~~前回までのあらすじ~~
クリスが倒れ、それを侮辱するようなフィーネの言葉に
響は理性が飛び、黒い獣となってフィーネや明日夢、翼と
誰彼構わずに襲い掛かった。それでも、翼は諦めずに
彼女の理性を取り戻し、カ・ディンギルを破壊した。
そんな中、クリスは強鬼が。翼は新たな鬼、斬鬼となった奏が
それぞれ助ける。明日夢は一人になりながらもフィーネに
挑むが、その度に一蹴され、更に音叉までも破壊されてしまった。
しかし、突如として響き渡った未来たちのリディアン校歌に
励まされた響、クリス、翼の3人は再びギアを。それも
限定解除によって強化されたギアを纏い、立ち上がるのだった。
今、空中でそれぞれの色を持つエネルギーの翼を携えた
3人が浮かび、フィーネと相対していた。
響「みんなの歌声がくれたギアが、私に負けない力を
与えてくれる。クリスちゃんや翼さんに、もう一度
立ち上がる力を与えてくれる。歌は、戦う力だけじゃない。
命なんだ……!」
静かに、しかし決意の籠った声で言葉を紡ぐ響。
フィーネ『あの白き姿。限定解除か。だが……』
ソロモンの杖を取り出すフィーネ。
と、その時。
『シュタッ』
奏「おっと、ちょいと待ちなよ了子さん。いや、
フィーネ」
不意に、フィーネの背後にある瓦礫に誰かが着地する音と
共に奏の声が聞こえて来た。
驚き振り返るフィーネ。更に響達もそちらに目を向けた。
響「か、奏さん!?」
フィーネ「貴様はっ!?天羽奏!?なぜここに!?」
奏「おっさんから援軍を頼まれたのさ」
驚くフィーネと不敵な笑みを浮かべる奏。
フィーネ「まさかここで貴様が戻ってくるとはな。
……だが所詮は聖遺物の劣化コピー!
そんな奴が一人戻って来た所で!」
奏「それが」
と、フィーネの叫びを遮り、もう一度奏は笑みを浮かべる。
「一人じゃないんだな~これが」
フィーネ「何ッ!?」
と、そこへ。
トドロキ「明日夢君!奏ちゃん!」
不意に、中くらいのリュックと烈雷、そしてもう一つの音撃弦を
収めたケースや中ぐらいのケースを携えたトドロキが現れた。
明日夢「轟鬼、さん……!ッ」
咄嗟に駆け寄るも、倒れそうになる明日夢。が、更に……。
『ギュッ!』
誰かが後ろからその手を掴み、倒れそうになる彼を支えた。
キョウキ「ったく、無茶し過ぎだっての」
その聞き覚えのある声に、振り返る明日夢。そこには、
キョウキの姿があった。
明日夢「桐谷君!?どうしてここに」
キョウキ「へへ、俺もおやっさんに助っ人を頼まれたのさ。
お前がヤバそうだからってな」
そう言って、明日夢の手を引き、彼を立たせるキョウキ。
ここに、3人の鬼が揃った。
フィーネ「まさか、貴様らも鬼か!?」
キョウキ「あぁ。鬼だよ」
フィーネと向かい合うキョウキ。その隣に立つトドロキ。更には
瓦礫からジャンプして二人の傍に降り立つ奏。
と、そこへ響達が下りて来て3人の後ろに着地した。
響「か、奏さん!どうして……!?それにその人たちは……」
奏「安心しな立花。この二人は私の師匠と先輩さ。
少し前、司令のおっさんからSOSを貰ってな。
飛んで来たってわけさ。師匠!」
トドロキ「おっす!」
と言うと、奏はトドロキが放ったケースをキャッチし、
先端を覆っていた留め具を外し振るった。
そして、その音撃弦の姿が露わになった。
いや、『それ』は正確には音撃弦ではない。それは、代々
受け継がれて来た武具をより強く、強固に仕上げた剣だ。
その名こそ『音撃真弦 烈斬』。魔を斬る鬼の剣だ。
そして、奏はギターの弦が張られた部分、ネックの部分を
両手で掴むと烈斬を地面に突き刺した。トドロキも
同じように、烈雷をケースから出し、地面に突き刺す。
その時……。
奏「悪いがフィーネ、あんたの支配は私達7人が止める。
絶対にな」
フィーネ「7人、だと?」
と言われ、周囲を見回すフィーネ。確かに今この時、この場で
彼女と相対しているのは7人だ。だが……。
「それはまさか、そこに居る安達明日夢も
数えているのか?
舐められたものだなっ!もはや変身能力を
失ったその男に、何が出来る」
その言葉に、歯を食いしばる明日夢。その時。
奏「先生、実はみどりさんから先生にお届けもんがあるんだよ」
明日夢「え?」
と、いきなりの事で疑問符を浮かべる明日夢。そして奏は
トドロキに向かって頷いた。するとトドロキは背負っていた
リュックを下ろし、中から一つの木箱を取り出した。
トドロキ「明日夢君。これを」
そう言って木箱を差し出すトドロキ。
明日夢「これは……」
驚きながら木箱を受け取り、それを開いた明日夢。
中に入っていたのは……。
本来は金色だった部分が、銀色に塗装された『変身音叉改・音歌(おんか)』
だった。
「音叉?でも、この色は……」
木箱から音歌を取り出す明日夢。
奏「みどりさんの新作。先生用に誂(あつら)えてくれたのさ。
それに、これもあるぜ」
そう言って、奏はリュックの中から中くらいの木箱を取り出した。
その中に入っていたのは……。
蒼い鬼石と柄を持った音撃棒、『風神』と『雷神』だった。
明日夢「これは、音撃棒……!」
キョウキ「お前、今までヒビキさんと姿同じだったんだろ?
