ソードアート・オンラインーEverlasthing oathー 作:ゆぅ駄狼
トールバーナに到着してそれなりの日が経つが、第一層のボスはまだ攻略されておらず、迷宮区すら突破していない。
その間、遊びで自殺を
自殺によって、茅場の言っていた『この世界での死は現実での死を意味する』という言葉の
結果、剣を握るプレイヤーが少なくなり、ボスを攻略しようという者が少なくなっている。
「やああああぁああぁ!!!!」
ユウキの持っている剣が黄緑色に輝き、ソードスキルであるソニックリープを敵に当て、ルーウルフを横に一刀両断にする。
ルーウルフは結晶体となり消滅し、今の戦闘によって二人のレベルが1上がる。雑魚敵を狩りながらレベルを上げるのは効率が悪いが、ケイスケ達に出来ることはこれが限度だ。
何処の世界でも
経験値こそ不足しているけれど、お金の面には全く困ってはいなかった。
始まりの街近くのイノシシは15コルしか落とさないことに対し、ここら辺の狩場は十数倍のコルをドロップするモンスターが出たりする。
第一層では流石にレベリングをずっとしていると、そのレベルにあった武器を作る為にコルがだったりするのだが、溜まりに溜まった小銭のおかげで武器は常に最新装備。
因みにケイスケは槍のスキルを上げている。武器の名前は《アロイスピアー》。
槍は良いものだ。リーチは長いし、威力面も不十分ではない。
二人はケイスケの提案で安全マージンを取るため、今いる階層よりも余分にレベリングをしているのだが、安全マージンを取るものは現在でもかなり少ない。
ケイスケ達がこうやって必死に戦っている間も大半のプレイヤーは安全な場所で指を咥えてデスゲームが終わるのを待ち続けている。
「今日は一旦終わろう」
「そうだね、行くところがあるもんね」
「ちゃんと覚えてたのか。偉い偉い」
嘲笑気味に褒めると、ユウキは片方の頬だけを膨らませてジト目でケイスケを睨む。
「馬鹿にしてるでしょ」
「会った当時は馬鹿というよりも天然馬鹿だと思ってた」
「変わってないよ!」
本来ならば狩りを続けていたが今日は早めにレベリングを中止する事に。今日は第一層の攻略会議があるから遅れるわけにはいかない。
が、攻略会議が開かれると街中で噂されているのを耳にした時、同時にケイスケは不安を抱いていた。
この階層のプレイヤー達が突っ込んだとして、レベル的には数分は耐えれるだろうけど、取り巻きがボスを倒すまで湧き、ボスのヒットポイントを四分の一にすると大曲剣タルワールに変えて攻撃をしてくる 。
ベータテストの時に学習済みだが、他のプレイヤーの大半はこの事を知ってはいないだろう。となると──戦い方も完璧には
「今日は攻略会議だけど、攻略会議ってことは誰かが迷宮区を突破したのかな?」
「少ないって言っても安全マージンを取ってる奴らは俺達だけじゃないし、第1層の迷宮区位は余裕で突破出来るんじゃね? ベータテストの時は第二層からだけど俺一人で突破出来たし」
寧ろ、一方的に蹂躙してた。対人じゃないなら、CPUなら少し相手をしたら行動パターンが分かるし。
「意外と簡単なの?」
「んー、序盤は簡単に負けないのがRPGゲームだし……飛び降りとかしてるプレイヤーがいなかったらもっと生きてるプレイヤーがいる。それくらい序盤の難易度は易しい筈なんだけどな」
俺自身が飛び降りる瞬間を見たわけじゃないから確信は出来ないけど………流石に最初の内にモンスターにやられるなんてことは無い。とは言っても座り込んでいる奴らを見る限り、『生きた屍』と言っても違和感は無い。
「………これじゃ死んでるのと一緒だよ」
「はは、言えてる」
「もう、笑いごとじゃないんだよ? ボク達には関係ないことかもしれないけど、実際に死んじゃった人もいるんだからね」
「分かってるよ。なんつーか、悪かった」
始まりの街に残っている人も多いが、此処、トールバーナに残っている人もかなりいる。皆死にかけた顔をしているが。
「気付いてるなら戦えばいいのに……ちょっち鍛冶屋よるわ」
「うん、分かったよ」
確かにこの層の安全区にいれば安全だ。
だが、現実の体はどうなっているのだろうか、現実の体は何も食べていない為、いつかは死に至る。
戦っても死ぬかもしれないし、戦わなくても死に至る。このソードアート・オンラインをクリアするまではずっと。
座り込んでいても意味はないのに、誰かがやってくれるなどという考えで他人に押し付けて自分は安全な所で待機している。そんな奴らを見るだけでストレスが溜まっていく。
「ほらよ、ユウキ」
ユウキを呼び止め、手に持っている物を頭に乗せる。
