私のもう一人のお兄様がなんか変人   作:杉山杉崎杉田

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スケット部見学

 

その日の夜。晩ご飯を食べている最中に私は冬也お兄様に声を掛けた。

 

「あの、冬也お兄様」

 

「んー?」

 

「実は、私のクラスメイトがスケット部に興味を持っていまして……」

 

「へー」

 

「明日、見学に行ってもよろしいですか?」

 

「今日来てたじゃん。何でまた?」

 

「いえ、今日は何やら忙しそうだったので何もしないで帰ってしまったんですよ。ですから、また明日……」

 

「別に来てもいいよ。でも明日はメイド喫茶やらないよ」

 

あ、それは好都合。ほのかに冬也お兄様に会わせて上げることが出来る。……いや、油断はよくないわね。明日は猫耳メイド喫茶なんて言われたら困るし。

 

「あの、男としての姿でいてもらえませんか?」

 

「それは元々そのつもりだったし、いいよ」

 

よし、これで確実ね。ほのかも一回会えば満足するなり幻滅するなりしてくれるだろうし、ふぅ……明日はようやく生徒会の仕事に戻れそうね。

 

 

翌日、私はほのかと一緒にスケット部部室に向かった。何人かの生徒と私とほのかは入れ替わりでスケット部部室に入った。

………一番後ろのポニーテールの人、昨日もこの教室にいたような……。

 

「深雪?どうかしたの?」

 

ぼんやりポニーテールの人の後ろ姿を見ていると、ほのかに声を掛けられたので、「なんでもないわ」と短く答えて教室に入った。

 

「失礼します」

 

「し、失礼しましゅ!」

 

私の後にほのかが続き、挨拶すると、冬也お兄様はホワイトボードをこっちに向けた。

 

『いらっしゃい』

 

何か作っているのか、胡座を掻いたまま下を向いて手をモゾモゾと動かしている。

 

「あ、あの……!」

 

ほのかが緊張気味に声を掛けた。そこでようやく顔を上げる冬也お兄様。

 

「わ、私!光井ほのかっていいます!い、妹さんの……深雪のお友達で……!それで……!」

 

「ほのか、落ち着きなさい。そんな緊張するに値する相手じゃないわ」

 

「で、でも……!」

 

や、でもも何もないんだけど……。私が苦笑いでほのかを見てると、冬也お兄様は急に立ち上がって、部室に備え付けられている冷蔵庫を開けた。ていうか、なんで冷蔵庫あんの?

冷蔵庫の中から、缶ジュースを2本取り出し、ほのかと私に放った。

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

「わ、私もいただいて宜しいのですか?」

 

『当たり前だろ』

 

………優しいところあるのね。少し見直したわ。いや、上から目線になるつもりはないけれど。

 

「飲まないの?」

 

ほのかに聞かれた。というか、ほのかは既に開けて飲んでいる。私もせっかくだからありがたく頂いた。カシュッと音を立てて缶を開けた直後、缶の中からゴム風船が膨らんできた。

 

「………えっ」

 

思わず声を漏らした直後、その風船が破裂し、さらに中から水が弾け飛んだ。当然、私に直撃する。

 

「…………」

 

ポタポタと前髪から水が滴り落ちる中、私はギロリと冬也お兄様を睨んだが、まったく気にした様子もなく、無表情でホワイトボードを向けてきた。

 

『ドッキリ☆大成功!』

 

……へぇ、ドッキリ。ねぇ?この兄貴、ブッ殺す。そう思ってCADをポケットから出そうとした直後、

 

「すごいですね!」

 

ほのかが冬也お兄様の両手を握った。

 

「これ、手作りですか⁉︎」

 

『まぁね』

 

「普段はこんなの作ってるんですか?」

 

『ああ、スケットの依頼が来ないと暇だからね。ほらあそこにある木製の机、アレも俺が作った』

 

「へぇ〜!なんか物作り部って感じですね〜」

 

『まぁ基本的にこの教室にあるものは俺が作ったものばかりかな。自配機と冷蔵庫とエアコン以外』

 

「ちょっと見て回ってもいいですか?」

 

『お好きに』

 

こうもはしゃがれると怒るに怒れないわね……。仕方ない、仕返しは今日の夕飯の時にしておきましょう。

それに、私もこの部屋にあるものは少し興味があるかもしれない。ほのかと一緒に部室にあるものを見て回った。

………改めて見ると確かにすごいわね。この前の大太鼓やトランペットも自作ということになる。

 

『ほのかちゃん』

 

「な、名前呼び⁉︎は、はいなんでしょう!」

 

呼び、というか書きだけど。

 

『そこの椅子のボタン押してみ』

 

「へ?こ、これですか?」

 

『そうそれ』

 

言われて、ほのかはボタンを押す。その直後、椅子が変形して、車輪が付いた。

 