鬼の名前を無かったみたいだし。……けど、
今日からは違うぜ」
明日夢「え?」
キョウキ「お前が今から変身するのは、ヒビキさんと
同じ姿じゃ無い。お前にしかなれない、お前自身の
鬼の姿になるんだよ」
明日夢「僕自身の、鬼の姿」
音歌を取り出し、それを振って起立させる明日夢。
キョウキ「それとな、ヒビキさんからお前に名前を送るってさ!
今日からお前は、『進(じん)鬼(き)』だ!」
明日夢「進、鬼?」
キョウキ「あぁ。進む鬼って書いて進鬼だ。……ってな訳だ。
さっさと構えろよ。向こうも我慢の限界みたいだぞ」
その言葉に従い、フィーネの方に振り返る明日夢。
今の彼女は、肩を震わせていた。
フィーネ「黙って聞いていればどいつもこいつも、
私の邪魔ばかり……! 貴様ら全員、ここで
葬ってくれる!」
そう叫ぶと、フィーネはソロモンの杖からノイズを召喚する。
響「ッ!来ます!」
彼女の叫びを聞くと、奏・トドロキ・キョウキはそれぞれの
変身アイテムを構える。
そして、明日夢も……。
明日夢『ヒビキさん』
手にした銀色の音叉、音歌を見つめながら、彼は今なお
人生の先輩であり、師匠である男の顔を思い出していた。
そして、彼も決意を固める。
「僕も、僕も戦います!人を守る為に!」
彼は、叫びながら音叉を起立させ、奏達の隣に並ぶ。そして……。
『『キィィィィンッ』』
キョウキは左の指で右手に持った音叉を小さく弾き……。
明日夢は左手首に右手で持った音叉を当てた。
澄んだ音が周囲に響く。
奏とトドロキも、左手の甲を相手に見せるようにして、手首に
巻いた鬼弦を前に向け、右手で鎖を下へと引っ張る。
そして、二人が同時に現れた弦を爪弾いた。
『『ヴェヴェェェェンッ!』』
4人の額に鬼面が浮かび上がりそれぞれの体を、炎や雷が覆う。
キョウキの体を、銀色の炎が。
奏とトドロキの体を雷が。
明日夢の体を、青い炎が。
そして……。
キョウキ「はぁぁぁぁっ!はぁっ!」
トドロキ「せいっ!」
奏「うぉぉぉぉぉぉっ!るぁっ!」
それぞれの叫びと共に、炎を、雷を払う。そして最後は……。
明日夢「うぉぉぉぉぉっ!はぁっ!」
彼もまた、叫びと共に鬼へとなった。
その鬼は、青かった。基本となる体の色は黒であったが、
彼の体の各部、手や足、そして顔を縁取る色が、青かった。
その色は威吹鬼の青よりも、明るい、しいて言えば
ライトブルーな色合いであった。
そして、その頭から生えた角は3本であった。鬼面の左右に、
前に向く形で突き出る2本の角と、鬼面のすぐ上から、
後ろに向かって反り返る一本の角。
それこそ、明日夢が至った鬼の姿。『進鬼』だった。
今、4人の鬼、轟鬼、斬鬼、強鬼、そして、進鬼が揃った。
そして当然、その一部始終はカメラを通して未来や弦十郎の
元へと送られていた。
時間軸は、奏が姿を現したところまで戻る。
弓美「あれって、ツヴァイウイングの天羽奏さん!?
何でこんな所に!?」
モニターに映った奏を見て、驚く弓美や創世たち。既に
この部屋には他の部屋に避難していた人々や、初めて響が
変身した時に助けた少女達も集まっていた。
やがて、何かに気付いたかのように詩織が弦十郎達の方を
向いた。
詩織「まさか、天羽奏さんも……!?」
ふとした疑問の声に、周囲の視線が弦十郎に集まる。
やがて……。
弦十郎「そうだ。彼女もまた、ノイズと戦う力を持った
戦士だ」
創世「それじゃあ、この前の長期療養ってのは……」
弦十郎「……彼女は今まで、新たなる力を得るために、
修行を付けてもらっていた」
詩織「修行?」
弓美「それってどういう……」
その問いに、少ししてから弦十郎は口を開いた。
弦十郎「奏は嘘の療養のニュースが出た時期からこれまで、
今の響君や翼たちとも違う力を得るために
とある人々の元へと行っていた。あそこにいる
明日夢と他の男性二人も、恐らくは今の奏と
同じ力を持つ人物なのだろう」
創世「奏さんと同じ力って、一体……」
未来「……鬼だよ」
詩織「え?」
疑問符を漏らす創世に、未来が呟き更に詩織が疑問符を
漏らす。
「お、鬼って、童話の鬼、ですか?」
弦十郎「いや、そうじゃない。……彼女の言う鬼と言うのは、
遥か昔からこの国に存在し、ノイズ等から人々を
密に守り続けている人々の事を指す。
それが、鬼。音を使い魔を清める者達、
『音撃戦士』だ」
弓美「まさか、そんなアニメみたいな存在が実在していた
なんて」
弦十郎「現実は小説よりも奇なり。そう言う事だ」
そう言うと、スクリーンの方に視線を向ける弦十郎や未来、
弓美や他の面々。
そして、その視線の先では、地面に降り立った響達と進鬼達が
集まり、合計7人がフィーネと相対していた。
各々、拳、音撃棒、刀、音撃弦、アームドギアを構える。
彼彼女たちを前にしたフィーネは、杖を握る手に力を籠める。
フィーネ「どいつもこいつも邪魔ばかり……!だが!
ここで止まる事などあり得ぬ!貴様らが再び
立ち上がり、有象無象が増えようと!
