私のもう一人のお兄様がなんか変人   作:杉山杉崎杉田

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海水浴

 

『海に行かない?』

 

発端は雫のそんな一言だった。

 

「海って、海水浴?」

 

『うん』

 

雫、ほのか、私でテレビ電話中だった。

 

『あっ、もしかして?』

 

『うん、そう』

 

「もしかして……って、なに?」

 

カァーンカァーンカァーン!

 

『えっと、小笠原にね、雫のお家の別荘があるのよ』

 

「えっ?雫のお家って、プライベートビーチを持っているの?」

 

『うん……』

 

カァーンカァーンカァーン!

 

『父さんが、「お友達をご招待しなさい」って。どうやら深雪と達也さんと冬也さんに会いたいみたい』

 

『今年はおじさまがご一緒なんだ……』

 

『安心して。顔をみせるのは最初だけ』

 

カァーンカァーンカァーン!

 

『深雪、これ何の音?』

 

「バ……冬也お兄様が温泉を作ってる音よ」

 

『温泉……?』

 

「それより、私は構わないけど、何時にするの?」

 

『決めてない。達也さんの都合のいい時で、って思ってる』

 

「じゃあ、お兄様の都合を伺って来るわね」

 

 

そんなわけで、海当日。他にエリカ、美月、吉田くん、西城くんも連れて、合計9人。

 

「わぁ……素敵なクルーザーねぇ」

 

エリカが白い船体を見上げる。

 

「エリカのお家でもクルーザーくらい持ってない?」

 

「船は持ってるけど、あれはクルーザーとは言えないよねぇ……てか言いたくない」

 

「……もしかして、訓練のため?」

 

「そうよ」

 

「徹底してるのね……」

 

思わず呆れ顔で呟いてしまった。

 

 

私と達也お兄様が北山潮さんに挨拶したあと、出発。途中、嵐に会うこともなくプライベートビーチのある島に到着した。冬也お兄様が「何か起こらないと面白くない」とかなんとかで竜巻を起こそうとしていたが、なんとか止めた。

そのお兄様は、吉田くんと西城くんを連れて潜水をしている。生の魚を見に行った。

 

「ねぇ、深雪」

 

「? どうしたの?ほのか」

 

「冬也さんは?」

 

「あそこで沈んでるわよ」

 

「沈……⁉︎」

 

「や、今のは比喩表現で……」

 

思ったより深刻な顔をされてしまい、慌てて弁解しようとしたけど遅かった、ほのかは海に突撃した。

 

「深雪、ほのかは泳げないよ」

 

「ええっ⁉︎」

 

雫の爆弾発言で、私も慌てて海へ突入。しようとした時、海が持ち上がった。直径10メートルくらいの水の球が持ち上げられ、中に吉田くんと西城くんとほのかがいる。

 

「へ?」

 

冬也お兄様が海面から顔を出して、超能力を使ってる人みたいに両手を開いて動かしていた。

まさか……あれ、冬也お兄様が……?

 

「と、冬也お兄様!」

 

声を掛けた直後、冬也お兄様の前に水の文字が浮かぶ。

 

『話しかけるな、集中力途切れる』

 

いやそんな魔法使えてる時点で割と余裕あるのでは?と、思ったが割と本気で大変そうだ。

 

「あーもう無理」

 

冬也お兄様は一気に脱力した。直後、水球は海の中にリバース。

 

「ッハァー!最高だぜ」

 

「冬也さん、もっかい!もっかい!」

 

西城くんと吉田くんが子供みたいにはしゃぐ中、冬也お兄様は黙って潜った。何をしてるのかと思い、私も潜って海中の様子を見ると、ほのかの腕を掴んで背中に乗せて上がってきた。

 

『おーい、無事か光井さん』

 

文字通り水性ペンでそう言うと、ほのかはゆっくりと目を開いた。

 

「んっ……んんっ⁉︎」

 

冬也お兄様におんぶされてる現状に気付き、顔を真っ赤にするほのか。可愛い。

 

「とっとととと冬也しゃん⁉︎」

 

『人の名前を北斗神拳みたいに呼ぶな』

 

「なっ、なんっ……なんでっ……⁉︎」

 

『いや、沈んでたから』

 

「沈ん……?はっ、そうですよ!何てことするんですか!」

 

『いや、幹比古とレオがどうしてもって言うから』

 

「危ないですよ!」

 

『でも楽しかったでしょ?』

 

「ま、まぁ、スリルはありましたけど……」

 

なんか、仲良くなってる……。別に私は達也お兄様一筋(もちろん兄妹的な意味で)だから良いんだけど……気に入らない。

 

『もっかいやるか』

 

「へっ?」

 

「おーい!冬也さん、あたし達も混ぜて!」

 

エリカやら雫やら美月やらが集まって来た。直後、マジで?みたいな顔をする冬也お兄様。

そっか、人数が多いとその分負担が掛かるんだ。

 

「冬也お兄様、私もお願いします」

 

『深雪、テメェ……』

 

で、二回目。今度は一回り大きな直径12メートルほどの水球を作って、私達ごと持ち上げた。

………確かに楽しいわねこれ。水の中なのに浮いてるって感覚が中々。なんていうか、冬也お兄様の無駄な技術でも役に立つことがあるのね。ほんのり感動してると突然視界がブレた。ドッボォォオンッと水の中から水の中に落ちた。あ、この感覚も中々新鮮で楽しいかもしれない。

 

「ぷはっ」

 

海面から私は顔を出す。続いて雫、エリカ、西城くん、吉田くん、美月と顔を出す。

………一人足りない。だが、心配いらなかった。冬也お兄様がすぐにほのかを海面に上げる。

 

「ちょっ、待って!お願いですから!」

 

様子がおかしい。ヤケにほのかは抵抗している。不審に思った私は、潜って海中を見ると、ほのかの上半身のビキニが無かった。

 

「ッッ⁉︎」

 

私は慌てて冬也お兄様にやめさせようとした。ほのかの裸が周りに晒されるのももちろんだが、何より冬也お兄様の手はほのかの胸に当たりそうな位置だ。

 

「冬也お兄様!ストッ……!」

 

『誰かほのかちゃんのEカップくらいのビキニ知らない?』

 

「」

 

その場にいた女性陣は言葉を失い、吉田くんと西城くんはおデコに手を当てて顔を背けた。

直後、みるみる顔を真っ赤にしていったほのかは、手を開いて大きく振りかぶった。

 

「もうっ!本当に死ねッ‼︎」

 

パァンッと拳銃より心地よい軽快な音が、小笠原の海に響いた。

 

 

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