッ!』
彼女と響の間に、明日夢が立ちはだかる。
明日夢「何が相互理解だ。何が解放だ」
フィーネ「何?」
明日夢「フィーネ、あなたの、いや。お前のやろうと
している事は、クリスちゃんの言った通りただの
支配だ!」
フィーネ「俗物がぁ!ほざくなぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
クリスタルの鞭を真上から叩きつけるフィーネ。明日夢は
それを腕をクロスさせて防ぐ。後ろには響が居る。だから
避けられなかったのだ。だが……。
『ブシュッ!!』
受けた辺りから鮮血が飛び散る。だが、それでも……。
『ガシッ!』
明日夢「う、ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
『ブォォォンッ!ドガァッ!』
フィーネ「ぐぁっ!!」
傷に構うことなく鞭を二つ、片手ずつ掴んだ明日夢はフィーネを
瓦礫に叩きつけた。
「ちぃっ!聖遺物にすら劣る異形の分際でぇっ!!」
だが、すぐに立ち上がったフィーネは怒りの矛先を響から
明日夢に変えて突進してきた。
明日夢「負けて、たまるか……!クリスちゃんと、翼ちゃん」
ふら付く足で必死に立つ明日夢。既に、彼の体は限界が近かった。
だが、それでも……。
「二人の思い、願い。絶対に無駄にしない!!!
僕は、僕は戦うっ!うぉぉぉぉぉぉっ!!!」
明日夢もまた、鬼爪を展開して雄叫びと共にフィーネへと
突進していった。
一方、別の場所。カ・ディンギル撃破直後。
爆風に弾き飛ばされた翼は、変身が解除された学生服姿のまま、
カ・ディンギルの残骸の上へと、叩きつけられようとしていた。
このままでは、クリスのように残骸の上部へと頭から真っ逆さまに
落ちる。そして、彼女が地面に激突しそうになったその時。
『シャッ!ギュッ!』
落下地点に飛んで来た人影が翼の体を抱きかかえ、残骸の
一部に着地した。
それは、赤銅色の手、面、一本角を備えた人影だった。
やがて、その人影が変身を解除すると、その下から現れたのは……。
奏「全く、無茶し過ぎだぜ翼」
こちらに向かっていた奏だった。街に近づくにつれ
道路が規制され、車では近づけないと判断した二人は足でこちらに
向かっていた。
師匠である轟鬼は落ちたクリスの元へと向かい、奏は一直線に
カ・ディンギルの元へと向かった。
だが、その直後、翼の叫びを聞いた奏はまさかの事態を想定して
変身。鬼の脚力を生かして、フィーネ達が居るのとは反対側の
部分を駆けあがったのだ。
そして、ギリギリの所で翼を受け止めたのだった。
気を失った翼を、残骸の部分に横たえる奏。そして、
彼女は翼の体を自らの体に預けさせるように、後ろから
翼を抱きしめるのだった。
奏『翼、まだ戦いは終わってないぞ。先生も、師匠も、
立花も戦ってるんだ。早く、目を覚ましてくれよ』
そう思いながら、彼女は翼の髪を撫でるのだった。
今、決戦の地に、鬼たちが集おうとしていた。
そして、リディアンでは……。
明日夢「うぉぉぉぉぉぉっ!!」
鬼爪で切りかかる明日夢。だが……。
フィーネ「ふんっ!」
それを腕の装甲部分で受け止めるフィーネ。
「そのような爪でこのネフシュタンの鎧を貫こうと
言うのか!笑わせるな!」
『ガキィィィンッ!』
簡単に弾かれる鬼爪。
「はぁっ!」
『バシィィィッ!』
更に、クリスタルの鞭が明日夢の体に叩きつけられる。
明日夢「ぐ、がっ……!」
呻きながら吹き飛ばされる明日夢。
『ガゴォォォンッ!』
彼の体が瓦礫に叩きつけられ、砂埃が舞い、瓦礫が彼の体の
上に落ちる。数秒、静寂が訪れた。
だが……。
『ドゴォッ!ガラガラッ!』
「ハァ!ハァ!ハァ!まだ、だ……!」
崩れた瓦礫を下からぶち破って明日夢が姿を現した。
それを見て、息をつくフィーネ。
フィーネ「ふぅ。貴様や装者の根性と言う奴だけは認めてやろう。
……だがっ!」
次の瞬間、彼の首筋にクリスタルの鞭が巻きつけられた。
