「……と、いうわけで誤解なんです。アレもコレもすべて冬也お兄様が悪いんです」
今は登校中。私は何とか今朝の事を達也お兄様に説明した。ああ、まったく……朝から恥ずかしい……。
「ああ、分かってるよ深雪。おれは何も勘違いしていない」
「お兄様……!」
深雪、感激です!やっぱり達也お兄様は私の最愛の……!と感動していると、お兄様の携帯が震えた。
「? なんだ。冬也兄様か?」
「いやまだ続けてたんですか⁉︎」
冬也お兄様の方を振り返ると、何故か真顔でピースをしていた。本当に腹立ってるのをなんとか抑えてお兄様の携帯画面を覗き込んだ。普段ならこんな失礼なことをしないが、このタイミングで冬也お兄様からのメールなんて大抵はロクなことが書かれていない。
『「邪魔したな」とか気まずそうな顔で言ってた癖に何言うてんのキミwww』
ほら見たことか。………でも、確かに今思えばそうかもしれない。とすると、今達也お兄様が謝ったのは私を落ち着かせるため……?誤解は解けてないし子供みたいな扱いされて……はぁ……。
「まて深雪」
ため息をついてると、お兄様は落ち着いた声をかけてくださった。
「俺は本当に誤解してないよ。あの時は流石の俺にも動揺があったかもしれないけど、ちゃんと深雪から説明を受けて、納得した。だから落ち込むな」
「お、お兄様……!」
『シスコン乙』
「あの、冬也お兄様。ほんと黙ってて下さい」
『黙ってますけど?』
開いた口が塞がらない……。いやこれを言っても『口は開いてませーんwww』的なことを返されるに決まっているわ……。もう無視しましょう。
*
学校に到着して、私はずっと前から思っていたことを口にしてしまった。
「……納得できません」
「まだ言ってるのか……」
私が何に対して納得していないのか、達也お兄様は察したのか呆れなような声を出した。
「何故お兄様が補欠なのですか?入試の成績はトップだったじゃありませんか!本来ならばわたしではなく、お兄様が新入生総代を務めるべきでふのに!」
「お前が何処から入試結果を手に入れたのかは横に置いておくとして……魔法科学校なんだから、ペーパーテストより魔法実技が優先されるのは当然じゃないか。俺の実技能力は深雪もよく知っているだろう?自分じゃあ、二科生徒とはいえよくここに受かったものだと、驚いているんだけどね」
………ムッ、この人は!少なくとも私より劣っているということはないはずなのに……いつもいつも謙遜ばかり!
「そんな覇気のないことでどうしますか!」
「覇気の無さなら冬也兄様も同じだろう」
「あの人は手遅れです!勉学も体術もお兄様に勝てる者などいないというのに!魔法だって本当なら」
「深雪!」
普段からは考えられない強い口調でお兄様は私を叱咤する。
「わかっているだろ?それは口にしても仕方のないことなんだ」
「……申し訳ございません」
項垂れる私の頭に、お兄様はポンと手を置いた。私の黒髪をゆっくりと撫で、その度に私の鼓動は大きくなる。それを知ってか知らずか、優しい声で言った。
「……お前の気持ちは嬉しいよ。俺の代わりにお前が怒ってくれるから、俺はいつも救われている」
……ズルい。この人は。ちょっと拗ねてみようかしら。
「嘘です」
「嘘じゃない」
「嘘です。お兄様はいつも、わたしのことを叱ってばかり……」
言うと、お兄様はさっきより優しい声音で言った。
「嘘じゃないって。でも、お前が俺のことを考えてくれているように、俺もお前のことを思っているんだ」
えっ?想っている……?
「お兄様……そんな、『想っている』だなんて……」
周りに人もいるのに何を言い出すのかしらこの人は……。紅潮した顔を見られたくなくて、思わずお兄様に背中を向けてしまった。が、真後ろにはカメラを構えた冬也お兄様がパシャパシャパシャッと連写している。
「………何やってるんですか」
「………深雪のデレ顔ゲット」
「け、消しなさい!」
「瞬身の術!」
「あっ……!」
に、逃げられた……!
「お兄様!私はあの冬也お兄様を捕獲して参ります!」
「ダメだよ深雪。お前は今日の答辞だろう?」
うっ……そうだったわ。
「冬也兄様のことは俺に任せて、お前は準備しろ」
「いえ、こんな事でお兄様の手を煩わせるわけにはいきません!」
「いいから。こういう時には俺に任せておけ」
「……申し訳有りません。では、深雪は行って参ります」
私はお兄様にぺこりと頭を下げると、小走りで講堂に向かって行った。
「……いやー、麗しき兄妹愛」
「あなたも兄でしょうが。それで冬也兄様、お話があります」
「今のは200円、今朝の着替え写真は500円な」
「3枚ずつで」
「毎度」