戦姫絶唱シンフォギア 戦姫と音撃戦士   作:ユウキ003

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投稿が遅くなってすみません。

それと、今回から台本形式は無しでいきます。


第5話 「真夜中の戦い」

~~~前回までのあらすじ~~~

鬼、音撃戦士の存在が公表された後。響や

明日夢、奏や翼たちは新しく和菓子工場を

始めた勢地郎の元を訪れていた。そこで、彼

から人生の先輩としての言葉を聞く響たち。

一方翌日、町へ買い出しに出ていた調、切歌、

セレナの3人。しかしそんな中で調が貧血を

起こして倒れてしまう。セレナと切歌は偶々近く

にいた勢地郎によって、彼の家で調を休ませて

貰う事に。その後も勢地郎から色々と差し入れ

を貰ったセレナ達。そうして彼女達と勢地郎は

出会ったのだった。

 

 

何だかんだで、マリアのライブ会場での宣言

から一週間が経過していた。

あれからフィーネを名乗っているマリア達に

動きは無かった。

 

そして、二課の仮設基地である潜水艦にて。

「『F.I.S』?」

と、首をかしげながらフィーネに問いかける

弦十郎。

「そうだ」

彼女は静かに頷く。

その司令部にて、弦十郎は響や明日夢、

奏たちと一緒にフィーネ、つまり了子から

話を聞いていた。

「正式名称は米国連邦聖遺物研究機関。

 F.I.Sはその頭文字をもじった略称だ」

「では彼女達はそのF.I.Sのメンバー、

 と言う事なのか?了子君」

「恐らくはな。しかし米国での聖遺物  

 関連の施設が狙われた事を鑑みるに、

 恐らくF.I.Sを離反した物と見て

 間違い無いだろう。そして、あの

 装者の3人は恐らくレセプター

 チルドレンだ」

「『レセプターチルドレン』?って何だ?」

首をかしげるクリス。

「……かつて、私は肉体が崩壊しても

 蘇る話をしたのを覚えているか?

 レセプターチルドレンは、その

 蘇る器となる子供達の事だ」

フィーネの言葉に、響達は一瞬気まずそうな

表情を浮かべる。

「けど、彼等は一体何が目的で……」

しかしすぐに、明日夢の言葉に彼女達の

注意はそちらに向いた。

「そいつは分かんねぇ。けどさ先生」

彼の疑問に、奏はどこか睨み付けるように

前を見据えている。それは戦士の

視線だった。

「奴らはノイズを召喚して操れる。

 それだけで普通の人々からすりゃ

 十分脅威だ。だからこそ、とっ捕まえる。

 彼奴らの理由なんて、とっ捕まえた時に

 聞きゃ良いさ。それよりも私ら鬼には、

 もっとやらなきゃ行けない事があるだろ?」

「……うん。そうだね。戦えない人々を

 守る事。それが鬼の使命だから」

明日夢もまた、奏の言葉に同意し、モニター

に映っていた黒いガングニールを纏った

マリアを、真っ直ぐな視線で見つめるのだった。

 

 

そして、その肝心のマリア達はと言うと……。

「美味しいわね、この魚料理。けどこの

 魚とか料理法とかは?どこで学んで

 来たの?」

「勢地郎さんからです。昨日タッパーを

 お返しに行った時、ちょうど勢地郎

さんがお料理をしていたようで。

 ちょっと教わってきちゃいました」

そう言って笑みを浮かべるセレナ

「こっちのあげだしとうふ、という料理も

 美味しいのデェス!」

「うん、美味しい」

切歌と調も、美味しそうに料理を

食べていた。

何だかんだで、美味しい食事を取っていた。

 

 

あの日、勢地郎と出会ったセレナたち。セレナ

はまだ実戦に参加しておらず二課に顔が

割れていないため、後日料理を入れていた

タッパーを彼の元に返しに向かったのだ。

そしてその日以来、セレナは度々勢地郎の

元を訪れていた。

……と言うか、セレナが行くと勢地郎が

何かしらのお土産や料理を渡したりするので

タッパーを返しに行ってまた何かを貰って

