ダンまち世界の転移者 作:慧春
三次試験終わった――!!
やっとこれで、心置きなく趣味に時間が使える――最も結果はまだ先な訳ですが……
今回は、昨日と今日で急いで仕上げたので、色々ミスがあるかもしれません!
誠に申し訳ありませんが、誤字脱字が有りましたら、報告をお願いします!!
「ここか……」
シュラは、異界の街――オラリオの一角にある墓地に足を運んでいた。
「墓地という場所には、その特性上『燐気』が溜まるものだが……この場に漂う小宇宙は明らかに異常だ」
そうだ……あの女から感じた小宇宙と何処か似ている。
漠然とだが、無関係ではないと彼の勘が告げる。
その勘が告げているのだ――この場には、何かが『在る』と。
「怪しげな小宇宙を辿って見れば――まさか、本当に墓地に当たるとはな……『噂』も馬鹿にはならんという事か……」
シュラは、感慨深げに呟いた――そもそも、彼が今この場にいる理由は、偶然ではない。
遡ること二日前――転移したダンジョンから、地上に出てきたシュラは、オラリオの街で、リヴェラの街でやったように情報収集をしながら暗躍していた。
シュラは、聖闘士の中では数少ない聖域の裏の仕事を担う聖闘士であった。
地上の愛と正義を護るという大義名分のもと、聖域と女神アテナ、そして、教皇に仇なす悪を自らの手で裁いてきた経験を持つ。
その関係で、黄金聖闘士の中では、情報収集は得意な方だ。
瞬く間に、シュラはオラリオの『裏の界隈』に入り込み、裏の筋で信用の出来そうな情報屋に辺りを付けた。
「この都市で変わったことねぇ……」
「ああ…ほんの数日前からだ……」
「取り敢えず――あんた都市外の人間だろう?」
見透かすかのような、そんな情報屋の男の問い掛けに、シュラは一切動揺しない。その程度のことは、その地域に長く居れば、直ぐに解ることであると理解しているからだ。
それ故に、シュラは慌てることなく「そうだ」と返答する。
対して、情報屋の男は、主導権を握れなかった為か、どこかぶっきらぼうに「何で解ったか聞かないのか?」とシュラに問い掛ける。
「必要無い……ただ、お前の見る目が正しいだけの話だからな。噂通り、良い目をしている」
またも、それに素っ気なく答えるシュラだが、そのまま終わるのではなく、少しの称賛を紡ぐ。
「お、おう……なんだ、解ってるじゃねぇか」
明らかにただ者ではないと解るシュラにそう言われる事は、情報屋の男にとって悪い気はしなかった。
それ故に、機嫌良さそうにしながらシュラの求める情報を頭の中で選別する――
こうして、シュラはここ数日の間にオラリオで起きた出来事や不可解な事件について多くを知った。
中でも気になったのは『怪物祭』と呼ばれるこの街のガネーシャ・ファミリア主催の祭りで、テイムされた筈のモンスター達が突如暴れ出し、脱走した事件だ。
冒険者達が脱走したモンスターを討伐し、解決した案件――そこまでは、別に思うところは特に無いが、不可解なのはテイムされて無力化されている筈のモンスターが脱走し、暴れたという事だ。
モンスター達の見張りをしていた者達は、まるで魅了でもされたかのように夢うつつな表情で無力化され、更には、牢の鍵が明らかに人為的に開けられた跡があったとの事だ。
情報屋の男によれば、この犯人はオラリオに存在する二人の美の女神の内のどちらかが関与している可能性が濃厚との事だ。
一応は、冒険者の中でも、一部は魔法やスキルで他者を魅了出来る者も居るらしいが、モンスターの見張りをしていたのは、Lv.2以上の上級冒険者だったらしく、それほどの実力者は、魅了するのは容易いことではない。その為、美の女神が最有力候補となったらしい。
