私のもう一人のお兄様がなんか変人   作:杉山杉崎杉田

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甘え

 

 

その日の夜。食事が終わったあとに、私は自室に入って、ベッドに寝転がった。

 

「………ふぅ」

 

あの後は大変だった。お菓子売り場でポテチ何袋もカゴに入れるし、ガチャポンには必ず飛び付くし、本屋の付録勝手に開けるし、私の体よじ登って肩車させられるし……。

子供の世話って大変なのね……そんな歳ではないのに母親の苦労を知ってしまった気がするわ。

 

「とっつげきぃぃぃい!!」

 

扉が開かれて、そこから冬也くんが入って来た。私のベッドの上に飛び乗ると、私の上をゴロゴロと転がりまくった挙句、真上でピタッと止まった。

胸の上に顎を置く形で停止する。このエロガキ……!

 

「………深雪のオッパイ、意外と柔らかいねー」

 

「意外とって何よ……。というか、ベッドの上で暴れないでください」

 

「ふへへー」

 

「ふへへーじゃなくて」

 

「今日はありがとね!ガンプラとお菓子買ってくれて!」

 

「へっ?」

 

「教育ママタイプだと思ったら、意外と優しいんだね!」

 

この子はどうしてこの歳で「教育ママ」なんて言葉を知っているのか。

 

「意外と、は余計よ」

 

言いながら、私は冬也くんの頭を撫でる。すると、嬉しそうな顔で微笑んだ。

…………ちくしょう、かわいい。

 

「ね、深雪」

 

「何ですか?」

 

「一緒に寝てもいい?」

 

「…………はっ?」

 

一緒に?私と?冬也お兄様が?本気?

 

「…………だめ、かな」

 

返事をするのが遅れると、少し残念そうな顔をする冬也くん。そういえば、取扱説明書に「一緒に寝てあげましょう」って書いてあった気も……あれ、本気だったの?

もし、仮にそうだとしたら、一緒に寝てあげないわけにはいかないかもしれない。そう、これはやましい気持ちなんてない。

 

「………い、いいわよ?」

 

「やりぃっ!」

 

ガッツポーズするときの笑顔がいちいちかわいい。……あの生意気な部分を除けば、素直で可愛い子なのね。

そんな風に思ってる間に、布団の中に潜り込んできた。

そして、スリスリと私の身体によって来る。

 

「ね、横向いて」

 

「へ?こう?」

 

「んーっ」

 

「なっ……!?」

 

このクソガキ……!私の胸に顔を埋めてきやがった。

 

「な、何してるの?」

 

「え、ダメ?お母さんとか桜井さんにはよくしてもらってたから……」

 

さ、桜井さんも!?

………落ち着きなさい、私。これが冬也お兄様ならスーパートルネードスローからのサイドスクリュースロー、トドメのローリングドライバーとパー技三連コンボだったけど、彼は小学生よ……落ち着いて。

 

「それに、3〜7歳くらいの子供だっけ?うろ覚えだけど、その辺りの子にはちゃんとスキンシップ取らないといけないらしいよ?」

 

「わ、分かったわよ」

 

「へへっ」

 

笑顔ではにかむと、冬也くんは顔を上げて言った。

 

「おやすみ、深雪」

 

「…………ええ」

 

頭を撫でて返してあげると、すでに寝息を立てていた。

………この子、本当生意気じゃなきゃかわいいわね。

 

 

翌日、学校。スケット部部室。桐原、服部、十文字、幹比古、壬生、鈴音(new!)の六人はいつものようにトランプをしていた。

 

「最近、冬也来ねーな。3」

 

「そういえばそうですね、どうしたんでしょうか。4」

 

「会頭はなんか知らないすか?5」

 

「ダウト」

 

「チッ」

 

「灼熱のハロウィンの時に大暴れして以来、俺も会ってないな。6」

 

「まぁ、あの人のことだから大丈夫だとは思いますけど……7」

 

そんな事を言ってると、こんこんとノックの音がした。

 

『あーい』

 

全員が全員、返事をすると、ガラガラッと扉が開いた。

扉の向こうに見えたのは深雪だ。

 

「ちょっと、ここで待っててね」

 

深雪は扉の奥の何者かにそう言うと、部室に入った。

 

「あ、司波さん。どうしたの?」

 

同級生ということもあってか、幹比古が応対した。

桐原はトランプを片付け、十文字はカップとお皿を重ねて鈴音の前に回し、その鈴音は紅茶を入れ、壬生はミルクと砂糖を用意し、服部は椅子を用意した。

完璧なもてなしだった。

 

「あ、す、すいません……」

 

それにドン引きしながらも、とりあえず深雪は座る。

 

「お砂糖とミルクは?」

 

「お願いします」

 

壬生がそれらを入れて、スプーンで混ぜる。

いただきます、と言ってから深雪は紅茶を啜った。一息ついてから、相談に入った。

 

「あの、これは皆さんを信用しているからこそできる相談です」

 

「え、うん」

 

「冬也お兄様の部活仲間として、みなさんは私からの信頼はなくても、冬也お兄様からの信頼は厚い、だからこそ相談できることです」

 

酷い言われよう、と思っても口にしなかった。

 

「今回のことはここにいる全員以外には内密に、それと防音の魔法を張ってください」

 

言われるがまま、張った。

 

「で、相談というのは?」

 

「この子です。……入ってきなさい」

 

深雪に言われて、扉から入って来たのは小さな男の子だ。どこかで見たことあるような顔の。

 

「あ?そのガキがなんだってんだよ」

 

「自己紹介しなさい」

 

「司波冬也、7歳です!」

 

全員吹き出した。

 

「と、ととと冬也!?」

 

「えっ、なんで?どゆこと!?」

 

「こ、これが冬也さん!?」

 

「はい。訳あって縮みました」

 

「いや訳あってって……」

 

どんな訳よ……と壬生がため息をつく。

 

「この事が他の魔法師などに知られたら、マズイことになります。事情は伏せますが、マジでマズイです。いやほんとマジで」

 

「分かったから続けろ」

 

「本当は私が生徒会室で面倒を見たいのですが……。その、端的に言いますと、クソガキです、こいつ」

 

「こいつって言うな!俺はお前の兄ちゃんだぞ!」

 

「うんありがとー。ですから、生徒会室に置いてしまうと、下手をすれば学校の情報がこのクソガキに良いようにされてしまいます」

 

「は、はぁ……」

 

「それと、ほのかに知れたらおそらく発狂します」

 

それは分かるわ、と見解の一致だった。

 

「そういうわけなので、放課後から帰宅までの間、宜しくお願いします」

 

「まぁ、生徒の依頼ならスケット部員としては無下には出来んが……」

 

十文字がそう答えると、深雪はホッと息を吐いた。

 

「では、皆さん。よろしくお願いいたします。これ、取扱説明書です」

 

全員にコピーした紙を配ると(一部訂正版)、深雪は部室を出て行った。

 

 

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