「これどうしたの?」
「さっき狩ったルーウルフの毛皮で作ってもらったコートだよ。ボス戦は防御力を少しでも高めとけ。」
ほんの僅かな防御力上昇でも甘く見ると痛い目に合う。僅かな防御力が一撃の致命的攻撃をギリギリ二撃に抑えてくれるかもしれない。
大勢のプレイヤーがいる中には『戦いはしないけど貢献をしよう』といった考えのプレイヤーもいて、その人達のお陰で二人は常に強い装備の状態で戦場へと向かう事が出来た。
勿論、そういった人達には感謝の気持ちを忘れてはいないし、時々だが御世話になっている鍛冶屋の人などに素材を無償で提供している。
「ケイスケはコートないの?」
「俺は攻撃を根性で避けるから別にいいよ」
「凄いね………」
「根性があれば何でも出来る」
「何でもは無理でしょ」
実際、『根性』では無く、ベータテスト時の経験を活かし、相手の行動を理解して攻撃を避けている。ユウキにレクチャーする時に負ったダメージを除くのならケイスケはまだ無傷だ。
そんなこんなで、駄弁りながら歩いていると遠目に大勢のプレイヤーが一点を見つめて笑っていたり、話し合ったりしている。
ケイスケ達も加わるべく、近寄っては適当に居座る。
「はーい! 皆集まってくれてありがとう、俺はディアベル。職業は気持ち的に
ジョブシステム等は存在しないのに自称『ナイト』を名乗る男。彼の冗談に周りからは笑いが溢れてきた。
攻略会議の為にあらゆる人材を掻き集めた張本人、《ディアベル》。ケイスケとユウキもこの男に声をかけられて参加していた。
「ディアベル……ベータテストの時にいた気がする」
自分はこの男を知っている。もしかすると違う男かもしれない。名前だけならベータテストの時に確認している。
ベータテスターの時は第一層のボスに何度も挑戦しては倒されている男。その分第一層の攻略には詳しいと解釈でき、ボスの行動パターンに関しては俺よりも詳しいかもしれない。
「昨日俺のパーティが塔の最上階でボスの部屋を発見した」
『マジかよ』、『やっと見つけたのか』、『無事に帰ってこられて何よりだ』、と野次が飛ぶ。
ケイスケからしたら第一層の迷宮区を突破する事は簡単だし、今更かと思う。ケイスケが前線に行かないのは隣にいる女の子を危険にさらさない為だからであり、一人であるならば既に迷宮区を攻略し終わっている。
前に一人で迷宮区に向かおうとしたら『ボクも行くっ!』、駄目だと言ったら『ケイスケ一人じゃ危ないよ』と言って抱き付いて来ていた。
横をチラッと見て、眠りかけているユウキを見て溜息を吐く。
──飽きるの早くないか?
「ちょぉ待ってんか!」
遊んでいると上の方から声が聞こえ、特徴的な髪型をしたプレイヤーが走り降りてくる。
「ワイはキバオウっちゅーもんや! 攻略会議する前にこんなかに皆に詫びを入れなあかん奴がおる筈や」
「その、詫びをする奴というのは元ベータテスター達の事かな?」
「そや! あいつら情報を独り占めしてるんや! ここに装備とアイテムを置いてかなあかんと一緒に戦う事はできへんで!」
面倒な提案をする奴もいたもんだ、と思いながらもユウキの頬を突く。
例え提案が取り入れられても名乗りでなければバレる事はない。相手からして見た事のないアイテムや武器を持っていても『偶然手に入れた』の言葉で済む話。
「発言いいか。俺の名はエギル、あんたは情報を独り占めにしているベータテスターが許せなく、アイテムと装備をここに置いていけと言っているんだよな?」
「なんか文句あるんかいな?」
「これが何かわかるか?」
エギルと言われる大柄な男が差し出したのは一冊の本。雑貨屋で配られているガイドブックで、効率の良い経験値稼ぎの方法やアイテムの入手先などがビッシリと詰められた物だ。
「………そんなん雑貨屋行ったら配られているガイドブックとちゃうんか?」
「ああ、そして、これを配っていたのは元ベータテスター達だ。いいか皆、情報は誰にでも手に入れられているんだ。ここではそれを踏まえて論議されると俺は思っていたんだがな」
正論に対して、キバオウはぐぅの音も出ない。
ふんっと鼻を鳴らし、不服そうに腕を組んで、近くに胡座で座り込む。
悪人の中にも善人はいるって事かな。いい人だ。場の雰囲気が悪くなるのを防ぎ、尚且つ不満を抱いてる者に正論で応える。そういう人がいるだけでチームという物が築き上げられていく。
「攻略会議の続きなんだが、つい先ほどこの本の最新版が配られた。ボスの名前はイルファング・ザ・コボルト・ロード。こいつは最初は盾有りのアックスを使っているがHPが四分の一になると大曲剣タルワールへと持ち替えるらしい。しかもこのボスの取り巻きにルイン・コボルト・センチネルというのが出てくるらしい」
