アイス・ピラーズ・ブレイク決勝、私は雫を倒して優勝した。手加減は無用だった。さすがにフォノンメーザーには驚いたけど、それでも高校1年生レベルの魔法師が私の相手になるはずもなかった。いや、自惚れてるわけじゃなくて。
夕飯の時間になり、私は達也お兄様と冬也お兄様と一緒にティーラウンジに足を踏み入れた。明日、私はミラージ・バットに出るので出番はまだ終わってない。心の中で気を引き締めていると、ツンツンと後ろから突かれた。振り返ると、冬也お兄様がゴリラのお面を被っていた。
「っ⁉︎」
『ドッキリ☆大成功』
「ば、馬鹿な真似はやめて下さい!」
この人は本当にどんな場所でもブレない。例えガンダムの世界に転生しても何食わぬ顔でマジンガーZで出撃しそうだ。そんな事を思ってると、ほのかと雫がやってきた。
「優勝おめでとう、ほのか」
「ありがとう」
言ったものの、ほのかの意識は冬也お兄様に行っている。多分、優勝おめでとうと言って欲しいんだろう。
私は冬也お兄様の脇腹を肘で突いた。直後、私の携帯にLINEが来る。
司波・ウィンター『何?』
司波深雪『ほのかにおめでとうって言ってあげて下さい』
司波・ウィンター『なんで?』
司波深雪『いいから!』
すると、パッタリLINEが来なくなった。冬也お兄様は少し考え込んだあと、納得したように手を打ってホワイトボードに文字を書き始めた。
『Happy Birthday ほのか』
と、無駄に達筆な文字で書いた。
「はい?」
いやそうじゃねぇですよ!
*
翌日、私はミラージ・バットで無事に優勝した。二位はほのか、3位はD組の里美スバルと続いている。この様子なら、新人戦の優勝も固い、私はそう思っていた。だが、そうもいかなかった。
私と雫と冬也お兄様が見に来ていたモノリス・コードで、事故が起こった。内容は、市街地フィールドの廃ビルの中で「破城槌」を受けて、森崎くん達が瓦礫の下敷きになったのだ。
「深雪!」
声が聞こえた。振り返ると、達也お兄様がやって来た。
「何があったんだ?モノリス・コードで事故か?」
「はい、事故といいますか……」
「深雪、あれは事故じゃないよ」
隣の雫が強い口調で口を挟んだ。
「故意の過剰攻撃。明確なルール違反だよ」
「雫……今の段階で滅多なことを言うものじゃないわ。まだ四高の故意によるものという確証はないんだから」
「冬也兄様と一緒にいたんだろ?何か言ってなかったか?」
「それが……ニヤリと微笑んだと思ったら、私も雫も寒気に襲われて、気が付いたら居なくなっていました」
「…………そうか」
あれは、私なんかよりよっぽど強い事象干渉。あの人の魔法力は相変わらず底知れない。
「で、モノリス・コードに出てた奴らは無事なのか?」
「全治二週間、三日間はベッドの上で絶対安静だそうです」
「………なるほど。けど、大丈夫だろう」
「どういう意味ですか?」
「これ以上は何も起こらないって事だよ」
どういう意味なんだろう。私はそう思ったが、達也お兄様は説明を加えようとしなかった。
*
ホテルのブリーフィングルーム。そこで集められたのは私、七草会長、十文字会頭、渡辺先輩、市原先輩、中条先輩、服部先輩、そして、冬也お兄様。
「一応、十文字くんのお陰でモノリス・コードに出られることにはなったけど……」
「誰を替え玉にするか、だな」
会長と渡辺先輩が呟いた。
「正直、他の一年男子はパッとしないからな……。しかも三高から『クリムゾンプリンス』と『カーディナルジョージ』だもんな」
『あまり面子は関係ないでしょう。相手がどんなに優れてても、ルールが存在する以上は戦い方だと思いますが』
冬也お兄様が、今は会議用の大きなホワイトボードに文字を書いた。
「でも、正直この二人が出て来るのは反則級だろう」
『それをあなたが言いますかゴリラ』
「それをお前が言うか冬也。あとお前、今日くらい本気で殴り合うか?ん?」
「しかし、あの二人に勝てる替え玉を用意する必要がありますよゴリ文字先輩」
「移った!」
服部先輩の意見に、思わず十文字先輩は声を上げた。
『………ま、どうしても出るなら一人だけ候補が居ますよ』
「………誰ですか?」
『選手以外でいいならね』
そう言うと、冬也お兄様は指を二本咥え、ピュイッと鳴らした。直後、窓ガラスをブチ破って吉田くんが現れた。
「お呼びでしょうか」
どうやら、私達の代にも馬鹿が移ったようだ。
『彼が候補です』
「彼は?」
『吉田幹比古、精霊魔法の使い手ですよ。E組の生徒ですが、良い腕をしています。流石に「クリムゾンキングダム」程ではありませんが、かなり良い腕をしていますよ』
「クリムゾンプリンスな」
どう思う?みたいな顔で七草会長が十文字先輩を見た。
「まぁ、吉田家の喚起魔法は有名だし、他の一年よりはいいかもしれんが……」
「あの、何の話ですか?」
『ヨッシー、お前新人戦モノリス・コードの選手だから』
「ええっ⁉︎ぼ、僕がですか⁉︎」
『お前ならやれんだろ。どうしても無理っていうなら達也とレオも付けてやるから』
「…………」
「しかし、彼は選手ではないのでは?」
服部先輩が意見を出した。
「その程度は俺が何とでもするが……」
『まぁ、俺が推薦するんだから間違いないでしょう。これで優勝できなかったら……そうだな。女の服が透けて見える魔法を教えますよ』
「よし、決定だ」
「ちょっと、十文字くん?」
ニッコリ微笑んで止める七草会長。
「って、待て冬也!お前そんな魔法を使えたのか!?」
渡辺先輩が当然の反応を示す。
『はい。ついでに俺の目は見ただけでその人のスリーサイズが分かります。例えば渡辺先輩なら上から……』
ホワイトボードを蹴り倒して止める渡辺先輩。当然の反応だ。
『じゃあアレで。女性の先輩方にはオッパイが大きくなる魔法を教えますよ』
「決定だな」
本当に思う。そろそろ転校を考えたほうがいいのでは?と。