私のもう一人のお兄様がなんか変人   作:杉山杉崎杉田

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発足式、そして出発

 

 

学校。九校戦の発足式の日だ。私は舞台裏で達也お兄様に薄手のブルゾンを差し出した。

 

「これは?」

 

「技術スタッフのユニフォームよ。発足式では、制服の代わりにそれを着てね」

 

七草会長が代わりに答えた。達也お兄様は私からユニフォームを受け取り、ブレザーを脱いで袖に手を通した。

 

「よくお似合いです、お兄様……」

 

心から私はそう言った。全くこの人は何を着てもカッコいいんだから。うっとりと達也お兄様のユニフォーム姿を見つめていると、達也お兄様からお声が掛かった。

 

「お前は着替えなくていいのか?」

 

「私は進行役ですので」

 

「そうか、大役だな」

 

「プレッシャーを掛けないでください……」

 

気弱な台詞で心細げに瞳を揺らすと、達也お兄様は私の頭に手を置いてくださった。

 

 

発足式が終わり、九校戦への準備は009の加速装置を押したかのような勢いで加速した。

私も生徒会の仕事と九校戦への準備で慌ただしくなったのだが、冬也お兄様に、私が達也お兄様に徽章を付けるところをビデオとカメラに収めてもらい、それを5セット5万円で購入したので、やる気満々状態になって特に疲れは感じなかった。

九校戦の練習の途中、実験棟の方で何か見覚えのある人を見掛けた。そこでは、冬也お兄様と吉田くんが何かしていた。

どうやら、この前の依頼はまだ完了していないみたいだった。しかし、冬也お兄様も自分の仕事の時はあんな真面目な顔をするのね……。少し意外に思いつつも、邪魔しちゃ悪いとも思い、その場から離れて練習に戻った。

 

 

8月1日、いよいよ九校戦の会場へ出発する日となった。私はバスの中で、外で達也お兄様を立たせていることに苛立ちを感じつつも、なんとか平静を保って座っていた。

というか、冬也お兄様もいないし、どういう事なのよ一体……。すると、ようやく七草会長が到着した。

 

「みんな、ごめんなさい。遅くなったわ」

 

七草会長がバスの中に乗ってまず最初に謝罪をした。私は待たされたことには特に何も思っていない。怒ってるのは達也お兄様が暑い中、外で待たされていたことだ。けど、おそらく達也お兄様にもバスの外で謝られただろうし、気にすることないわね。さて、後ここにいないのは冬也お兄様だけ……と、思った時だ。バスの中のテレビが映った。

 

『魔法大学附属第一高校の皆様。本日は当バスをご利用いただき、誠にありがとうございます。今回、ドライバーを務めさせていただきます、司波冬也でございます。どうぞよろしくお願い致します』

 

と、文字が表示された。私は慌てて運転手の方を見ると、冬也お兄様が何食わぬ顔で運転席に座っていた。

いや、ほんともう何考えてんのあの人……。

 

『ここからホテルまで、退屈すると思われますので、こちらをお楽しみ下さい』

 

その文字のあとに出てきたのは『冬也プロジェクト』の文字。そして流れる映画は……、

 

「「「スパァァァァァァクッッ‼︎」」」

 

冬也お兄様の自作映画だった。全員がタイトルコールをし始めた。

あえてもう一度言います、ほんと何考えてんのあの人。

 

 

全員が上機嫌に映画を見ていた。主人公が任務を受ければ、全員で親指を胸に刺して、「ヤェス、マムッ」と唱和し、アクションシーンになれば変に盛り上がっていた。

別に盛り上がることが悪いこととは言わないけれど、この中学生みたいな空気は何とかならないのかしら……呆れつつ、私は窓の外を見た。その直後、頭が一瞬ヒヤッとした。

 

「危ない!」

 

思わず反射的に叫んだ。

 

「大丈夫だよ深雪、この後は主人公の仲間が……」

 

「そっちじゃないわよ!外!」

 

ほのかにそう言うと、ほのかの顔色も青くなっていく。対向車線を近付いてくる大型車が傾いた状態で火花を散らしていた。

その車はいきなりスピンし始めて、ガード壁に激突し、宙返りをしながらこのバスに向かってきていた。全員が焦った。ブツかる!と誰かが悲鳴を上げた時、映画が中断され、文字が浮かんだ。

 

『皆様、シートベルトをご着用下さい』

 

こんな時に何を!と思ったが、その直後、視界が回転した。乗っていた私には何が起きたのかわからないが、バスが急に回転したように感じた。

そして、バスは華麗なサッカー選手のドリブルのように、回転しながら、大型車の落下点を回避して、バスを横向きに停車させた。

………何事?と、私が頭を上げた時には冬也お兄様はバスを出ていた。自分のCADを抜いて、突っ込んできた車の方に向けた。

だが、後ろのバスの前には既に壁のようなものが張られていた。十文字先輩も、バスの外で魔法を発動していたのだった。

 

「司波、車の火を消せるか?」

 

『ヤェス、ゴリッ』

 

「えっ?ゴリ?」

 

十文字先輩の声を無視して冬也お兄様が魔法を発動し、大型車の火を消した。車は後ろで急停止したバスの前で十文字先輩の障壁魔法に阻まれ、ガシャン!と地味に派手な音を立てて煙を上げながら静かになった。

 

 

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