~~前回までのあらすじ~~
喧嘩によって仲が最悪な状態になってしまう響と未来。
そんな中未来はノイズとの戦いで倒れていたクリスを見つけ、
行きつけのお好み焼き屋、フラワーの元へと運び込んだ。
クリスから独特なアドバイスを受ける未来。
一方の響も翼からのアドバイスを受けて未来と仲直りの
道を探そうとした。
そんな矢先にノイズが襲来し、クリスはアニマル達と共に。
響は明日夢と共に戦った。
そして、そんな戦いの中で響は未来と仲直りするのだった。
それから数日後。
リディアン地下にある二課の基地内にやってきた響と未来。
未来はあの後、明日夢からの進言と弦十郎の根回しによって、
二課の外部協力者と言う立場を得るに至った。
で、今日はその説明を受けに来ていたのだ。その時だった。
未来「ねぇ響。一つ聞いても良い?」
響「はぇ?何?」
説明を受けた後、少しだけ待っていて欲しいと言われた
ミーティングルームで待っていた時、未来は疑問に思った事が
あった。
未来「響と翼さん、それに奏さんはシンフォギアを使える
装者なんだよね?じゃあ、明日夢先生のあれは?」
響「あ~。えっと、明日夢先生のあれはシンフォギアじゃなくて、
鬼、音撃戦士って言うんだって」
未来「音撃、戦士?」
響「うん。私もよくは知らないんだけど、ず~っと昔から日本に
存在してた魔化魍って言う妖怪みたいな怪物から大勢の人を
人知れず守ってきたのが鬼なんだって。
で、鬼の力はどういうわけかシンフォギアと同じように
ノイズを倒せるみたいなんだ。だから一緒に戦ってるんだ」
未来「へ~」
と、頷いていた時だった。
明日夢「ごめんごめん。待たせちゃったね」
部屋の自動ドアが開いて、白衣姿で中くらいの箱を抱えた明日夢が
入ってきた。
テーブルを挟んで二人の向かい側に腰を下ろす明日夢。
そして、その手にしていた箱に注意が向いている響。
響「明日夢先生、その箱は何ですか?」
明日夢「これは小日向ちゃんへの贈り物だよ」
未来「贈り物?私にですか?」
と、疑問符を浮かべる未来の前に箱を差し出す明日夢。
明日夢「まぁ、とりあえず開けてみて。大したものじゃ
無いから」
未来「は、はぁ」
と、から返事をしつつ箱を開ける未来。中に入っていたのは……。
「これって、笛と、DVD、じゃない。円盤?ディスク?」
銀色の笛、本来は練習用のための音笛だった。
更に、5枚のディスクとそれを左の腰元に装備するための特注の
ベルトだった。
響「あ、ディスクアニマル」
未来「え?何、そのでぃすくあにまるって」
と、呟く響と疑問符を浮かべる未来。すると……。
明日夢「ディスクアニマルって言うのはね」
と、言いつつ、自分の左腰に装備されている3枚の内の、アカネタカ
1枚と音叉を取り出し起立させる明日夢。
「僕たち鬼が使役する式神みたいなもので、こうすると……」
音叉をアカネタカに打ち付けた。すると銀色一色が赤く色づき、
アカネタカが変形して起動。
テーブルの上に着地して未来や響の方を向いた。
未来「す、すごい」
明日夢「このディスクは、鬼が索敵とか戦闘支援に使うアイテムで、
小日向ちゃんに渡したのは、アカネタカ、ルリオオカミ、
リョクオオザル、アサギワシ、キアカシシの5枚だよ。
一応、その子達もノイズと戦える力があるから。
お守り、というか護衛というか。……まぁ、
まずは使ってみた方が早いかもね。ディスクに向かって
その笛を吹いてみて」
未来「は、はい」
そう言って、未来は左手で音笛を持ち、右手で5枚のディスクを
笛に前に来るように持つ。
『ピィィィッ』
そして、音笛を吹き澄んだ音を出す。すると、ディスクが
赤、青、緑、薄緑、オレンジと言った色に色づき、次の瞬間
未来の手を離れてテーブルの上に着地した。
各々の鳴き声を上げながら、未来に挨拶をするアカネタカたち。
やがて、笛を置いた未来が手を出すと、ルリオオカミとキアカシシは