来たり、と言うループが生まれていたのだ。

 

ちなみにここにはナスターシャの姿は無い。

彼女とその『協力者』は、前者は殆ど肉。

後者は殆ど菓子しか口にしないからだ。

 

「勢地郎さんには、本当にお世話に

 なってばかりで。料理を教えて

貰ったり食材を分けて頂いたり。

感謝してもしきれません」

「そうね。……まるで、ヒビキさんの

 ようね。セレナがここに居るのも、

 ヒビキさんのおかげ。そして今、

 美味しい食事をしているのも

 その勢地郎さんのおかげね。

 ありがたいわ」

「えぇ。本当に。……この世界にはまだ、

 優しい人達が居るのですね」

「うん。……そして、だからこそ私達が

ヒビキさんや、勢地郎さんを守る」

「そうデス。今度は、私達の番デェス」

 

彼女達4人は、静かに決意を固めていた。

彼等を守る為に、戦うと。

それが、どんな結果を招くのか、知りも

しないまま。

 

 

一方その頃、響、未来、翼に奏、更には

編入してきたクリスが通うリディアン音楽院

では秋の学園祭に向けた準備が進んでいた。

 

フィーネとの戦いによって、リディアン

は崩壊。町も被害を出し、加えてリディアン

周辺はエネルギー汚染が酷く、閉鎖区域

となっている。それにともなって

リディアンも移転。未来的な校舎とは

反対に、趣のある学校へと変わっていた。

 

そんな中で、明日夢は学園の見回りを

していた。学園祭の準備のため、学園の

中は慌ただしい為、生徒達が怪我でも

していないか、心配だからこその

見回りだった。

特に学園祭まであと3日と迫っているため、

最後の追い込みを掛けている生徒達も

いて、更に慌ただしくなっているからだ。

 

そんな中で……。

『平和だなぁ』

夕暮れの校舎に残って、準備に勤しむ生徒達を

見ながら小さく笑みをこぼす明日夢。

『あ、そう言えば先生も身近な人を

 招待して良いって言われてたし、

 折角だから勢地郎さんを招待

 しようかな?』

などを考えながら歩いていた明日夢。

 

と、その時。

『ブブブブッ!』

ポケットに入れていた通信機が

振動した。それに気づいた明日夢は

周囲を見回した後、物陰に入る。

そして、彼は通信機を取り出し、スイッチ

を入れた。

「はい、安達です」

『明日夢、俺だ。今は大丈夫か?』

声の主は弦十郎だった。

「はい、大丈夫です」

『そうか。では早速本題に入る。

 先日の事件の武装集団、『フィーネ』

 の潜伏先と目される場所を発見した。

 今夜にも、響君たち装者3人と

 明日夢、奏の2人を合わせた

 5人全員で仕掛ける。詳しい話は

 また後だ』

「ッ、はい。分かりました」

 

明日夢は、表情を引き締めながら頷き、

通話を終えた。

そして、彼は静かに通信機を握りしめる。

『あの子達は、ヒビキさんを知っていた。

 それに、あの子達の口ぶりからして、

 きっとヒビキさんに助けられた事が

 あるのかもしれない。……どうして、

 彼女達がヒビキさんを知ってる

 のかは、分からないけど……。

 でも、僕は戦う。戦えない人々を

 守る事が、鬼の使命なんだから』

 

人を守る鬼が、人と対立する事実に、

明日夢は思う所があった。

だが、ノイズを操る彼女達を好きに

させるわけにはいかない。

明日夢は、静かな決意と共にその場を

あとにした。

 

そして、夜。響たち装者3人と明日夢、

奏の2人を合わせた5人が、夜の

廃病院に近づいていた。

緒川が調べた結果、ここに2ヶ月前から

物資が運び込まれている、と言う事は

分かったが、それ以上の事は分かっては

いなかった。

 

「あの子達、こんな町のすぐ傍に

 居たんですね」

「灯台もと暗し、って奴だな」

響の言葉に、烈斬を背負っている奏が

呟く。

「みんな、出来るだけ慎重に行くよ?

