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「これは…」
大理石の柱が堂々と立つフロアにシャンデリアが吊るさており、さらにはゲーム内の時代とは大きく外れるエレベーターが8台も設置してある。
「このゲームいろんな意味で神ゲーだ…」
エレベーターに乗り、最上階の11階まで上がり、自分の部屋に向かう。
「えーっと、1104…あ、あった。」
ドアに鍵を刺し、開けてみる。
「うっわ…よくこんなの作る余裕あったな…」
中に入っていくと、ドアが三つほどあり、そのドアを開けてみても、バスルームやら寝室やら、なんらかの作業室…
「え?作業室…?」
部屋の中に入り見回すと、軽い電子工作…いや、かなり大掛かりなものづくりができそうな設備が整っていた。
一旦退室すると、後ろにあった机の上に、手紙のようなものがおかれていた。
「これは…?」
手紙を開いてみると、
『改めてようこそこの世界へ』
と、題名が刻まれていた。
『どうやら、君が一番最初にこの街に辿り着いたようだね。おめでとう。』
あぁ、どうも。と、思いながら次の行を読んでいく。
『ここまで早いと、恐らくエレアウスを倒してきたのだろう。一応言っておくが、君がエレアウスに勝てたのは、偶然ではなく、このゲームの設定上、あのエレアウス。つまり一番最初に出現するエレアウスには、必ず高クリティカルが発動するように仕込まれていた。』
頭に、疑問符が浮かび上がる。
なぜそんなことをしたんだ…?
てか、ずっとモニタリングされてたのか…
『恐らく、何故そんなことをやったのかと思っただろうが、この世界は、必ず弱肉強食の世界にいずれはなるだろう。その世界の中で強き者になるには、好奇心、挑戦心、幸運などが重要とされる。基本この3つを持っていれば、この世界は生き残れるように定理として出来ている。しかし、この世界に囚われている全ての人間がこのことを知った時、この定理は破壊され、力を持っていない人から順に消えていくだろう。今の文をしっかり解読できたのであればこのゲームの攻略のヒントとして参考にして貰えれば構わない。尚、この事は君にしか送られないメッセージとなっている。このヒントを教えるか教えないかは、君に任せる。』
「つまり、猪突猛進野郎みたいなやつがこの世界では有利だっていうことか…?」
手紙にはまだ続きがあるようだ。
『ここからは、全てのプレイヤーに送られるメッセージになっている。』
少し空間が空けられ、少し長い文章が続いていた。
『生き残っている君達にはおめでとう。と、祝福のメッセージを送っておく。恐らくここまで辿り着くのに1000分の1のプレイヤーは既にゲームオーバーになっているだろう。』
メニュー画面を開き、ゲーム状況の欄を確認すると
「只今の生存プレイヤー94312/109804人…」
約19000人の人々が既にゲームオーバー…つまり、死んだというわけだ。
日本にもかなりの打撃を与えているだろう。
日本人口の約0.01%の人が突然消えてしまった。
今、現実世界はどうなっているのだろうか。
きっとパニック状態になっている人も少なくないだろう。
俺の家族は………
うん。普通に大丈夫だろう。
『それでは諸君、健闘を祈る』
「うわ、やばい…」
眠気に誘われ始めたようだ。
恐らく、飛竜狩りをしていた時の疲れだろう。
「今日はもう寝るか…」
そのまま、ベッドに倒れるように深く眠りに入った。
─────────────────────
「野宿…」
一日中歩き続けたのにもかかわらず、次の街は全く見えてこない。
「リスクを負ってでも真ん中を通るべきだったかな…」
はぁ…と、ため息をつき、近くにあった木の側に座りこむ。
食料はそこらへんになっていたりんごのような果物があったのでそれをもらってきたからひとまず安心できる。
「それにしても…」
りんごのような果物を武器で小さく切りながら周りを見渡す。
「誰もいない…」
自分がかなり速いスピードで歩いて来たのだからしょうがないだろう。
しかし、次の街へ目指し始めた時から誰とも会っていない。
「ん…!美味しい。」
このりんごのような果物が何気に美味しい。
食べてみたら何故か疲れもほとんど飛び、「まだ行けるかな。」と、再び歩き始めた。
すると、突然ものすごいスピードで何かが自分の目の前を横切った。
「うっ…!?」
その瞬間かなり大きい風圧が発生し、後ろに10mほど吹き飛ばされた。
「…何?いまの…」
しかし、正体はすぐに分かった。
『グオォォォォォォォォッッ!!!!』
とてつもなく巨大な咆哮が鳴り響く。
「竜…!?な、なんでこんなところに…?」
この地域は大型敵モンスターはいっさい出現しないという情報が流れていた。デマだったのだろうか。
いや、今はそんなこと考えている場合ではない。
「暗くてよく見えない…」
敵モンスターの詳細が分からない限り、こちらから先手を切るのは危険すぎる。
しかし、敵も攻撃をしかけずに、様子を見ている。
「何かアイテムを…」
アイテムリストを確認するが、これといったアイテムが全く見当たらない。
すると、咆哮が聞こえた方向から何かが月明かりに反射しながら飛んできた。
瞬時にそれを確認し、身体を無理矢理曲げて回避する。
「今のは…」
