ホント、自分の筆の遅さが嫌になります。
~~前回までのあらすじ~~
フィーネとの戦い、ルナアタックから3ヶ月後。
ノイズを召喚するアイテムであるソロモンの杖の
護送任務を行っていた響、クリス、明日夢の3人。
一方、翼と奏は新進気鋭の歌手、
『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』との
全世界へ向けた合同ライブを行っていた。
しかし、翼とのデュオの直後、マリアは会場内に
ノイズを召喚し、全世界に向けて宣戦布告。
が、今度はそこに烈斬を携えた奏が現れ、
観客だけでは無く、カメラを通して全世界に
配信されている前で斬鬼へと変身してしまった。
奏「さぁ!掛かってこいよぉ!
ノイズどもぉぉぉぉっ!!」
奏の、いや、斬鬼の咆哮が会場中に響き渡る。
マリア『何だ、天羽奏のあの姿は!?
シンフォギア!?違う!
……いや、それ以前にあの姿は!
だが今は!』
次の瞬間、マリアがレイピアのマイクを
振ると、観客を包囲していたノイズが斬鬼
目がけて突進する。
だが……。
奏「おらぁっ!」
『ズバッ!』
「はぁッ!」
『ザンッ!』
襲い来るノイズを、烈斬が切り裂く。
彼女が烈斬を振り抜いた直後、更に別のノイズが
飛びかかるが……。
「せやぁっ!」
振り抜いた勢いを生かし、雷撃を纏った回し蹴り
が繰り出され、ノイズを蹴散らす。
「さぁ!次はどいつだ!」
自らの戦う姿が、全世界に放映されている中で、
奏は仮面の下に獰猛な笑みを浮かべながら戦う。
一方、その頃。ライブを見に来ていた未来は、
同級生の創世たちと一緒に通路を走っていた。
創世「ちょっ!ヒナ!どこ行くの!?」
未来「奏さんの控え室!もしかしたら!」
そう叫びながらも、未来は誰にも妨害される
事無く奏の控え室にたどり着いた。
すぐさま、『ある物』を探す未来。
「え~っと、え~っと。あ!あった!」
そして、未来はギターケースの裏に隠されていた
ケースを見つけ、引っ張り出して開いた。
中には銀色のディスク。ディスクアニマルが
並べられていた。
すぐさま腰元から音笛を取り出し吹く未来。
『ピュゥゥゥゥゥッ』
すると、ディスク達が色づき、アカネタカや
ルリオオカミ、リョクオオザル、スミレコウモリ
となる。
弓美「す、すごっ」
詩織「そうですね」
改めて見るディスクアニマルに驚きを隠せない二人。
未来「お願い!ライブ会場の皆と奏さんを
助けて!」
『ピィッ!』
『ワウッ!』
『ウホッ!』
『キィッ!』
それぞれの鳴き声を上げると、ディスクアニマル達は
部屋を飛び出した。
それを見送る4人。
しかし……。
創世「ん?あれ?」
不意に、創世がディスク達の去っていたのとは
反対側の通路の方へと目を向けた。
未来「どうかしたの?」
彼女の疑問符が気になって振り返る未来達。
創世「あ、いや。今あそこの通路を誰かが
通ったように見えたんだけど。気のせいだよね」
そう呟き、彼女は未来たちと共に元の場所へと
戻る。
彼女の見た物が、気のせいでは無いのだと
気づかぬまま。
その頃、ライブ会場では斬鬼となった奏が
ノイズを相手に戦っていた。
奏「おぉぉぉ!はぁッ!おらぁっ!」
烈斬がノイズを切り裂く。
「どうしたどうしたっ!この程度か!