 ここは、あの子達の基地みたいな

 物だからね。罠とかにも、十分

 警戒してね」

明日夢の言葉に、4人が頷く。

 

そして、5人は病院の中へと突入した。

 

病院の中を進んで居た彼等だったが、

突如としてあちこちから赤いガスの

ような物が吹き出す。

「これは、毒ガス、じゃないか」

医者としての立場から、赤いガスを

警戒する明日夢。彼は咄嗟に

白衣の袖で口元を覆う。

『いや、でも意味も無くこんな物を

 まき散らすとは思えないし、

 何だ?これは……』

必死に思考を巡らせる明日夢。

 

だが……。

「っと、お出ましのようだぜ?」

奥を警戒していた奏が何かに気づくと、

烈斬を覆っていたカバーを取り外し、

それを地面に突き刺した。

 

その時、前方の暗がりの中からノイズ

が現れた。

 

「どうやら、この奥に奴らがいるのは

 間違いなさそうだな」

そう言って、クリスが奏の横に並ぶ。

そして……。

 

『カシュッ!ヴェヴェェェェェェンッ!』

奏が音枷をつま弾く。

 

『Killter Ichaival tron』

 

クリスが聖詠を詠い、その身に

シンフォギアを纏う。

 

更に、天井を突き抜けてきた落雷が

奏の周りに落ち、彼女もまた鬼、

斬鬼へと姿を変えた。

そして、開幕早々クリスのガトリング

ガンがノイズを撃ち倒していく。

更に無数のノイズがクリスに向かって

行くが……。

「はぁっ!」

斬鬼の烈斬がノイズを切り裂く。

 

更に、同じく変身した響、翼、

明日夢が二人の傍に立つ。

そしてクリスと奏が飛び出す。

「立花!私達は雪音のカバーだ!

 懐に潜り込ませるな!」

「はいっ!」

飛び出した二人がクリスに近づこう

とするノイズを倒して行く。

「おらぁっ!」

「はぁっ!」

斬鬼と進鬼の二人も、音撃真弦・烈斬と、

音撃棒・風神、雷神を使ってノイズを

切り裂き、打ち砕いていく。

 

しかし、響、翼、クリスと戦うノイズが、

一度は炭化してもすぐに再生してしまう。

対して、進鬼と斬鬼は問題無くノイズを

倒している。

 

そして戦闘開始から数分。装者3人の息が

上がり始めた。

「ッ!?響ちゃん!翼ちゃん!クリスちゃん!」

進鬼は、彼女達の様子がおかしい事に

気づいて、3人を包囲していたノイズを

口から放つ青い鬼火で焼き払い、更に奏も

雷撃を纏ったチョップでノイズを倒し

ながら3人のフォローに入る。

 

「どうしたんだよ翼!いくらなんでも

 息が上がるの速すぎるだろ!」

「す、すまない奏。でも、ギアの

 出力が、落ちて……」

「何だって?」

翼の言葉を聞き、進鬼は周囲に視線を

巡らせ、そして気づいた。

 

「ッ!まさか、この赤いガスのせいか!」

先ほどから周囲に充満している赤いガス。

それが彼女達に影響しているのでは、

と言う仮説を立てる明日夢。

『このままじゃ不味い!幸い鬼の僕と

 奏ちゃんには影響が無いみたい

 だけど……』

そう考えながらノイズを迎撃する明日夢

と奏たち4人。

 

そして、何とかノイズを撃退したその時。

 

「ッ!皆気をつけて!」

奥の暗がりから、化け物がクリス目がけて

突進してきた。彼女と怪物の間に割って

入りこれを殴り飛ばす響。

怪物は天井を蹴って再び飛びかかって来る。

それを切り裂こうと剣を振るう翼。

 

だが、剣は火花を散らし、吹き飛んだ

だけだった。

「何っ!?」

「アームドギアで迎撃したんだぞ!?」

その事実に驚く斬鬼とクリス。

「気をつけて!あれは普通じゃない!」

進鬼はそう言って音撃棒を構え、警戒心

を強める。

 

