戦姫絶唱シンフォギア 戦姫と音撃戦士   作:ユウキ003

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今回は殆どオリジナルです。


第3話 「真実を告げる時」

~~前回までのあらすじ~~

突如としてノイズを使ったテロを起こすマリア。

そして彼女は響と奏の持つガングニールのギアを

纏うのだった。

そんなマリアと、観衆の前で鬼となって戦う奏。

しかし、翼の提案で奏は観客と共に一度は

ライブ会場を後にする。その後、緒川の活躍も

あって全世界へのライブ中継が遮断。翼も

また、天羽々斬を纏うとマリアと戦闘を

開始する。しかし、マリアの仲間である

調と切歌が合流。更に明日夢や響達までも

合流し5対3の戦いが行われた。しかし

マリア達は戦いの半ばでノイズを召喚し撤退。

響達は新技、S2CA・トライバーストで

増殖型ノイズを退けるのだった。

 

 

ライブ会場での戦闘から、数時間後。

響「ん、ん~~」

ふと、響が目を覚ますと、知らない天井が

目に入った。

 『あれ?私……』

次第に意識がはっきりしてくる響。周りを

改めて見ていると、そこが二課の医務室

だと分かった。そして彼女が周囲を

見回していると……。

明日夢「あっ、目が覚めたんだね、

響ちゃん」

部屋の扉が開いて、私服姿の明日夢が

入ってきた。

響「明日夢先生。あの、私、どうして

  医務室に?」

明日夢「え?覚えてない?その、戦いのあと

    響ちゃん帰りのヘリで眠っちゃって」

響「あっ」

言われて思い出したのか、呆けた声を出す響。

明日夢「それに、未完成だったS2CA・

    トライバーストも使ったから。

    念のため検査と響ちゃんを休ませる

    為にここへ運んだんだ」

響「そう、だったんですか」

呟きながらも体を起こす響。そしてその時、

彼女は自分の体に上にあったのがシーツで

無い事に気づいた。

 「あれ?これって……」

自分の上に掛かっていた白い物をつまみ上げる響。

それはシーツ、では無く明日夢の白衣だった。

明日夢「あ、ご、ごめん響ちゃん!実は

    シーツ全部洗濯しちゃってて!

    あっ!もう洗濯終わったかな!

    ちょっと取ってくるから!」

そう言うと、慌てた様子で明日夢は医務室を

飛び出した。

響は、ボケ~ッとそれを見送ると、改めて

明日夢の白衣に目を向けた。

そして、彼女は白衣を掴んだままボフッと

ベッドに体を倒した。

 

そして、脳裏に調の言葉が思い起こされる。

 

響「ッ」

ギュッと、明日夢の白衣を握る手に力が

籠もる響。調の言葉が引き金となり、

彼女の中の忌まわしい記憶が蘇る。

 

だが、同時に……。

 

   『だから、僕は響ちゃんの思いを、

    偽善だとは思わない』

 

数時間前、嗚咽を漏らす自分を抱きしめ、

優しく自分を肯定してくれた明日夢の

姿が、響の脳裏に浮かび上がる。

響「明日夢、先生」

そして、響はコロンと体を90度横へ

転がした。そして、そのまま明日夢の

白衣をギュッと抱きしめた。

 

そんな状態で呼吸すれば……。

 『すぅ、はぁ。これ、明日夢先生の匂いだ』

白衣に染みついた彼の匂いが響の鼻孔を

くすぐる。

 『そう言えば、明日夢先生には何度も

  助けられたなぁ。2年前も、二課に

  来てからも何度も、何度も』

そして、響は明日夢との思い出を頭の中で

リピートする。

 

彼女の中で、明日夢はいつでも響を、仲間を、

人を守る為に戦っていた。フィーネとの決戦の時、

例え傷ついても立ち上がった彼の姿は、鮮明に

響の中に焼き付いている。

そして、響は先ほど彼に抱きしめられた事を

思い出して顔を赤くする。

 「明日夢、先生」

彼女は、静かに明日夢の名を呼びながら

より強く、ギュッと明日夢の白衣を

握りしめた。

 

