夜寝る時は、1人だと寂しいから二人で寝る。当たり前のことだ。私こと霧雨魔理沙は、博麗霊夢と抱き合って寝ている。強く強く抱き合い、苦しい程に抱き合う。そうでもしないと、彼女が何処かに行ってしまいそうで
夜寝る時は、1人だと寂しいから二人で寝る。当たり前の事。私博麗霊夢は、霧雨魔理沙と抱き合って寝ていた。強く強く抱き合い、身動きがとれないくらい抱き合う。そうでもしないと、彼女が何処かに行ってしまいそうで
博麗霊夢と霧雨魔理沙は、お互いがお互いを求めていた。遡れば初めて会った時、その時は運命なんて感じなかっただろう。しかし舞台が整いすぎていた
その時博麗霊夢は、霧雨魔理沙に対してなんの感情も抱かず、それを感じ取っていた霧雨魔理沙は博麗霊夢からの宣戦布告と受け取った
ルールは簡単だ。魔理沙が霊夢に対して興味を持ってもらうこと。それは子供であった2人にとって、とても大きな闘いになった
結果としては、魔理沙の根性勝ち。はれて霧雨魔理沙は博麗霊夢と友達になり、話し相手となった
最初の頃はそうでもなかった。しかし時が経つにつれ、霧雨魔理沙は博麗霊夢を、博麗霊夢は霧雨魔理沙を求めるようになった
単純な理由だ。信頼の出来る人が他にいなかったのだ。そしてそもそも知りえる人間がお互いしかいなかった。本来ならその愛は適度に分散され、親友で止まるところが、1人に纏まってしまった
5年も前の話になれば、既に彼女2人は麻薬のように心を蝕んでいっていた
幻想郷全土を太陽の光が行き渡る頃には、二人は既に起きていた。抱き合っていた身体を離す。そして、目測でおよそ10mはあろうかという鎖がついてある首輪を2人が着ける。そうすることにより2人は一定の距離までしか離れられなくなる
しかし、2人が離れてしまうと禁断症状の様に身体が震えだし、涙を流し、互いを求めるようになるのだ。度々そういう事があった為に、紫が取り出した策がこれであった
鎖の重さは見た目に反してかなり軽く、全く不自由はしない。鎖には魔力を与えることにより浮力が発生する仕組みになっていた
「うおーい、朝飯はなんだー?」
と手伝う気のない魔理沙が、自慢の金髪を揺らしてやる気なさげに問いかける。あまり離れられない為、台所が自宅より低い位置にある為に起きる段差に腰掛け待つ
「いつものやつ」
と素っ気なく答える霊夢は、自慢の黒髪を揺らして奮闘している。実際にはやる気無さそうに、しかしテキパキと、洗練された動きで炊事を行っていた
それからも魔理沙がちょくちょく話しかけ、霊夢がそれに素っ気なく答える。しかしその時間は2人にとっては至高のひとときだった。霊夢に関しては料理に集中する為、時々振り向いて魔理沙を視界に納めつつ料理を続けていた。そうでもしないと持っている包丁で自らの命を絶ってしまいそうで堪らなくなるのだ
二人共がお互いを依存しすぎている事については、自覚している。しかしそれは麻薬の様に断つことは出来なかった。むしろ相手を断ち切る位なら自らを絶ち切る。その位には依存していた
「はい、完成したわよ」
「待ってましたァ!」
嬉々として料理を運び出す魔理沙と、それを見てやや呆れる霊夢。魔理沙は子供のようであり、霊夢は大人のようだった。それは2人の長所であり、短所でもあった。大人な霊夢が子供な魔理沙を制御し、子供な魔理沙が大人な霊夢を引っ張る。コンビネーションは最強だった
「おーいつものだな」
と、目の前に並べた料理を見て魔理沙が漏らす。白米と味噌汁に玉子焼き、そして漬け物。博麗スタイルの朝食だ。霧雨スタイルの朝食も漬け物の代わりにほうれん草の胡麻和えを入れる程度で、殆ど博麗スタイルの朝食と変わらないのだが
「んーねこまんまにしたい味噌汁・・・」
「それは味が濃いからって皮肉かしら?」