「まさか、ノイズじゃない、の?」

ぽつりと、頭の片隅に浮かんだ疑問を

口にする響。

『パチパチパチ』

その時、通路の奥からゆっくりと拍手の音

が聞こえてきた。

 

そちらに目を向ける5人。そこにいたのは……。

 

「ッ!?ウェル博士!?」

相手が、数日前のソロモンの杖強奪事件

で行方不明になっていた人物、

ウェル博士だと気づいて驚く進鬼。

「な、なんでアンタがここに!?」

その現場に居たクリスも同様に

驚いている。

 

すると、先ほどまで戦っていた怪物が、

ウェルの傍にあったケースの中へと

戻っていく。

 

「意外に聡いじゃないですか」

そう言って余裕そうな表情のウェル。

「そんなっ!?だってウェル博士は、

 基地が襲われた後、行方不明に……!」

「ノイズに襲われた人間は、みんな

 炭になる。遺体の身元確認なんか 

 出来やしない」

響の言葉を斬鬼が否定する。

「どの炭が誰の体だったかなんて

 分からないんだ。……アンタかよ、

 ウェル博士。列車襲撃と、岩国基地

 襲撃の犯人はよぉ!」

ウェルに烈斬の切っ先を向ける斬鬼。

 

「へぇ?気づきましたか。その通り。

 正解ですよ」

「ッ!?じゃあ、列車に乗ってた時

 には……」

ウェルの言葉に戸惑う響。

「えぇ。明かしてしまえば簡単な種

 ですよ。あの時既にケースの中

 に杖は無く、杖は僕のコートの下

 にあった、と言う訳です」

「つまり、あの襲撃は、自作自演、

 と言う事ですか。ウェル博士……!」

ウェルの言葉に、進鬼は憤り、

基地で襲われ命を落とした兵士達の

顔が脳裏に浮かぶ。

 

「テメェ!何が目的だ!」

奏はウェルに向かって敵意を剥き出し

にしたまま咆える。

「ふふ、聞けば答えるとでも?

 そんなにすぐ目的を話してしまっては、

 面白くないでしょう?」

そう言うと、ウェルは杖を使って

ノイズを出現させる。

 

「バビロニアの宝物庫からノイズを

 召喚し、使役するソロモンの杖。

 ……素晴らしい力だ。そして、

 その力こそ自分が持つに相応しい。

 そうは思いませんか?」

「ちっ!思うかよ!」

 

ウェルの言葉を、歯がみしながら否定

するクリス。するとノイズ達が一斉に

向かってくる。クリスはサイドスカート

を展開しミサイルラックを解放するが、

負担が彼女の体に重くのし掛かる。

 

「ッ!?バカっ!無茶すんじゃねぇ!」

かつてLiNKERを使って戦っていた

経験のある奏が、クリスを心配して

止めるように促すが……。

「っるせぇぇぇぇっ!」

クリスは叫び、ミサイルを発射した。

しかし……。

「ぐあぁぁぁぁっ!?」

ミサイルを発射した直後、体を貫く

激痛に、彼女はたまらず悲鳴を上げて

しまう。

 

ミサイルがノイズの群れに着弾し、爆炎

が広がる。

 

ノイズを盾にして外に逃れるウェル。

彼の後を追って外に出る5人。だが、

クリスは無茶をした結果ダメージが

大きく、今は進鬼に肩を貸して貰う

形だった。

 

それは、ギアの出力が低下した状態で

無理に大技を使った事による反動、

バックファイアが原因だった。

 

『この状況で出力の大きな技を使えば、

 最悪の場合そのバックファイアで、

 身に纏ったシンフォギアに殺され

 かねない』

ボロボロのクリスを見てそう判断する翼。

『今の状況で、まともに戦えるのは

 鬼である先生と奏だけか』

彼女は、ウェルと対峙する二人の

背中を見つめながら、内心そう呟いた。

 

その時。

「あっ!?」

上へと視線を向けた響が何かに気づいた。

「ノイズがさっきのケースを持って!?」