「所詮は玩具や劣化品!その程度で私を止められると
思ってか!?」
『ブォォンッ!ドガッ!』
明日夢「ぐぅぅぅっ!?」
フィーネ「なめるな!俗物風情がぁぁっ!」
『ブォォォンッ!ドガガガッ!』
明日夢を振り回し、周囲の瓦礫に何度も何度も叩き付けるフィーネ。
そして、明日夢の体が再び宙を舞い、地面に落ちて転がった。
地面に仰向けで倒れる明日夢。それを見たフィーネは未だに
放心状態の響きの方に足を向けようとした。が……。
明日夢「ま、て」
掠れそうな声と共に、明日夢が立ち上がる。
「まだ、僕、は……。戦える……!」
フィーネ「ちぃっ!何処までも何処までも!いい加減に
倒れろぉぉっ!」
再び、鞭を振るって来るフィーネ。だが、今度は……。
『バッ!』
前へと飛び出す事でそれを回避し、更に距離を詰める明日夢。
明日夢「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
鞭の連打を掻い潜り、フィーネに肉薄した明日夢は……。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
『ザシュッ!』
装甲に覆われていない腹部に右手の鬼爪を突き立てた。
だが……。
フィーネ「ふ、ふふふふっ。ふはははははっ!そんな爪
如きで!」
『ガッ!!』
明日夢「ぐぅっ!?」
高笑いを浮かべながらフィーネは明日夢の首を掴んで
投げ飛ばした。
『ガゴォォォンッ!』
瓦礫に叩きつけられる明日夢。そして……。
「ぐっ!げほっ!がはっ!」
叩きつけられた衝撃で、とうとう変身が解除されてしまった。
瓦礫に背中を預け激しく咳き込む明日夢。
フィーネ「全く。ん?」
その時、フィーネは足元に落ちていた音叉を見つけた。
投げ飛ばされた時に、装備帯から外れてしまったのだ。
それを屈んで拾い上げるフィーネ。
「こんな玩具が、遥かなる太古に作られたシンフォギア
ではと、以前風鳴弦十郎が言っていたが、これが
聖遺物だと?笑わせるな。こんなもの」
と、次の瞬間。
『バキバキバキッ!』
彼女の手の中で音叉が握りつぶされてしまった。
バラバラと、地面に落ちる音叉だったパーツ。
「所詮は限られた知識しか持たない人間が作り出した
紛い物。さぁ、これで貴様の力の源は絶たれた。
大人しく寝ている事だ」
嘲笑を浮かべるフィーネ。だが……。
明日夢「だから、何だと、言うん、ですか」
地面に手を突きながらも、もう一度立ち上がる明日夢。
「それでも、フィーネ。あなたが月を砕き、人を、
聖遺物の力で、支配しようとするのなら……!」
一歩一歩歩みを進める明日夢。
「例え、鬼になれなくても……!僕、達が、
その野望を、阻止、する……!」
いまだに消えぬその目の炎。意思の光。鬼として、医師として、
彼は誓った。
人を守る事を。そのために出来る事へと、己が全力を
注ぐ決意を。
だが、それでも彼の体は限界を迎えていた。
フィーネ「ふん。……俗物が」
そう言って鞭を振るうフィーネ。鞭が明日夢の首に巻き付く。
明日夢「う、ぐぅっ」
フィーネ「その貴様の覚悟も所詮、力の前には無力だ」
そう呟き鞭を振るうフィーネ。
『ゴガンッ!』
明日夢「ぐぅっ!」
そして、鞭に捉えられていた明日夢の体が宙を舞い、
俯く響の近くに叩きつけられた。
「げほっ!げほっ!!」
咳き込みながらも、何とか腹ばいの体を仰向けに転がす明日夢。
だが、そこから先、彼は起き上がれるだけの力が無かった。
その様子を、静かに見下すフィーネ。
「フィー、ネ。あなたは、何故、こんな、事、を」
息も絶え絶えながらも、それでも言葉を紡ぐ明日夢。
フィーネ「何故、か」
すると、再び哀愁が混じったかのような声色で言葉を
紡ぐフィーネ。
「もうずっと遠い昔、あのお方に仕える巫女であった
私は、いつしかあのお方を、創造主を愛する
ようになっていた。だが、この胸の内を告げる
事は出来なかった。その前に、私から、
人類から言葉が奪われた……!
