デスケープ   作:ダルノム

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0004話:識別番号と5枚のカード

「いいですカー? チームデスゲームのルールは至って簡単デース! ソレハデスネー! ”最後の審判”のトキまデ、死なずに生き残ルッ☆」

 

 最後の……審判?

 

「なんトォォォッ!!!!!!」

 

 うるさっ!?

 

「ルールはそれだけなのデーーースッ!! ワーパチパチパチパチパチー!」

 

 は……?

 そ、それだけ?

 

 生き残るだけでいいのか?

 

「サイゴノシンパンってどういう意味でちゅかー?」

 

 で、でちゅかって……。

 おいおい。こいつの勘に触れたら、俺たちみんな殺されるかもしれないんだぞ。ふざけてる場合かよ。

 

「”最後の審判”デスカー? それはデスネー! 一般的にセカイの終末の日という意味デスヨー! ちなみにワタシの好きな言葉の一つだったりしまァース! なのデ、みなさんにも知ってもらおうト、そこだけ翻訳()めさせちゃいましター。ゴメンネー。たしカ、地球のコトバでしたよネェ? ネェー! 天上院(てんじょういん)さーン! そうデショーッ!?」

 

 お、俺にふってきた……だとッ。

 

 お、落ち着け俺。落ち着くんだ。冷静にいけ、冷静に。つうか地球の言葉って、翻訳って……あぁくそっ。何がどうなってんだマジで。

 

「あ、あぁ。お、俺自身、意味は良くわかってないけ、けどまぁ。その言葉を聞いたことは……あ、ある」

 

 身体が緊張しているからか、声が震えて長い言葉が思うように言えない。これは恥ずかしい。まぁ、こんな状況じゃ、しゃーないか。むしろ、今の俺の脳にはこの身体を見習えと言いたいくらいだ。

 

「ウフフッ。と、いうことデース! 地球という惑星から生まれた言葉の一つなのデース☆ そのコトバをアナタ達のエンドの日とかけましたノン☆」

 

「僕たちのゲームエンド。それは、死という名のバッドエンドのことでしょうね。つまり、いつまでも死なずに生き残り続けろということですよ。テンジョインくん」

 

 横にいたメガネが、クイっと誇らしげな顔でこっちを見ながらドヤ顔している。こっちみんな。そして、なんで今このタイミングでわざわざ俺にそんなことを言う。というか、この状況で話に割り込めるってすごい度胸してるな、あんた。俺なら怖くてできないぞ。

 

 それと、俺の名前はテンジョインじゃねえ。天上院(テンジョ”ウ”イン)だ。ウが抜けてるぞ、ウが。ベンジョにインみたいな名前にするな。まったく。

 

「そんなに僕をみつめてどうかしたのですか? 僕の顔に何かついていますか? あっ、もしかして。ハハハッ、お礼の言葉ならいりませんよ、天上院くん。僕の善意ですからね」

 

 お礼って……おいおい、すごいなこのメガネ。よくこんな時に冗談言えるな……。

 

「アノー。マッタくチガいますヨー?」

 

 やべえ……機械音の奴にツッコまれてんじゃねえか。なにやってんだよ……お前。マジで殺されるぞ……。

 

「あれ、そうでしたか? 僕はそのように伺っていたのですが。まぁ、人は誰しも間違えることはあるわけですからね」

 

 いや、なんでそんな誇らしげな顔でこっちをみながら言うんだよ。俺に向けられても反応に困るわ。頼むから黙っていてくれ。少しでもアイツの勘に触れたらアウトなんだから。

 

「正確にはゲームクリアをするまでデスヨォー。デスゲームのネェー」

 

「──ゲームクリア?」

 

 しまった。気が緩んだせいか、また癖で呟いてしまった。やべえミスった。人のこと言えねぇ……。

 

「ハイ。デスゲームをクリアするまでデス。なのデ、ちゃんとゴールはあるのでご安心クダサイネー。ァ……それト、ゲームと言いましたガ。これからアナタ達が向かうセカイは、ゲームのセカイではありませんヨ? もちろん、VRMMOでもありまセェーン! 実在スル、現実のとある異世界に行きマァース!!」

 

 VRMMO?

 なんだそれ?

 

 それに向かう世界って……ここが、こいつの言うデスゲームの舞台ではないのか?

 

 まさか、さっきみたいにまたどこかに転移するのか。

 

「これからアナタたちが向かうサキッ! それハァーーー──ッとある剣と魔法の異世界ッッッ! 名は「ラーシュバルツ」と呼ばれているところデェェェスッ!!」

 

 剣と魔法の異世界……。

 

 魔法……。

 

「繰り返しますガ! その異セカイでアナタ達ハァ、あるキジツまで生き延びて下さいネー! オオきなルールはただそれだけデース! そのトキまでにちゃんと生き残っていれバァ、ゲームクリアーァ!!」

 

 ある期日……おそらく、コイツの言う最後の審判の日のことなんだろうけど。それって一体、いつの日なんだ。この意味不明なデスゲームが開始されたとして、その何日後が、コイツの言う最後の審判の日なんだ。それに、その言葉にはいったいどういう意味が含まれているんだよ。その「ラーシュバルツ」とかいう世界が滅亡する日って意味なのか?