そして、もう一度、大きく息を吸おうとした時。

明日夢「ごめんごめん!お待たせ響ちゃん」

響「ッ~~~~~!?!?!?!?」

彼女は驚き、声にならない叫びを上げると

すぐさま白衣を自分から遠ざけ、咄嗟に

眠ったふりをした。

明日夢「あれ?響ちゃん?」

シーツを片手に近づいてくる歩夢。

響「……すぅ」

彼女は、必死に寝たふりをしていた。

 

明日夢「あぁ、寝ちゃったのか」

そう言うと、明日夢は静かに白衣を回収し、

優しく響にシーツを掛けると、机の方へと

行き、メモを書き残すと部屋を後にした。

 

数秒後……。

響『あ、危なかった~~~~~!!!!』

ベッドの中で目を見開き、顔を真っ赤に

していた響。

 『って言うか私ってば何を!?あ、ああ、

  明日夢先生の白衣の、ににに、匂いを

  嗅いで……。ってぇ!何やってるの私~!

  これじゃ変態だよ~~!!』

彼女はベッドの中で悶えまくり、ゴロゴロと

右へ左へと転がる。

やがて……。

 「明日夢、先生」

少しばかり落ち着いた響は頬を赤く火照らせ

ながら、彼の名を呟くのだった。

 

そして、ライブ会場での戦いの翌々日。

響や明日夢達、翼、奏、クリス、未来。

弦十郎達が司令室に集まっていた。

他にも、モニターに映る了子姿のフィーネ。

そして、彼らが見るモニターでは……。

『一昨日、ライブ会場でテロを標榜した

 マリア・カデンツァヴナ・イヴ。彼女は

 組織名フィーネを名乗り、ノイズを

 操る様子がテレビを通して全世界へ

 流れました。しかし、今現在世間を

 騒がせている事実があります。

 それは、ツヴァイウィングの天羽奏

 さんについてです。マリアさんの

 宣言直後、舞台袖から現れた奏さんは

 不思議な力で姿を変え、更にノイズと

 戦いこれを撃破しました。現在日本を

 始めとした世界各国では、奏さんの力に

 ついて物議を醸し出しており、世論は

 奏さん本人の口から真実を語られる事を

 求めています』

と、奏が斬鬼に変身する様子や、戦う様子までを

映した動画を背景に語るアナウンサーの女性。

そしてそのニュースが終わると、テレビ画面が

消えた。

 

弦十郎「と、言う事だ。奏の鬼としての姿が

    全世界にライブ配信された訳だが……」

緒川「現在、新聞、週刊誌を始めSNSなどは

   その話題で持ちきりです。はっきり言って、

   マリアさんのテロ宣言よりも注目度が

   高いのが現状ですね」

了子「奏ちゃん、思いっきり暴れてたわよね~。

   全国配信で」

と、3人の言葉を聞いた奏は、やっちまったと

言わんばかりに顔を両手で覆う。

 

奏「は~~。やべ~。どうしよう私。

  あの時は鬼の使命の事とか考えてて

  後先のこと全く考えてなかった~」

明日夢「ま、まぁまぁ奏ちゃん。過ぎたことは

    気にしても始まらないよ。確かに

やっちゃったけど、人々を守るのが

鬼の仕事な訳だし」

と、フォローを入れる明日夢。

弦十郎「しかしまぁ全世界への配信中に、

だからなぁ。流石の俺たちの手

には負えん」

クリス「つか、ど~すんだよ。一般の奴らに

    知れ渡っちまったし、ネットじゃ

ヘンテコな憶測まで飛び交ってる

らしいぜ。このままスルー

決め込む、ってのは無理だろ?」

響「じゃあ、やっぱり鬼の事、全世界に

発表するんですか?」

未来「でも響。二課の事は言えないんでしょ?

