ダンまち世界の転移者 作:慧春
オラリオの住民達の朝は早い。
冒険者達は、ダンジョンに挑むための準備を整える為か、或いは早朝アタックをかます為に多くがホームを出立し、冒険者以外の彼等を相手に商売をする者達も、おれに遅れていられないとばかりに準備に追われる。
そんな朝のオラリオの片隅――【ヘスティア・ファミリア】の
「隙だらけだぞッ!」
「は、はいっ!」
彼の新たに『弟子』となったベルと『やんわりと易しめに』組手をしていた。
「遅い! 速度的な意味じゃないぞ――動作と動作の『繋ぎ』がだ! イチイチ頭で考えて行動するんじゃない!!」
「――がひぃっ!」
アイオロスの攻撃に対して、回避か防御かで迷い、一瞬動きの止まったベルにアイオロスの拳が炸裂する――俗に言う『車田飛び』で体を仰け反りながら宙を舞うベル。
「くげぇ!?」
そのまま、頭から落ちてしまい、へんな悲鳴を挙げて悶える白兎を見て、アイオロスは「キチンと受け身を取れ!」と強めに怒鳴り付ける。
因みにベルは、この修行を始める前にアイオロスの命令で体に纏う軽鎧は着ていない。アイオロスが『直ぐに使い物にならなくなるからな』と言われて、良く意味が解らないままに外した状態で修行に望み、ようやくその意味が理解出来た。いや、理解出来てしまった――
修行を始めて早数分――もう、ベルの肉体とその服装はボロボロだった。
服装は上も下も、砂と埃でまみれており、布も所々が裂けて破れている。
一方で体の方は、確かにダメージでボロボロだが、これでも今日のダンジョン探索には余り支障が出ないように配慮はされている。
「良いかベル。戦いとは先ずは『回避』――それが無理なら『防御』だ――」
痛みで悶絶しているベルを尻目に、アイオロスは修行を始める前に、ベルに言って聞かせた理論をもう一度語る。
「だが、一口に『回避』や『防御』と言っても色々ある……例えば、敵の攻撃を先読みして攻撃の機転を潰すように動くのも有効な回避手段だし、防御にしても敵の攻撃を馬鹿正直に正面から武器や盾で受け止めるではなく、敵の攻撃の威力を『逸らしたり』するのも立派な防御だ。あとはさっきから口酸っぱく言っている『受け身』もダメージを最小に留めるという意味では防御の手段の1つだしな」
「……は、はい。それは……解ります」
「敵の攻撃を出来る限り無傷で遣り過ごす手段としては『回避』が最も有効な手段だ」
――しかし! とアイオロスは強調し、続ける。
「地形や状況によっては、敵の攻撃をかわせなかったり、又はかわすことが不利になる状況だったりした場合――敵の攻撃を防御しなければいけない状況など往々にしてあり得る……解るな?」
「……はい」
そうだ、『回避出来ない』ではなく『回避してはいけない』……又は、かわすと『不利に成りうる状況』も考えうるのだ。
アイオリアの過去の戦歴の中には、自身の後ろに庇わなければいけない存在が居たために、かわせる攻撃を敢えて正面から受け止めざるを得ない状況があったし、回避が不可能なほどの範囲攻撃でこちらを押し潰して来る敵とも戦ったことがあった。
逆に『一撃必殺』の技を持つ相手も居たが、そう言った敵には、防御は悪手以外の何物でもない。そう言う類いの技は、食らったら一撃でこちらが死ぬ場合もありうるので、回避に徹するしかないのだ。
回避も防御は状況次第でどちらが欠けても勝負は成り立たない場合が多々ある。要するにどちらも極めてこそ、一流というのがアイオロスの持論だ。
何故か聖闘士には、初見の攻撃を『わざと』或いは『敢えて』肉体で受け止める悪癖を持つ者が多い。アイオロスも二度目の人生では頭を抱えた問題である。
聖闘士の最高峰である
アイオロスからしたら、1度攻撃を受けてから『聖闘士に同じ技は二度通じないぜ!』などと言うより、敵の攻撃を全部避けた方が絶対に良いと思えて仕方がないのだ。
特に彼の親友の『サガ』や後輩の『アルデバラン』は、鍛え上げた肉体と