その手の上に乗り、アカネタカとアサギワシは未来の肩に
止まり、リョクオオザルは彼女の膝の上に立ったりした。
「えっと、その。これからよろしくね」
と、未来が挨拶をすると、アニマル達は元気に鳴き、やる気を
示すのだった。
その後、部屋を後にした響と未来は廊下で翼や緒川と合流し、
更に了子もやってきて会話を弾ませたりしていた。
そして、更にその後……。
明日夢「え?みんなでデート?」
医務室で書類整理をしていた明日夢の元に響が来てそんな事を
言い出したのだった。
響「はい!私と未来、それに翼さんも一緒なんです!それで
折角だからお世話になってる明日夢先生も誘おうと思いまして!」
明日夢「そ、それなら女子会って事で3人で行って来たら?」
響「それじゃダメですよぉ!日々お世話になってる恩返しも意味も
あるんですからっ!」
と、熱く語る響。実は了子との話の時、恋バナに発展しかけたのだ。
で、その後響と未来で歩いていた時だった。
響「はっ!?そう言えば、私って交際経験ゼロ!?」
不意に立ち止まって、この世の終わりみたいな顔でそんな事を言い出す響。
未来「私も無いよ、交際経験なんて。というか、響ってばまさか
了子さんの話に触発されたの?」
と、付け足す未来。
響「だってだって~!世間だとよく『命短し恋せよ乙女』って言うじゃ~ん!
私だって恋とか色々してみたいよ~!」
と、何がどうなってか分からないが駄々をこねる響。
未来「そうはいっても響。リディアンは女子高みたいな物だし、私も響も
男の友達なんて居ないでしょ?」
響「う~。そうだけど~。……ハァ、私の身近な所に男友達が居ない
なんて。私、呪われてるかも」
と、ため息をつき落ち込む響。それを見て未来は……。
未来「一応聞いておくけど、響って好みはどうなの?年上?年下?
それとも同い年?」
響「え?」
と、いきなり振られた話題に疑問符を浮かべてから腕を組み、
う~んと唸る響。
「年下は、無いかな。同い年は、あんまり接した事ないから
分かんないな~」
未来「じゃあ、年上?明日夢先生みたいな?」
響「あ~。そう言えば私の周りに居る男の人ってみんな年上だった。
それにしても、明日夢先生か~。そうだな~。先生は優しいし
気配り上手で、アドバイスとかもくれるし、確かに明日夢先生
みたいな人と付き合えたら最高かな~」
と、そう言いつつにひっと笑みを浮かべる響。しかし、次の瞬間
ハッとなった響は……。
「そうだ~!私デートに明日夢先生誘って来る~!」
と言って一目散に駆け出していった。これにはさしもの未来も
驚き……。
未来「ひ、響~!教師と生徒の恋愛はどう、か、と」
と、突っ込もうとしたが既に響は走り去っていたのだった。
こうして、明日夢は響の押しに負け、女子3人のデートに
保護者という名目で参加する形で折れた。
一方、クリスはというと……。
『ピィッ』
コンビニの物と思われる袋を下げたアカネタカ二匹が、クリスの潜伏
している廃アパートのベランダに現れ、リョクオオザルがベランダの
窓を開けると、アカネタカたちはその袋をクリスの前に置いた。
中身はコンビニのお弁当やパンなどだった。
クリス「……。ありがとな」
と、恥ずかしそうに礼を言うと中身を取り出し開けるクリス。
お弁当などは雨に濡れている物の、僅かに温かい。僅かだが
その温もりがクリスの手に広がる。
恐らく買って温めた物を誰かがアカネタカに託してここに
運ばせたんだろう、とクリスは思った。
また、アカネタカに限らず今クリスと行動を共にしている
アニマル達は10匹ちょっとだった。
残りはどこかへと一度去って行き、ふと気づくと戻ってくる。
で、今度は残っていた奴らが交代でどこかへ行き、しばらくすると
また戻ってくるのだ。
クリスは知らない事だが、ディスクアニマルには活動限界が
あるため、今はアニマル達が交代でクリスの監視、というか世話などを
していた。