おらぁっ!」
斬鬼は、ノイズたち、延いてはマリアを煽り、
敵を自分一人に集中させる。
そんな中で肝心のマリアは、動揺していた。
マリア「……」
『そ、そんな。バカなっ!『あの人』
は男だった!』
呆然と斬鬼を見つめながらも、マリアは
動揺を彼女たちに悟られまいと必死隠していた。
『それに、装備も細部も、よく見れば
違う。……彼と同じ力を持った存在が、
他にも居ると言うの?』
冷静に斬鬼、鬼について分析しようとするマリア。
一方で……。
セレナ「ま、まさか……」
画面越しに変身を見ていたセレナは愕然と
なっていた。
「に、似てる。あの人に。まさか、
『あの人』と同じ……」
それは、かつて自らを救った存在と
似ていたのだ。それに驚きを隠せないセレナ。
しかし今はまだその疑問の答えを知る時では
無かった。
戻って、ライブ会場。
奏「はぁっ!」
襲いかかる人型ノイズを竹割のように頭から
真っ二つにするザンキ。
マリア『あの戦闘力、厄介ね。ここは……』
と、踏み込もうとしたマリアだったが……。
『ピイッ!』
「ッ!?何!?」
突如として、数羽のアカネタカがマリアに
群がり牽制する。慌てて後ろに飛ぶマリア。
更に舞台袖から、数十匹のディスクアニマル達
が現れ、斬鬼に加勢する。
奏「お前等……!」
『そうか、小日向か!ナイスだ小日向!』
この場において、アニマルを起動出来るのは
奏と未来だけ。それに気づいた奏が心の中で
ほくそ笑んだ。
『スミレコウモリが居るのなら!』
そう考えた斬鬼は、装備帯から斬轍を取り出すと
それを烈斬に接続する。先端部分が稼働する烈斬。
マリア「くっ!?何をっ!?」
この流れに、警戒心を強めるマリア。それは当然だ。
彼女たちは、鬼に対する情報が少なすぎたのだ。
奏「はぁっ!」
そして、ザンキが近づいてきたノイズの一匹に
烈斬の先端を突き刺すと、そのノイズに背を向けた。
そして……。
「音撃斬!雷電斬震!ハァッ!」
『ギュインギュィィィィィンッ!!』
斬鬼が音撃形態となった烈斬をかき鳴らす。
烈斬から、清めの音の波動が発せられ、それが周囲へと
広がり、それを更にスミレコウモリが拡散させる。
清めの音が広がり、会場中のノイズの体がひび割れていく。
「ハァッ!」
『ギュィィィィンッ!』
最後、盛大に烈斬をかき鳴らした斬鬼。そして……。
『ボロボロ、ドサァッ』
ノイズ達は全て、塵となった。
これには、人質となっていた観客も、そして
テレビ越しに事態を見守っていた人間達も、皆
驚き、声が出なかった。
そんな中で、斬鬼は斬轍を装備帯に戻すと、
烈斬の切っ先をステージに突き刺した。
奏「みんなっ!聞けぇ!」
そして、一度深呼吸をすると、斬鬼は頭部の
変身を解除し、奏としてのそれを晒した。
奏「ノイズは私が倒した!みんなの周りには、
機械の動物たちが居るはずだ!」
彼女の言葉に、観客達は周囲のディスクアニマルに
目を向ける。
「そいつらは私の仲間だ!心配するな!
だからみんなは、今すぐ、落ち着いて
ここから避難しろっ!」
マリア「ッ!?そんな事、させ――」
『ピィッ!』
「くっ!?」
驚き、観客の脱出を阻もうとするマリア。しかし
彼女をアカネタカたちが拒む。
その時。
翼「待てっ!」
不意に、翼の言葉がマイク越しに周囲に響く。
「人質が欲しいと言うのなら、私がなろう!」
奏「は、ハァ!?何言ってんだよ翼!?
お前は民間人だろ!何を勝手に!
逃げろよ!」
敢えて、民間人の部分を強調しそう促す奏。
翼「ありがとう奏。……でも、彼女が再び
ノイズを召喚してしまったら、会場は
混乱に陥ってしまう」
そう言うと、翼はマリアの方へ2歩、3歩と
歩み寄り、立ち止まる。
「マリア・カデンツァヴナ・イヴ!
人質が必要だと言うのなら、この私が
なろう!」
マリア「それは本気で言っているのかしら?
あなた一人の命が、彼ら全員の命と
釣り合うとでも思って居るの?」
翼「そうは思って居ない!しかし、私一人ならば、
いざというとき私を拘束し、何処へでも
連れて行けば良い!それとも、そちらには
この数の人質を、ずっとここに止めておく
と言うのか!そして、それを貴様一人で
どうにか出来ると言うのか!」
マリア「……。ふっ、確かに私一人ではこの数の
人質を管理するには無理がある。痛いところを
突いてきたわね」
観客達の方を見回しながらも、息をつくマリア。
「ふぅ。……良いだろう。オーディエンス
諸君に告ぐ!諸君等は即刻この場より退避せよ!