バラルの呪詛によって唯一創造主と語り合える
統一言語が奪われたのだ。私は数千年に渡り、
たった一人、バラルの呪詛を解き放つため、
抗って来た」
次第に、その声色が悲しみの色をにじませ始める。
「いつの日か、統一言語にて胸の内の想いを
届けるために……!」
肩を震わせるフィーネ。
その時。
響「胸の、想い?だからって……」
フィーネ「ッ!是非を問うだと!?恋心も知らぬお前が!」
振り返ったフィーネは、涙を浮かべながら響の髪を掴んで
投げ飛ばした。
明日夢「響、ちゃん」
それを見た明日夢は、何とか体を動かそうとする。
そこへ……。
フィーネ「貴様も、私の愛を罵るか!答えて見せろ!
安達明日夢!」
フィーネが彼に対して矛先を向けて来た。それでも、
明日夢は這ってでも響の元へ向かおうとしていた。
そんな時だった。
明日夢「僕、には、あなたの恋心は、分からない。僕は、
あなたでは、ない、から」
必死に手を動かし、体を引きずりながらも進む明日夢。
「あなたが、誰かを、愛しているのだと、したら。
それは、悪ではないと、僕は思う」
フィーネ「何?」
明日夢「あなたにも、誰かを想う心があるだと、分かった。
あの時の、あなたの涙は、確かに、あなたの、
涙だ」
フィーネ「ならば……ならば何故バラルの呪詛の、月の破壊
を拒む!私の邪魔をする!」
明日夢「誰かを想う事は、悪ではないと僕は思う。
だと、しても……!」
その時、明日夢は近くにあった瓦礫に手をかけ、
立ち上がった。
「例え、誰かを愛していたとしても、それが……。
それが誰かを傷つけて良い理由にはならない!」
フィーネ「貴様も、私の愛を否定するか!!」
明日夢「そうじゃないっ!」
彼女の怒号に、明日夢も怒鳴り返す。
「人を、誰かを愛するその気持ちは、誰だって
持っている物だ!あなたの愛情だって、
元を正せば誰かを想う気持ちだ!けど、けど
だからってそれが他人の命を奪う理由には
ならない!」
彼の目にはまだ、炎が灯っていた。彼はまだ、諦めていなかった。
その時、地下では未来や創世たちが響に声を届けるために
動いていた。
動力の切り替えレバーがある部屋を前にしている緒川、
未来、更に創世達の3人。しかし、戦闘などの影響で扉は
開閉不能、僅かに子供が通れる程のスペースしかなかった。
そこで……。
未来「リョクちゃん。お願い」
『ウホッ!』
未来の掌に居たリョクオオザルが頷き、空いたスペースから
中に入り、レバーがある場所まで登ろうとした。が……。
『ツルッ!』
周囲の壁やレバーなど少ない足場を使って奮闘するリョクオオザル。
しかし上手くレバーまで届かない。
未来「あと少しなのに……」
その様子を、歯痒く見守っていた未来。
しかし、それを見た弓美たちが決心を固め、中に入って
組体操のピラミッドの要領で足場を作った。