ディアベルはボス攻略に向けての会議を始める。始めるのはいいけど。
「集中、集中……集中って何ですかね」
全体重がケイスケに寄り掛かり、頭をケイスケの肩に乗せて寝息を立てている。眠りかけてたユウキはとうとう眠ったらしい。
普通にヤバい。異常なまで近距離に女の子が近付き、顔が近いせいか、無駄に意識をしてしまう。顔を段々と紅潮させて行くケイスケを無視して会議は進んで行く。
顔、近ぇよ。焦ってなんかいない。焦ってなんかいないから。
「ボス戦ではパーティを組んで戦った方が有利に動く。それじゃ取りあえず皆、パーティを組んでみてくれ」
「起きる時間だ………ぞッ!」
「いたっ!」
柏木家伝統奥義って奴だ、通称『
ユウキにデコピンを一発、入れてみる──すると飛び起きた。
「い、痛いよ…………」
「デコピンなんて久しぶりにやったな。小学校以来やってないからドキドキした」
いかに的確にぶち込むかが重要。
「女の子に本気の一撃を叩き込むなんて普通じゃないよ!」
「俺も女の子に己の指を放つのは初めてだったよ」
指に残る感触に、懐かしい感動を覚えて不思議と満面の笑みになる。ユウキは未だに怒り気味で、むーっと唸る。
「反省してよ!」
「そもそも痛覚なんて存在してないんだから痛くないだろ」
「反射的に言っちゃうんだよ! おでこに若干違和感が残るの!」
「若干かよ、どれ」
そう言ってユウキの額、デコピンを当てた箇所に自分の手を当てる。
「ちょ、ちょっと!」
反射的にユウキは俺の手を取り払う。顔を赤くして俯いているのだが、良く分からない。
ユウキはふいっと顔を逸らすと、仲間同士でワイワイしている光景に疑問符を浮かべていた。
「騒がしいけど、何かあったの?」
「あぁ、仲間組んだ方が戦いやすいからパーティ作れってさ。俺達は二人でじゅうぶ──」
「なら、早く作ろうよ! メンバーは多い方がいいからね、さぁさぁ作りにいこっ!」
は、おま。
周りがパーティを組んでいるのを見てユウキは『早くパーティ組まないとっ』というのだが、自分は別に二人のままでいいと思っている。
余計な足手纏いが増えると後々面倒になってくるから………って言っているのにユウキは自分達と同様、二人組みのプレイヤーの所に引っ張ろうとする。
分かったから離せ、と言うと嬉しそうにして二人組みのプレイヤーの所に向かって行く。
近寄って声をかけたのだが極度の人見知りなのか、相手はあまり言葉を交わそうとしない。フードを被った少女は無口。辛うじてコミュニケーションを取ってくれる同い年と思われる少年は名前を教えてくれた。
「俺はキリト」
「宜しくキリト、ボクはユウキっていうんだよ〜」
「くいくい引っ張るな襲うぞ」
ハラスメントコードなんて使わせない。使おうとした瞬間に土下座してやるからな。
「俺はケイスケ。趣味はサッカー観戦、特技はピアノを弾くことだ。あ、あとゲームは結構好きで学校内ではかなりのゲーマーだと言われてる。因みに、俺もゲーマーだと自覚してる」
「………あ、あぁ宜しく」
「いやいや、宜しくだけじゃなくてさ。アンタのことも教えてくれないか?」
「教えてくれないかって……そうだな……俺はソロだ」
「見ての通りだな」
「……何で俺のことを聞きたがるんだ?」
「俺個人の意見としては、この馬鹿の所為でアンタらに命を預ける仲間ってことになるんだ。だからお互いを知って、ついでに仲良くなっちまおうって算段よ」
馬鹿とはユウキのことだ。余計なことをしてくれたユウキにはピッタリの称号ではないか。
ケイスケはユウキの頭に手を乗せ、ポンポンと優しく叩く。
あぅ、とユウキは声を漏らし、仲良さ気な二人を見たキリトは、
「二人はずっと一緒に?」
「神に悪戯をされてな。俺は不服だったけど、まぁ仕方ないかなって」
「ボクはそんなに不服でもないんだけどね」
「そんなにって、少なからずあるのかよ」
「ううん、無いよ。今のは言葉の綾、ボクはケイスケに不満なんてこれっぽっちもないよ」
満面の笑みでそう言われ、何処となく、小っ恥ずかしくなり、ユウキから目を逸らす。
そうかよ、と吐き捨てユウキを置き去りにして去ろうとする。
「じゃあなキリト。疲れたから俺は宿で寝ることにするよ。お前も装備とか回復アイテムとか揃えて、当日に備えて沢山寝とけよ」
「待ってよ、ちょっと。ケイスケ〜!」
キリトは遠ざかる二人の後ろ姿を見て、
「羨ましいな」
微笑みながらそう呟く。視界ではフードを被った少女が立ち上がり、去ろうとしていたが、キリトは少女に声をかけた。