私のもう一人のお兄様がなんか変人   作:杉山杉崎杉田

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パーティ

 

 

今日はバカンスに来ているわけだけど、それでも世間のしがらみと縁を切れるわけではない。

黒羽貢さんにパーティーへ招待されたのだ。

 

「はぁ……」

 

思わず口からため息が漏れる。今晩くらいはゆっくりしたかったというのに……。

そんなことを思ってると、ノックの音がした。

 

「深雪さん、用意はできましたか?」

 

桜井さんの声だ。

 

「あっ、はい」

 

すると、桜井さんは部屋の中に入って来た。が、随分と冴えない顔だ。

 

「どうかなさったのですか?」

 

「いえ……その、奥様に冬也くんの見張りを頼まれてしまって……」

 

「それで、何故ため息を?」

 

「私、あの子アホっぽいから苦手なんです……」

 

ガーディアンの立場では普通、あり得ないことを言い出した。だが、冬也お兄様の小言はお母様お父様公認で許されている。

私には少し、気持ちは分かる。だって何を仕出かすか分からないもの。少し前のパーティでは、どういうわけかパーティ会場にガララワニ(捕獲レベル7)が現れ、それをトウヤコング(推定捕獲レベル78恒河沙)が倒すという茶番を見せられてすごい怒られていた。

 

「それは、大変ですね……」

 

「ええ。さて、では行きましょうか」

 

桜井さんの話を聞いて、自分の都合で悩んでいた私が随分小さく思えた。

 

 

パーティ会場。

 

「叔父様、本日はお招き、ありがとうございます」

 

私は頭を下げて型通りの挨拶をした。

 

「よく来てくれたね、深雪ちゃん。お母様は大丈夫かい?」

 

「お気遣い、恐れ入ります。少し疲れが出ているだけだと思いますが、本日は大事を取らせていただきました」

 

「それを聞いて私も一安心だよ。おっと、こんなところで立ち話もなんだな。ささ、奥へどうぞ。亜夜子も文弥も、深雪ちゃんと会うのを楽しみに……」

 

「うぃーっす、くそジジィ」

 

「………テメェは呼んでねぇんだが」

 

私の横から冬也お兄様が現れ、叔父様は不機嫌そうにそう言った。

 

「え?まじ?おーい、穂波さん!俺呼ばれてないらしいから帰っていい?」

 

「ダメです。お母様に長男らしくと言われたのでしょう?」

 

「俺もアレ、頭痛いから」

 

「そうだそうだ。お前なんか帰っちまえ」

 

何故、叔父様と冬也お兄様が仲悪いか、それは少し前に、冬也お兄様が叔父様の隠していた秘蔵コレクション(エロ本)5000冊を勝手に持ち出して、東京タワーを作ったからだ。そりゃキレるよね。

 

「るせーな、家族がありながらんなもん買ったテメーが悪ぃんだろうがチンカスジジィ。なぁにが『女子高生の薄っすらま○毛コレクション』だよ。マニアック過ぎんだろうが、完全に犯罪だろうが」

 

「お、おまっ……!あんまデカイ声で言わないでくんない?お願いだから。謝るから」

 

「ならお小遣いちょうだい?さもないとお命頂戴」

 

「分かった。分かったから。いくら?」

 

「8億」

 

「限度を知ろうね⁉︎多くて5億まで!」

 

いやそれ大して変わらないんじゃ……。

 

「と、冬也くん!失礼なこと言っちゃダメ!謝りなさい!」

 

「ごめりんこ」

 

「ごめりんこ⁉︎」

 

それ流行ってるんですかねぇ……。

大人げなく喧嘩する叔父様も叔父様だが、挑発する冬也お兄様も悪い。胃に穴が開きそうになってる桜井さんに助けを求められる前に、私は亜夜子さんと文弥くんに挨拶した。

 

 

翌朝。私は目を覚ました。本当はもっと寝ていたいのを押さえ込むように、起き上がると手足に力を入れた。

まずは空気を入れ替えることにした。パジャマのままベランダに出ると、下の庭で兄が冬也お兄様とトレーニングをしていた。

兄が攻撃を仕掛けると、冬也お兄様は落ち着いた動きでそれを捌く。二人のトレーニングはほぼ互角に見えたが、冬也お兄様は反撃していない。全て兄の攻撃を捌くだけだった。

攻撃を全部捌くと、流水岩砕拳のように手首を裏に返す。それによって、兄の体勢は大きく崩れた。

がら空きになった胸元に、冬也お兄様の鋭い一撃……かと思ったら、鼻の穴に人差し指と中指を突き立てて背負い投げをした。

 

「ぬおっ……⁉︎」

 

投げられ、地面に転がる兄。それを冬也お兄様は見下ろした後、手を差し出した。

 

「うしっ、ここまでな」

 

「ハァ……ハァ……ありがとう、ございました……」

 

「いいんだよ。可愛い弟の頼みだ」

 

可愛い?あの兄が?私はその感情が理解できない。無愛想で、何を考えているのかわからなくて、いつも後ろをついてくる兄が?そもそも、そんな台詞をお母様に知られたら……。

それに、心なしか兄の表情も、満足したような顔に見えた。まるで部活終わりの学生のような。

 

「鼻血出てない?鼻取れてない?大丈夫?」

 

「ええ。問題ありません」

 

「じゃ、続きはまた今度な」

 

「はい。ありがとうございました」

 

そう言うと、兄は別荘の中に入ってくる。

………冬也お兄様って、強かったんだ……。まさか、昨日襲われた時、本当に兄に私を逃がさせようとしていた?いや、もしかすると兄も逃がすつもりだったのかもしれない。

それを察した兄の事も気になる。この二人って、どんな関係なんだろう……。いや、それ以前に私のガーディアンって、どんな人なんだろう。

私は俄然、気になり始めた。

 

 

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