実際、今部屋の隅ではリョクオオザル達がクリスの食べ終わった
弁当の容器をゴミ袋に纏めていたりしていた。
これにはクリス自身、心の中では感謝していた。
クリス『今にしてみれば、私はこいつらとこいつらの主に世話に
なりっぱなしか。……どこのどいつだ?こいつらの主は』
そう思いながら、食事を終えたクリスは近くにあった毛布を取って
包まった。
そのまま、考えを巡らせるクリス。
『あいつら、一体誰が作ったんだ?フィーネ、な訳ないか。
ノイズと戦えるなんて、一般人に作れる訳ないし。
まさか特機物の奴らか?……。いや、だとしたらとっくに
こいつらが奴らをここに連れて来てるはず。
じゃあ、私の知らない他の奴らが?』
と、考えていたその時だった。
『ギィッ!』
不意に木の床がきしむ音がした。咄嗟に入り口の壁際に立ち、
拳を握り構えるクリス。
アカネタカたちも入り口の方を注視していた。
やがて、足音が近づいてきたその時。
『バッ』
入り口からコンビニの袋らしき物が差し出され、驚いたクリスだが
相手はその驚きの内に部屋の中に侵入し、クリスと真正面から
向き合った。
クリス「……誰だよ、おっさん」
弦十郎「はじめまして、かな。特異災害対策機動部二課司令、
風鳴弦十郎だ」
と、弦十郎が名乗った途端に胸のイチイバルを右手で握りしめつつ、
左拳を構えるクリス。
クリス「へぇ。あんたが特機物の親玉かい。私に何のようだ?
テロリストを捕まえにでも来たってか?」
出来るだけ平静を装いつつ辺りを見回すクリス。周囲では
アニマル達が落ち着いている様子だった。
『なんでこいつらは動かない?まさか、やっぱり特機物の
回し者だったってか!?』
そう思い、ギリッと奥歯を噛みしめるクリス。しかし……。
弦十郎「俺としては腹を空かせているだろうと思って色々買って来た
つもりだったんだが……。要らん世話だったようだな」
部屋の片隅に片付けられたごみを見ながらそう言う弦十郎。
「全く、明日夢の奴も案外勝手で困る」
そう言いながらため息をつく弦十郎を見て、クリスは訝しんだ。
クリス『こいつ、今の今まで私の傍にこいつらが居た事を知らない?
どういう事だ?……。いや、明日夢って確か、あの紫の
鬼野郎の事だろ?どういう事だ?』
と、ますます事態が分からなくなるクリス。その時だった。
弦十郎「明日夢は俺の部下だ」
と、まるでクリスの心を見透かしたかのような一言に、流石に
我に返って弦十郎を警戒するクリス。
「だが、あいつが君の世話をディスクに任せた事は、俺達
二課の人間が知らなかった事実だ。俺は俺のルートで君の
居場所を調べ、ここへ来た」
クリス「へぇ?じゃあ何か。あんたの仲間は私の居場所を知ってて
あんたらに教えなかったってか?甘ちゃんな上に、私も
随分嘗められたもんじゃねえか!」
ギュッとイチイバルを握りしめるクリス。しかし……。
弦十郎「……俺には明日夢の意図を完全に理解する事は出来ない。
だが恐らくあいつは、一人の人間として、人々を守る鬼
として、君を放っては置けなかったんだろう」
クリス「人間を守る、だと?……っざけんなっ!今更大人が
いい子ぶるんじゃねえよ!クソッタレのクズどもがっ!
今更、何もしてくれなかった大人がヒーローを気取るんじゃねえっ!」
そう言うと、クリスは弦十郎の横をすり抜け、窓ガラスをぶち破って
ジャンプ。イチイバルを纏うとその場を去って行った。
そして、ディスクたちもまた、各々の足でクリスを追いかけて行った。
弦十郎は、雨の降る、クリスが去って行った町をそこから見ている事
しかできないのだった。
やがて、雨の降りしきる中で空き地の一つに着地するクリス。
すると、追いかけていたアニマル達が追い付きて来た。だが……。
「来るんじゃねえっ!」
『ガシャッ!』
振り返ったクリスはアームドギアをクロスボウの形にして
ディスクたちに向けた。
「テメエらも、私が大嫌いな大人の手先だってわけか!