いくらでも叩き潰すのみだっ!!」
そう叫んだ次の瞬間、杖から無数の緑色の光が放たれ、ノイズが
現れる。
クリス≪いい加減芸が乏しいんだよっ!≫
そう叫ぶ彼女の声が、この場に居る7人とフィーネの頭の中に
響く。俗に言うテレパス、念話である。
翼≪世界に尽きぬノイズの災禍も、全てお前の仕業なのか!?≫
フィーネ≪ノイズとは、バラルの呪詛にて相互理解を失った
人類が同じ人類のみを殺戮為に創り上げた
自立兵器≫
響≪人が、人を殺すために……!?≫
トドロキ「ッ!?ノイズが、兵器!?」
キョウキ「ろくでもない物を作るご先祖様が居たって事か……!」
予想外のノイズの根本的存在理由に、驚く響やトドロキ達。
フィーネ≪バビロニアの宝物庫は扉が開け放たれたままでな。
そこからまろびいずる10年一度の偶然を私は
必然と変え、純粋に力と使役しているだけの事≫
クリス≪また訳分かんねぇ事を!≫
明日夢「つまり、バビロニアの宝物庫と言うのは、ノイズの保管庫。
そして本来なら、そこからノイズが出てくるのは10年に
1度程度だった。だけど、フィーネはあれを、ソロモンの杖を
使う事によって、自分の好きなタイミングでノイズを保管庫
の中から取り出していた。そう言う事だよ」
奏「けどそれは、あの杖さえ無ければノイズを召喚できないって
事だろ!だったらあの杖を奪うなり壊すなり、するだけだぁっ!」
フィーネ≪ふっ!やれるものなら、やってみるが良い!≫
次の瞬間、ノイズが体を棒状にして、7人へと向かって来た。
上に飛び回避する響達3人と、左右に分かれるように転がって
回避する明日夢達。
そして、7人が視線を戻した時。
「落ちろぉぉっ!」
強烈な光を放つ杖を上に掲げるフィーネ。そして次の瞬間、
杖から光が放たれ上空で拡散。既に街のあちこちに
大型小型を問わず、天文学的な数に届きそうな程のノイズが
召喚されてしまった。
7人がそれぞれ背中合わせに周囲に目を向ける。
響「あっちこっちから!」
奏「はっ!今更数で来た所でっ!師匠!」
トドロキ「行こうっ!奏ちゃん!」
キョウキ「よっしゃ行くぜ!関東最強の鬼の弟子の力!
見せてやるっ!」
クリス「上等だ!全部まとめてぶちのめしてやるぜ!」
各々が気合を入れ飛び出していく中、明日夢、響、翼だけが
その場にとどまった。
響「あの、翼さん。明日夢先生。私、二人に……」
そう言って言い淀み、暴走していた時の事を思い出す響。
しかしそれでも、翼は笑みを浮かべた。
翼「どうでも良い事だ」
響「え?」
翼「立花は私の呼びかけに答えてくれた。自分から
戻ってくれた。自分の強さに胸を張れ」
明日夢「僕も気にしてないよ。今、響ちゃんが、
みんながここにいるんだ。だから守ろう。
みんなで、一緒に。未来を!」
翼「明日夢先生の言う通りだ。一緒に戦うぞ、立花」
響「……はいっ!」
そして、7人は飛び出していく。
防人たちは天を駆け、鬼たちは地を駆ける。
響「ギュッとほら、怖くは無い♪」
翼「わかったの、これが命♪」
クリス「後悔は、したくはない♪」
防人たちは、歌を戦場に響かせながら戦う。
響は拳で穿ち、翼は刀で切り裂き、クリスは狙い撃つ。
トドロキ「せいっ!はぁっ!」
奏「うぉらぁぁぁぁぁぁっ!」
キョ・明「「鬼棒術!烈火弾!はぁぁぁぁぁっ!」」
トドロキがすれ違いざまに切り裂き、奏、斬鬼が竹割の如く
巨大な二足ノイズを頭から真っ二つに切り裂き、
二人の、銀と青の炎が一直線にノイズを貫く。そんな4人を
無数のノイズが取り囲む。
奏「数が多いな!師匠!」
トドロキ「うん!」
そう言うと、トドロキは近くにあったケースを開け、その
前で音錠を鳴らした。
次の瞬間、ケースの中に収められていた無数のディスクが、
『紫色』に色づき、飛び出して空中で変形した。
明日夢「これって……!?」
それは、明日夢が目にした事の無いタイプのディスクアニマル
だった。
そんな中、斬鬼は装備帯の音撃震、斬撤を烈斬に取り付け
走り出した。
奏「先生、見てなよ!これがみどりさんのもう一つの新作、
対ノイズ用アニマル、『スミレコウモリ』の力だ!」
そう叫びながら、斬鬼は四つ足の大型ノイズの吐き出す泥状の
攻撃をジャンプして回避。その背に着地した。
その時、5体のスミレコウモリが五芒星を描くように、斬鬼の
周囲に展開された。
奏「おらぁっ!」
それを確認しながら、烈斬をノイズに突き刺す斬鬼。
そして……。
「音撃斬!雷電斬震!」
『ギュインギュイィィィィンッ!!!』
叫びと共に、烈斬をかき鳴らす斬鬼。すると……。
放たれた音の波動がスミレコウモリに当たり、今度は
スミレコウモリから周囲に向かって音撃の波動が放たれた。
その波動がノイズに当たると……。
『ボロボロッ!』
まるで、攻撃を受けたように崩れ去った。
明日夢「これって!?」
驚く進鬼。そこに巨大ノイズを倒した斬鬼が着地してきた。
奏「このスミレコウモリには音撃の波動を増幅して周囲に
拡散、ノイズを攻撃する力があるのさ!
みどりさんが私や先生のために作ってくれたんだ!