加えて、貴様もだ。天羽奏。お前も即時この場から
退避すれば、風鳴翼の提案をのもう」
そう宣言するマリア。するとトレイラーから
ナスターシャが通信を掛けてきた。
ターシャ『どういうつもりですかマリア。
こちらの優位を手放すなど。
筋書きと違いますよ』
マリア「このステージの主役は私。
人質なんて私の趣味じゃないわ。
それに、彼女の言葉にも一理あるし」
ターシャ『血に汚れる事を恐れないで!』
しばし、ナスターシャとマリアの間に沈黙が
流れる。
そして……。
『調と切歌を向かわせています。
作戦目的をはき違えない範囲で
おやりなさい』
ナスターシャの方が折れる結果となった。
マリア「了解マム。ありがとう」
そう呟くと、マリアは翼と奏の方へと
向き直る。
「さぁ、どうするの天羽奏。
ここであなたが引かなければ、
もう一度ノイズを召喚するわよ」
奏「ッ!」
マリアの言葉に、ギュッと烈斬を
握りしめる奏。
その時、彼女の肩に翼が手を置く。
翼「お願い奏。今は引いて。私は
大丈夫だから。だから、皆を
お願い」
奏「翼。……分かった。観客が
退避した後、私もあいつらを
連れて出て行く。これで良いか?」
翼の目を見て、奏も覚悟を決めマリアに
問う。
マリア「良いだろう」
その後、観客はアニマルたちに警護されながら、
続々と会場の外へと続く。
そして、観客全員が退避すると、奏も
ディスク達を連れて下がろうとする。
その去り際。
奏「翼。死ぬなよ」
翼「大丈夫。ここは私の死に場所じゃないから」
二人は静かに言葉を交わすのだった。
そして、会場を後にする奏。
しかし彼女はその際に一枚のディスクアニマルを
放つのだった。
マリアと翼だけが残された舞台。
「そう言えば、聞きそびれていた。
ノイズを使ってまで、お前達は
何を望む?」
マリア「そうね。肝心なことを世界に
伝え忘れていたわ」
マリアは、そう言うとマイクを掴み
カメラの方へと視線を向ける。
「この映像を見ている全世界に
告げる!そうだな、まずは
国土の割譲を求めようか!」
その言葉に、翼は驚き愕然となった。
翼「なっ!?1組織が国土の割譲だと!?」
マリア「24時間以内にこちらの要求が果たされない
場合は、各国の首都機能がノイズによって
不全となるだろう」
翼「バカなっ!?それは本気で言っているのか!?」
マリア「えぇ。もちろん。私が王道を敷き、
私達が住まうための楽土だ。
素晴らしいとは思わないか!」
翼「仮に、貴様が本当に土地を求めていると
しても、それで何を成す!まさか、
新たな国家を作ろうとでも言うのか!」
マリア「さぁ。それはどうかしらね?」
唯一残っていた二人。一方で会場に居た
緒川はカメラの中継を止めるために急いでいた。
その過程で彼は二人の少女に出会うのだが……。
彼は知らなかった。その二人が『敵』
である事を。
今、会場は静寂に包まれていた。
マリア「帰る所があると言うのは、羨ましい
物だな」
誰に言うでも無く、静かに呟くマリア。
翼「マリア。……貴様は一体」
問いかける翼。しかしマリアはレイピア型マイク
を翼に向ける。
マリア「観客は皆退去した。周囲への被害を
気にする必要も無い。それでもあなたは
躊躇う?なぜ?当ててあげましょうか?
それはあなたの保身のため!
世界に姿をさらすのは避けたい?だとしたら
それは、あなたの覚悟の程度を物語って
いるわ!」
不敵な笑みを浮かべ、レイピア型マイクを
構えるマリア。
周囲のカメラには、全世界へ中継している所が
映されている。今ここで変身すれば、翼が
装者である事を全世界に知らしめる結果と
なってしまう。
その事実に歯がみする翼。
マリア「ふっ!」
そして次の瞬間、レイピアを構えたマリアが
翼に肉薄し、レイピアを振る。
咄嗟に自分も手にしていたレイピア型
マイクで応戦する翼。
しかし、僅かな打ち合いの後マリアは
体を独楽のように回転させる。
それによって、硬質化したマントが
さながら回転鋸のようになり、防ごうと
した翼のレイピアを根元からへし折る。
翼「っ!」
咄嗟に姿勢を落とし、マントを回避した
翼は距離を取る。
そして、再びマリアが踏み込んでくるが……。
『ワウッ!』
その時、どこからともなく金色の小さな物体が
現れマリアに襲いかかった。
マリア「何っ!?くっ!?」
咄嗟にレイピアで物体の突進を防ぐマリア。
しかし、その物体、コガネオオカミはいとも容易く
彼女のレイピアを破壊すると翼を守るように
着地した。
翼「ッ!これは、奏のコガネオオカミ!」
それは、奏が師匠である轟鬼から譲り受けた
世界でたった一匹のディスクアニマル。
コガネオオカミだった。
マリア「くっ。あのサイズ、まさかさっきの
鳥たちと同じ。……やってくれたわね!」
思わぬ攻撃に歯がみしながらマイクを投げ捨てる
マリア。
翼「奏、ありがとう。……コガネオオカミよ。
力を貸してくれ!」
『ワウッ!』
任された!と言わんばかりに鳴くコガネオオカミ。
マリア「こしゃくなっ!」
それに対しマリアはマントを自在に操り、
槍のように変化させ翼を攻撃する。
咄嗟に左右に別れる翼とコガネオオカミ。
マリアは一瞬双方に視線を巡らせた後、