その時の事を思い出して、アイオロスの口から重たい溜め息が漏れそうになる。
アイオロスとしても仲間や親友が『そういう趣味』であると思ってはいないが、それでも傍から見るとそういう風に受け取られるような事は聖闘士として慎んで欲しいというのは間違いだろうか? と当時も今も変わらずに思っているのだ。
ベルにも、アイオロスの言っていることが理解できたのか、未だに痛みに顔を引きつらせつつも、真剣な顔で頷く。
「ベル……お前は、行動を起こす前に余計なことを考えすぎだぞ。良いか? 確かに戦闘の中では何も考え無いのも良くない」
先程まで教えていたことを否定するような言葉に少々驚き、どういうことか聞こうと口を開きかけるベルだが『黙って聞け』と言わんばかりの眼光に口をつぐむ。
「だがな。今のお前には戦闘中に考えながら戦う余裕など無いだろ? もう少し腕が立つなら戦いながら色々と思考を走らせる事も出来るだろうが、今のお前がそんな事やったら『頭の思考』と『体の動き』が噛み合わずに呆気なく死ぬのがオチだ」
「そう……なんでしょうか?」
「ああ、一つ聞くがお前が過去に戦ったというモンスターの中に『ウォーシャドウ』というモンスターの名前があったな?」
「え? は、はい!」
昨日、アイオロスからダンジョンに出現するモンスターについて詳しく教えてくれという頼みを受けて、自らの到達階層までのモンスターは勿論の事、エイナとの『お勉強会』で習った限りのモンスターの情報をアイオロスに教えたのだが……それが何か関係があるのかと、ベルは純粋に疑問に思った。
「お前は、以前の大量のウォーシャドウに襲われたと言っていたな……その時お前は、何を考えて戦っていた? 覚えていたら言ってみてくれ」
そんな事を突然言われて、ベルは答えに窮する。
当時の状況としては、ベルは【剣姫】――『アイズ・ヴァレンシュタイン』の目の前で、彼女の仲間であるベート・ローガ』に自分の事を嘲笑され――あそこまで虚仮にされながら、何一つとして反論のできない自分の弱さに居たたまれず、腰に差していたギルドから支給された安物のナイフと己の身一つでダンジョンに向かった――その時、自分の苛立ちをぶつけるようにモンスターに無我夢中で向かっていった。
そして、ベルがひたすらモンスターに八つ当たりに近い苛立ちをぶつけながら、ベルは意図せずにダンジョンの6階層にまで降りてしまったのだ。
そこで遭遇したのがウォーシャドウだ。
ウォーシャドウは、今も油断していたら危ないと思う程度には強敵だが、その当時に戦ったウォーシャドウはベルが正面から戦った相手としては間違いなく最強のモンスターだった。
「そ、そんな事言われても……あの時は、急に出てきて囲まれましたから……そりゃ『必死』に応戦――あっ!」
「そうだ。お前は、突如発生した『不足の事態』に考えるよりも前に『必死』で体を動かして戦った筈だ」
「はい! 僕その時は本当に必死で――」
「そして、お前はそれだけではなく、今までに経験した不測の戦いは咄嗟に考え事を捨てて『本能のまま』戦ってきた筈だ――『体に染み付いた動き』でな」
だが、アイオロスが教えているのは、これからのそれでは足りない場合においての立ち回りだ。戦いにおいて『一瞬』の油断や間違いが致命的な隙に繋がる事などザラにある。
勿論、考えるこ必要ないと言っている訳ではない。今のベルでは実践経験が余りに乏しいので、そもそも、余計な事を考える余裕などないという話だ。
「だから、これから毎朝、最初はこんな感じの『とても優しい』修行で正しい回避と防御を無意識の内に出来るまで、徹底的に体に教え込む! その後は、実戦形式でオレと本気の組手だ!!」
「は、はい――えぇっ!?」
勢いで返事をしそうになった後で、ベルは悲鳴をあげた。ベルの肉体は既に限界だ。ダメージ的にも、疲労的にもだ。
アイオロスとの修行は、たとえ数分といえども、ベルをそれほど疲弊させたのだ。