 

 もしそうなら、こいつには未来の世界を視る力まであるってのかよ。それなら、コイツにはもう俺たちの結末も見えてんじゃないのか。結果の知ったデスゲームなんて面白くもなんともないだろ。あぁくっそ……わっけ、わかんねぇ……魔法や超能力の使える世界の、密室殺人事件現場に立ち会っている気分だ。仮定がなんでもありえそうだから、そう感じているのだろうか。思考停止していた方が心にいい気がしてきた……。

 

「もちろン生存者たちはちゃんと元いたセカイにモドリィィィ、当然自分のセカイも滅びずハッピーエンドォォォ!! イェェェーイ!!!」

 

 けどまぁ……もし、コイツの言っていることが嘘偽りのないものだとしたら。それなら少しだけ、ほんの少しだけ俺でも希望はみえてきた気がする。1%もないくらい小さなものだけれど。

 

 デスゲームなのに殺し合わなくていいし、おまけに誰かを蹴落とす必要もない。それなら……たとえ、その審判の日とやらに、ものすごい自然災害が襲ってくるのだと仮定しても──。

 

 ──あぁ、そうだ。そうだよな……うしっ。決めた。やっぱり、絶対に生き残ってやる。現状よくわかってないけど、とりあえず地球の奴等だって、俺が死んだらヤバイんだろ。なら、やっぱり()()()のは止めだ。

 

 どうせなら、抗って、生き残って、そしてこいつに一矢報いてやる。それと、地球に帰ったら一日中布団にくるまって、絶対ヒッキーになってやるからな。覚えてろよ。

 

「小さナ……おっト、うふフッ。さテ! でハ、これからアナタ達の身体に番号をフりまぁすネェー! イきますヨォー! えイッ!!」

 

 その言葉を合図に。突如、上空にて無数の発光した球体のような、小さく光った太陽のようなものが、パパパッと現れた。

 

「なっ、なんだあれ……?」

 

 その輝きながら眩く光っている無数の球体は、上空でピタリと止まっている。あれはなんなんだ。いったい俺たちに何をするつもりなんだ。

 

「ンーッ! イけェーイッ!」

 

「なっ!?」

 

 機械音のその言葉を合図に、無数の発光球体が勢いよく俺たちの方に降り注いできた。こ、こっちに向かって……あ、当たる!?

 

「ぐわぁッ!!」

 

 避ける間もなく、野球ボール程度の大きさをした光の球体の一つが俺の胸に直撃する。反動でおもいっきり後ろに尻餅をついた。

 

「ぐあぁぁぁぁっ! む、胸がぁぁっ……ぁ……ぁれ?」

 

 痛く……ない?

 

 今、明らかに強い衝撃があったはず……なのに、まったく痛くない。たしかに光の球が俺の体に直撃したと思ったんだが。

 

 あれ……そういえば、光の球はどこだ?

 

 周りをみると他の人も俺と同じように、尻餅をついていた。立っている人間は、ほんの数人。ほとんどみんな直撃したんだろう。それと、光の球体は一つの例外もなく消えているようだ。どこにも見当たらない。

 

「皆さぁーン! ジブンのムネをごランくだサァーィ!」

 

 胸……?

 

 白い服の首元部分を引っ張り、上から覗くように胸をみると。

 

「な、なんだ……これ」

 

 俺の胸に、俺の心臓の位置に……数字が描かれていた。

 

 いや、違う。これは……。

 

 触ると、それは明らかに描かれたものではなく。

 

「掘ら……れてる」

 

 まるで傷跡のように、黒い火傷跡のように数字が胸に掘られていた。

 

 

 

 ──17と。

 

 

 

「みなさぁーンのムネには今、数字がウきデているとオモわれまぁース。その数字の番号はアナタたちのシキベツ番号デェース。それはとっても大事な数字なのデー、ちゃんとアタマの方でも覚えておいてクダさいネェー!」

 

 識別番号……なんのためにだ。そんなもの必要なのか。

 

「デハァ、みなさぁーンに今から5マイのカードを配りまァース! 手にとっテ、ちゃんとタイセツに保管しておいてクダさいネェー」

 

 機械音野郎がそう言った瞬間。

 ものすごい速さでトランプのような小さなカードが上から大量に降り注いできた。さきほどの光の球体とは比べ物にならないほど素早く、目で認知するよりも前に、俺の目の前にある白い地面に5枚のカードが突き刺さる。横一列に、綺麗に並んだ状態で。