さぁ先生も音撃をぶち込んでやれ!」
そう言って、再び駆け出す斬鬼。それを見送った進鬼は、
静かに装備帯から音撃鼓を外し、握りしめながら前を
見据える。
眼前には数えるのも億劫なノイズの群れ。だが、彼は
恐れない。もはや、恐れる必要はない。何故ならば、
『仲間』がすぐそばで戦っているのだから。
明日夢「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
駆け出した進鬼。
小型ノイズが向かって来るが、それを回避して跳躍。
「はぁっ!」
緑色の大型人型ノイズを、青い炎を纏った蹴りで倒し、
その腹部に音撃鼓を叩きつける。瞬く間に広がる音撃鼓。
更にその近くで、強鬼も大型ノイズを倒しそれに跨るように
音撃鼓を取り付けた。
二人が目配せをし、互いに頷く。二人とも、腰元から音撃棒を
取り出し、構える。そして……。
キョ・明「「音撃打!多重連打の型!!」」
二人の声が重なる。更に……。
『『ドンドンドドンッ!』』
一糸乱れぬ二人の音撃が重なり合う。
同じ師匠の元にありながら幾度も喧嘩をした二人。だが、世には
こんな諺がある。
『喧嘩するほど仲がいい』。
そして、共に同じ男を師事した二人だからこそ生み出せる
コンビネーションだ。
だが、二人だけではない。
奏「師匠!合わせるぜ!」
トドロキ「うん!」
二人が、手近なノイズに烈雷、烈斬を突きさす。
「音撃斬!雷電激震!」
奏「音撃斬!雷電斬震!」
『『ギュインギュィィィィン!!』』
二人も、互いに音撃を重ね合わせて威力を倍増させる。
その音が、波動がスミレコウモリの力で増幅され、周囲に
溢れ出す。そして、響達の活躍も相まって………。
『『『『『『『ドドドドドドドドォォォォォンッ!』』』』』』』
盛大な砂煙や爆音とともに、一気にノイズを撃退してしまうの
だった。
合流する進鬼たち4人と、空中で背中合わせに警戒する響達3人。
キョウキ「数だけ来た所で、俺達なら余裕だぜ!」
クリス「どんだけ出ようが、今更ノイズ!」
二人が得意げに笑みを浮かべる。
その時、
翼「っ!?あ!」
明日夢「ッ」
不意に翼と進鬼が何かに気付いてフィーネの方に視線を向けた。
そこでは、フィーネが杖の切っ先を自らの腹部に突き付けていた。
トドロキ「何を!?」
他の面々もそれを見て驚き、駆け出そうとした時。
『グサッ!』
何とフィーネが杖の切っ先を自らの腹部に突き刺した。
驚く7人。
しかし、そんな7人を後目に、その杖と彼女の体が、
融合し始めてしまった。
フィーネの行動に理解が追い付かない7人。その時、
残存していたノイズたちが一斉にフィーネに向かって良き、
粘土のようになりながら彼女の体に覆いかぶさった。
更にその中から、緑色の光が射出されたかと思うと、ノイズに
覆われた粘土の中へと戻るように向かって行った。
響「ノイズに、取り込まれて……!?」
クリス「そうじゃねえ!あいつがノイズを取り込んでんだ!」
その時、赤い粘土が槍のようになって、上空のクリス達と
地上の進鬼たち目掛けて放たれた。それを回避する7人。
フィーネ「来たれ!デュランダル!」
その隙に、地下へと粘土状の物体を伸ばしてデュランダルを
取り込むフィーネ。
と、次の瞬間。
『ドドォォォォォォォンッ!』
地面が光ったかと思うと、その下から地を割り、赤い竜の
ような存在が出現した。
トドロキ「あれって!?」
奏「デカい!あれじゃ魔化魍、いや、それ以上じゃねえか!」
驚く7人。その時、竜の先端が煌めいたかと思うと、街に向かって
レーザーが放たれた。
次の瞬間。
『カッ!ドドドドォォォォォォォンンッ!!』
まるで巨大な爆弾を落としたかのような火球と爆風が生まれる。
7人がそれぞれの顔を腕などで守り、爆風に吹き飛ばされない
様に踏ん張る。
そして、爆風が弱まり、視線を戻した時には……。
響「ッ!?街が!」
街が、煙と炎の包まれていた。
フィーネ≪逆さ鱗に触れたのだ。相応の覚悟は出来ておろうな?≫
振り返った時、7人は竜の胴体部分に同化しているフィーネを
見つけた。
黒く染まった衣服と、その手にデュランダルを持ったフィーネが
不気味な笑みを浮かべていた。
『ビシュッ!』
再び放たれたビームが上空の3人を掠める。
響「ぐ、あぁっ!」
クリス「こんのぉぉっ!」
何とかレーザーで反撃するクリス。だが、フィーネを守るように
胴体部のシャッターらしき物が動き、攻撃を防いだ。
「なっ!?」
そして、今度はお返しとばかりに無数の羽らしき物を展開した
フィーネの追尾レーザーがクリスに襲い掛かった。
「ぐあぁっ!」
翼「はぁっ!!」
そこに今度は、翼が蒼ノ一閃を放つ。それは竜の頭部に
命中し傷こそ作った物の、瞬く間に再生してしまった。
「くっ!?硬い!?それに……」
明日夢「烈火弾!はぁぁぁぁっ!」
キョウキ「俺も!はぁぁぁぁっ!」
地上から二人が烈火弾を放つ。無数の火球が竜の下部に命中するが、
僅かに焦げ目を作っただけで有効打にならなかった。
響「だぁっ!」
更に響が殴りかかる。
『ドゴォッ!』
派手な音と共に首元に穴が開くが、それもすぐに修復されてしまった。
フィーネ≪いくら限定解除されたギアであっても、いくら頭数を
揃えようとも……。所詮は聖遺物の欠片から
作られた玩具とその模倣品。完全聖遺物に
対抗できるなどと思うてくれるな≫
余裕さえ感じ取るれる言葉。だが、それによって
ある事に気付いた翼とクリス。
クリス≪聞いたか?≫
翼「チャンネルをオフにしろ」
クリス「もっぺんやるぞ」
翼「しかし、そのためには……」
そう言って、二人は響の方に視線を向けた。
一方、攻撃の振動は地下にも響いており、未来たちの居る場所は
大きな地震に襲われていた。
弦十郎「黙示録の赤き竜。緋色の女ベイバロン。
伝承にあるそいつは、滅びの聖母の力だぞ、了子君」
モニターに映る、赤い竜とかしたフィーネを見て弦十郎は
呟くのだった。
その一方、作戦を説明したりした3人は、フィーネに
向かって突進した。
奏「何かよくわかんねぇけど、3人には秘策があるみたいだな!