これが『とても優しい』という事にも驚愕だが、それ以上に驚いたのは――
「む、無理です――! アイオロスさんと本気で組手なんて……しかも、実戦形式でなんて!?」
「無論、手加減はするがな……どうする? 降りるか?」
「そ、それは――」
――降りれる訳がない。
何故ならば、ベルにも解っているからだ。百戦錬磨の『英雄』であるアイオロスに戦いを教わる――これこそが『情景』に追い付く為に何より早い道だという事が……
ベルの
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「む、やり過ぎたか……」
目の前で文字通りの意味で『死に体』の状態で俯せに倒れて気絶している『
一応は手加減はしたけどな……聖闘士の肉体能力は小宇宙無しでも、常人を余裕でぶっちぎっている為に、日常生活で支障の無いように、オレはほとんど完璧な手加減を身に付けている……筈なんだがな。
最後にやった組手は、力の差が余りにも開いていたら、戦いにならないので、現時点のベルよりも一回り強いぐらいに力を調整した状態で戦った。小宇宙も一切使っていない。
因みに、その前座の『かなり優しい』が頭に付く『回避防御の修行』でも同じ様な力の差を意識しているが、最後の組手は、実戦形式なので遠慮無しにフルボッコにさせてもらった。
実戦形式は、言ってしまえば擬似的な戦闘だ。全力は出さないにしても、本気でやらないと訓練にならないからな。
普通はここまでボコボコにしたら、心が折れる心配をしなければいけないが、ベルに関して言うなら必要なさそうだ。
こいつの心は強い――『女の為』という目的は多少不純かもしれないが、強くなる為の理由などそれぐらいシンプルな方がちょうど良い。
だからこそ、そこに命を懸けるだけの決意と覚悟が生まれる――だから、ベルは強くなるとオレは確信している。
それに、ベルの願いはある意味では、尊いものだ。惚れた女の隣に立つために……その願いの根本にあるのは『愛』だ。それは、
オレ達も、アテナと常に共に在りたいと――彼女の元で地上の愛と正義の為に戦うことを第一としているのだからな。
神や戦いに縁の遠い他人から見たら、オレ達は女神に盲信する狂信者のように見えるかもしれないが、少なくともオレは、辿った道を後悔こそすれども、聖闘士に成ったことに後悔は無い。
アテナの聖闘士である事は、オレの『誇り』なのだからな――
「さてと……まぁ、とりあえずは――」
「あ~いぃお~ろぉす~くぅん……?」
この状況をどうするかだな――
覚悟をもって、振り向くとそこには、目のハイライトが完全に消えた、幼女がしてはいけない表情をした『
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「まったく! ヤり過ぎだよ!」
「ご、ごめぇんなぁさい……」
「ですが――ヘスティア様」
「えぇい! 言い訳なんて聞きたくない!!」
情けない声質で、ひたすら謝るベルと、それを傍目に見ながら、小宇宙の操作の応用でベルの傷と疲労を癒しながらアイオロスも説得を試みるが一蹴されてしまう。
「良いかい! もう朝の訓練は禁止だからね!!」
「そ、そんな……神様!」
ヘスティアに、この件に関して譲歩する気は既に無かった。
なんせ、愛しい『
「大体、一体どんな修行してたのなと思ったら、ただのリンチじゃないか!? ベル君は素人なんだぞ! もっと他にやることあるだろ!?」
アイオロスに、ベルに対して色々と教えてあげてくれと頼んだのは確かにヘスティアだ。
だが、しかし、彼女の思いとしては、全くのずぶの素人であるベルに技や技術を教えてあげてくれという意味合いであったのだ。