因みに、二神存在する美の女神で、この案件に関わっている可能性が高いのは――イシュタル・ファミリアの主神であるイシュタルが犯人だというのが裏の界隈の住人の見解らしい。
それだけではなく、オラリオに居るある程度事情を知る神々も同じ見解だ。
何でも、もう一柱の美の女神はその様な暴挙に出るだけの理由が皆無とのこと。
まぁ、それらの背景については、正直シュラにはどうでも良かった。
気になったのは、その事件が起きた同時刻に、リストには存在しない新種と思われるモンスターが目撃されている。
特徴を聞く限りでは、彼がダンジョンの18階層で戦った女が操っていた植物型のモンスターに酷似している。
恐らく、そのモンスターはアレと同種か、かなり近い近縁種ではないかとシュラは辺りを着けた。
そして、もう一つ――
「――死者が蘇る?」
「ああ……つっても、これは眉唾だがなぁ~」
そう言う情報屋の男の顔には、胡散臭げな表情が浮かぶ。それを見て、シュラはその話を、男自身が全く信じていないことを読み取る。
「面白い話だな……続きを」
「なんだぁ? こんな訳わかんねぇ話が聞きてぇのか?」
「ああ、自分でも酔狂だと思うが、職業柄その手の話がどうも気になる……」
「職業柄って……霊媒士でもやってんのかよ?」
男の言葉に、シュラは「違うが…余り、詮索はしないでくれ」と無愛想に返す。それを見て、情報屋の男は舌打ちをひとつすると「わりぃ、踏み込み過ぎたな」と素直に謝った。
そして、先程の――ここ最近、オラリオで噂になり始めている『怪異』を語り始める。
「まず最初に言っとくが、俺はこの噂を全く信じちゃいねぇ……この下界に住んでる全ての住民にとっちゃ『死』は『絶対のルール』だからだ」
彼は、人間は死んだらそこで終わりだとシュラに言った。
「たとえ、どれだけ強かろうと、どれだけ賢かろうと、命が終われば『そこ』でその人間の全てが終わるんだ。後は、墓標に記された名前と、そいつを知る人間の記憶だけが、そいつの生きた証だ」
淡々と語る情報屋の男の言葉を、シュラは黙って耳を傾ける。
そして時間が経てば、墓は風化し、そいつを知る人間も居なくなる――それが死だ。それが、男の言い分なのだろう。
だが、シュラは知っている――人が死ぬと何処に逝くのか…そして、何よりもシュラ自身も『経験』しているのだ。
「だから、俺は信じねぇ……一回死んだ奴が、墓の中から蘇るなんてな……」
死についての価値観は、人それぞれ……シュラは男の言葉を否定しようとは思わなかった。
「俺自身は信じてねぇし、ただの噂だと思ってる……その上で、今から話すことを聞いてくれ――」
そう前置きをして、聞かされた内容は、聖闘士としては決して無視の出来ないものであった――
こうして、シュラは二日の時間を懸けて、オラリオを探索する内に、この街の所々に漂う奇妙な小宇宙の痕跡を感じ取った。
その複数ある小宇宙の内の一つ――最も新しいそれを追う内に、オラリオの街の南東にある大きな墓地にたどり着いた。
「さて……何か手掛かりが在ると良いのだがな」
シュラの小宇宙の探知能力は黄金聖闘士の中でもトップクラスだ。
それ故か、彼は半ば確信に近いものを直感していた。
(間違いなくここには『何か』が在る――鬼が出るか邪が出るか……それとも、全く別の『何か』か……)
シュラは墓地の中心――不気味な小宇宙の発生源に向けて警戒を怠ることなく進むが――ほんの数秒で、今までとは別次元の負の小宇宙がシュラに奔流のように押し寄せて来る!