師匠!先輩!先生!3人を援護するぞ!」
トドロキ「了解!」
キョウキ「任せろ!」
明日夢「わかった!」
彼女の言葉に答え、駆け出す4人。
奏「おらぁぁぁぁぁぁっ!」
そして、一番手とばかりに斬鬼が能力を使って烈斬に雷を
纏わせ、かつて自らか繰り出していた技、『LAST∞METEOR』
のように回転を加えながら打ち出した。
回転しながら突進した烈斬が竜の下部を貫く。
フィーネ「ちぃっ!?鬼風情がっ!」
それによって彼女の注意が4人の方に向いた。
レーザーを乱射するフィーネ。
今の斬鬼は烈斬が離れているため防御は出来ない。
トドロキ「せいっ!」
が、彼女の前に轟鬼が滑り込み、烈雷でレーザーを
弾いた。
キョウキ「こっちだ!」
明日夢「はぁぁぁっ!」
更に強鬼と進鬼が烈火弾を何度も放ち、注意を
向けさせた。
そして、その隙に翼が己の限界の、最大限の力を刀に籠める。
すると刀が普段よりも更に一回り大きくなり、彼女は
それを振るって一撃、『蒼ノ一閃・滅破』を繰り出した。
咄嗟にシャッターを閉じ防御するフィーネ。竜の体に
光刃が命中し盛大な爆炎が覆う。そして、その攻撃で出来た
穴にクリスが飛び込む。
フィーネ「何?!」
クリス「おらぁぁぁぁぁぁっ!」
驚くフィーネに間を開けずに無数のレーザーを叩き込むクリス。
それを防いだフィーネは、視界を確保し中に充満する煙を外へ
出すためにシャッターを開けた。
だが、そこには……。
フィーネ「なっ!?」
既にチャージを終えた翼が、シャッターのすぐ外で待機していた。
翼「はぁぁぁぁぁぁっ!」
刃を振り下ろし、光刃を飛ばす翼。
咄嗟に左手で盾を作るフィーネ。そして……。
『ドガァァァァンッ!』
竜を覆うほどの爆発と爆炎が上がった。と、その時、何かが
煙を突き破って飛び出して来た。それこそ……。
『デュランダル』だった。
翼「それが切札だ!」
デュランダルは、響の方へと飛んでいく。
「勝機をこぼすな!掴み取れ!」
『パンッ!パンッ!』
『カンッ!カンッ!』
更に、何とかクリスがハンドガンでデュランダルを弾き
響の元へと飛ばす。
フィーネ「させるかぁっ!」
咄嗟に触手を伸ばすフィーネ。だが……。
キョ・明「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
大きく飛び上がった二人の烈火剣が、触手を断ち切る。
そして……。
『ガシッ!』
響がデュランダルを掴んだ。次の瞬間。
『キィィィィンッ!』
響「う、ゥゥゥッ!」
彼女の体が、暴走状態のように黒く、赤い瞳となる。
周辺に衝撃波が走る。
着地し、何とか暴走を抑えようと、抗う響。
その時、近くにあったシェルターの扉が吹き飛び、弦十郎達が
姿を現した。
弦十郎「正念場だ!踏ん張りどころだろうが!」
何とか、そちらに目を向ける響。
緒川「強く自分を意識してくださいっ!」
朔也「昨日までの自分を!」
あおい「これからなりたい自分を!」
響『み、みンな』
呑まれそうになる中、何とか意識を保つ響。更にそこへ、翼や
クリス、進鬼や強鬼達が駆け寄る。
翼「屈するな立花!お前が構えた胸の覚悟、私に見せてくれ!」
クリス「お前を信じ、お前に全部賭けてんだ!お前が自分を
信じなくてどうすんだよ!」
奏「こんな時だからこそ、自分の戦う理由を思い出せ!
守りたいもんを頭の中に描け!」
詩織「あなたのお節介を!」
弓美「あんたの人助けを!」
創世「今日は、アタシたちが!」
フィーネ「姦しい!黙らせてやる!」
再び触手を伸ばすフィーネ。だが……。
キョ・明「「させるかぁぁぁぁっ!!」」
二人の鬼が、烈火剣で襲い来る触手を受け止める。
響「ぐ、ぐぅぅ。グォォォォォォッ!」
闇の呑まれかける響。その時。
未来「響ぃぃぃぃぃぃっ!!!」
未来の声が聞こえ、彼女の心に響く。そして……。
明日夢「諦めるなぁっ!」
更に、明日夢の声が。
「まだ、まだ終わって何かない!