   全部発表するのは無理じゃない?」

翼「そうだ。二課の存在を明るみ出す訳には

  行かない。しかし……」

明日夢「このまま沈黙、ってのも無理だよね」

 

と、皆が揃って頭を抱えていた。その時。

あおい「あっ。風鳴司令。『お客様』が到着

    しました」

弦十郎「おっ。そうか。それじゃあ早速で

    悪いが客人をここへ」

あおい「はい」

オペレーター席に座っていたあおいと

弦十郎のやりとりに、客人の事を

知らされていなかった響や翼、奏、

明日夢たちが首をかしげる。

 

響「お客、さん?師匠、誰か来たんですか?」

弦十郎「あぁ。今回の一件もあって、急遽

    来て貰った。明日夢と奏にとっては

    恩人と呼べる人をな」

その言葉に響達が首をかしげていると……。

 

朔也「司令、お連れしました」

司令室のドアが開いて案内役の朔也が戻ってきた。

そして、彼につられてやってきたのが……。

明日夢「勢地郎さん!」

奏「おやっさん!」

 

明日夢の知り合いにして、奏の師匠、轟鬼が

所属する猛士関東支部の支部長を務める

『立花勢地郎』だった。

勢地郎「やぁ、久しぶりだね明日夢君」

明日夢「はい。お久しぶりです」

彼らの前に立ち、明日夢と握手をする勢地郎。

 

しかし勢地郎の事を知らない響達は頭に

ハテナマークを浮かべていた。

するとそれに気づいた明日夢が彼女達の

方に振り返った。

   「僕と奏ちゃん以外は会うのが初めて

    だよね。この人は、立花勢地郎さん。

    鬼を支援する組織、猛士の関東支部で

    支部長をしている人なんだ」

勢地郎「立花勢地郎です。初めまして」

頭を下げる勢地郎に、響達も驚きつつ頭を下げた。

 

ちなみに……。

翼「立花、か。立花、お前、こちらの立花さん

  とはご親戚か何かなのか?」

響「い、いえいえ。違いますよ翼さん。私、

こっちの立花さんとは会ったこと

無いですよ。偶然ですって」

と、翼の言葉を否定する響。

クリス「にしても、何だってその、猛士って

    所からこのおっさんが?」

弦十郎「もちろん、奏の事についてさ。奏は

    俺たち二課に所属する者だが、鬼の

    案件は、当然それを支える組織である

    猛士にも深く関わる事だ。そのことで

    意見交換などを行うためにご足労願った、

    と言う事だ」

 

そしてその後、司令室の後ろにパイプ椅子と

折りたたみ式のテーブルが置かれ、全員分の

お茶が出された。

 