ヘスティアから見て、アイオロスは常識のある大人であり、実戦経験が豊富で、頼りがいのある『英雄』という、ベルの教師としては最適な人材というイメージであった。ついでに言うならば『お勉強会』の名目でベルに教師紛いの事をしているハーフエルフの『エイナ』のように異性でもない……同性愛者でもない限りは、彼女が危惧するような事態にも成り難い。
人格者であり、しかも話を聞いた限りでは、何人も後輩を指導してきたと言う……まさに理想の指導者だ。
彼に任せれば、ベルは人としても冒険者としても成長できる――『神威』というには余りにちっぽけな神の直感に従い、彼にベルを任せたのだ。
しかし、彼女は今、それを激しく後悔している。
修行の内容を聞く限り、それは自分が想い描いていたそれとは斜め上を逝き過ぎていた。
「もっとこう……素振りとか型稽古とかで良いじゃないか!」
「お言葉ですがヘスティア様――ハッキリ言って実戦的な技術など一朝一夕で身に付くものではありません」
それから、アイオロスはヘスティアに何故自分がこのような修行を選択したのかを懇切丁寧にヘスティアに対して解説した――
「私は自慢ではありませんが、聖闘士の中ではトップクラスの実力が在ると自負しています。しかし、私にしても実戦レベルで技を習得し、正式な聖闘士になったのは、師に教えを乞うてから三年後でした――つまり、素人が技術と技を身に付けるのにはそれだけ多くの時間を捧げなくてはいけないのです」
嘘ではない。だが、アイオロスが聖闘士の修行を始めたのは五才の時――その後は八才の時に『
アイオロスがもし、ベルと同じ年代で聖闘士の修行を始めていたら、確実に一年未満で正式な聖闘士となった筈だ。
それにしても、アイオロスだからこそ僅か三年で聖闘士になれたのであって、普通は十年単位で小宇宙に目覚めてから、聖闘士としての闘法を身に付けていくのだ。それで言うなら、原作の主人公勢でも早かった方なのだ。年齢が一桁で『
更に、アイオロスは聖闘士になる為の修行の厳しさを説いた――その内容は先程までベルがやっていた修行など『優しい』内容だとヘスティアは納得せざるを得なかった。
余りの内容に流石に真偽を疑うベルだが、ヘスティアは神である。なので、アイオロスの『嘘』は一瞬で看破出来る。その能力によって逆にその修行が事実であることを確信してしまったヘスティアはドン引きした――
曰く――自分の背丈の五倍近い岩を体に括り付けて、腕立て伏せを四桁の回数こなす。
曰く――全身に重りをつけられた状態で、足を使わずに大陸の端から端までを横断させられる(制限時間付き)。
曰く――手足を鎖で拘束された状態で海に叩き落とされ、数百㎞離れた島まで泳がされる。
ヘスティアは戦慄した。
もう、この内容の修行をやらせる方もこなす方も狂人……いや、常軌を逸した変態である――と。
そして、その様子を見たアイオロスが畳み掛けるように、修行の必要性を説く。
「常日頃からダンジョンに潜り続けるには、回避と防御力の向上は必須――つまりこれは、必要な修行なのです!」
アイオロスは、ヘスティアの両肩に手を置いて力説した。
「確かに危険な修行ように見えるかもしれませんが、これはベルが生き残る為なのです!」
「で、でも、取り返しのつかない事には――」
「しません!! 私の手心は完璧です!!」
熱くなったアイオロスは、つい先程の『ヤり過ぎたか?』という考えを完全に忘却し、力強く力説する――その姿には不思議と説得力に溢れていた。
「べ、ベル君はうちの稼ぎ頭で――」
「ダンジョンの事なら、小宇宙で治療を施せば、傷や疲労は問題ありません!! そうだな! ベル!!」
「はいっ!」
「ベル君!?」
ヘスティアの予想外は――ベルの情景と、そこへ至るために抱いた決意の大きさ。
ベルはアイオロスの発破によって既に決めていた。『情景』――『アイズ・ヴァレンシュタイン』に追い付くことを……そして、アイオロスに関わり、その『強さ』と『大きさ』を肌で感じる事で――『英雄』が伝説や本の中だけの存在では無いと理解したのだ。
(なりたい! 僕は――!)