向かい合って座るのではなく、2人がくっついて座る。傍から見れば仲のいい姉妹なのだが、髪の色が決定的に違いすぎた2人は、やはり血が繋がっていないと理解できる
「いやいや、美味すぎてさ。やっぱ霊夢の味噌汁は最高だぜ!」
と手に持つのは白米の入ったお椀。白米をかっこんだ後に味噌汁を飲むのか、あるいは逆なのかはわからないが、自らの口の中でねこまんまを完成させていた
「あら、それで言えば魔理沙の味噌汁だって最高よ?自信持ちなさいよあんた。料理も美味いし可愛いし」
「いやいや、霊夢の方が数段可愛いだろ。ただ惜しむべきはその性格・・・」
「うっさい」
ぺしっと魔理沙の頭を叩く。やや不満気に、しかしどこか嬉しさが滲み出ているその顔は、どこぞの烏天狗が写真に納めれば人里にばら撒くであろう
人里ではこの様な写真が出回っており、例えばレミリア・スカーレットの写真、フランドール・スカーレットの写真、この二人の写真は特に人気があり、裏ルートで高値で取引されるらしい。人は好奇心が恐怖心に勝る生き物らしく、妖怪の写真を買う人は多い。紅魔館の妖怪の写真は特に人気がある
しかし一番人気はと聞かれれば、霊夢と魔理沙が挙げられる。稀に子供の間で、それが発展して大人の間でも口論になり、武力衝突することもある。しかし二人共そんな事は知らない。実は街の人の視線が冷徹な射貫く視線ではなく温和な、むしろ応援するような、人によってはヨダレを撒き散らしながら。好意的な視線の方が・・・というよりはそれしかない
「私はあんたのそういう性格、嫌いよ」
「手厳しいぜ」
はにかむ魔理沙の顔には、若干の受け流しをする魂胆が見て取れる。元来の性格故に直す気は無いらしい。霊夢も、他の人妖も、一言多い癖については承知の上で付き合っている。むしろそれがないと魔理沙ではないとも言える為、一種のパロメーターのような物にもなっている
「確かに性格については私だって言えた義理ではないな」
「はいはいもうその話は終わり、それよりご飯よご飯」
人間の三大欲求の1つ、食欲。それには逆らえないと言わんばかりにさっさと食事に戻る霊夢。欲求に純粋なタイプの霊夢は、怠惰という印象をつけられる。実際にそれは間違っていない。彼女が本気を出す時は、食事、睡眠、異変、魔理沙の4つだけだ
「ごっそさーん」
と魔理沙が手を合わせた時、霊夢はまだ3分の1も残っていた。呑気な性格をする霊夢はスピードに関しては、全面的に行動派な魔理沙に劣る。その分霊夢の方がスタミナがある為、バランスはとれている
魔理沙の嬉しそうな食事を終える儀式に囚われず、スピードを上げることはしない。噛み締めて食べるもの、といつかの日に魔理沙に聞かれて答えたのを、毎回魔理沙は思い出していた
霊夢が食べている間は何もすることがなく、暇だーと伸びをし、魔理沙は虚空を見つめぼーっとしている。ぼんやりと適当に頭の中を思考が駆け巡り、答えを求めないそれは浮かんでは消え新たに浮かんでは消えを繰り返す
魔理沙が少し動けば、ジャラリと鎖の擦れる音が鳴る。2人には聞き飽きた音だ。霊夢にとっては親の声より聞いた音と言っても過言ではない。そもそもの親がいないのだ。魔理沙に関しては、親から勘当された身ではあるものの、依然交流はあり、意外にも仲は友好的である
「ご馳走様」
その声で魔理沙の思考が現実に戻ってくる。霊夢の方を振り向けば、お盆に自らの食器と魔理沙の食器を重ねて置いている
博麗神社には食器類に関してはかなりの量がある。異変解決後に宴会をする為なのだが、最近では量が足りないため、紅魔館の食器も貸してもらっている。が、二人専用の食器がある為、普段は使われることがない。それは裏を返せば、その食器だけを使っている事にほかならない。その為、食後は必ず食器を洗い、次のご飯の時に使えるようにしている
