元旦。随分と久し振りの登場な気がするので、一応言います。私は深雪です。アホなお兄様とイケメンなお兄様を持つ、妹です。
私は初詣のために、振袖を着ていた。
「………で、なんで私の後ろにいるんですか?冬也お兄様」
冬也お兄様は後ろでカメラを構えていた。もう慣れているので、私は無視して着替え始める。
「カメラ見りゃわかるでしょう。撮影だよ」
「もはや盗撮とも言わないのですね……。そもそも、実の妹にそんな事して恥ずかしくないのですか?」
「や、俺お前に欲情とかしないし」
カメラを下に向けて、ツイツイッと指で操作している。どうやら、撮った写真を確認しているようだ。
「………おしっ、じゃあ俺外出てるから。達也も待ってるし早くしろよ」
「分かってます」
冬也お兄様は部屋を出た。
唐突だけど、最近の悩み。冬也お兄様に裸を見られるのも慣れてくるどころか悪くないとか思い始めてる自分がいる。このままいけば新たな扉を開きそうですごく怖いのよね……。でも、こんな変態みたいなことは雫やほのかには相談できないし……。
「はぁ……まぁ、どうしようもないわね……。自分で何とか自制するしかないわ」
そんな事を呟きながら、私は部屋を出た。
多少、歩き難いながらも、階段を降りて玄関に向かった。外では、既にお兄様二人が待っていた。
達也お兄様も羽織袴を着ているのに対し、冬也お兄様は赤髪海賊団船長のような格好をしていた。新年早々、それでいいのかと思ったが、もうこのバカに何を言っても無駄なので無視した。
「お待たせいたしました」
「ああ、来たか。……ほい、二人とも」
冬也お兄様はマントの内側からお年玉袋を2枚取り出した。
「………これは?」
「経営がうまくいってるからね。二人にお年玉」
「よろしいのですか?」
達也お兄様が「俺も?」みたいな顔をする。
「いいんだよ。俺と一緒にいる限りはお前らはただの弟と妹だ。お前らのためなら例え世界がお年玉をやるな、と言っても俺は捻り潰してお年玉をやる」
「たかだかお年玉で世界を相手にしないで下さい……」
そう言いながらも、その少しかっこいい台詞が私は嬉しかった。何より、私達の家の中で達也お兄様を差別しない人がまだいる、それだけでこの人にはなんだかんだ感謝している。
「ありがとうございます」
私と達也お兄様はありがたくお年玉をいただいた。中々の厚み、こんなにいただいていいのかしら?と、思ってしまうほどに。遊戯王のデッキが作れそうなほどの厚さだ。
…………や、それ厚すぎじゃね?
「………あ、あの、冬也お兄様?開けてもよろしいでしょうか?」
「なんだ?楽しみなのか?仕方のないヤツだな、いいよ開けな」
その言い草に少しイラっとしたが堪えた。
中身を見ると、一万円札が60枚入っていた。
「いや多過ぎィイイイイ‼︎‼︎」
新年一発目のツッコミである。
「お、イイね。新年、明けましておめでツッコミ」
「おめでツッコミ⁉︎語呂悪っ‼︎ていうかどうしたんですかこの札束⁉︎」
「深雪、おめでツッコミ」
「た、達也お兄様……申し訳有りませんが黙ってて下さい……」
「何、去年深雪にはツッコミでお世話になったからな。今年も頼むぞ」
「い、いやいやいや!にしてもこれは多過ぎますよ!どうしたんですか?」
「ん、ちょっとウィンターランドでね。良いからもらってくれよ」
ウィンターランド?
「なんですか?それ」
「俺の経営してる遊園地」
「いつの間に⁉︎何それ行きた……ゲフンゲフン、何処にあるんですか?」
「アメリカ」
「アメリカ⁉︎」
「向こうにも許可もらってるから。元気玉見せたら許可してくれたよ」
「それ許可じゃなくて脅迫‼︎」
「アメリカ的にも悪くない話だったんだぜ?俺の技術を百分の一くらい教えてやったしな」
「………でも、こんなお金……」
達也お兄様と合わせたら120万円……と思って横を見ると、達也お兄様のお年玉袋には5万円しか入っていなかった。いや、5万でもおかしいけど。
私はキッと冬也お兄様を睨んだ。この人まで私と達也お兄様を比べるのか、と。
「冬也お兄様⁉︎これはどういう……‼︎」
「達也には別で、すでにお年玉をあげてるんだよ」
「別で⁉︎どういう意味で……‼︎」
文句を言おうとしたところで、達也お兄様の袖からごとりと携帯電話が落ちた。落ちた衝撃で画面がパッと映る。待ち受け画面は、ついさっき振袖を着ようとしてる私の写真だった。見ようによっては、振袖を脱ごうとしてるように見える。
「…………」
「…………」
「…………」
「じゃ、行こっか」
「そっすね」
「ミカ、留守番頼むぞ」
初詣に行った。
*
冬也お兄様のどこでもドアによって、九重寺に到着した。
「明けましておめでとうございます、師匠」
「明けましておめでとうございます、九重先生」
『明けましておめでとうございます、マスターアジア。今年もよろしくお願いいたします』
若干一名、師匠間違いしてるヤツがいたが、3人揃って腰を折った。
「応えよドモン‼︎」
『師匠‼︎』
「流派‼︎」
『東方不敗は‼︎』
「『王者の風よ‼︎』」
「全新‼︎」
『系列‼︎』
「『天破挟乱‼︎見よ、東方は、赤く燃えているゥウウウウウウ‼︎‼︎』」
思いの外、ノリのいい師匠だった。というか、師匠と正面から殴り合ってる冬也お兄様スゴイ。
「先生、何をして……って、冬也くん⁉︎」
隣の小野先生が驚いたように声を上げた。
『小野伸二先生、あけましておめでとうございます』
「誰がサッカー選手よ‼︎」
『じゃあ、小野大』
「小野大輔でも小野友樹でも斧乃木余接でもないからね‼︎」
『さっすが♪』
「イラつくわボケェッ‼︎」
こ、この人……冬也お兄様のボケを先読みした⁉︎出来る‼︎
「すごいですね、小野先生。冬也兄様のボケを先読みするなんて」
達也お兄様も同じことを思ったのか、私の思ったことを言った。
「嫌な慣れよ……。冬也くんが一年生の時は私がずっとつっこんでたんだから」
こんな所で先輩に会えるなんて⁉︎
「あの、冬也お兄様とはどのようなご関係で?」
「ん?生徒と教師よ。強いて言うなら、顧問ね」
「へ?こ、顧問?スケット部の?」
「そーよ。顧問」
あ、あの部活……顧問なんていたんだ……。
「まぁ、それはともかくそろそろ行かないかい?」
「そうですね」
九重先生の提案で、私達はもっかいどこでもドアをくぐった。