クリス「って、ここで話し合うのかよ」

弦十郎「ここは潜水艦の中だからなぁ。

    まぁ我慢してくれ」

愚痴を漏らすクリスに苦笑を浮かべる弦十郎。

   「それで、立花さん。はっきり言って、

    猛士の方は、どうでしょうか?」

しかしすぐに真剣な表情を浮かべ、問いかける

弦十郎。

勢地郎「……はっきり言えば、てんやわんや、

ですね。あの日は私も偶然テレビを

見ていたので、事の成り行きは

分かっています。その後すぐ、

私は吉野へ呼ばれました」

翼「吉野?」

奏「あぁ、鬼の総本山さ。さっき言った通り、

鬼は各地の支部に所属してる。一応

だけど、私と先生は関東支部預かり、

って事になってる。んで、そういった

支部のトップとかが集まる時は、吉野に

招集されるのさ」

明日夢「それで、どうだったんですか?」

勢地郎「うん。まず最初に上がったのは、

    奏ちゃんの鬼としての資格を剥奪

    するか否か、だった。最初は剥奪

    するべきだ、と言う人が多かった。

    本来鬼は文明の影で活動していた

    存在だからね。が、その存在が一気に

    世界へと広まってしまった。奏

    ちゃんの責任は大きいと考えている」

奏「やっぱ、そうですよね」

響「じ、じゃあまさか、奏さんのアイテム、

  取り上げられちゃうんですか!?」

驚きながらも身を乗り出す響。

勢地郎「いや、その件については大丈夫な方向に

    話が進んだんだ。……実を言うとね、

    鬼が人前でノイズと戦ったのは奏ちゃん

    が初めてじゃないんだ。前例が

    あるんだよ」

未来「前例?」

翼「あっ。そう言えば、確か3年前の夏に、

  そのような」

勢地郎「そう。当時、偶々鬼の一人が、

    市街地に出現したノイズと遭遇。

    戦闘を行ったんだ。白昼の街中でね」

奏「それが私の師匠、轟鬼師匠だったのさ」

勢地郎「あの当時は吉野からトドロキ君に

    お怒りの手紙が届く程大騒ぎに

    なってね。けど、すぐに二課の人達

    が手を回してくれてね。大事には

    ならなかったんだ」

了子「けど、今回のをもみ消すのはまぁ無理

   よね。奏ちゃんが鬼に変身したのを

   見たのは、億単位の人間。それの口を

   全部塞ぐのは流石にね~」

と言うと、奏は俯く。

奏「うぅ、すんませんおやっさん」

勢地郎「そんなに落ち込む必要はないよ

    奏ちゃん。君は君自身の使命を全う

    するために戦ったんだ。それは私達

    も分かってる」

そう言って笑みを浮かべる勢地郎。

 

クリス「けどよ、実際問題ど~すんだよ。この

    先輩が鬼だって事は世の中に

    知れ渡ってんだろ?

    黙り決め込むわけにも行かねぇし」

勢地郎「そうだね。……実は、それについての

    総本部、吉野の決断なんだけど……」

 

 

 

   「鬼の存在を、『公表』してはどうかと言う

    決断になったんだ」

 

その言葉は、衝撃だったようで皆驚き

目を見開いた。

弦十郎「なっ!?それは本当なのですか!?」

勢地郎「はい。吉野の決定です」

 

奏「な、何でだよおやっさん!そりゃ私が

  バラしたけど、今まで鬼の存在は秘密

  だったじゃねぇか!」

勢地郎「……。確かに、鬼の存在はこれまでずっと

    秘密にされてきたよ。けど、時代は今

    変わりつつあるんだ。……今や社会には

    ネットワークが普及して、スマホ一つで

    そのネットに写真とかを上げられる時代。

    正直、鬼の存在が公の人々に気づかれる

    のは、時間の問題なんじゃ無いかって、

    最近の吉野の会議の議題に上がって

    いたんだ」

未来「あっ!」

と、話を聞いていた未来が突然声を上げ、

みんなの注目を集めた。

響「ど、どうしたの未来?」

未来「ねぇ響。覚えてない?少し前テレビで

   オカルト特集みたいなのやってて、

   二人で見たじゃない。ほら、山中で

   UMAを目撃とかって動画」

響「あ、あ~!思い出した!何かデッカい蜘蛛

  のお化けと人が戦ってる動画!動画

  ブレッブレでよく見えなかった奴!」

未来「そうそれ!あの時は流石にやらせじゃない

   のって二人して笑ってたけど、もしかして」

勢地郎「……恐らく、鬼と魔化魍の戦いだね。

    蜘蛛の化け物、と言うのは多分ツチグモ

    だと思うよ」

クリス「テレビにまで鬼の動画が流れてんのかよ」

翼「それは確かに、時間の問題ですね」

 