すぐさま翼の方を攻撃する。
「はぁっ!」
翼「くっ!」
前転でそれを回避する翼。
『ワウッ!』
そこへ一瞬の隙を突いてマリアに飛びかかる
コガネオオカミ。
マリア「鬱陶しい!」
それを手で払いのけようとするマリア。しかし
的が小さく、すばしっこいコガネオオカミを
中々捕える事が出来ない。
その隙に、今度は翼が折れたレイピア型
マイクの先端を掴み、振り上げる。
翼「はぁっ!」
マリア「くっ!?」
打ち据えられるマイクを腕で受け止めるマリア。
「このっ!」
マイクをはじき返し、彼女は狙いを翼に
変更するが、そこに今度はコガネオオカミが
襲いかかる。
「くっ!?」
『この機械、鬱陶しい!こうなったら!』
「はぁッ!」
『バゴォォォンッ!』
マリアは、咄嗟にステージの床を踏み砕いた。
床が隆起し、翼はバランスを崩して倒れ
コガネオオカミも動けない。
翼「くっ!」
倒れた翼はすぐさま起き上がろうとするが……。
『ジャキッ』
マリア「ふふっ」
それを牽制するように、翼の使っていた
レイピア型マイクの切っ先を彼女の喉に
向け、不敵に笑うマリア。
「残念だけど、終わりよ。さぁ、
あの機械に大人しくなるように
言いなさい」
そう言って後ろに振り返るマリア。
『ウゥッ!』
そこではコガネオオカミが飛びかかろうと
隙をうかがっていた。
「止めておきなさい、あなたの
主が怪我をするわよ」
そう言って、レイピアをチラつかせる
マリア。
『ウ、ウゥ……』
それを前に、コガネオオカミは僅かに
萎縮してしまう。
「そうよ。大人しくして――」
と、その時。
『ザザッ!ブツンッ!』
不意に、全世界に映像を配信していた
タワーの映像が途切れた。
「ッ!?何っ!?」
一瞬の事でそちらに気を取られてしまう
マリア。
翼「ッ!はぁっ!」
『ドゴッ!』
マリア「くっ!?」
その一瞬を突いて、翼はマリアの腹部を
蹴る。
そしてマリアの動きが鈍い一瞬のうちに
体制を立て直し翼は彼女と距離を取り、
僅かにタワーの方を確認する。
そこには、『NO SIGNAL』の文字だけが
浮かんで居た。
翼『もしかして緒川さんが?だとしても、
これは好機!』
そして、翼はその詠を歌う。
『Imyuteus amenohabakiri tron』
聖詠を歌った彼女の体を光が包み込み、
天羽々斬のギアを纏う翼。
そして、ギアを纏った翼とマリアが相対する。
翼が右手に刀を持っていると、コガネオオカミ
が彼女の肩の上に飛び乗った。
どうやらコガネオオカミもまだ戦う気の
ようだが……。
「ありがとう。でももう大丈夫。
だから奏の所へお帰り」
『ウゥ……。クゥン』
心配そうに鳴くコガネオオカミ。しかし、
数秒して、コガネオオカミは彼女の
肩から飛び降り、走り去っていった。
それを見送ってから、刀を構える翼。
「これで、お互い後腐れ無く戦えると
言うものだな」
マリア「それで、ギアを纏ったから私に勝てるとでも?」
二人とも、互いに視線を交差させたまま睨み合う。
と、次の瞬間。
翼「はぁっ!」
先に仕掛けたのは翼だった。刀で斬りかかる翼。
マリアは繰り出される連撃を華麗に躱す。
マリア「ハッ!」
そして、マントを操りそれを翼に向けて放つ。
マントを切り払う翼。しかしマントは斬られて
尚も翼に向かっていき、彼女を弾き飛ばす。
翼「くっ。認めたくは無いが、このガングニール。
やはり本物かっ!?」
マリア「ようやくお墨を付けて貰った。そう!
これが私のガングニール!
何者をも貫き通す無双の一振り!」
叫び、マリアはマントを自在に変化させ翼を
攻撃する。それを刀で防ぐ翼。
翼「だとしても、私が引き下がる道理など、
ありはしない!」
攻撃を受け止めながら叫ぶ翼。
その時、マリアの元にナスターシャから通信が
届いた。
その一瞬の隙を突いて翼は大技、『風輪火斬』を
放ちマリアにダメージを負わせた。
マリア「くっ!?」
翼「話はベッドで聞かせて貰う!」
ダメージで動けないマリアに、トドメの一撃を
たたき込もうと迫る翼。
しかしその時、翼の背後から無数の物体が
放たれた。
「ッ!?」
それに気づいた翼は、足を止め振り返り、
薙刀状にしていたそれを高速回転させる事で
物体を防いだ。
翼の視線の先には、マリアとも異なる二人のギアを
纏った少女がいた。
それは、先ほど緒川が遭遇した二人組の少女、
『月読調』と『暁切歌』だった。
調が翼に攻撃を加え、切歌の鎌から放たれた
刃が左右から翼を狙う。
三方向からの攻撃。しかも翼は正面の調の攻撃を
防ぐので手一杯だった。
翼「ぐあぁっ!」
そして、避ける事も防ぐことも出来なかった翼は
大きく弾き飛ばされ倒れてしまう。
マリアの前に着地する調と切歌。
調「危機一髪」
切歌「正に間一髪だったデスよ」
翼「装者が、3人!?」
その数は、二課に所属する装者と同数。
装者の希少性は知れたこと。それが3人も敵側に
居るのだ。驚くなと言うのは無理な話だ。
マリア「調と切歌に救われなくても、あなた程度に
後れを取る私では無いんだけどね」
そう言って不敵な笑みを浮かべるマリア。
と、その時。
奏「だったら私も相手して貰うかぁっ!」
マ・調・切「「「ッ!」」」