その役目は、ご飯を作る人とは逆の人がやる。今回は魔理沙が食器を洗う番だ。そして食器を洗う人は次のご飯の係でもある
「ねー今日は何を作るの?」
と、朝ご飯を作る時に魔理沙がいた場所を陣取る霊夢が、食器を洗う魔理沙に聞く
「んー・・・生姜焼きとかいいよなぁ」
「あーいいわねそれ。お肉はあるはずよ」
「一昨日レミリアから貰ったよな」
「のはずだから大丈夫のはずよ。冷蔵室に投げといたし」
博麗神社はお金があまりない。神社なのに人があまり来ず、賽銭も少ないからだ。それでもものはあった。妖怪から譲り受けたり、人里でも譲り受けたり買う場合にはおまけをしてもらうからだ。その為食事に困ったことは無い。寧ろ人里より裕福なほうだ
「んーこれ終わったら調べてみようか」
と言いながらも、霊夢の方をチラチラと視界に納める。そうでもしないと持っている皿で自らの頭を叩きたくなりそうで堪らなくなるのだ
「はいはーい」
と気だる気な返事を返す。が目は魔理沙を追っている。動く度になる鎖の音は、水と食器の音と混じって聞こえてくる。それで2人は繋がっている事を確認でき、安堵する。が、百聞は一見にしかず。やはり目で確かめないと満足は出来ないのだ
「ほんと、水道って便利だよなー」
「それで言えばあんたの八卦路も便利じゃない。わたしには扱えないけど」
「そりゃ魔力で動くものだからな。魔力じゃないお前は扱えないさ」
と、蛇口を閉めて濡れた手をタオルで拭き、完了した事を示す。すると霊夢も立ち上がり、冷蔵室へと足を向ける
水道やガスといったものは元々は無かったのだが、早苗達守矢一族が幻想郷にやって来た時に河童達に教え、水道に関しては川から直接汲み取りろ過をするだけの、簡易的なものではあったが人里にも普及し、博麗神社では神社が倒壊した時にもっと精密で安全な水道を作ってもらっている。電気に関しては地底からの地熱発電で補っている。その為博麗神社の水は幻想郷で最も安全な部類に入る
ガスに関してはどうしようもなかった為、現時点では何も手をつけれていない
冷蔵庫も幻想郷にはないのだが、古来より寒い地域では保存する為に氷の中に埋めたりする方法はあった。人里ではそのような方法が取られており、冬の間は雪を使い、それ以外はチルノの好意によって氷を受け取っている。それを使い氷冷蔵庫を再現していた。ただし余り冷やす効果は無いらしく、冷蔵庫より痛みやすい
しかしここ博麗神社では、これまた神社が倒壊した際に、元々空き部屋の様な扱いを受けていた小部屋があり、そこを冷蔵専用に改築させることにより、量と保冷効果を高めることが出来るようになっている。山の上に位置する博麗神社では冬の間雪が積もりやすく、それを蓄えることにより夏場の中頃までは充分持つ様になっている
「うおーさみぃー!」
頑丈な鉄製の扉を開いての第一声である。魔理沙の言う通り、内部は零下0度前後であり、動けば汗ばむ季節になりつつある幻想郷では涼しいを通り越し、寒いが合っていた
「多分そのへんにあるとは思うけど・・・」
霊夢は寒さに強い。生活を山の上である博麗神社で過ごしているのだから、寒さには慣れている。魔理沙はといえばどちらかというと暑さに強いタイプである。それが顕著に出ており、魔理沙はやや震え、霊夢は平然としている
「うー早く見つけようぜ」
「はいはい。これで風邪とかなったらしゃれじゃないわね」
「まあそれはないだろ」
「・・・と、あら。豚じゃなくてこれ牛だわ」
「ありゃ。んじゃあ夕飯はステーキか?」
「そうね。早めに処理しておきたいし、夕飯はそうしようかしたら。それで昼ご飯はどうするの?」
魔理沙の前には新たな問題、昼ごはんの再構築が出された。しかし既に魔理沙は引き上げている所だった
「あら、もう決まったの?」
「まあ、適当にだがな」