勢地郎「もはや、鬼の存在を秘匿出来るのも

    時間の問題なんじゃないのか、って皆

    が考えていた矢先にこれだったからね。

    一部の人は、来るべき時が来た、と

    考えているんだよ」

弦十郎「では、この後は……」

勢地郎「件の人物である奏ちゃん。君の口から、

    鬼のことを世間に伝えて欲しい。

    その存在、魔化魍の存在を」

明日夢「でも、大丈夫なんですか?そんな事を

    して」

勢地郎「心配ないよ。既に鬼の存在は世間に

    知られてしまった。けど、私達には

    別にやましい事があった訳じゃない。

    こう言う場合は隠すと返って勘ぐられて

    しまう事もある。ならばいっそ、潔く

    真実を話した方が、人々に受け入れられる。

    私は、そう考えているよ。……それと、

    これは私情なんだけど。私は関東支部の

    支部長を降りたんだ」

 

と、彼が言うと奏が驚いた表情を浮かべた。

奏「な、何でだよおやさん!?はっ!?

  まさか、私のせいで……!?」

勢地郎「それも、ある。けど別に奏ちゃんだけの

    せいじゃないよ。……私も、もう歳だ。

    後進の育成も兼ねて、次の支部長候補に

    仕事を任せたんだよ。それに、ちょっと

    私用もあって、この近くの街に住む事に

    なったんだ」

明日夢「そうだったんですか?でも、何故?」

勢地郎「実は、その街で菓子職人をしていた友人が

    居たんだけど、少し前に病で亡くなってね。

    その葬儀の席で息子さんから彼が残した

    和菓子工場を継いでくれないかと言われて

    いるんだ。息子さんは既に職についていて、

    彼以外に後を継げるお子さんも居ない。私

    自身は猛士の支部長の仕事もあるし、

    断ろうかとも思って居たんだけど、今は

    さっき話した通り、暇人の一人だからね。

    今後しばらくは、その小さな和菓子工場で

    色々やってみようと思って居るんだよ」

そして、そう言うと、彼は奏の方に目を向けた。

   「だから、奏ちゃんが責任を感じる必要は

    無いんだよ。君は鬼の使命を全うしたんだ。

    胸を張りなさい」

 

奏「おやっさん」

彼女は、そう呟くと表情を引き締め、頬を両手で

叩いた。

 「分かったよおやっさん!私が鬼で居られるのは、 

  おやっさんのおかげだからな。私、伝えるよ。

  鬼の事、みんなに!」

勢地郎「頼むよ、奏ちゃん」

奏「はいっ!」

気合いと共に意気込む奏。

 

勢地郎「っと、そうだった。実はそれとは

    別件でそちらに見て貰いたい物が

    あったんだった」

そう言うと、服のポケットを探る勢地郎。

弦十郎「見て貰いたい物、ですか?一体それは……」

勢地郎「実は、今回の一件で吉野の中の

    記録を色々洗い直したんですよ。

    そしたら……。っと、これだ」

そう言って彼が取り出したのはUSBメモリだった。

弦十郎はそれを受け取り、あおいに手渡した。

彼女はそれをパソコンに接続し、内部の画像

ファイルを起動したのだったが……。

 

弦十郎「ッ!?これは……!」

 

それは、彼らを驚かせるのに十分な代物

だった。

 

 

そして、更に翌日。奏はマネージャーである

緒川を伴って記者会見に臨んだ。

会見の一室には、大勢の報道陣が詰めかけていた。

日本国外の報道陣もたくさん集まっていた。

それだけ、今の奏に対する注目度は群を抜いて

高い事が分かる。

やがて、会見の時間になると奏と緒川が

現れ、それだけで無数のフラッシュが瞬いた。

 

私服姿の奏とスーツ姿の、メガネを掛けた

マネージャーモードの緒川が席につくと、

会見が始まった。

 

そして、まず緒川が立ち上がった。

緒川「それでは、今より天羽奏さん本人の

   口から、先日の事について説明を

   行っていただきたいと思います。

   奏さん」

奏「はい」

緒川からマイクを受け取ると、入れ替わる

ように立ち上がる奏。

 

