「………な、なんで、冬也……おまっ、どうやって……」
『今の魔法、内緒ですよ。まぁ、内緒もクソもないでしょうけど』
「あ、あわっあわわわっ……」
顔を真っ赤にしてる渡辺先輩と冬也お兄様が何か話してる。そこに私と達也お兄様、七草会長が慌てて駆け寄った。
「摩利!大丈夫⁉︎」
「! ま、真由美⁉︎オイ、降ろせ冬也!」
言われてパッと手を離す冬也お兄様。渡辺先輩はペタンと尻もちをついた。
「き、急に手を離すな!」
『いや離せって言うから』
「ちょっと摩利!大丈夫なの?」
「あ、ああ……。それより、七高の選手は……?」
達也お兄様が七高の選手を見た。
「目立った外傷は無さそうですね。気絶してるだけのようです」
「良かった……」
ホッとする渡辺先輩。レース再開の準備をするため、私たちは一度その場から移動した。
*
再レースで、渡辺先輩は危なっかしいながらも決勝に進み、優勝した。でも終始顔を真っ赤にしていた。
ちなみに服部先輩も優勝。流石三馬鹿、と言わざるをえない。
そして、アイス・ピラーズ・ブレイクの決勝。千代田先輩は優勝し、男子は今大会一番の注目カードとなった。
暇な一高生は、ほぼ全員この試合を見に来ていた。当然、私もいつものメンバーと観戦に来ている。
「冬也さん対十文字先輩……」
「どっちが勝つと思う?」
「そりゃ十文字会頭じゃねぇの。なんたって十師族だぜ?」
「でも、冬也さんだってとんでもないわよ」
と、それぞれが感想を漏らす中、私も同じことを達也お兄様に尋ねた。
「達也お兄様はどちらが勝つと思われますか?」
「どちらが克人?そりゃ、十文字会頭だろう」
「達也お兄様、バカが移ってます」
「どちらが勝つか、と言われても俺には分からない。けど、もしかしたら冬也兄様は負けるかもしれないな」
「何故、ですか?」
「簡単な話だ。冬也兄様は去年、実力を隠していた。それを九校戦で曝け出す理由はないだろう」
「つまり、わざと負けると?」
「可能性はある」
確かにあり得る。そんな話をしていると、アナウンスが流れる。
『第一高校、十文字克人選手』
ワァッと盛り上がる会場。流石と言わざるをえない人気だ。
『第一高校、司波冬也選手』
ヤェス、マムッと盛り上がる会場。他の高校の方々は頭の上に「?」を浮かべていた。そりゃそうだろうね。
二人の選手が会場に上がってきた。直後、会場がシンッと静かになる。
理由は、二人の服装だ。ゼロとナイトオブセブンの格好をしていた。
「………なんでそのチョイス」
特に十文字先輩。スザクが完全にただのゴリラになってる。全員がボーッとしてる間に、試合は開始した。
冬也お兄様が早速魔法を発動する。今までとは違い、演出はしないで、効果のある魔法のみを発動するんだろう。相手は十文字先輩だ。
直後、キュウィィンッという、甲高い音が上空から鳴り響いた。見上げると、真っ白な玉がドックン、ドックンと成長していくように大きくなる。
「えっ、ちょっ……」
「嘘だろオイ……」
誰かがそう呟いた。直後、その光が照射された。カッと大きく光を放ち、会場を包み込むように迫って来る。そして、十文字会頭の氷柱どころか、会場を大きく巻き込んだ。
「これは……」
達也お兄様がそう呟くと同時に、十文字先輩も冬也お兄様も防御魔法を慌てて張った。
全員、あまりの眩しさに目を隠した。会場が光に飲み込まれた。
数秒後、薄っすらと目を開くと、シュウゥゥウ……ッと音を立てて会場から煙が上がっていた。
私は目を疑った。フィールドにはすべての本数の氷柱が残っていた。
「! しまった……!」
遠くからでも十文字先輩がそう言ったのが分かった。その隙に冬也お兄様は魔法を発動した。
「火の鳥」
その通り、全身から炎の鳥が10匹出現し、不規則な動きで十文字先輩の氷柱に飛んで行く。
「グッ……‼︎」
対物障壁を連続で発動し、6匹弾いたものの氷柱は4つ破壊された。
「………なるほど。さっきのは『俺をニートにする世界など滅んだ方がマシビーム』ではなくただの閃光魔法だったのか。その隙を突いて十文字会頭の氷柱を砕くのが目的だった、と」
冷静に分析する達也お兄様。でも待って、今恐ろしい言葉聞こえたわよ?
「あの、達也お兄様?その俺をニート……ナントカビームとは?」
「ああ、万が一にも自分がニートになって五年以上経過してしまった時の最終手段らしい。試した事はないらしいが、冗談抜きで地球が滅ぶレベルのビームらしいぞ」
「試されてたまりますかそんなビーム!」
あの兄貴って……本当はかなり危ない人なんじゃないのかしら……?
「まぁ、とにかく主導権は完全に冬也兄様が握った。ここからどうなるか、見ものだな」
私は色んな意味でハラハラしながら試合を見守った。