それは、先ほど襲いかかってきた怪物

のケースを、バルーンのような飛行型

ノイズが運んでいく姿だった。

 

振り返ったウェルに対して、拳を構える響。

しかしウェルは、余裕の表情で両手を挙げ、

降伏のサインを示すだけだ。

 

「立花!先生!その男の捕縛と、雪音を

 頼みます!私はあのケースを!」

そう言って駆け出す翼。

 

そして、彼女が走っていると……。

「翼ぁっ!」

後ろから、バイクに乗った斬鬼が

追いついてきた。万が一車両などで

逃走された時、追いつけるようにと

奏と明日夢は、バイクで病院の近くまで

来ていたのだ。

 

並走する斬鬼のバイクと翼。

「乗れっ!翼!」

「えぇっ!」

斬鬼の言葉に翼は頷き、バイクの後ろへと

跳躍。そこに立ち、斬鬼の肩に左手を置く。

「行くぞ翼!振り落とされんなよ!」

「分かってる!」

 

スロットルを吹かして加速するバイク。

徐々に距離を詰めるバイク。

だが……。

「ッ!?道がねぇ!?」

彼女たちの進む先で、道が途切れていた。

 

その事に一瞬迷う奏。

だが……。

 

「そのまま突き進み飛べ!奏!翼!」

通信機を通して弦十郎の声が聞こえる。

その声を聞いた瞬間、奏は迷いを捨て、

アクセルを目一杯捻る。

そして……。

 

「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

斬鬼の操縦するバイクが、道の端から

跳躍する。だが、それだけではノイズ

に届かない。

『ダメかっ!?』

奏がそう考えた次の瞬間。

 

「仮設本部!急速浮上!」

「アイアイサー!」

通信機越しに、弦十郎と了子の声が

聞こえる。

 

そして、斬鬼と翼の眼下の海を割って、

海中から潜水艦が現れた。

その舳先に音を立てて着地するバイク。

しかし濡れた舳先でタイヤがスリップ

しそうになる。

「行っけぇぇぇぇぇぇっ!翼ぁぁぁぁぁっ!」

「えぇっ!」

 

奏に後押しされ、翼はバイクを蹴って跳躍。

脚のスラスターを使って跳躍。飛行型

ノイズへと接近し、これを切り裂いた。

 

落ちていくケース。これを捕えようと

追っていく翼。

あと少しで手が届く。

ウェルを捕えた響とクリス、進鬼も

道の淵からその様子を見ていた。

 

 

だが……。

『バキィッ!』

「ぐあっ!?」

横合いから飛んできた何かに弾き飛ば

され、海に落下してしまう。

「翼さんっ!?」

彼女を心配し叫ぶ響。

 

その時、海上に一本の槍が浮かんだ。

「ッ!?あれって!」

それを見た進鬼は、まさかと思った。

そして、その予感は当った。

 

浮かぶ槍の石突きの上に立つ、黒い

ガングニールの装者、マリア。

ケースは彼女に回収されてしまった。

 

そして、それと同時に夜が明けた。

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ……!」

静かに彼女を警戒する進鬼。

その時。

「時間通りですよ、『フィーネ』」

3人に拘束されていたウェルがポツリと

その名を呟いた。

 

「フィーネ、だと?」

それを咄嗟に問い返すクリス。だが、

その声色に浮かぶのは、驚愕、と言う

より疑問の色だった。

 

そう、フィーネは死んではいない。

彼女は今、自分達と共にいる事は

知っているからだ。

 

「えぇ。そうですよ。終わりを意味する

 名は私達の象徴であり、彼女の

 二つ名でもあります」

「え、えっと……」

ウェルの言葉に響は戸惑った。

 

『了子さんは今生きてるし、でも

 マリアさんがフィーネ?