 「それじゃあ、まずはこの放送を見ている

  ファンや世界の皆へ、あの日の姿を

  隠していた事とかを謝罪したいと思う。

  ……申し訳ありませんでした」

そう言って、まずは頭を下げる奏。

次の瞬間には、フラッシュがいくつも瞬く。

 「で、これは多分、大勢の人が知りたい事

  だと思うけど、あの姿の事について、

  私が知っている事、話せる事を

  この場で、できる限り話して、

  皆に伝えたいと思う」

と、彼女が言うと、記者たちの間に

ざわめきが巻き起こる。

 

司会の男がそれを収めると、奏は静かに

話し始めた。

 

 「順番に行くと、私達の暮すこの日本には

  ノイズとも違う化け物が存在している」

その言葉だけで、記者たちは驚いた。

奏は緒川の方を向き、頷く。

それを合図に緒川はパソコンを操作して、

近くのスクリーンに画像を、魔化魍、

ツチグモの姿を映し出した。

それにどよめく記者たち。

 「こいつらの事を、私達は魔化魍って

  呼んでる。魔化魍は、普通の武器じゃ

  倒せない。そんな魔化魍を倒す為に

  生み出されたのが、鬼の力だ。

  そして、今の私が、その鬼の一人。

  あの時の姿はその鬼になった私だ」

どよめきは、収まるどころか強く

なっていく。

それを何とか、必死に収める司会の男性。

 

 「鬼って言うのは、今言ったように

  魔化魍を倒せる唯一の存在だった。

  こいつらは、日本に古くから存在

  していたし、鬼もずっと昔から

  日本に居た。私が知ってる限り、

  戦国時代から既に鬼は居たらしい」

 

『そんなに古くから?』と、記者の

誰かが呟いた。

 「遙か昔から、鬼は人の目を避けつつ、

  魔化魍と戦い、人々の生活を

  守ってきた。私の知る限り、数百年は。

  そして、最近になって分かった事が

  あった。それは、鬼の力がノイズに

  対して有効だった、と言う事なんだ。

  私が鬼の存在を知ったのは、2年前の

  私と翼のライブでの事だった。

  あの日、私や翼。そして大勢の人が

  ノイズに襲われた。多分、あの時

  被害にあった人もこの放送を見ている

  かもしれない。そして、多分これの

  事も覚えていると思う」

 

そう言うと、奏はマイクを置き、腰元から

3枚のディスクを取り出してテーブルの上に

置くと、右手で音枷をつま弾いた。

清らかな音と共にディスク達が色づき、

起動すると記者達の方を見回す。アカネタカが

狭い部屋を飛び回り、奏が右手の人差し指を

差し出すと、そこに止まった。

 

それだけで、記者達は再びざわめく。

 

 「こいつらの名前はディスクアニマル。

  私達鬼が使役する式神みたいなもんだ。

  そして2年前、あの事件の時ライブ

  会場に現れた大量のディスクアニマル

  によって助けられた人も居るはずだ。

  そして、私もその一人だった」

そう言って奏が指を鳴らすと、アニマル達は

元のディスク形態に戻った。

 

 「あの日、私は偶々ノイズと戦う鬼を

  目撃した。結果的に鬼に助けられた

  私は、その後鬼の事を知りたいと

  思って色々調べた。そして見つけた。

  私は偶然にも、鬼に協力している人達と

  出会った」

記者「鬼に、協力?」

奏「あぁ。……鬼は現代において魔化魍と

  戦っている。そして魔化魍は日本

  全国。それこそ北は北海道。南は沖縄まで、

  どこにでも現れる。そんな魔化魍の

  出現を予測したり、現地まで行って鬼を

  サポートしたり、或いは現地で情報を

  提供したりする人達がいる。私は

  運良くその人達に出会い、鬼の話を

  聞いた。……これは私情なんだけど……。

  私は幼い頃、ノイズに家族を殺された」

 

