とりあえず、コーヒーカップに乗った。これなら周りは邪魔しようがないし、何よりさっきショッカーが入っていった従業員室からかなり離れている。
「じゃ、乗ろっか。柴田さん」
「はい。……でも、余り回さないでくださいね?私、酔っちゃいますから」
「うん、分かってるよ。僕もそこまで乗り物には強くないしね」
嘘です。イニシャルDバリの運転の中で4DSやっても酔わない自信があります。
柴田さんを連れて、コーヒーカップに乗った。辺りにバカどもはいない。よし、楽しもう、そう思った時だ。
「桐原くんっ!楽しみだネ☆」
「ああ、壬生。ベイブレード並みに回してやるから覚悟しろよ」
「わぁーいっ!」
バカが僕達のカップの横に乗ってくる声が聞こえた。冬也さんの魔法を使ってるのか、外見は隠しているが僕には分かる。
「……………」
「吉田くん?どうしました?」
「ううん……なんでもないよ……」
そうか……こいつらの攻撃は回避不能か……。まぁいいや、無視すればいいし。
何より、そう派手なことは出来ないはずだ。余りバカをやり過ぎると、市原先輩に止められるからだ。あの人は元生徒会だし、常識人だからバカ達の抑止力にもなってくれるはずだ。
『本日は、コーヒーカップをご利用いただき、誠にありがとうございます。本日、アナウンスを努めさせていただきます、市原です』
常識人なんてこの世にいない、はっきりわかんだね。
『今回のコーヒーカップは、特別使用となっておりまして、一番回らなかったカップルにはコーヒーになっていただきます』
は?何言ってんのあいつ、関係ない人を巻き込むんじゃねぇよ、と、思って辺りを見回すと、僕達と桐原先輩達しか乗ってなかった。なにこの手回しの速さ。
「吉田くん!負けられませんね!」
しかも柴田さんまで乗り気だし。
「う、うん。そうだね」
『では、スタート!』
直後、竜巻が起こった。振り返ると、桐原カップルが剣道部と剣術部の力を合わせて全力回転させていた。
「ッッ!?」
「わっ、早い!私達も……!」
んーっと頑張って柴田さんは回そうとするが、あそこまでの速さはいかない。すると、足元からコーヒーが流れてきた。
「ほ、本当にコーヒー!?」
いかん!このままでは柴田さんがコーヒーまみれに!僕はガシッとコーヒーカップのハンドルを握る。
「……ゥゥォォオオオオオアアアアアアアッッ!!!!」
全身の筋肉を振り絞ってフル回転させた。直後、タリララッタラ〜と足元で音楽が鳴り響いた。
「え?」
「ん?」
『はぁ〜い、ボーナスタァ〜イムッ』
気の抜けた声が聞こえたと思ったら勝手にカップが回りだす。
「は?」
「え?」
『ボーナスタイムにより、このカップはオート回転モードとなります。死ぬなよ、桐原』
「ちょっ、何今の捨台詞……えっ?桐原?」
直後、僕達のコーヒーカップの外側がぱかっと開き、そこからミサイルが発射された。
「」
「」
それが桐原先輩達に向かい、爆発炎上させた。えーっと、なんだこれ。
*
「さて、次は何処行こうか?」
さっきまでのことは綺麗さっぱり忘れることにした。
「うーんと……どうしましょうか……」
『やぁやぁお二人さん!』
そこでフランクな声と共に現れたのは、遊園地のマスコット、アイアンマンだ。明らかにマスコットには向いていないが、外見のかっこよさから子供には大人気である。
が、このタイミングで話しかけて来る時点でこいつの正体は明らかにあの中の誰かだ。
『素敵なカップルだね。美女、地味男。えっ?地味は余計だって?いや気にするな、本音が出ただけだ。どんな美男でも美女と並べば地味に見えるさ。な?マドモアゼル?』
しかもキャラ完コピしてるし……冬也さんかこいつ。
「で、何の用ですか?」
『そう邪険にするなよ幹比……少年』
名前呼びかけたよ今。
『僕は君達にオススメスポットを紹介しに来たんだ。例えば……そうだな、あそこのお化け屋敷とかいいと思うぞ?』
「そうですか。じゃ、お化け屋敷以外に行こうか、柴田さん?」
そういって僕は柴田さんの手を引いて真逆の方向に向かおうとする。その直後だ。後ろからキュインッと赤いレーザー光線が僕の頬を掠めた。振り返ると、アイアンマンの腕から出ていた。
『もう一度言う、あのお化け屋敷がオススメだ』
性能まんまかよそのスーツ……。