創世と未来が1段目になり、その上に詩織が。更にその上に
オオザルを手に乗せた弓美が立つ。
弓美「おサルさん、お願いね」
そう言って、精いっぱいオオザルを乗せた手を上げる弓美。
そして、その手がとうとうレバーの部分まで届いた、
次の瞬間。
『ウホッ!』
リョクオオザルが両手でレバーを押し上げた。
次の瞬間、暗かった周囲が一気に光をともす。
弓美「やった?やったよっ、やったぁぁぁぁっ!」
創世「うん!うんできたよ!」
それを目にし、驚き喜び合う4人。
そして今、反撃が始まろうとしていた。
地上。
倒れる響と、そして………。
明日夢「ぐあぁっ!」
フィーネのパンチで吹き飛ばされる明日夢。
「がはっ!げほっげほっ!」
再び倒れる明日夢。何とか瓦礫に手を置き、立ち上がろうとするが、
それも空しく再び地に倒れてしまう。
フィーネ「ふっ。貴様も終わりだ安達明日夢。だが、まずは……」
そう言って、未だに無気力化している響の元に歩みを進める
フィーネ。
「貴様のデータは実に役に立ったよ、立花響。
しかし、貴様はもう用済みだ。聖遺物を取り込んだ
融合体、即ち真の霊長は一人で十分だ。
私に並ぶ者は、全て絶やしてくれる」
不気味な笑みと共に、鞭を構えるフィーネ。
明日夢「やめろぉぉぉぉぉっ!!!」
それを前に叫ぶ明日夢。
と、その時……。
『仰ぎ見よ太陽を♪』
フィーネ「ッ!?耳障りな!何が聞こえている?」
不意に、周囲から雑音が混じりつつも歌が聞こえて来た。
明日夢「これ、は、ぐっ。リディアンの、校歌」
周囲を見回しながら、何とか立ち上がる明日夢。
そして、その歌は、届いていた。
クリス「う、うぅ。私、は……」
その時、途絶えていたクリスの意識が戻った。
キョウキ「お?気が付いたか?」
彼女が起きた事に気付いたキョウキは、静かにおんぶしていた
クリスを下ろした。
クリス「お、お前、は……」
まだ少し、はっきりしない意識の中で問いかけるクリス。
キョウキ「俺か?俺はキョウキ。強き鬼、強鬼だ!」
高らかに、自慢気味に宣言するキョウキ。
クリス「お、鬼?……はっ!」
と、そこへ来てようやく完全に意識を取り戻すクリス。
しかし……。
「ぐっ!?」
絶唱の反動でか、立ち上がろうとした彼女の体の中に痛みが
走る。
キョウキ「お、おい!無理するな!」
咄嗟に彼女の肩に手を置くキョウキ。だが、クリスはその手を
振り払った。
クリス「聞こえる、聞こえるんだよ。あいつらの歌が……」
そう言って、痛みを抱える体に鞭打ち立ち上がるクリス。
「だったら、こんな所で寝てる訳には、
行かねえだろ……!」
震える膝に手を置き、立ち上がろうとしたクリス。だが、
再び彼女が倒れそうになる。が……。
『ギュッ!』
彼女の手を掴んで倒れるのを防ぐキョウキ。
キョウキ「しょうがねえな。あそこが決戦の場所なんだろ?