突然の声に、3人がバックステップで
距離を取ると、彼女たちの立っていた
場所に電撃を纏った烈斬が突き刺さり、
斬鬼が翼の前に着地した。
翼「ッ!?奏!どうして!」
奏「コガネが戻って来たし会場の中継も
切れたから戻ってきたのさ!」
そう言うと、斬鬼は床に刺さっていた烈斬を
抜き、順手持ちで構える。
一方で、マリア以外の二人は驚いていた。
調「え?う、嘘。あの人って……」
切歌「もしかして……」
マリア「調、切歌」
驚いている二人に声を掛けるマリア。
「ここは戦場よ。気を緩めないで。
後、あれは天羽奏よ。『あの人』
じゃないわ」
翼達に聞こえないように、二人に声を掛ける
マリア。それを聞いた二人も首を振ると
それぞれアームドギアを構える。
「これで3対2ね。数の有利はまだ
こちらにあるようだけど……」
奏「はっ!だったらどうした!その程度で
私達が引くとでも?……あと、教えといて
やるよ」
マリア「ん?」
奏の態度を不審に思ったのか、眉をひそめるマリア。
そして奏は、心の中で不敵に笑っていた。
奏「悪いが、3対2じゃなくて、3対5だ!」
そう叫んだ瞬間、マリアは気づいた。自分たちの
上に現れた大きな影に。
マリア「ッ!?上っ!?」
慌てて見上げるマリア達。そこに現れたのは、
響、クリス、明日夢を乗せて岩国から
向かってきていたヘリだった。
ギアを纏ったクリスと響が飛び降りてくる。
明日夢は生身のまま響が抱えていた。
クリス「土砂降りなっ!十億連発っ!」
生成したガトリングガンを撃ちまくるクリス。
調と切歌は左右に避け、マリアはマントを
広げて盾にした。
その隙に明日夢を抱えたまま斬鬼と翼の
側に着地する響とクリス。
そして、改めて、5人と3人が相対する。
響「止めようよこんな戦い!今日出会った
私達が争う理由なんて無いよ!」
響はそう言って戦いを止めようとするが……。
調「そんなきれい事を……!」
彼女は憎悪にも似た表情を浮かべ響の言葉を
一蹴する。
切歌「きれい事で戦う奴の言う事なんか、
信じられるものかデス!」
更に、それに続く切歌。
響「そんなっ!?話せば――」
何とか説得しようとする響。
しかし、明日夢が彼女の前に手を出し、
響を遮る。
明日夢「残念だけど、今の段階で彼女たちの
説得は無理そうだよ、響ちゃん」
性急すぎる、と言わんばかりに響を止める明日夢。
しかし、響の名前を出したことは、結果的に
不味かったのかもしれない。
調「ふざ、けるな……!」
明日夢「え?」
不意に、先ほど以上に表情を歪ませる調。
これに明日夢は疑問符を浮かべた。
調「お前のような偽善者が、『あの人』と
同じ名前だなんて……!」
明日夢『ッ!?あの人って、まさか……』
奏『立花と同じ名前って……。いやでも、
同名って可能性も……』
調の言葉に、まず真っ先に明日夢と奏の
二人の脳裏によぎったのは、関東最強の鬼と
呼ばれた『彼』の姿だった。
クリス「ちっ。何だあいつ。なんでそこで
キレるんだよ」
一方でクリスと翼は理解が及ばず、戸惑っていた。
そんな時だった。
明日夢「……君たちは、知っているの?」
一歩、前に出た明日夢は静かに語りかける。
「ヒビキさん。って言う男の人の事」
3人「「「ッ!?」」」
明日夢の言葉に3人は息をのんだ。次第に
彼の中で、不確実な可能性が、確定されていく。
明日夢「もし、これの色違いに見覚えが
あるのなら……」
そう言って、明日夢は変身音叉改、音歌を
取り出し、起立させた。
「多分、君たちの知っているヒビキさん
と僕の知ってるヒビキさんは、同じ人
だと思うよ」
確かめるように呟く明日夢。そして、
彼の音歌を見て3人は動揺していた。
マリア『そ、そんなっ!?確かに色は違うけど、
あれは紛れもなく、あの人と同じ……!?』
切歌『ど、どうして、あれと同じ者を
持ってる人が居るデスか!?』
調『間違い、無い。あれは、『ヒビキさん』が
使って居たのと同じ……』
3人は動揺を隠せなかった。だからこそ、明日夢は
確信を得た。
明日夢「やっぱり」
クリス「って!何がやっぱりなんだよ!
私らに分かるように説明してくれよ
先生!」
奏「……多分、先生の言ってるヒビキさんって
のは、私の大先輩だ」
と、呟く奏。
「関東最強の鬼って言われてるくらい強い人だ。
それがお前等と知り合いだったとはな」
心の中で、苦笑を浮かべる奏。しかし彼女は
すぐさま気持ちを引き締めた。
「けど、だからってそれがお前達を見逃したり
する理由にはならねぇ。ノイズを使ってまで
テロを起こした理由。ここでとっ捕まえて
きっちり聞かせて貰うぜ」
そう言って烈斬を構える奏。そして明日夢も……。
明日夢「……」
『キィィィィンッ』
無言で音叉を左手の指で弾き、音を鳴らす。
マリア「ッ。この音は……」
音叉から放たれるその音を、マリアは
知っていた。
音叉を額に翳す明日夢。彼の額に鬼面が
現れ、彼の体を蒼い炎が包み込む。
明日夢「ふぅ。はぁっ!」
そして、呼吸を整えた明日夢が炎を
振り払い、進鬼へと変身した。
調「……やっぱり、同じ」
切歌「今の炎を払うのも、確かに……」
二人は明日夢の変化に驚いていた。
マリア「二人とも、今ここは戦場よ!