全く、そんな奴らに感謝してたなんて、私も大概なバカ
だったって訳かよ。……畜生……!」
やるせなさを吐露するクリス。やがて、一度は止まったディスクたち
だったが、少しずつクリスに歩み寄る。
「ッ!来るなっつってるだろ!」
やがて、ディスクたちはクリスの前に集まるとその場に座った。
犬のようにお座りするルリオオカミ。地面に着地するアカネタカ。
両腕を地面に付けたまま、クリスの持つクロスボウを見つめる
リョクオオザル。
彼らは皆、銃口を向けられようが逃げようとはしなかった。
クリスを攻撃しようとはしなかった。彼らにとって、クリスは
守るべき存在だからだ。
そして、同じようにディスクたちは理解していた。クリスが今自分達に
怒っているのだ、と。撃たれるだけの理由がある、と。
そして、クリスもそのディスクたちが持つ覚悟を理解した。
彼らの無機質な体に宿った『優しさ』。みどりが作り上げた
ディスクたちの持つ、その『心』の温かさを。
やがて、クリスの手がカタカタと震える。それでもディスクたちは
動かない。
そして……。
「クソッ!クソクソクソッ!」
何かを罵るようにそう呟いたクリスは、アームドギアをしまうと
また歩き出した。
無言でその背に、ディスクたちを引き連れながら……。
数日後。一方の響達はというと……。
翼「……。遅いっ!」
明日夢「予定を20分はオーバーしてるかな」
と、デートと言うか、お出かけのための約束の集合場所の集合時間に
集まっていたのは私服姿の翼と明日夢だけだった。
と、そこへ私服姿の響と未来が走ってきた。
響「すみません翼さん、明日夢先生!」
息を切らしながら走ってきて、翼と明日夢の前で膝に手を当てて
息を整える二人。
翼「遅いわよ」
未来「も、申し訳ありません!お察しの事と思いますが、
響のいつもの寝坊が原因でして」
明日夢「う~ん。遠足に行く前の子供、みたいな?楽しみ過ぎて
眠れなかった、とか?」
響「そ、そんな事は~」
未来「な、何言ってるの響!実際その通りじゃない!楽しみ過ぎて
寝れない~って言ってたじゃない!」
そんな事を言いつつ、顔を上げた二人は改めて翼と明日夢の服装を
見た。翼はショートパンツにシャツ、肘までの袖の青い上着。腿の
辺りまであるロングソックスに帽子を被っていた。
一方の明日夢は紺のジーパンに白いシャツ。シャツの上に濃緑色の
フィールドジャケットを、前を開ける形で羽織っていた。
響『ふ、二人ともカッコいい~!後、明日夢先生っていつも白衣が
多かったから、何か私服姿が新鮮だ~!』
と、心の中で思う響だった。
その後、町中でのショッピングや映画鑑賞、ソフトクリーム片手に
町を散策したり、服屋で色々な服を着て見たり、翼の正体がバレそうに
なって逃げたり隠れたり、と色々な場所をめぐって行った。
今はゲームセンターでクレーンゲームを前にしている4人。
響「翼さんご所望のぬいぐるみは、この立花響が必ずや手に入れて
見せます!」
明日夢「って、がんばるのは良いけど、破産しないようにね?」
と、やる気満々の響と苦笑する明日夢。
で、ケータイで決済をするとボタンを叩きながら……。
響「きぇぇぇぇぇっ!」
とUMAもびっくりな奇声を上げる響。
明日夢「こ、こらこら!周りに迷惑だから変な声出さないの!」
と、慌てて窘める明日夢。しかし響はクレーンを操作して猫の
ぬいぐるみを取ろうとしたが、失敗した。
響「このゲーム壊れてる~!どうせ壊れてるならこれ以上壊しても
問題ないですよね!?シンフォギアを身に纏って~!」
明日夢「それは立派な器物損壊罪だから!」
と、明日夢は立派に暴走する響にツッコみを入れるのだった。
更には翼や未来まで止めに入った結果、大声を出せる場所にと
言う事で……。
明日夢「大声出せる場所って、カラオケか~」
そう言いつつ、カラオケの部屋の一つに入る4人。
トップアーティストである翼と共にカラオケに来れた事を
興奮する響と苦笑する明日夢だったが、それはそれで結構
楽しんだ4人。
ちなみに、翼がいきなり演歌を歌い始めた時は未来と明日夢が、
『し、渋い』と声をはもらせたりした。