その時、偶々背後に立っていた木がみしみしと嫌な音を立てながら倒れた。
切り株になってしまった木の口を見てみると、ささくれも一切なく、綺麗に切断されていた。
「もしかして…あいつは…!」
再び、月明かりを反射しながら、鋭く研がれた刃のようなものが飛んできたが、次は、回避せずに、正面から剣を使い、近くの木に衝突させた。
「やっぱり切断属性か…ということは、あいつは、デルナス…」
そうと分かれば、こちらの物だと言わんばかりにデルナスに剣を向け、走り出す。
デルナスも鋭い刃がついた尻尾をこちらに叩きつけてくるが、そのような攻撃は全て剣で流して行く。
攻撃後、隙が出来たデルナスの懐に飛び込み、斬るのではなく、何度も突き刺すようにデルナスの腹部を攻撃する。
今の攻撃はかなり効いたようで、デルナスが大きく後ろに仰け反ったが、休まずに一気に押して行く。
そして、手に力をこめ…
「ラピッドストライク!」
スキルを発動させ、デルナスの身体を貫く。
しかし…
「ちょっ…!?」
デルナスが突然尻尾を横に薙ぎ払い、一瞬で背中から岩に叩きつけられた。
仮想世界の痛覚はかなり抑えられている割には今の攻撃はかなり痛かった。
「うっ……く………」
ライフゲージが3分の2程削られた。
「早く…回復アイテムを…」
しかし、手に力が入らなくなってしまい、アイテム使用コマンドを出すことが出来ない。
手をゆっくりと、アイテム使用コマンドに運んでいると、デルナスが助走をつけ、途轍もない速さでこちらへ飛びかかってきた。
もうだめだと目を閉じ、全身の力を抜いた。
その時…
「はぁぁ!!」
電光石火の速さで、黒い影がデルナスを斬り裂いた。
「大丈夫ですか?」
と、細く透き通った女の子の声が聞こえてきた。
「…だ…い…じょうぶ…です…」
「一旦ここから、離れて回復してください。」
一度デルナスの方をチラッと見てから、さらに指示を出す。
「もうすぐ、怯み状態から回復しますので、早く!」
「あ…は、はい!」
先程よりも動かしやすくなった身体を立ち上がらせ、走って物陰に隠れる。
「えーっと…ポーション…」
初期の回復アイテムなので、一個使用するだけではあまり回復しないため、連続で何個も使用する。
そして、HPが8割程まで回復したら、残りは自然回復に任せ、剣を握り直す。
「よし!」
再び、戦場へ飛び込んで行った。
─────────────────────
「…う……く…」
身体を伸ばし、ベッドから立ち上がる。
まだ、外は暗い。
というか、寝てから1時間も経ってない。
「なんか、眠気も完全に無くなったな…」
窓の方まで行って、外の道を眺める。
「あれが、俺が歩いてきた道か。」
すると、何か光っているものを見つけた。
どうやら、誰かが戦闘中のようだ。
「ちょっと見に行ってみるか…」
しかし、戦闘が行われていると思われる場所に行くには、数時間はかかるだろう。
「あそこまで飛べたらな〜」
その時、あることを思い出した。
メニューを開き、エレアウスを狩った時にドロップした、剣を出した。
先程は、武器のランクしか見ておらず、詳細は見ていなかったので、今一度確認することにした。
「やっぱりな。」
エレアウスは、雷属性の飛竜であるため、勿論雷属性系の攻撃が使える。そのため、ドロップした武器にも雷属性がしっかり付いている。
しかも、通常の攻撃力1850に、雷属性の数値は、790。
通常序盤で、武器の攻撃力と属性値を足して、800程度あれば十分なのだが、この武器は中盤の終わりの頃に出てくるようなランクの武器のため、ズバ抜けている。
さらに、武器自体に未開放のものだが、スキルが4つほど付いている。
そんな剣の名前は、【雷烈放「インテルス」】
噂によると属性は自分で操り、魔法のように使うこともできると聞いたが、それを試す時がちょうどきたようだ。
取り敢えず剣を窓から外に向け、直感的に力をいれてみる。
すると、電気が剣の周りで絶縁破壊を起こし空中放電し始めた。
さらに力を加えると、物凄い音で『パーーーン!!!』と、遠くにあった電灯に電撃が飛び、電灯を破壊した。恐らく下まで40m〜50m。もしくはそれ以上あるだろう。その距離を電撃で渡すことが出来たのであれば、相当な電圧が発生させられるに違いない。
そして、あの戦闘が行われていると思われる場所にできるだけ短時間で行く方法。
それが、この電気を利用し、ローレンツ力で飛んでいくというものだ。
言ってしまえば、レールガンの反動で、目的地まで飛ぶ。という方法である。
やり方は簡単である。
何故か配備されていた作業室のような場所から特大の鉄骨をお借りし、それを、インテルスと、適当な金属の棒で挟み込み、高電圧をインテルスで発生させるだけである。
こんなことができるのはこの世界が、仮想世界あるからだ。
現実世界では絶対にこんなことはやれない。というかやりたくない。
着地は、電撃を瞬間的に逆噴出しておけば、衝撃も収まり、さっくりと着地出来るだろう。
「まぁ、やってみよう。」
この時は、このゲームが命がけのゲームだなんてことはすっかり忘れていた。
もしも、このことを覚えていたら、こんなことはできなかっただろう。
そして、この世界の星空には電流を纏った流れ星が反映されたと、少し噂になった。
文字数orz