試合はすでに一時間を経過。十文字先輩のほぼ絶対とも言える防御魔法を持ち前の魔法のブラフによって何度かブチ抜くも、重たい一撃を防ぎ切れずに氷柱を幾つか壊された冬也お兄様の戦いは、観客の誰一人飽きることなく見守っている。
だが、試合も永遠に続くわけではない。十文字会頭の氷柱は2本、冬也お兄様の氷柱は3本と、お互いに残り僅かとなった。
「試合も終盤だな」
「ああ……マジで映画見てるみてぇだ……」
「冬也さん、こんなにすごい人だったんだ……」
達也お兄様、西城くん、吉田くんと呟いた。確かにかなりのハイレベル戦だ。お互いに一歩も譲っていないし、会場がほとんど戦争状態になっている。だが、それと共に一つ思ったことがある。
………新人戦でアイス・ピラーズ・ブレイク超やりづれぇ……。
ここまでハイレベルな上に、私は冬也お兄様の妹。これでは観客に変な期待をさせても応えることはできない。あっ、やべっ、吐きそっ。
「どうかしたか?深雪」
「いえ……その、新人戦のアイス・ピラーズ・ブレイクはやりたくないなぁと思いまして……」
「そんな事気にすることないよ。冬也兄様は冬也兄様、深雪は深雪の試合をすればいいんだ」
「とう……達也お兄様……」
「あれ?今冬也お兄様って言いかけた?いいこと言ったのに名前間違えかけなかった?」
頭を撫でてくれた達也お兄様をキラキラした眼差しで見つめてると、フィールドからものすごい音が聞こえた。
耳に嫌に響く電気の音。冬也お兄様の右上斜め後方に稲妻が集中している。私達もあの中に引き摺り込まれると思うほどだ。
「………! アレは、」
「知ってるの?達也くん」
「グングニルの槍、流石に威力を抑えているようだが、冬也兄様の電気を使った魔法で最大の威力のものだ」
「………アレで威力抑えてんのか」
当然、放たれるわけにもいかず、今の大きな隙の間に十文字会頭はファランクスで氷柱を押しつぶそうとした。
だが、冬也お兄様は魔法を並行して使用。フィールドから濃い緑色の植物が生え、鎧のように氷柱を覆った。
「プラント・プロテクト」
「ッ!」
そして、冬也お兄様は右手を前に突き出した。グングニルの槍が真っ直ぐに十文字会頭の氷柱に向かう。
「ヌゥンッ‼︎」
太い雄叫びと共にファランクスを張る十文字会頭。それにグングニルの槍が直撃した時、意外にもあっさりと槍は霧散した。
「なっ……⁉︎」
「学ばないな、十文字センパイ」
直後、冬也お兄様は新たに魔法を発動。冬也お兄様が紫色の円盤を出すと、それを飛ばして十文字会頭の残り2本の氷柱に向かう。
「ッ……‼︎」
直後、十文字会頭は冬也お兄様の氷柱の上のファランクスに力を込めた。
プラント・プロテクトに亀裂が入り、打ち砕かれた。お兄様の円盤とファランクスがほぼ同時にお互いの氷柱を全て打ち砕き、試合は終了した。
結果、十文字克人、司波冬也、同時優勝。
*
「凄いじゃない!とーやくん!」
七草先輩が冬也お兄様の手を握ってブンブン振るう。
『会長、痛いです。腕取れます』
「それくらいすごかったってことよ!何あなた、あんなにすごかったの⁉︎」
周りには女子や生徒会だけでなく、男子も何人か「スゲェスゲェ」と囲んでいた。
「……………」
「どうしたんだ深雪?何怒ってるんだ?」
「怒ってません」
………うー、なんだろうこの感じ。なんかもやもやする。不愉快だわ。何よ、あのバカアホクソオタンコナス兄貴。デレデレしちゃって。
ふんだ、もう冬也お兄様がボケても突っ込んであげないんだから。
そんな事を思ってると、同じようにつまらなさそうな顔をしている渡辺先輩を見かけた。あの人も余程イライラしてるのか、貧乏ゆすりがハンパじゃない。
すると、冬也お兄様が魔法で花火を上げた。全員その花火を見上げる。
『あの、すみません』
どうやら、今は人数が多いから花火にしたようだ。
『あそこで妹がかまって欲しそうな顔してるので少し離れてください』
「ブッフォ‼︎」
思わず噴き出してしまった。直後、何故か全員納得したようで、さざ波のように引いていく。
「ち、ちがいますからね!私は、別に……!」
私は慌てて否定するが逆効果のようだ。全員、明らかに面白がってニヤニヤしている。私の顔はみるみる真っ赤になっているだろう。すると、達也お兄様がポンッと私の背中を冬也お兄様の方に押した。顔を見れば、若干楽しそうな顔をしている。
あ、ダメだ。限界
「お、お兄様のバカァーッ!」
涙目で逃走した。
今回はギャグが少なめになってしまいました。
次からはまたゆるゆるギャグを入れていこうと思います。決してネタ切れとかではありません。