その後、夕暮れ時にちょっとした高台の公園にやってくる4人。
やがて翼は、今日巡った町を知らない世界と例えたが、響は
そんな事無いと言って、翼に町の夕暮れの景色を見せる事で、
今日のデートは締めくくられた。
後日、リディアン屋上に響、未来、翼、明日夢が集まっていた。
響「えっ!?翼さん、アーティストフェスで歌うんですか!?」
と、驚く響。翼の話だと、元々予定されていた出演なのだが……。
その会場というのが……。
明日夢「ここって」
そう言いつつ、明日夢は『2年前の』と言う言葉を飲み込んだ。
しかし……。
響「あの時の」
どうやら響も自力で気づいたようだ。その会場というのが、
2年前、響がガングニールの破片を受け、明日夢が初めて変身し、
そして、運命の転換点となったあのステージだった。
翼「立花には辛い会場だな」
と、どこか申し訳なさそうに言う翼と、同じく表情を曇らせる明日夢。
しかし……。
響「ありがとうございます、翼さん」
と、なぜかお礼を言って来た。
「いくら辛くても、過去は絶対に乗り越えて行けます。
いえ、過去は変えられないからこそ、過去だと私は思います。
過去を含めて、今の私なんです。だから、今の私なら大丈夫です。
ありがとうございます、翼さん」
その言葉に、翼と未来、明日夢は笑みを浮かべるのだった。
やがて、そのライブの日がやってきた。
で、響はというと……。
明日夢「良いのかな~これ」
と、ヘルメットを被りながら呟く明日夢のバイクの後ろには
同じくヘルメットを被った響が座っていて明日夢のお腹に
手を回していた。
響「アハハハ~。すみません先生。ちょっと遅くなっちゃって」
と言って苦笑いを浮かべる響。彼女はライブに遅刻しそうになった
のだが、偶々彼女を見つけた明日夢がバイクを止めて彼女に話しかけた
所、便乗したという流れだった。
だが、その時不意に明日夢と響の通信機が同時になり始めた。
路肩にバイクを止め、二人ともヘルメットを取って通信機を
取り出した。そして、画面を見るなり驚き振り返った明日夢と
響の目が合い、互いに頷いてから通信に出た。
明日夢「もしもし、明日夢です」
響「同じく、響です」
弦十郎『ノイズの出現パターンを検知した。これから翼にも
連絡を——』
と言おうとした時だった。
響「師匠。現場には、私と明日夢先生だけで行きます」
後ろで響がそんな事を言っている中、無言を貫く明日夢。
「あのライブは、翼さんにとって大切なライブだと思うんです。
だから、水を差したくないんです。お願いします」
と言うと、弦十郎は……。
弦十郎『二人だけで、やれるんだな?』
響「はいっ!」
明日夢「大丈夫ですっ!」
と、二人そろって気合の入った返事をした。
やがて、通信を切り、再びヘルメットを被る明日夢と響。
響「ごめんなさい、明日夢先生。私、何か巻き込んじゃう形に
なっちゃって」
明日夢「全然平気だよ。……僕も、翼ちゃんにはライブを成功させて
欲しいって、思ってるから」
そう言うと、ヘルメットのフェイスガードを下ろす明日夢。
「だから行こう、響ちゃん。翼ちゃんのライブは!」
響「私達が守るっ!」
彼女が叫んだ瞬間、二人を乗せたバイクは疾走しだした。
一方、ノイズが発生した場所ではクリスが戦っていた。
敵は普通の雑魚の群れと、要塞のような形をしたノイズだった。
要塞型ノイズではクリスの砲撃を物ともしない防御力を持っていた。
しかも要塞型からは常にノイズが吐き出されていて、完全なじり貧
状態だった。
周囲ではアニマル達も戦っているが完全に焼け石に水だった。
と、その時要塞型からの砲撃がクリスに向かって来た。
砲弾としてドリル状になった飛行型が打ち出された。
クリス「くっ!?」
咄嗟に避けようとするクリス。と、その時一匹のアカネタカが
砲弾の進路に割り込んだ。
「っ!?バカッ!逃げろ!」
しかし、アカネタカは逃げなかった。砲弾がアカネタカにぶつかり、
その片翼を弾き飛ばした。
砲弾は破壊されたが、その時の衝撃で壁に激突して動かなくなるアカネタカ。
「なっ!?……くそ、くそっ!!クソッタレ!!!