だから絶対に、諦めるなぁっ!!」
烈火剣で触手を受け止め、火花を散らしながらも明日夢が
叫ぶ。そして、その言葉は、想いは、彼女へと届く。
響『そうだ。今の私は、私だけの力じゃない』
創世「ビッキー!」
弓美「響!」
詩織「立花さん!」
響『そうだ!この衝動に、塗りつぶされてなるものかっ!!』
そして、彼女は暴走の衝動を、襲い来る濁流を跳ね除けた。
黒い部分が無くなって行く。
そして、再び黄金の翼が彼女の背から広がる。
左右を翼とクリスに支えられながら、静かに3人が上空へと
浮かび上がる。
さながら、三柱の天使のように、3人がデュランダルを支え、
その剣から黄金の光が溢れ出す。
フィーネ「その力、何を束ねた!?」
響「響き合うみんなの歌声や、支えてくれる人たちの想いが
くれた、シンフォギアでぇぇぇぇぇぇっ!!」
叫びと共に、3人がデュランダルを振り下ろす。竜の頭から
光の刃が切り裂いていく。
フィーネ「完全聖遺物同士の対消滅……!」
その時の彼女は、呆然としていた。己が負けるなど、
露にも思っていなかったのだから。
だが、現実は違う。
「どうしたネフシュタン!再生だ!」
鎧に命じる。だが、それは起こらない。
「この身、砕けてなるものかぁぁぁぁぁっ!」
だが、そんな彼女の体を爆炎が包み込み、そしてひと際
大きな爆発が生じた。
そして、赤き竜は歌姫と戦士達と、人々の歌声の前に敗れ去ったの
だった。
そして、戦いが終わり、人々がシェルターから出て来た。町は
ボロボロだが、人々の命は守れられた。
そして、決戦の場所では……。
翼、クリス、変身したままの強鬼、斬鬼、轟鬼、
未来や創世達、弦十郎達の元に、響と進鬼がフィーネに肩を貸す
形で現れた。
フィーネ「貴様、ら、何をバカな事を……」
そう呟くフィーネ。だが、既に彼女に戦う力が残っていないのは
傍目にも明らかであった。
だが、それでもクリス達は呆れこそすれ、驚いては居なかった。
クリス「このスクリューボールが」
響「みんなに言われます」
そう言いながら、静かに石の上にフィーネを座らせる二人。
「親友からも変わった子だ~って」
明日夢「人を助けるのが、鬼の使命だからです。それに、
フィーネ、いえ、了子さんだって人間じゃないですか。
だったら、僕達が助ける理由には、十分ですよ」
腰を下ろし、息をつくフィーネ。
響「もう終わりにしましょう、了子さん」
フィーネ「私はフィーネだ」
響「でも、了子さんは了子さんですから」
その言葉に、少しだけ目を見開くフィーネ。
「きっと私達、分かり合えます。……覚えてますか?
未来が二課の基地に来た時、ガールズトークって言って
恋バナを聞かせてくれようとした話。あれ、きっと
フィーネとしての了子さんの本音だったんですよね」
フィーネ「……」
響「あの時、了子さんに言われた通り、正直私には恋心とか
全然わかりません。でも、了子さんの恋が本物だって事。
私達と同じように心があるんだって事は、わかりました」
その言葉を聞くと、フィーネは静かに立ち上がった。
フィーネ「分かった所で、どうなる。ノイズを作り出したのは、
先史文明期の人間。統一言語を失った我々は、
手を繋ぐよりも相手を殺す事を求めた」
静かに、響と進鬼から離れるように歩き、離れて立ち止まるフィーネ。
「そんな人間が分かり合えるものか」
明日夢「……確かに、そうなのかもしれない。僕の知っている人は
かつてこう言いました。誰の心の中にも、少なからず
悪意が存在する。だから世の中から、争いなんかが
絶えないのだ、と。けど、例えそれが絶えないのだと
しても、それを少しでも減らす努力を。他人と
分かりあう努力も、止めてしまう事の理由には
なりません。だからこそ、僕達はあなたに手を
差し出すんです」
静かに、そう呟く進鬼。やがて彼はそのまま変身を解除した。
フィーネ「例え、そうだとしても、私は……。
この道しか選べなかったのだ!」
ギュッと、クリスタルの鞭を握りしめるフィーネ。それを見た
クリスが飛び出そうとするが、それを翼と斬鬼が止めた。
静寂が流れる。
響「人が言葉よりも強く繋がれる事、分からない私達じゃ
ありません」
また、静寂が流れる。が、次の瞬間。
フィーネ「でやぁぁぁぁっ!」
振り返り、鞭を繰り出すフィーネ。響はそれを躱して彼女との
距離を詰め、胸元で寸止めをした。だが……。
「私の勝ちだっ!」
響「ッ!」
その時響は、未だに鞭が伸びている事に気付いて振り返った。
鞭は空へと向かって伸びて言っていた。それが目指す先は……。
月。正確には、砲撃で砕けた月の欠片だった。
鞭が欠片に突き刺さる。
フィーネ「でやぁぁぁぁぁぁっ!」
そして彼女は、一本背負いのように鞭を引っ張った。
その反動で既にボロボロなネフシュタンの鎧が砕け散る。
「月の欠片を落とす!」
狂気に満ちた表情と共に叫ぶフィーネ。その言葉を聞いた
翼とクリスが振り返り空を見上げる。他の面々も天を
見上げていている。
「私の悲願を邪魔する禍根は、ここでまとめて
叩いて砕く!この身はここで果てようと、
魂までは絶えやしないのだからな!」
次第に、彼女の肉体がボロボロと崩れ出す。
「聖遺物の発するアウフヴァッフェン波形が
ある限り、私は何度だって世界に蘇る!
どこかの場所!いつかの時代!今度こそ
世界を束ねるために!」
皆が皆、月の方だけを見ていた。後ろのフィーネなど、
見てはいなかった。
ある3人を除いて。
「私は永遠の刹那に存在し続ける巫女!