気を引き締めなさい!」
その時、マリアが激励を飛ばし二人も
それぞれの武器を構える。
明日夢「君たちが何を考え、こんな事をしたのか、
僕には分からない。それでも、人々の
生活を脅かすのなら、ここで君たちを
捕まえるよ」
そう言って、進鬼は腰元から音撃棒を取り出す。
双方、武器を構える。そして……。
奏「行くぜぇっ!」
まず最初に斬鬼が飛び出した。
狙いはマリアだ。
「おらぁっ!」
烈斬で斬り付ける斬鬼。マリアはマントを使って
その攻撃を弾く。
切歌「マリアッ!」
咄嗟に援護しようとする切歌。しかし……。
クリス「お前の相手は私だっ!」
それをクリスのガトリングガンの攻撃を遮る。
切歌「こんの~!」
彼女は、攻撃を回転させた鎌で防ぎながらクリス
に肉薄する。
「はぁっ!」
そして鎌を振り上げ、クリス目がけて振り下ろすが……。
翼「させんっ!」
二人の間に割って入った翼が切歌の鎌を
受け止めた。
クリス「そらぁっ!」
そして、受け止めた所をクロスボウ状に変化
させたアームドギアからエネルギー弾を
放つクリス。それは翼の右側頭部近くを通過し、
切歌に向かっていく。
切歌「ッう!!」
エネルギー弾は、切歌の肩部アーマーを
掠める。
調「切ちゃん!」
咄嗟に援護しようとする調。
『ボォォォッ!』
「ッ!?」
しかし、彼女の眼前を青い炎が遮る。
飛び退り、炎の来た方に目を向ける調。
炎の正体は、進鬼の鬼火だった。
明日夢「君の相手は、僕だ。はぁッ!」
音撃棒を手にかけ出す進鬼。
調「ッ!はぁっ!」
それに対し、調も小型鋸を無数に発射する
『α式百輪廻』で攻撃する。
明日夢「ふっ!はっ!」
しかし明日夢はその鋸の雨を避け、
炎を纏った音撃棒で破壊しながら進む。
「はぁっ!」
そして、烈火剣で斬りかかる明日夢。
調「くっ!?」
彼女はそれをバックステップで避けると、
ツインテールにも見えるパーツに
巨大な回転鋸を作り出すとそれを進鬼
に向けて繰り出した。
烈火剣と回転鋸がぶつかり合う。
「あなたは、一体……!?どうして
ヒビキさんを知っているの!?」
明日夢「あの人は、ヒビキさんは、僕の、
僕の人生の師匠だ!」
そう叫び、明日夢は回転鋸を弾く。
「君たちがなぜヒビキさんと出会った
のかは分からないけど、それでも、
ノイズを使ってこんな事をする君たちを、
このまま見過ごすわけには行かない!
はぁっ!」
進鬼は烈火剣を手に更に調と戦っていた。
響「あ、あぅ、うぅ」
そんな中、響は戦えずに居た。
彼女には、マリア達と戦う意思がなかったからだ。
そして、それに気づいた奏。
奏「はぁっ!おい立花っ!お前、戦えないの
なら下がってろ!」
マリアと戦いながらも叫ぶ奏。
響「そ、そんなっ!?う、うぅ……!
やっぱり、やっぱりこんなの変だよ!
シンフォギアはノイズから皆を守る為に
あるんじゃないんですか!」
響の言葉が聞こえる中でマリアの攻撃を
烈斬で受け止めている斬鬼。
奏「くっ!?けどだからって、こいつらが
はいそうですかってお前や私の話を
聞くように見えるのかよ!?」
響「でも!だからって……!」
奏「今は戦うしかねぇって事だ!
割り切れねぇなら下がってろ!おらぁっ!」
斬鬼は力任せにマリアを弾き飛ばすと、
マリアを追撃する。
響「そ、そんな……。私は、ただ、皆を、
守りたくて……」
ワナワナと体を震わせる響。その時。
調「それが、偽善なのよ」
響「え?」
明日夢と戦いながら、調は響の方を
睨み付け、そう語りかける。
調「痛みも知らないくせに、『あの人』と同じ
言葉を口にしないでっ!」
そう叫ぶと、調は進鬼と打ち合っていた
回転鋸を響目がけて投げつけた。
自分の意思を否定された事で反応出来ない響。
明日夢「響ちゃんっ!!」
その時、調と戦っていた明日夢が彼女の前に
飛び込み、烈火剣で回転鋸を受け止めた。
「うぅ、うぉぉぉぉぉっ!」
裂帛の気合いと共に回転鋸を弾く明日夢。
「響ちゃん!今僕達は戦ってるんだ!