ベルは、自分の胸が、頭が熱くなるのを感じていた……アイズの事を考えている時とは、身を焦がすような『それ』とは違う『熱』――それは『高揚』だった。
なれるかもしれない。手が届くかもしれない――オラリオに来てから数日で諦めてしまった『泡沫の夢』へと。
(なりたいんだ! 強くて、大きい、愛する誰かの為に戦える……アイオロスさんみたいな『英雄』に――!!)
そして、三十分にも及ぶ説得の果てに、とうとうヘスティアの方が折れた――
無事、ヘスティアの説得が完了し、それまでの疲労を忘れて軽い気持ちでダンジョンに向けて走る――
ベルは思った。今ならどんなに辛い修行でも乗り越えられる気がすると――そして、その思いは、次の日にベルの決意に感動したアイオロスが修行内容を『とても優しい』から『比較的優しい』に切り替えた事で、早くも折れそうなるのは別の話だ。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「地上……か…………」
自らの頭上に燦々と輝く太陽の光に男は、やや目を細めながら、感慨深げに呟く……
太陽の温かさは、どこの世界も変わらないものだと、ダンジョンに蓋をするように建てられた建造物『バベル』から出てきた男――シュラは思った。
様々な人々……ヒューマンや
「ここは異世界の筈なのだがな……様々なことが地球とは違うというのに、何故か共通点も多いな」
シュラは考える……何故自分も含めた死んだ筈の人間がこのような見知らぬ異世界で生きているのか……それも、生前と同じ肉体と記憶、更には聖衣を持った状態で――
人の魂は、死後冥界へと落ちて永劫苦しみながら消滅の時を待つか、或いは天界へと昇り転生するか……シュラの知る限りではこの二つのどちらかの筈だ。
であるというのに、自分は確かに生きて、このまったく見知らぬ世界に存在している。
無論、生きていることに喜びがないわけではない。寧ろ、冥王ハーデスに与えられた仮初めの生ではないのなら、肉体と小宇宙を鍛えれば『
だが――
(しかし、やはりこの状況は『不気味な物』を感じて仕方ない……)
やはり、一刻も早く他の『
「やはり、この謎を解くための『鍵』となるのは『あの女』か――」
彼の脳裏を過ったのは、つい数日前――ダンジョンの18階層で戦った女だった。
この世界に概念が知られていない
シュラと数分間の交戦の後、魔法を使って乱入してきた金髪の女剣士を見るなり『アリア!?』と動揺し、それまでの好戦的な様子を一変させ、その場から退いたのだった。
無論、
なので当然、無防備な背中を晒した女に相応の深手を負わせて捕獲しようとしたが、見計らったかのようなタイミングでその場に複数の食虫植物のようなモンスターが現れ、シュラに襲い掛かってきたのだ。
シュラが光の速度をもって、それらを始末した時には、その女はまんまと逃げおおせた後だった。
追うべきか否か……躊躇いは一瞬――
その後は、街の負傷者の救出活動を行いつつ、モンスターの群れを聖剣を振るってほんの数秒で片付けていたら、植物型モンスターの上位種と思わしき巨大モンスターが現れたが、統率された冒険者達に瞬く間に討伐されたのを確認すると、目立つのを避けるためにその場を後にしたのだった。
その際に、主力の一人としてモンスターと戦っていた容姿の整った『槍使いの少年』と目があった気がしたが、シュラは気のせいだろうと思うことにした。
気配を完全に絶ったシュラを見つけるのは同じ、
それよりも気になるのは、女が最後に残した言葉――
『去らばだ
「一体この世界で何が起ころうとしている?」
解らないことが多すぎる……だが、シュラはその胸中に過る不吉な予感を拭い去ることができないまま、オラリオの街を進んでいった。