何で、お前ら、そんな必死に、私を……。
チクショォォォォォォォォッ!!!」
やるせなさを胸に叫ぶクリス。再び砲撃が彼女に向かって放たれた。
その時。
響「たあぁぁぁぁぁぁっ!!」
明日夢「はぁっ!!!」
横から現れた、変身した響の飛び蹴りと明日夢の音撃棒の一撃が
砲弾ノイズを倒した。
クリスの前に着地する二人。そして響は右手のギアを伸長させると、
胸に前に集めたエネルギーを握りしめて突進。
瞬く間の大多数のノイズを目にも止まらぬ速さで撃破した。
「はぁっ!」
同じように、烈火弾を放ってノイズの群れを焼き払う明日夢。
その時、今度は響を狙って要塞型が砲弾ノイズを放って来たが……。
『バババババッ!』
それをクリスのガトリングの銃弾が横合いから撃ち抜いた。
彼女の方を向く響。
クリス「貸し借りは無しだっ!」
その言葉に笑みを浮かべながらも、戦いに戻る響。
結果的に響、クリス、明日夢、ディスクたちが協力する形となった。
そして……。残すは要塞型とその周囲の雑魚のみ。
明日夢「響ちゃん!トドメは任せるから!」
響「はいっ!」
クリス「おらおらおらっ!」
駆け出す明日夢と彼の言葉に返事をする響。そして、クリスは
ミサイルや銃弾で雑魚を薙ぎ払い、明日夢の道を作った。
そして、要塞型の脇に滑り込んだ明日夢がその体に音撃鼓を
叩きつけた。
シュルシュルと巨大化する音撃鼓。
明日夢「おぉぉぉぉぉっ!ハァっ!」
『ドンドンドンドドン!』
音撃棒を叩きつけ、清めの波動を叩き込む明日夢。すると固い
要塞型の側面が炭化し、炭となって消え去った。
それによってバランスを崩した要塞型ノイズが倒れる。
響「でやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
そこに、右手のギアを限界まで引き延ばした響が跳躍してきて、
通常のそれを上回る威力の打撃を打ち込み、要塞型のどてっぱら
を見事に穿ち貫いた。
そして、一方の翼と言うと……。
ステージで歌を歌い終えた直後、彼女は自分が歌を愛している事を、
自分の胸の内を観客に伝えた。改めて、自分にとって、歌手としての
自分がどういう存在なのかを。翼自身が思い描く未来のビジョンを。
そして、その最後、自分の我儘を許してほしいと。その時。
奏『許すさ。当たり前だろ?』
不意に、翼の耳に奏の幻聴が聞こえて来た。
そして、同時に鳴り響く観客たちからの歓声。翼はその声に、
泣きながら笑みを浮かべていた。
で、実はと言うと……。
一人の女性と思われる人影が静かにライブステージを後に
しようとしていた。
そしてその女性は、深めに被っていた帽子を取ると、オレンジ色の
ロングヘアを晒すと、ライブステージの方へと振り返った。
数秒、ステージの方を見つめた女性、『奏』はまた帽子を被ると、
一人歩き出した。
奏「翼も翼で、がんばってるみたいだな。……待っててくれよ。
もう少しで、私も翼に追いつくから」
そう、翼の聞いた言葉は幻聴であり、幻聴ではなかったのだった。
こうして、翼のライブは成功を収めた。
一方で、クリスの心にもまた、変化が訪れていたのだった。
第9話 END
というわけで未来はディスクアニマルと音笛をゲットしました。
(一応言っておきますと、未来が変身予定はありません。今の所は)