連れてってやるさ」
クリス「は、はぁ?あんた、何でそこまで?」
キョウキ「ん?何でって。当たり前だろ?俺達鬼は、
そうやって人を助けるために戦ってるんだからな」
そう言って、キョウキは誇らしげな笑みを浮かべ、クリスの
肩に手を回しながら歩き出した。
そんな中で、クリスは……。
クリス『……鬼、か。全く、あの先生とやらもこいつも、
鬼ってのはクソ真面目な奴らばっかなのかよ』
と、一人頭の中で愚痴るのだった。
そして、もう一人の防人も……。
翼「う、うぅ。……ここは、どこ?」
不意に、誰かに膝枕をされているように感じる翼。
その時。
奏「残念ながら、天国でも地獄でもないぜ、翼」
不意の声に、自らの耳を疑う翼。しかしその時、今自分の
顔を逆さまにのぞき込む奏を見て驚いた。
翼「奏……!どうしてここに!?」
すぐにはっきりし出した意識で問いかける翼。
奏「おっさんから、ヤバそうだからって援軍を頼まれたのさ。
……悪い、ちょっと遅れた」
しかし不意に、どこかバツの悪そうに謝る翼。
その言葉に翼は……。
翼「ううん、ありがとう奏。来てくれて」
静かに笑みを浮かべながら首を振った。
そして、彼女は静かに奏の元から離れて立ち上がった。
「奏、飛ぼう。一緒に」
そう言って、手を差し出す翼。
奏「あぁ。そうだな」
その言葉と手に合わせ、立ち上がる奏。
「私達は二人で一つの翼、ツヴァイウィングだからな」
そう言って、彼女も翼の手を取り握り返した。
今、この時、鬼の少女と、防人の少女が揃い、
再び双翼が蘇る。
そして、彼女たちの覚醒は、始まろうとしていた。
地上で倒れている響。彼女の耳に、歌声が届く。
未来たちの、想いが籠った歌声が響の鼓膜を震わせる。
地面の下から、いくつものオーブが現れ周囲を照らす。
フィーネ「どこから聞こえてくる?この不快な、歌。
……ッ、歌、だと」
そこに来て、表情をこわばらせるフィーネ。
響「聞こえる。みんなの、声が」
そして、その歌声を聞き、響の意識が少しずつ覚醒
していく。
その時、長い夜が明け、日の光が世界を照らし出す。
それはまるで、深い闇を抜けた響の心象を現すかのように。
「良かった。私を支えてくれてるみんなは、
いつだって傍に」
ギュッと拳を握りしめる響。
「みんなが歌ってるんだ。だから、まだ歌える。
頑張れる……!戦える!」
そして、少女の瞳の奥で、炎が再び燃え上がる。
次の瞬間、青い光がすぐそばのフィーネを弾き飛ばした。
そして、同じように、二人も……。
クリス「そうだ。まだだ」
翼「まだ、こんな所で終わる訳には行かぬ」
二人の心の奥でも、炎が燃え上がり始める。
消えぬ闘志が爆炎となって、太陽のプロミネンスの
ように、吹き荒れる。そして、彼女たちの体を、
光のリングが覆う。
ゆっくりと、クリスを離してその傍で見守るキョウキと、
静かにつないでいた手をはなす奏。
そしてフィーネは、この事態に理解が追い付いていなかった。
フィーネ「まだ戦えるだと?何を支えに立ち上がる?
何を握って力と代える?鳴り渡る不快な歌の仕業か?
そうだ。お前が纏っている『物』は何だ?
心は確かに折り砕いたはずだ!」
そこへ……。
明日夢「例え、そうだとしても……」
ボロボロになりながらも、何度でも立ち上がる明日夢。
「心が折られたとしても、それが終わりになる訳じゃない」
フィーネ「終わりではない、だと?」
明日夢「例えあなたがどれだけ強大でも、僕達にはあなたに立ち向かう
だけの理由がある!」
響「私には、守りたい物がある」
静かに立ち上がり、フィーネと真っ向から相対する響。
「みんなとの平和な日常。誰かと笑っていられる毎日。
そんな普通を、私は守りたい。だからっ!!!」
次の瞬間、3つの光の柱が現れる。
一つはカ・ディンギルの基部から。
一つはカ・ディンギルの上部から。
一つは近くの森の中から。
響「私達は戦うっ!」
フィーネ「ッ!何なのだ一体!?それは私が作った物か!?
お前は何を纏っている!それは一体何なのだ!?」
少女達は立ち上がり、天へと飛び立つ。それぞれの想いを胸に。
響「シンフォギアァァァァァァァッ!!!」
天に3人の少女が降り立つ。そして、響はその背から
翼の様な物を広げる。
それはさながら、天を舞い駆ける天使のように。
今、人類史の未来を掛けた最後の戦いが始まる。
そして、彼女たちだけではない。戦う鬼も今まさに、
すぐそこへと来ていた。
決着の時へと、時計は秒読みに入っていた。
第12話 END
本当なら、もう少し書いて奏(新斬鬼)や強鬼(京介)に轟鬼、
更には明日夢自身の鬼とか出そうと思っていたんですが、
場面の区切りがちょうどいいかなって思って区切りました。