突然の彼女の告白に、会場はざわめきに包まれる。

 「だからノイズが憎かった。それと

  戦える力があると知った時は驚いたし

  私はそれを欲した。そして……。

  私は鬼になる決心をした」

彼女は、毅然とした態度で静かに語る。

 「それからと言う物、私は一人の鬼を

  師匠として師事し、時間を見つけては

  修行に励んだ。それと、皆には前に

  長期療養と言ってたけど、ごめんな。

  あれは嘘なんだ。あの時の私は鬼

  になる最終的な修行をしていた。

  そして、私は正式な鬼になった。

  その後は皆の知るとおり。私が

  復帰して、ギタリストとして

  デビューして、そして数日前の

  一件だ。……とりあえず、私の

  事とか鬼の大まかな説明はこれ位だ」

そう言うと、奏は席に着いた。

 

司会者「え、え~。それではこれから

    質疑応答に入りたいと思います。

    どなたか、質問のある方は

    挙手を」

と言うと、全員が手を上げた。

司会者の男性は困ったように、一人目を

指す。

記者A「鬼の事については分かりましたが、

    そもそも鬼は全国にどれだけ

    いるのでしょうか?また、

    鬼とは誰でもなれる物なの

    でしょうか?」

奏「鬼は日本全国におよそ百人居る。

  私の先輩達は、全国各地に散って

  日々魔化魍やノイズと戦っている」

『百人!?そんなに!?』と誰かが

驚く。

 

 「また、誰でもなれるのか、って質問

  の答えは、はいでもありいいえ、だ。

  私は鬼の修行を付けて貰う前、歌手として

  活動していたから体の維持も含めて、

  体力作りの為に体を動かしてたし、体力

  には自信があった。でも、修行はめっちゃ

  大変だった。普通のトレーニングなんて

  可愛いくらいのハードな修行だった。

  多分、軍隊の特殊部隊の訓練のハードさと

  比べても遜色ないと思う。また、単に

  体力があるだけじゃ鬼にはなれない。

  ……私の師匠の、更に先輩の言葉

  なんだけど……。

  『鬼になると言う事は、鬼になっては

  いけない』、だ。これは、魔化魍と

  戦う鬼になるには、童話で語られる

  ような、暴れん坊の鬼のようには

  なるな。って意味だと私は思ってる」

記者A「では、逆説的に精神的な強さと肉体的

    な強さがあれば……」

 

奏「あぁ。それさえあれば誰でも鬼に

  なれる可能性はある」

 

鬼になれる。

その言葉に、これまで以上に記者達が

ざわめく。

 

奏「鬼にはなれる。ただし、修行はハードで

  キツいし精神面も色々鍛えないと

  いけない。私も最初はノイズ憎さに

  鬼になろうとしたけど、今は鬼

  として、人々を守るために戦う。

  そう決心してるし、多分憎しみ

  のまま鬼になったら、本当の鬼

  になる。……可能性は0じゃない

  けど、はっきり言って道のりは

  険しい」

 

記者B「鬼は過去から日本各地に現れて

    いたとの事ですが、なぜその

    存在を秘匿し続けていたんですか?」

奏「これは、過去の話だけど。ずっと昔、

  鬼は人を守る存在なのに、

  その異形の姿から人に恐れられ、

  怖がられていたって話を私は聞いた。

  それは多分、現代でも同じ。

  それに鬼や魔化魍の存在を公表

  したらまず間違い無くみんな

  パニックになる。それに、その力を

  軍事利用しようとする奴もいるかも

  しれない。……まぁ私があの時

  堂々と皆の前で鬼になったんだし、

  私が言えた義理じゃないけど……。

  鬼は昔、人に迫害されていたのも

  あるし、みんなが魔化魍の存在を

  知ってパニックにならないため。

  同じように軍事利用されるのを

  避けるため。

  鬼は、あくまでも影から人々を守る

  存在だった。って事です」

 