 了子さんが体を失ったから、

 マリアさんがフィーネとして

 覚醒したとか?あれ?でも

 フィーネな了子さんは

 生きてるし、でもマリアさんも

 フィーネって……。

 あ~も~~!全然分かんない~!』

と、頭の中でこんがらがってる響だった。

 

 

そして、会話を聞いていた司令船の中では……。

「ブラフだな」

本人である了子、フィーネがそう呟いた。

「ブラフ、だと?」

「そうだ。確かに私の肉体は消滅した。

 だが魂は今もここにある。ディスク

 とは言え、器の中に魂が完全な状態で

 保存されている今、私は死んでいない。

 つまり形はどうあれ、生きているのだ。

 であればこそ、新たな私が覚醒する

 事はありえない」

弦十郎の言葉に応えるフィーネ。

「そうか。しかし、ならば何故彼女は

 フィーネの名を……」

「恐らくは、組織のまとめる偶像的

 存在なのだろう。ともかく、何らかの

 理由があって付いた嘘、と考えて

 良いだろう」

 

それを聞いた弦十郎は、響達に通信を

繋いだ。

「全員、よく聞け。彼女はただ単に

 フィーネを名乗っている偽物に過ぎない。

 『本物のフィーネ』、了子君からの

 お墨付きだ。その辺りは一切気にせず

 に行け!」

「っ!やっぱりっ!」

通信の内容に笑みを浮かべる響。

 

「やっぱり?」

その傍で首をかしげるウェル。すると

響は咄嗟にそっぽを向いてしまう。

その行動を訝しむウェル。

 

だが、事態は動く。

落下した翼は、スラスターで海上に浮かぶ

とマリアに攻撃を仕掛ける。だが

マリアもそれを受け止め、更に反撃し

潜水艦の上に弾き飛ばされてしまった。

「くっ!?」

「翼!」

そこに合流する斬鬼。

 

そして、それを追って甲板上に着地するマリア。

「双翼の力、存分に見せて貰おうか!」

彼女は、そう叫ぶと翼に飛びかかり、手に

したアームドギアを振り下ろす。

「上等だぁっ!」

だが、それを斬鬼の烈斬が受け止め、同時

に体から雷撃を流し、マリアを退かせる。

 

「……雷を操る力か。厄介な」

一旦距離を取るマリア。

「行くぜ翼!私達であいつを倒して、

 色々聞かせて貰うじゃねぇか!」

「えぇ!私達2人が揃えば、

 恐るる物などあらず!」

烈斬を構える斬鬼、即ち奏と、

刀を構える翼。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」

甲板を蹴って駆け出す2人。

2人目がけて、マリアは硬質化させた

マントで攻撃を仕掛けた。

「道を開く!行け翼!」

そう言って斬鬼がマリアのマント攻撃

を受け止め逸らす。

そして斬鬼の背を飛び越えて、マリア

の懐に飛び込む翼。

1撃、2撃と打ち合い、マリアの

アームドギアの一撃が翼を弾き飛ばす。

だが直後、斬鬼が飛び込み、マリア

を斬り付ける。

「くっ!?」

アームドギアで受け止めるも、攻撃を

した一瞬の隙を突かれた為、防ぎきる

事が出来ずに弾き飛ばされた。

 

「ならばっ!」

マリアはマントを竜巻のように変化

させ、翼と斬鬼にぶつけた。

何とか受け止める物の、勢いに負けて

押し戻される翼と斬鬼。

翼は、上に回り込み攻撃を仕掛けよう

とする。

 

だがマリアはそれを読んでいたのか、

マントの竜巻の中からアームドギア

を繰り出し、翼を弾き飛ばした。

続けて鞭のように繰り出される斬撃。

「させるかぁっ!」

だが、それを斬鬼の烈斬が受け止めた。

「翼ぁっ!」

「えぇっ!」

再び斬りかかる翼。マリアは攻撃を

アームドギアで受け止めた。

 

「流石は双翼か。だが、その程度で

 私が負ける道理は無い!」

「負ける道理が無いのはこちらも 

 同じ!」

そう言って戦うマリアと翼。

 

だが……。

『翼、奏!マリアを振り払うんだ!』

そこに弦十郎の通信が届いた。

3人の戦闘の結果、司令船が損傷している

からだ。

 

「簡単に言うなよなおっさん!」

「だがそれでも、やるしかない!