フィーネなのだぁっ!」
狂気に満ちた叫びが響く。その時。
『トンッ』
静かに突き出された響の拳が、彼女の胸を小突く。そして、僅かに
風が吹く。
響「うん、そうですよね。どこかの場所、いつかの時代。
蘇る度に何度でも、私の代わりに、みんなに伝えてください。
世界を一つにするのに、力なんて必要ないって事。
言葉を越えて、私達は一つになれるって事。
私達は、『未来』にきっと手をつなげられるという事。
私には伝えられないから」
その時、彼女は、響は笑っていた。
「了子さんにしか、出来ないから」
フィーネ「お前……。まさか……」
驚いたような表情を浮かべる中、斬鬼、静かに一枚のディスクを
取り出した。
それを見つめる斬鬼である奏。
響「了子さんに未来を託すためにも、私が今を、守って
見せますね!」
その言葉に、フィーネは驚いた表情を浮かべてから、静かに
笑みを浮かべた。
そして……。
了子「ホントにもう。放っておけない子なんだから」
そう言うと、彼女は静かに響の胸に指先を当てた。
「胸の歌を信じなさい」
既に、肉体は滅ぶ寸前だった。
それが、彼女の最後の言葉になる。
はずだった。
その時。
奏「ごめん了子さん」
不意に、後ろに居た斬鬼が手元の一枚の、銀色のディスクを
了子目掛けて投げつけた。
するとディスクが了子の眼前で浮かび、彼女に向かって虹色の
光を照射した。
そして、次の瞬間彼女の体が、完全に砂となった。
だが、その砂の中から光球が生まれ、それがディスクに
吸収されると、ディスクは一人でに斬鬼の元へと戻った。
それをキャッチする斬鬼。
皆が皆、彼女を見ていた。沈黙する斬鬼。そこに、
轟鬼がディスクアニマル用の再生プレイヤーを持ってきて
渡した。
響「奏さん?何を」
奏「良いから」
斬鬼は、プレイヤーの中にセットし、回転させた。
すると………。
フィーネ「ここ、は?」
何と、画面の中にフィーネの顔が映し出された。
クリス「フィー、ネ?」
それを見て、プレイヤーの画面を食い入るように、今にも
泣き出しそうな表情のまま見つめるクリス。
フィーネ「クリ、ス?」
どうやら、彼女も理解が追い付いていないようなのか、
驚いた表情を浮かべた。そして、彼女は静かに斬鬼を
睨みつけた。
「天羽奏。お前何を」
斬鬼「了子さん。あんたには悪いとは思う。けど、あんたの
魂をこのディスクにインストールさせてもらった」
フィーネ「何?」
斬鬼「元々このアニマルには自然の動物の魂を入れて
居た。その力の応用で、ノイズを捕獲して調査
出来るか試すためにこのディスクを作って貰った。
……けど、予想外の事に使う結果になっちまった」
フィーネ「私を閉じ込め、二度とフィーネを復活させまいと
する算段か?」
斬鬼「勘違いしないでくれ。今の私は、そんな事考えちゃ
居ない。……ただなぁ、了子さん。この世界にはまだ、
あんたの力が必要なんだ」
フィーネ「必要、だと?ふ、ふふ。……何千何万と悪役を
続けて来た私に、そのような事。
……私は貴様の両親と妹を殺した張本人でもあるんだぞ?
そんな私に、一体何を求める」
斬鬼「そうだな。フィーネとしてのあんたは、私の家族の
仇だ。……けど」
フィーネ「ん?」
斬鬼「私は、櫻井了子を知る一人の人間として、あんたに
死んで欲しくない。それに、あんたがこれまで
どんなことをして来たとしても、その力は誰かを
助けられる力なんだ。過去はそうでも、未来を
どうするのか、選ぶのはみんなそれぞれの意思だ。
だから私は、あんたを今と言う時間に残す
選択をした」
フィーネ「選択、か」
斬鬼「あぁ。……今の私はあんたに選択肢を与えなかった。
だから恨んでくれていい。それでも、あんたの力は
必要なんだ。だから頼む、『生きてくれ』」
彼女の言葉に、画面の中のフィーネが僅かに驚いた表情を
浮かべる。
フィーネ「生きろ、か。まさかお前からそんな言葉を聞く日が
来ようとはな」
斬鬼「それを言うなら私もだよ。……けどな、それ以前に、
あんたが死ぬと号泣しそうな後輩が目の前に居るんだ」
そう言って、斬鬼はクリスの方に目を向けた。
そして、クリスは斬鬼の視線に気づくと手の甲で涙を拭った。
「ここには、あんたの死を悼む人だって居るんだ。
私も一度は自分を犠牲にしようとした」
その言葉に、翼がハッとなる。
「けど、そんな私だからこそ、『あぁ、やっぱ
生きててよかった』って思う時があるんだ。
……了子さん。少しでも良い。もう少し、
この世界で生きて見ちゃくれないか?」
フィーネ「そうか。……ならば、もう少しだけ、お前達に
付き合うとしよう」
そして、彼らは改めて現実と向き合う。
今この時も、月の欠片が地球へと落下している。
響「了子さん。聞きたいんですけど、私と翼さんとクリスちゃん。
今の私達3人なら、あれを壊せますか?」
フィーネ「……ガングニール、天羽々斬、イチイバル。
限定解除された3つのギアのフォニックゲインを
限界まで高めた絶唱であれば、或いは……」
あおい「そ、そんな!?」
朔也「これまでの戦いのダメージも残っているのに
絶唱なんて!」
フィーネ「それでも、確率は低いと言わざるを得ない」
未来「そ、そんな……!」
奏「……あんな場所じゃ、私達に出来る事は無い、か」
トドロキ「くっ!?」
流石の鬼でも、大気圏外で戦う力は無い。今、あれに
向かっていけるのは限定解除されたギアを持つ響達3人
だけだ。
だが……。
響「確率は低いんですか。でもそれって、0%って事じゃ
無いんですよね」
それでも響は笑いながらそう言った。
翼「それしか無いというのなら、今はその確率に
賭けるのみ!」
同じように、翼も笑みを浮かべる。
クリス「ハァ。現実を見ろっての。どう考えても
こんな状況で突っ込むのバカだろ。……まぁ、
行こうとしてる私もバカなのかもな」
ため息をつきながらも、行く気満々のクリス。
響「翼さん。クリスちゃん」
彼女が二人の顔を見る。翼とクリスは、笑みを浮かべたまま
頷く。
それを見ていたフィーネ。やがて……。
フィーネ「風鳴翼、クリス。そして、立花響」
不意の声に、モニターの方に振り返る3人。
「私が言うのもおこがましいが、生きて帰って来い」
そう言った、直後。モニターの映った彼女の顔が、了子の
それに戻った。
了子「この状況で私の方が生き残ったらすんごい
気まずいんだから!……だから、生きて帰って来なさい」
響「はい!了子さん!」
未来「響」
その時、彼女の名を呼ぶ声に従い、未来の方を向く響。
響「ごめん未来。まだやる事があるんだ。ちょっと行って来る」
そう言って、白い歯を見せながら笑う響。
未来「……響」
響「大丈夫!絶対、帰ってくるって約束するから。
だから、未来も生きるのを諦めないで!」
そして、彼女たちは飛び立った。
成層圏を抜け、宇宙へと飛び出す3人。
やがて、彼女たちは再び歌を歌う。それは、青い星を、命を
守る為の、彼女たち3人の想いと決意が通った、生命の『詠』。
翼≪不思議だ。後悔は無い。それでも、私はもっと二人と、
立花や雪音ともっと歌を歌いたかった≫
響≪……ごめんなさい≫
クリス≪バ~カ、こういう時はそうじゃねえだろ?≫
響≪うん、そうだね。……ありがとう、二人とも≫
そして、3人は加速し欠片へと向かう。
響「解放全開!行っちゃえ!ハートの全部でぇっ!」
3人は手を繋ぎ、一筋の光となって宇宙を突き進む。
クリス≪みんながみんな夢を叶えられないのは、分かっている。
だけど、夢を叶える為の未来は、みんなに等しく
なきゃいけないんだ!≫
翼≪命は、とても脆い物だ。この世界で、その光はとても
簡単に崩れてしまう。だけど、それを止める事は出来る。
誰かと手を繋ぎ、共に戦う事で私達は命の光を
守る事は出来る。そして、新たな時代へと命を
託していく事こそが、生命の営み。だから守ろう。
あの星で生きる命を≫
響≪例え声が枯れたって、この胸の歌だけは絶やさない!