奏ちゃんの言うとおり、戦えない
のなら下がるんだ!」
響「あっ、ご、ごめんなさい!」
叱責され、ようやく拳を構える響。
しかし、その時。
『カッ!』
不意にライブ会場の中央で閃光が瞬いた。
そして、その光の中から不定形のノイズが出現した。
「うわぁぁっ!?何あのでっかいイボイボ~!?」
調「増殖分裂タイプ……」
切歌「こんなの使うなんて、聞いてないデスよ!?」
突然のノイズの出現に、彼女たちは戦いの手を止める。
しかし、マリアはナスターシャからの命令を聞くと
両腕を組み合わせ、パーツを合体させて槍型の
アームドギアを形成した。
それは、色が違うことを除けば、奏が使っていた
アームドギアと、うり二つだった。
奏「ッ!やっぱお前も使えたのかよ……!
しかももったいぶった感じで今出しやがって」
奏は驚き、内心冷や汗を流しながら烈斬を構え、
翼とクリスもマリアに警戒を強める。
マリアは、アームドギアの穂先を分割させて
銃口を出現させると、ビームを放つ技、
『HORIZON・SPEAR』を放った。
今し方現れたノイズに、である。
明日夢「えっ!?」
クリス「おいおいっ!自分らで出したノイズだろ!?」
突然の行為に驚く明日夢とクリス。
そして、マリア達3人は閃光に紛れて撤退していった。
奏「ッ!?待てっ!」
咄嗟に追おうとする斬鬼。しかし目の前に大きな
ノイズの肉片が落下してきてそれを阻止した。
「クソッ!」
悪態をつく奏。
クリス「折角暖まって来た所で尻尾を巻くのかよ!?」
響「あっ!?ノイズがっ!」
悪態をついていたクリス。その時、響が気づいた。
周囲に飛び散ったノイズが徐々に増殖して居る事に。
翼「はっ!」
明日夢「烈火弾!はぁっ!」
斬撃を飛ばす翼と、火球を放つ明日夢。しかし
攻撃を受けても散らばったノイズの塊はすぐに
元通りになり、更に増殖していく。
奏「クソッ!厄介な置き土産置いて行きやがって!」
クリス「どうすんだ!この勢いだと、直にここから
ノイズが溢れ出すぞ!」
その時、5人の元に緒川から通信が届いた。
それは、会場の外には避難した人々が残っている
事を伝える物だった。
響の脳裏に、未来達の顔がよぎる。
奏「一か八か、私と先生の音撃をスミレコウモリで
増幅してぶつけるか!?」
明日夢「……この場で一番の範囲攻撃はそれだけど、
それで倒しきれるかどうか……」
翼「かといって、無闇矢鱈な攻撃は奴の増殖を
促すだけだ」
クリス「クソッ!どうすりゃ良いんだよ!」
決定打が思いつかない状況に、皆苦い表情を
浮かべる。
その時。
響「絶唱。絶唱です!」
そう叫ぶ響。それを聞いた瞬間、4人は驚いた。
明日夢「まさか、あの合体技を!?」
クリス「あのコンビネーションは未完成なんだぞ!?」
奏「確かにな。けど、奴らの増殖スピードを見ると……」
翼「生半可な技で様子を見るくらいなら、今できる
最高の破壊力の技で一気に殲滅するしか無い、か」
クリス「おいおい本気かよ!?」
と、驚くクリス。しかし今にも彼女たちの眼前で
ノイズは増殖し続けている。
「ったく、迷ってる暇はねぇみてぇだな」
その言葉が合図となって、響、翼、クリスの
3人が横一列にならび、響を中心にして手を
繋ぐ。
それを確認した進鬼と斬鬼は、一旦彼女たちと
距離を取る。
響「行きます!S2CA・トライバースト!」
『『『Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el baral zizzl
Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl』』』
3人が、同時に絶唱を詠う。
そして、次の瞬間。圧倒的とも言えるエネルギーが
彼女たちから発される。
それだけで、近くにいたノイズの塊が吹き飛ぶ。
翼「シューパーブソング!」
クリス「コンビネーションアーツ!」
響「セット!ハーモニクス!」
響が叫んだ次の瞬間、虹色の波動が球形状に
広がっていく。
その中で、響は想像を絶する苦痛を味わっていた。
S2CA・トライバーストは、響、翼、クリスの3人の
絶唱を響が調律し、一つにまとめ上げて放つ技だ。
これによって、翼やクリスに対して絶唱の
バックファイアによるダメージを抑える事が
出来る。但し、その分の負荷を響がその身に
受ける事になる。
力は周囲へと広がり、ノイズの塊を次々と
消し去っていく。
そして、ついにノイズはその細長い本体だけを
残すだけとなった。
翼「今だっ!」
響「レディ!」
彼女の叫びと共に、各部のパーツが稼働し、
さながら放熱板のように内部構造を露出
させていく。
そして響は、両腕の重ねる事でパーツを
合体させ、右腕に装着する。
周囲に広がっていたエネルギーが、響の元
へと集まっていく。右腕を天に掲げる響。
合体し、変形した腕部パーツがギュルギュルと
音を立てて回転していく。
クリス「ぶちかませ!」
響「これが私達のっ!」
飛び出す響。彼女は一直線にノイズに向かっていく。
「絶唱だぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
叩き付けられる右腕。パーツがドリルマシンの
ように稼働し、パイルバンカーがノイズを穿つ。
力は虹色の巨大な渦となって空へと上っていく。
そして、それを見ている者が居た。マリア達だ。
彼女達は驚きを隠せなかった。しかし、彼女達には
もう一つ気がかりな事があった。
マリア「あの白衣の男、確か、ヒビキさんの事を
師匠と」
調「それに、同じような音叉を持っていた」
切歌「けど、それだけじゃ無いデスよ。
天羽奏も似たような力を使ってたデス。
何でヒビキさんと同じ力を持った人間が
二人も、それもあっち側に居るんデスか?」
マリア「それは分からないわ。……けど、敵は
シンフォギア装者だけかと思っていた
事は、改める必要があるわね。
あの二人の存在は完全にイレギュラーよ」
調「……もしかして、戦う事になるのかな?
