私のもう一人のお兄様がなんか変人   作:杉山杉崎杉田

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追憶編(もしくは「冬也お兄様の野望」)
三年前


 

 

沖縄。私は夏休みを利用したプライベートな家族旅行に来ていた。お母様と私と冬也お兄様、そしてもう一人の兄と。

到着ロビーの会員制ティーラウンジを出ると、預かり手荷物を取りに行っていた兄が待っていた。

私はこの兄が苦手だ。家族でありながら使用人そのものの扱いを受けていて平気でいられるのは何故なのだろうか。一体、何を考えているのか分からない。

 

「深雪、ほーら」

 

冬也お兄様から声が掛かった。冬也お兄様はそう言うと、私に風船で作ったポニョをくれた。

 

「わあ!すごいです、お兄様!」

 

「知ってる」

 

「二人とも、行くわよ」

 

お母様から声が掛かった。昔から、色んなものを作っては私に見せてくれる冬也お兄様が、私は大好きだ。

 

 

今回、私たちが泊まるのは、恩納瀬良垣に買ったばかりの別荘だ。

お母様が人が多いところが苦手だから、という理由で急遽、父が手配した場所だ。

 

「いらっしゃいませ、奥様。冬也くんも深雪さんも達也くんもよく来たわね」

 

別荘で出迎えてくれたのは、お母様のガーディアンである桜井穂波さんだ。

 

「さあ、どうぞお入り下さい。麦茶を冷やしておりますよ。それともお茶を淹れましょうか?」

 

「ありがとう。せっかくだから麦茶をいただくわ」

 

「はい、畏まりました。冬也くん、深雪さん、達也くんも麦茶でよろしいですか?」

 

「俺はいらないです。部屋に篭ってるから放っといて」

 

冬也お兄様はそう言うと、足早に別荘に上がり込んだ。

 

「はい、ありがとうございます」

 

「お手数をお掛けします」

 

冬也お兄様の失礼な態度に私は呆れながらも、桜井さんに返事をした。続いて、兄も返事をする。

何故か、気にくわない。桜井さんが、兄を私の兄として扱うことが。

当たり前のことのはずなのに、気に食わなかった。

 

 

「お母様、冬也お兄様と少し歩いてきます」

 

別荘に閉じこもってるのは嫌だったので、散歩に行くことにした。

 

「深雪さん。達也を連れてお行きなさい」

 

「……わかりました」

 

兄を連れて行くのは本当は嫌だったのだが、余計な心配は掛けたくない。私は渋々、了承した。

 

「冬也お兄様、入りますよ?」

 

私はノックをしてから、冬也お兄様の部屋に入った。冬也お兄様は、中で何やら細かい作業をしていた。

 

「………あの、冬也お兄様?」

 

「ちょっと待って。あと30秒待って」

 

そう言われたので、私は30秒数えることにした。備え付けの時計で30、29、28……と、年末のようにカウントダウンを開始する。

 

「うしっ、出来た」

 

「? 何を作ってたんですか?」

 

「偽札」

 

「犯罪じゃないですか!流石ですお兄様!」

 

「さすがって……それで、何の用?」

 

「え?あ、ああ、そうでしたね。ちょっと、一緒に散歩でもと思いまして」

 

「………。いいよ、達也も誘ってやれ」

 

冬也お兄様はお母様と同じことを仰った。けど、ニュアンスは大分違うように感じた。

そういうわけで、私は二人の兄を連れて海岸を歩いた。

 

「知ってるか?二人共。海っていうのは人類の祖先なんだぜ。いや、人類どころか全生物の母なんだ。だから、海水浴に来てる時に海の中でオシッコするという事は、お母さんに小便引っ掛けながら遊んでるようなものなんだ」

 

「つまり、海でオシッコしちゃダメだってことですね!」

 

「いや、逆だ。だから、普段母親に怒られてるのを憂さ晴らしするためにガンガンオシッコしてやれ!」

 

「流石ですお兄様!」

 

「えっ?あ、うん」

 

なるほど、そういうものなのか……。今度実践してみましょう。……でも、私はあまりお母様には怒られないわ。冬也お兄様はお母様の化粧品を爆薬と入れ替えて怒られたりしてたけど。

つまり、私は実践できないわけね……。

 

「と、いうわけで俺はちょっとオシッコしてくる。達也、深雪を頼んだよ」

 

「了解しました」

 

「えっ」

 

この兄と二人にしないで……と、私は思ったが、冬也お兄様はすでにズボンのチャックからジョボボボボッとオシッコをしていた。

私は冬也お兄様は好きだ。だが、それと同時に、最近この人は変人なのではないか、と思い始めて来ていた。

 

 

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