奏は、鬼についてを語った。そして最後に。

 「それと、私からこれだけは言っておきたい。

  鬼は、決して悪い存在じゃない事を

  理解しておいてほしい。これまでの歴史の

  中で鬼は魔化魍からこの国の人々を

  護り続けてきた。この放送を見ている人

  の中には、私の話に納得出来ない人も

  少なからず居るかも知れない。

  だけど、鬼の力は人々の平和を守る

  為に存在し続けたことだけは、どうか

  理解して欲しい」

 

そう呟くと、奏は頭を下げた。

 

そして、その言葉を最後に会見は終了した。

 

ネットで鬼に関する情報が瞬く間に拡散され、

早速論争の種となった。鬼の存在を危険視する

者や、過去彼らに助けられた事があると主張し、

危険視する者達と対立する者。それを

傍観する者、煽る者。更にそんな存在が

日本にだけいる事に対する不平不満。

鬼を対ノイズの為の戦力として各国にその

力を公開するべきだと叫ぶ者などなど。

ネットの海は荒れに荒れていた。

 

そんな中で、会見を見ていた者達が居た。

 

マリア達だ。

 

マリア「……遙か昔より、この国を守っていた

    人々、ね」

彼女は、忌々しそうにテレビの奏を見つめ

つつも、しかしすぐに表情を曇らせた。

   「だとしたら、あの日私達を

    助けてくれたヒビキさんは……」

調「……鬼、だったんだ」

切歌「デスね」

セレナ「……。ヒビキさん」

マリアと同じように、調たち3人もどこか

悲しそうな表情を浮かべていた。

 

ターシャ「これは、ゆゆしき事態です」

一方、そんな中でナスターシャは眉をひそめ

ていた。

    「まさか、『彼』と同等の存在が

     この国に、それも100人も居た

     なんて。……最悪、その全てを

     敵に回すかもしれないなんて」

マリア「マム、それは……」

言いかけ、マリアは調や切歌、セレナの

方に視線を向ける。

 

ターシャ「皆、聞きなさい。私達の成すべき事

     を思い出すのです。全ては、

     人類を救うために必要な事なのです」

マリア「……分かってるわ。マム。私達は、私達

    の正義とよろしくやっていくしかない。

    そして、立ち止まり振り返る時間も

    無い。そうでしょ?」

ターシャ「えぇ。……時間が無いのです。

     私達には」

ナスターシャは、そう呟きながらモニターの

一つに目を向けた。

 

そこに映る、『怪物』に。

 

 

彼女達にも、彼女達なりの正義があり戦っていた。

しかしそれでも、その心の内は複雑であった。

『恩人』を敵に回すかも知れないと言う、

複雑な心情が。

 

     第3話 END

 

 

IFシーン

それは、勢地郎が司令室を訪れた時だった。

 

響「あっ!え!?おじいちゃん!!?」

彼が入ってくるなり、響が戸惑いながらも

勢地郎に駆け寄った。

勢地郎「おぉ。もしかして響ちゃん?」

響「うん!そうだよおじいちゃん!」

勢地郎「そうか。久しぶりだね響ちゃん。

    それにしても大きくなったね~。

    もう3年ぶりくらいになるかな」

そう言って、笑みを浮かべながら響の

頭を撫でる勢地郎。

 

しかし一方で、これに戸惑う未来や明日夢達。

未来「ひ、響?その人と知り合い、なの?」

響「え?違う違う。知り合いなんてもんじゃ

  無いよ~。私のおばあちゃんのお兄さん

  で、私の大叔父に当る人だよ!」

と、満面の笑みを浮かべながらそう語る響。

そして……。

 

メンバー「「「「「えぇぇぇぇっ!?!?」」」」」

 

※ これにしようかガチで悩んだシーンです。

 

 




個人的には、勢地郎と響の血縁関係、有りにするか
無しにするか結構迷いましたが、無しにしました。

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