「――早速か!」
シュラは、直ぐ様に背中に背負っていたパンドラボックスを下ろした。
一瞬の内に箱が光輝き、次の瞬間にはシュラの体は、普段着から、黄金に輝く山羊座の黄金聖依を纏った姿に変わっていた。
以下に黄金聖闘士が強かろうと、聖依を纏っていなければ、その肉体の耐久度は、普通の人間と然程変わらない。
無論、小宇宙によって幾らかは水増しされるが、それだけだ。
生身の耐久力と言う話ならば、
そう言う意味で言うならば、彼以外の黄金聖闘士達も、こと『頑丈さ』という一点においては、第一級冒険者には及ばない。
だが、
そして、黄金聖依は、その八十八星座の
神々の戦いが繰り返されてきた神話の時代より、修復と改修を繰り返すことによって、形を変えてきた白銀や青銅とは違い、一度として砕けること無く現代にまで伝わってきた事実が、その強さを表している。
そして、更に聖依には、装着者の小宇宙をより高める効果もあるのだ。
聖闘士が聖依を纏う――それは、その聖闘士が臨戦態勢に入ったことを意味している。
シュラは、先程自分に向かって『当てられた』小宇宙から、確かに危険な物を感じ取った。
そして、シュラは『聖剣』の宿りし右腕を振り、自分に迫り来る『何か』を両断する。
それは、武器だった――所謂、西洋剣と呼ばれる直刃の剣――刀身の状態を見るに恐らくは、かなり古い。朽ち果てた武器だ。
自らに向かって飛んできた、剣を一目見ると、次には飛んできた方向を確認する。
(スケルトン……いや、ハーデスの走狗共とは違うのか?)
迫り来る『死者』の群れを前に、シュラは冷静に頭を働かせる。
(何の躊躇いもなく迫ってくる所を見るにコイツらは『捨て駒』――恐らくは、あの小宇宙を放った『何者』かが、俺を始末するために刺客として送り込んできたのだろうが……『どっち』だ?)
果たして『この世界の者』なのか――それとも『地球の者』なのか――
(何にせよ、狙いは俺だ――)
シュラは、肉迫してくる朽ちた武器を持ち、半壊した防具を纏った死体達を『光速の剣技』を持って切り裂く――
「再生能力は無しか……しかし、切りがないな……」
死体を切り裂く感触と斬った際に聖依を通じて流れ込んできた思念に、不愉快そうに眉をしかめる。
(首が落ちても、肉体は動き続ける。しかし、胴体を両断すれば、活動を停止する…いや、斬った場所ではなく、一定以上のダメージで『元の死体』に還るらしいな)
確かめるように、亡者を一人一人切り裂いていく――亡者に堕ちたとはいえ、かつては人間であった者達で実験をするような行為……普通の神経をもった『人間』ならば、間違いなく忌避する事をシュラは、淡々とこなす。
――しかし、シュラは外道ではない。高潔な戦士だ。
それ故に、かつては戦士であった筈の『冒険者』達の肉体と魂を解放するために――
そして何よりも『彼等』の手で悲劇が引き起こされる前に――彼等の名誉が死後に貶められない様に、確実に止めを指す方法を模索する。
それが、現状でシュラに出来る最大限の敬意だ。
だが、場所が悪かったのか、一人、また一人と確実に止めを指しているというのに、次から次へと押し寄せてくる亡者達の群れ。
そう……この場は『墓地』――死した冒険者達の亡骸が大量に眠っているのだ。
無論、墓地に眠る遺体の数が有限である以上は、この物量にも限りがあるのだろう。
だが、迷宮都市オラリオは世界で有数の大都市であり、神々や人々の希望と野望が渦巻いている。
だからこそ、この街は、常に複数のトラブルやイザコザを抱えている。
何より、この街にはダンジョンがある――ダンジョンの中で命を落とす冒険者の数は年間で数千――その全てが、ここに在る訳ではないのだろう。
しかし、それだけの数の人間が死んでいるということが、この場では重要なのだ。
(この力が墓地の外にも効果が及ぶならば――何としても止めなければならん!!)
この死者が甦る現象が、この墓場だけではなく、『外』にも及び始めたならば、この街に惨劇が起きるだろう。
死者に蹂躙される生者達の悲鳴――
そして、それを止めるため、かつては仲間であった者達を撃たねばならない生者達の慟哭と嘆きの声――
「やらせん!!」
シュラは、脳裏に過った最悪の想像を振り払うように、四肢の聖剣を振るう――
(汚れ仕事で身を穢すのは――)
「――自分だけで良いってか?」
決意を露にしたその時――聞き慣れた声がシュラの耳に届いた。
――【積尸気冥界波】!!