 奏!」

「おぉっ!行くぜ翼ぁっ!」

飛び出す斬鬼。それに続く翼。

マリアは警戒し、アームドギアで

まず斬鬼を弾き、次いで翼に対処

しようと、頭の中でプランを組み立てて

いた。だが……。

「おらぁっ!!」

「何っ!?」

斬鬼が烈斬を投げた事が予想外だったのか、

彼女はそれを咄嗟にアームドギアで防いだ。

だが……。

 

「鬼闘術……!」

「ッ!?」

その一瞬の隙を突いて、斬鬼がマリアと

距離を詰めていた。

「雷撃拳っ!!!」

そして、雷撃を纏った拳がマリアの

腹部にたたき込まれた。

 

「ぐっ!?あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

体を走る痺れと痛みに叫ぶマリア。

そして、動けなくなった所を、翼の

刀が振り下ろされる。

マリアは何とかそれをアームドギアで

防ぐが、力が入らずに弾き飛ばされて

しまった。

 

「よしっ!」

そして、戦いを見守っていたクリスは

静かにガッツポーズを浮かべた。

 

だが……。

「っ!?危ないっ!」

何かに気づいて警告を発する進鬼。

見ると、いくつもの回転鋸がクリス、

響、進鬼に向かって来た。

 

咄嗟にそれを回避する3人。だが、

攻撃を避けた結果ウェルの拘束を

響が離してしまった。

「何と、イガリマァァァァッ!」

そこに突如として現れた切歌。

彼女はソロモンの杖を持っていた

クリスに襲いかかった。

 

ギアのバックファイアのダメージと、

出力が低いために思うように動けない

クリス。そして……。

「そこデェス!」

『ガキィィンッ!』

切歌の鎌型アームドギアが、クリスの

手にしていたソロモンの杖を弾いた。

「っ!?しまったっ!?」

「ソロモンの杖がっ!?」

戸惑うクリスと響。

 

「っ!!」

取りこぼすまいと、咄嗟にソロモンの杖

に向かって跳躍する進鬼。

だが、あと少しと言う所で横合いから

接近してきた回転鋸の雨を、咄嗟に

鬼火で迎撃し防いだ。だが……。

 

「取った……!」

「っ!?しまったっ!」

その隙に、ソロモンの杖を調に

奪われてしまった。

着地した進鬼の傍に集まるクリスと響。

 

向こうもウェルとソロモンの杖を回収

している。

「くっ!?響ちゃんはクリスちゃんの 

 援護を!ソロモンの杖は、僕が

 奪還する!」

「明日夢先生っ!」

そう言って前に出る進鬼。

 

「させないデスよ!」

ソロモンの杖を持つ調に向かっていく進鬼。

だが、それを切歌が割って入り妨害する。

進鬼の青い二振りの烈火剣と切歌の鎌が

ぶつかり合う。

 

そのまま火花を散らす2人。

「君たちは、一体何が目的なんだっ!」

鍔迫り合いをしながら問いかける進鬼。

「何故ソロモンの杖を狙う!?あれが

 どう言う物か、知ってるだろう!?」

「当たり前デスっ!」

一旦は進鬼を弾く切歌。だがすぐに、

距離を詰められ再び鍔迫り合いになる。

「それでも使うのデス!『正義では

 守れない物を、守るために』っ!」

 

「だったら何で使う!ノイズは、

 ただ人を殺すために生み出された!

 それを操るだけの、ソロモンの杖で!

 人を殺すだけの兵器を使って、一体何を

守るって言うんだ!!」

「ッ!!?」

 

明日夢の言葉は、切歌に、そして調にも、

衝撃を与えた。

 

ソロモンの杖は、ノイズを召喚し操る。

普通に考えれば、それはノイズの軍隊を

持つ事になる。だが……

『それだけ』だ。

殺す事しか出来ない兵器だ。

『それで何が守れる』。

それが、明日夢の意思だ。彼の抱いた疑問だ。

 

「君たちが何の為にソロモンの杖を

 欲するのか理由は分からない!