 

「これは……?」

 

 突き刺さったカードを右から順に一枚一枚取りほぐいていく。

 

「……なんだこれ」

 

 5枚のカード、そこには──。

 

「黒い棒人間の絵柄が2枚。赤い棒人間の絵柄が2枚。緑の棒人間の絵柄が1枚描かれているね。それも、どれもこれも意味深なポーズ付きで。それと、それぞれ5枚の棒人間の周りには統一性のないモノが一緒に描かれているね」

 

 俺の言葉に呼応するように、近くにいたメガネが自身の手に持つカードをみつめながら俺にそう答えた。あぁ、そうだ。俺の方も、それぞれに棒人間の絵柄と、その棒人間の周りに意味深なモノが描かれてある。まるで子供が描いたような絵で、何が描かれているのか判別するのが少し難しいが。

 

 

 

 1つは、大きくて角ばった氷のようなものに体全身が覆われている黒い棒人間の絵。そして、その隣に黒猫のような絵が描かれてある。

 

 1つは、たくさんのスラッシュ線に塗りつぶされながら手首足が離れている黒い棒人間の絵。隣には水色のペンダントのようなものが描かれてある。

 

 1つは、十字架に貼り付けられているような、赤い棒人間の絵。隣には真っ白な旗のようなものが描かれてある。

 

 1つは、鎌のようなもので頭を刺されている状態の、赤い棒人間の絵。隣には……なんだこれ。笑う仮面のような顔が描かれてある。灰色に塗りたくられた顔が……やはり、色的に仮面か何かであろうか。

 

 最後は……周りに何も描かれていない、緑の棒人間の絵が一枚。中央に棒人間が突っ立てあるだけの絵だ。これは……なぜ、コレだけ棒人間の絵しか描かれていないんだ。何か意味有りげな理由でもあるのか。

 

 あっ……それとだ。よくみると、5枚のカード全ての右上と右下の端に、それぞれ小さく意味不明な文字が1~5文字ほど書かれてある。その全てが統一性のない、今までみたこともないような文字が。これは何語だろうか。5枚それぞれに書かれた文字が、なんだか別の言語のようにもみえる気もする。

 

 

 

 ──というか、こんな雑な絵を俺たちに渡して何がしたいんだろうか。もしかして、何かの謎解きでもさせるつもりなのか?

 

「いいですカァー。ソレはここにいる誰にも絶対見せちゃダメですヨォ? もし、イノチあるアナタがソレをミせてしまったら、アナタのニクタイは3秒後に……「ボカンッ!」デスからネッ☆」

 

 ボカン……あぁ、嫌なことを思い出させてくれる。

 

「ゲームオーバーになっちゃいますカラ、ジュウブンに気をツけてくださいヨォー?」

 

 これを他人に見せたら(ゲームオーバー)……ここに描かれているやつを他人に見せたところで、死んでしまうほどの内容なのか。ただの下手くそな奴が書いた落書き絵にしかみえないが。

 

「あっ! もちろン、ここにいる誰かにミられてしまっても「ボカンッ!」デース☆」

 

 みられてもダメなのかよ!?

 

 自然と視線が周りに行く。ふと、真横にいるメガネと目が合った。

 

「大丈夫。見ていないよ、テンジョインくん」

 

「あ、あぁ。大丈夫だ、俺もみてないよ。それと、天上院(てんじょ”う”いん)な」

 

 あ、あぶねえ!

 あと説明されるのが少し遅かったら、死んでたかもしれん。み、みられてなくてよかった。

 

「ア。イい忘れていましたガ、今ミられていたとしても死にませんヨ? ゲームが始まってカラ、ミられた場合にカギリ、「デスからアァァッ!!」」

 

 こいつ……絶対にわざとそれを伝えるの遅らせただろ。最後の語尾のトーンから、「無駄にびびってざまあ!」という気持ちが含まれているのが嫌というほどにひしひしと伝わってくる。なんて憎たらしい機械音野郎だ。無駄にびびらせやがって。警戒しちまったじゃないか。

 

 つうか、そのゲームっていうやつの始まりはいつなんだよ。この一連の会話の流れが終わったらすぐなのか、それとも数十分、もしくは数時間の猶予があるのか。この震えた身体だけでも落ち着かせたいから、できれば後者だと少し気が楽なんだが。

 

「これは何に使うんでちゅかー?」

 

 まただ……。

 また、あのふざけた淡々とした中性的な声が聞こえてきた。俺の後方からハッキリとした声で聞こえてきた。「でちゅか☆」とか言って上のあいつを煽ってるアホは、いったいどんな狂った野郎なんだ。

 

 視線を上空から、声のした後ろの方へと向ける。

 

 

 いったいどんな奴が──。

 

 

 

 ──えっ。

 

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