シュラの前に群がっていた亡者達が一斉に魂を抜かれたかのように、唐突にバタバタと倒れ始めた。
「お前が妙な気を張らねぇでも、こういう手合いは俺の方が手慣れてるし――」
背中に語り掛けてくるその声は、同じ時期に聖闘士となり、最も多く戦場を共に駆けた親友の一人――
「何より、向いてるだろ?」
そこには、墓石にもたれ掛かるように肘をつき、右腕の人差し指を立てている黄金聖闘士が居た――
「デスマスク!!」
「よぉ、久しぶりだな……」
シュラと死んだ後すらも、共に戦った戦友――『蟹座のデスマスク』は他者から見ると邪悪に見える笑みをシュラに見せた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「このまま進めば、あの『お方』が居られる部屋へ着く……後は一人で進め」
「――了解した」
オレは目の前で、指示をする猪人の言葉に了承を返す。
それにしても凄まじいな……バベルというのは……流石は神々の住まう場所か……豪華絢爛な造りの建物の内部を見て、そんな陳腐な感想が浮かんでくる。
まぁ、神々と言っても、その神とは現在世話になっているヘスティア様やミアハ様達とは一線を画する神々――言ってしまえば、下界での活動に成功した一部の神の事を指す。
「護衛も付けないで良いのか? オレは余所者だぞ? それに、貴様等とは戦う理由もある――主神を天界送りにされても良いのか?」
そう言うと、猪人の武人である『オッタル』の横に居る小人族の『四つ子』が一斉に殺気立つ――いや、それだけではない。
オレの後ろに居る者達からも複数の殺気がオレに向けて発せられる。
後ろにも二人、いや三人か……完璧に気配を消していたのに、殺気を漏らしたら駄目だろ……と言っても、元々後ろに張り付いているのは気付いて居たのでそこは変わらないが、人数も今ので把握できた。
「挑発は止せ……俺では『どちら』も止められないぞ……」
どちらも……なるほどな。団長として、団員を止めることも一人では普通に考えて手が足りない。
ましてや、オレを力付くで止めるのは不可能とどこか本能のようなもので悟っているらしい。
つまり、今のはオレと自分の仲間達両方への忠告という訳だ。
「すまん……だが、気になったのは事実だ。お前はオレがそれをするとは思っていないのか?」
「お前がそれを実行するとは思えない……そう言えば満足か?」
目の前の猪人の武人はオレの言葉を聞き、そう返した。
「それに、万が一、お前が『我が女神』に拳を振るうというのであれば――俺は、あのお方の為にお前の前に立つだけだ」
全て覚悟の上か――
オレはオッタルの言葉からとてつもない覚悟を感じた。
もし、そうなったならオレを討つ――そう言っているようだ。
この男ならば、自分とオレの間にある実力の差が明確に解るだろうに……それでも尚、女神の為にオレの前に立ち塞がると――主神の意向を叶え、それでも『一切譲る』つもりは無いらしいな。
「なるほどな……」
これが、オラリオ最強の冒険者か――なるほど、文字通りの意味で
『実力』も、『意志』も、『覚悟』も、そして何よりも『練度』が違う――今のベルでは、千人居ても全く歯が立たないだろう。
「分かったその時は、相手になろう――全力でな」
だから、オレも目の前の誇り高き『戦士』にそう返した――今から行われる『会談』がどの様な結果になるのかは解らない。
女神フレイヤが何を考えているのか全く未知数だからだ。
場合によっては、彼女と――そして目の前の男達とも敵対することになるのかもしれない。
その場合、オレは
それが、オレのこの男への『敬意』だ。
その会話を最後に、オレは薄暗い通路を歩き出す――背中に視線を感じながら歩くと、一分もしない内に、一つの部屋の前にたどり着いた。
一応は神の根城だし、相手は女神だ――そう思い、最低限の
「いらっしゃい……黄金の人馬さん?」
その女神の姿を視界に入れた瞬間――オレの思考は溢れでる『欲情』で埋め尽くされた――