 でもっ!これだけは言える!

 それは人が手にして良い物じゃない!」

「ッ!だったら、お前達なら良いって

 言うつもりデスか!」

「そんなつもりも無いっ!」

切歌の言葉に、明日夢はそう叫ぶ。

 

「ノイズの存在は、ただ人々を不幸

 にするだけだ!そしてそれを生み出す 

 ソロモンの杖は、封印されるべき

 物なんだ!!」

そう言って、進鬼の刃が次第に切歌を

押し込んでいく。

パワーもさることながら、体格でも

負けている切歌は押し負け、その場に

膝を突いた。

 

「切ちゃん!」

その時、調が援護の回転鋸を放ち、

進鬼は咄嗟に後ろに飛んでそれを

回避する。

 

再び向かい合う進鬼と調・切歌。

そのまま3人は、互いに睨み合う。

 

一方、船の上では……。

「うっ、くぅっ」

マリアが、痺れた体で何とか立ち上がった。

『ギアが、重い。それに体も。

 これが、ヒビキさんと同じ力。

 ……何百年も、この国を守ってきた

 精強な鬼の後継者の力か』

そう考え、マリアは内心唇を

かみしめる。

 

その時、『近くに』いた輸送機の中から

セレナの通信が届く。

『姉さん。戻って下さい。既に博士と

 杖は2人が回収しました。 

 ネフィリムも回収済みです。

 適合係数も低下しています。すぐに

 戻って下さい』

「くっ!?時限式ではここまでなの!?」

と、悔しげに吐き捨てるマリア。

 

「何?時限式?」

「まさか、マリアも奏と同じ……」

彼女の言葉の意味を瞬時に理解する斬鬼と翼。

 

時限式とは。

シンフォギア装者は、融合体となった響を

例外とすれば2種類に大別できる。

翼とクリスのような、先天的な適性を

持っている者。

 

もう一つは、了子が生み出したLiNKER

によって足りない適性を補う者だ。

これに当てはまるのは、LiNKER無し

ではギアを纏えなかった奏。そして、

今の言葉からマリアが当てはまる。

LiNKERを使えばギアを纏う事は

出来るが、体への負荷も大きい事に

加えて時間経過と共に適合係数が

下がる。かつて奏はそんな現状に

歯がみしながらも、自分を時限式と

揶揄していた。

 

そして、そんな奏だからこそ、今が

攻め時だと理解しているのだ。

「逃がしゃしねぇぞぉ!」

「ッ!?」

隙を見て突進する斬鬼。

 

だが、直後に彼女達の間にノイズが

出現した。それは道の淵にいた

ウェルが放った物だ。

「くそっ!?このっ!」

それを手にした烈斬で切り裂く斬鬼。

「奏っ!っ!?」

援護に行こうとする翼だが、最初に

ケースを拾おうとして食らった攻撃の

ダメージが膝に残っており、その場

に膝を突いてしまった。

 

その時、突如として風が吹き荒れた。

慌てて顔を手で覆う翼。

すると、何も無いように見えた空間から、

突如として1機のティルトローター式の

航空機が現れた。

「ッ!?どっから現れた!?」

これに戸惑う翼と奏。

 

そして、航空機はすぐさまマリアを回収

すると、更にウェル、調、切歌の3人を

回収し、姿さえも消し去る光学迷彩の

力で、クリスの狙撃から逃れ、朝焼けの

空に消えていくのだった。

 

それを見送る事しか出来ない進鬼。

『何故、彼女達がソロモンの杖を狙う。

 そこまでして守りたい物って。

 『正義では守れない物も守る

 ために』って。一体何なんだ』

 

進鬼は、そんな疑問を抱きながら、

輸送機が去って行った朝焼けの空を

見つめるのだった。

 

     第5話 END

 

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