夜明けを告げる鐘の音奏で、鳴り響き渡れ!≫
そして、少女達は想いを胸に、天を駆ける。
≪これが私達の、絶唱だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!≫
歌は天を駆け、星を守る。少女達の想いが、巨大な絶望の
塊を打ち砕く。
そして……。
『ドガァァァァァン…………』
遥かなる空の下で、青い光と鈍い破壊音を、明日夢や
変身を解除した奏、弦十郎達が見上げているのだった。
未来「流れ星……」
3人の少女達の力で破壊された欠片は、より微小の欠片となって
地球の引力に引かれ燃え尽きる。その流れ星の光景は、
どこか幻想的であり、残酷であった。
「う、うぅ。うわぁぁぁぁ………」
そして、瓦礫と化した大地の上に、一人の少女の叫びが
しみわたるのだった。
明日夢「……響ちゃん、翼ちゃん、クリスちゃん」
そして、明日夢もまた震える拳と共に静かに空を
見上げるのだった。
それから、3週間の月日が流れた。
その日、あの戦いでボロボロになった街では土砂降りの雨が
降っていた。
そんな中、未来は一人、百合の花束を携え、とある共同墓地へと
足を運んでいた。
あの月の欠片の破壊以降、響達3人は行方不明となった。
弦十郎達の捜索を空しく、彼女たちが発見される事は無かった。
そして、とうとう未来に捜索の打ち切りと、3人の死亡扱いと
する旨が伝えられた。
そして、その墓地の一角に、名も無き墓として、響の墓が
建てられた。
その墓の前に辿り着いた未来は、花束を供えると、
泣き出してしまう。
そして彼女の心情を現すかのように、一度は止んだ雨が
再び降りだす。
未来「会いたいよ。もう会えないなんて、私は嫌だよ。
響、私が見たかったのは響と一緒に見る流れ星
なんだよ」
涙と共に、心の内を告白する未来。名前の代わりに、墓前に
手向けられた写真の中に響は、何も言わない。
涙にくれる未来。その時。
『キィィィィィッ!
ドカァァァァンッ!』
急ブレーキの音と、次いで何かにぶつかる音が聞こえて来た。
「キャァァァァッ!助けてぇぇぇぇっ!」
悲鳴が聞こえた時、未来は考えるよりも先に駆け出した。
そして彼女は、電柱に突っ込み動かなくなった車の傍で女性と、
女性を囲むノイズを見つけた。
それを見た瞬間、彼女は腰元に下げていたディスクと音笛を
取った。
『ピィィィィィッ!』
音笛の音で起動したディスクたちが、ノイズを足止めし始める。
未来「こっちへ!」
女性の手を引き、駆け出す未来。そして、いつしか雨が止む中、
それでも未来は走り続けた。
『諦めない!絶対に!』
その時、手を引いていた女性が倒れた。
「私、もう」
未来「お願い!諦めないで!」
咄嗟に振り返る未来。だが既に、周囲を数体のノイズに
囲まれていた。
アカネタカたちは、遠くで足止めを続けていたため間に合いそうに
無い。
それでも未来は、倒れる女性を庇うようにノイズの前に
立ちふさがる。
未来『諦めたりしない!私は、絶対に!』
言い聞かせるように、頭の中で叫ぶ未来。
と、その時。
『ドドォォォォォォンッ!』
不意に、彼女の左方向から衝撃波が飛んできて、瞬く間に
ノイズを塵にしてしまった。
慌ててそちらに視線を向ける未来。そこには……。
響「ごめん。色々機密を守らなきゃいけなくて、
未来にはまた、本当の事が言えなかったんだ」
リディアンの制服に身を包んだ響と翼。未来と出会った時の
服装のクリス。そして、烈斬をケースに収めた制服姿の
奏。白衣姿の明日夢や弦十郎達の、近くで待機していた。
やがて、響を前に涙を浮かべながらも未来は駆け出し、
彼女と抱擁を交わすのだった。
一つの戦いが終わりを告げた。爪痕は深くとも、彼女たちは
危機を乗り越え、明日をつかみ取った。
新たなる戦いがまだ待っている事を彼女たちは知らない。
それでも今は、彼女たちの生還こそが最大の吉報だ。
戦いは終わらずとも、世界にはまだ希望が残されている。
歌を武器に戦う少女達と、それを支える鬼たちが居る。
絶望は終わらない。だが、希望が尽きる事は無い。
そして、今この時だけは……。
未来「おかえり、響!」
響「うん!ただいま!」
平和である事が何より良いのだから。
第一期 戦姫絶唱シンフォギア編 完
というわけで、了子生存ルートでした。
次回は短い『戦姫絶唱しないシンフォギア』ベースのお話を
投稿してから、G編に行きたいと思います。