「おお!すごい!」

 

『手元のレバーで車輪の向き変えられるよ』

 

む、無駄な技術力……。というかこんなの作れるなんて何処まで暇だったのよこの人。

やや呆れ気味ながらも、私は部屋の中を引き続き見て回った。

 

 

それから、一週間。達也お兄様は走り回っていた。風紀委員として活躍するお兄様は大変素敵だったのだけれど、私は私でほのかに冬也お兄様=冬美お姉様を隠すのが大変だった。

勧誘期間も終わり、達也お兄様もようやく肩の荷が降りたように落ち着いていた。

今は放課後、いつものように私は生徒会室で仕事をしていた。その時だ。コンコンとノックの音がした。

 

「失礼します」

 

入って来たのはどこか見覚えのある二年生のポニーテールの先輩。ああ、そうだ。スケット部の部室と部室の前で見た人ね。その後ろに数人の生徒がいる。

 

「……あなた達は?」

 

「二年の壬生紗耶香です」

 

名乗って一礼してから、壬生先輩は口を開いた。

 

「私達は学校の差別撤廃を目指す有志同盟です」

 

「………は?」

 

「生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を要求します」

 

「……? どういう事ですか?」

 

七草会長が聞き返した。私もそう思う。いきなり過ぎて何のことだかすら分からなかった。

 

「そのままの意味です。この高校では、明らかに一科生、二科生での扱いが違います。その差の撤廃を、私達は要求します」

 

「差別?」

 

「そうです。学校側による扱いは私達も納得して入学したわけですが、生徒達にまで差別されるいわれはありません」

 

い、いきなり現れて何を言っているのかしらこの人達は……?確かに、差別意識は多少なりともあるかもしれないけど、それは一部の生徒の事でしょう。

何より、差別意識が最も高いのは差別を受けている者の方なのよ?私はすぐにでも反論してやろうと、口を開きかけたが、七草先輩が先に声を発した。

 

「いいわよ。では後日、討論会を開きましょう」

 

「会長⁉︎」

 

私は思わず七草会長の方を振り返った。だが、よく分からないウィンクによる返事で黙らされた。

 

「では、後日改めて」

 

七草先輩がオーケーしたのを確認すると、再び一礼して壬生先輩は出て行った。

 

 

「……と、いうことがあったんです」

 

夕食後、私はさっきのことを達也お兄様に相談した。

 

「……有志、ね」

 

「どう思われますか?」

 

聞くと、達也お兄様は難しい顔をして顎に手を当てた。

 

「……今の段階じゃなんとも言えないな。だが、堂々と生徒会室に宣戦布告してくるという事は、何か勝算があるんだろうな。ちなみに受けた方の会長は何か言っていたか?」

 

「それが、『元々は言いがかりに過ぎないんだし、ハッキリ反論しといたほうがいいと思った』だそうです」

 

「……なるほどな」

 

相槌を入れると、達也お兄様も真面目な口調で言った。

 

「……実は、俺も部活動勧誘期間にエガリテのメンバーと思われる生徒を見つけた」

 

「エガリテ……?」

 

「ブランシュは分かるかい?あの下部組織だよ」

 

ブランシュって……確か政治的に魔法師が優遇されている行政システムに反対して、魔法能力に対する社会差別を根絶したがってる反魔法国際政治団体、だったかしら?

 

「それの下部組織が何故……」

 

「分からない。だが、奴らのシンボルマークである赤と青の線で縁取られた白いリストバンドが見えた」

 

これはまた……面倒な事になりそうね。

 

「奴らの目的も魔法を使える者と使えない者の差別の撤廃……このタイミングで一高でも同じような事が起きたのはとても偶然とは思えない」

 

「確かに……とすると、一高生の生徒……少なくとも今日、生徒会室に来た方々はブランシュと何か関係があるという事に……」

 

「まだ確定的な証拠はないけどな。とにかく、これから少しずつ情報を集め……」

 

「必要ない」

 

私とお兄様の会話に別の声が入って来た。相変わらず顔と声だけカッコイイ冬也お兄様が現れた。今回は壁にもたれかかり、腕を組んで片方だけ膝を折り曲げるというカッコいいポーズもしていた。ただし、血盟騎士団副団長のコスプレで台無し。というか、前のメイド服といい、この人女装趣味でもあんの?しかも全部似合うのが腹立つ。

 

「必要ないとは、どういうことですか?冬也兄様」

 

まったく動じない達也お兄様もどうなんだろう……。というか、女装してるだけで冬美お姉様じゃないのね。

 

「お前らは気にしなくていいってことだよ。それより、討論会の対策しとけよ。一筋縄じゃいかないと思うから」

 

「………?」

 

どういう意味なんだろう……。質問しようと思ったのだが、質問する前に自室に引き返してしまった。

 

 

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