ヒビキさんと」
調の言葉に、二人は沈黙する。
今、3人の脳裏には、彼の事が思い浮かんでいた。
『よっ。大丈夫か少女!助けに来たぞ!』
『あ~怪我してるのか。ちょっと待ってろよ~』
『ほら、アメ舐めるか?甘いぞ』
『もう大丈夫だ。安心しろ』
『泣きたきゃ、泣いて良いんだぞ。
大人だって泣きたいときくらいある。
それを子供が我慢するなって。それに
よく言うだろ?涙は心の洗濯だって。
だから涙は我慢するな。泣きたい時は、
涙が枯れるまで思いっきり泣け。それでいい』
『え?なんで助けに来たのかって?
そりゃ当然。それが鬼のやるべき事
だからな。それに、大人が子供を守る
のは当然だろ?』
彼女達が思い出していたのは、『あの日』、
自分たちを助けてくれた『彼』の、『響鬼』の言葉だった。
切歌「私、ヒビキさんとは戦いたくないデス」
マリア「……そうね。あの人に刃を向ける事は、
恩を仇で返す行為よね。
私も、出来ればあの人とは戦いたく
無いわ」
そう呟き、3人は夜の空を見上げてからどこかへと
撤退していくのだった。
一方、ナスターシャと一緒に居たセレナも
一連の会話を、マリアの通信機越しに
聞いていた。
だからこそ、驚きを隠せないで居た。
セレナ『ヒビキさんが、二課の関係者と
知り合い。……まさか、ヒビキさんが、
私達の敵に?』
その可能性を考えたセレナの胸は、僅かな痛みを
感じているのだった。
そして、ライブ会場では……。
変身を解除した響が、床に座り込み、
空を見上げていた。
彼女の頭をよぎるのは、調の言葉。
翼「無事か立花!」
そこに変身を解いた翼やクリス、明日夢、奏が
駆け寄る。
響「平気、へっちゃらです」
と、笑みを浮かべている響。しかし4人には
それが作り笑いであることは分かっていた。
なぜなら、響が泣いていたからだ。
クリス「へっちゃらなもんか!痛むのか?」
響を心配するクリス。彼女は、絶唱の負荷に
よるダメージを心配していたが、響は
首を横に振り、それを否定した。
響「私のしてる事って、偽善なのかな?」
そう呟き、項垂れる響。彼女の暗い過去が、
今の彼女の中で蘇る。
と、その時。
明日夢「それは違うよ」
響の前に膝を突いた明日夢が、彼女の
両肩に手を置いた。
顔を上げる響。
響「明日夢、先生」
明日夢「響ちゃん、君は今まで誰かを
守ろうとして、戦ってきたんじゃないの?
小日向ちゃんや、周りに居るみんなの
日常を守る為に、戦ってきたんでしょ?
それを、無駄だって思うの?
間違ってたって思うの?」
明日夢の言葉に、響はハッとなる。
響「思い、ません」
明日夢「響ちゃん。……確かに、誰かと手を
取り合うのは簡単じゃない。でも、
響ちゃんは諦めなかったじゃないか。
人は、ぶつかり合う事だってある。
それでも、わかり合えないなんて事は
決して無い。……だから、僕は
響ちゃんの思いを、偽善だとは思わない」
響「明日夢、先生」
その言葉を聞いた響は、ギュッと明日夢の白衣を
掴んだ。
次第に震える響。
それに気づいた明日夢は、優しく彼女を
抱きしめた。
明日夢「泣きたい時は、泣いて良いんだ。
だから……」
響「明日夢、先生。私、私……。
う、うぅ、うぁぁぁぁぁぁぁ……!」
押し殺していた嗚咽を漏らす響。
そして、新たな戦いの一夜は終わった。
しかし、それは同時に新たな戦いの幕開けと
なったのだった。
第2話 END
次回はアニメ第3話がベースです。