とその顔はやや赤みが薄れており、寒さがこたえている事を示していた。そもそも夏なら最初は涼しいで済むのだが、そこまで暑くもない季節な為、寒さが身にしみるのだ
「ふーん。まあ楽しみにしてるわ」
と肉を見るために屈んでいた霊夢が立ち上がる。早く閉めようぜという魔理沙の声を聞きながら、早足に冷蔵室から出た
「うおーい、霊夢、魔理沙ー」
縁側でのんびりしている2人に手を振る、頭に角の生えた子供の様な、所謂鬼と呼ばれ恐れられる妖怪がそこにはいた
「あら萃香。5日ぶりかしら」
萃香と呼ばれた妖怪は、身体に合わずアルコールのツンとした匂いをさせながら、隣に座る。鬼は酒好きで、呑んでないと気が済まないと言っても過言ではない。ただそれは2人も似たようなもので、ただそれは一緒にいないと気が済まないどころか、絶望さえ感じるほどなのだが
そもそもここ幻想郷では、妖怪は人間と同じ姿をしているが、年齢と外見が合わない妖怪が・・・むしろそんな妖怪しかいないと言っても過言ではなく、妖精に関しては年齢さえ不明である。吸血鬼の少女が500歳を超えている割に、背丈は9歳児ほどしかない。この鬼もかなりの年齢ではあるものの、外見はさきの吸血鬼と似たりよったりだ
「そうだっけ?昨日ぶりな気がするなぁ」
「時間の感覚どうなってるのかしら」
「妖怪なんてそんなもんだろ。それともあれか。酒呑んでて時間さえ忘れる程に酔っ払ったんじゃねーのか?」
「はっはっはっ、鬼を舐めるな小娘。そう簡単に鬼が酔いつぶれてたまるもんかい」
鬼は一升が単位の始まりであり一斗が人間でいう5合ほどである。その為酔っ払うことがあまりない・・・と思われがちなのだが、実際の所ほろ酔い程度ならば意外と早い。それでも5升程は呑むのだが
「まあ、確かに私は酒に弱いほうだがな」
「はっはっ。鬼からすれば人間なんてどいつもこいつも弱いわい!霊夢はその中でも強いほうだとは思うがな」
「あら、嬉しくないお褒めありがとう」
霊夢は人里の人に比べても酒豪であり、かなりの酒を摂取出来る。それでも鬼にはかなり劣る。魔理沙はその霊夢より劣るが、酒豪寄りではあるだろう
ここ幻想郷では年齢で禁止という考えは特になく、まだ10代前半である2人は酒を大量に呑む。もちろんタバコについても大丈夫なのだが、そちらについては別段吸いたいという考えはないらしい
「鬼に二日酔いって概念はあるのか?」
「まああるにはあるが、そん時はこの幻想郷のお酒の何割かが消えるかもな」
「ならその無限出てくるお酒の方で頑張りなさい」
スイカの持つ瓢箪には酒虫という虫のエキスが入っており、ほぼ無限に飲むことが出来るのだが、ストッパーがあるらしく、その瓢箪の内部に貯まる分だけの酒を確保できる。酒が無くなっても蓋を閉めれば手品のように酒がまた出てくるのである。ただし限界量はあり、元々が水を酒に変える性質な為、その入れた水分の酒しか飲めない。それでも水を大量に吸収する為、やはりかなりの量を飲むことは出来る。霊夢は良く、酒虫が過労死しないものかと疑問に思っている
「んまあ、この酒の質は結構いいんだが、やっぱり一つだと飽きるからねぇ。人間だって毎日同じ食事だと飽きるだろ?」
「あら、鬼は毎日酒を浴びるほど飲んでも飽きないんじゃないのかしら?」
「ばかいえ、それは楽しいし好きだからに決まってんだろ。これがないと鬼としては困るわけよ」
「まあ確かに白米なんかは毎日食べても飽きないなぁ」
「酒も米から出来るんだっけ?なら解決したじゃない」
「なにがだ?」
「鬼が酒を飲んでも飽きない理由」
などと3人でいつものようにたわいもない談笑をしていると、萃香がおもむろに立ち上がり
「そうそう、宴会しようよ!」
手を握り、目を輝かせる様は、まさに年相応と言ったふうに見える。しかしその心は酒目当てであり、そして酒飲み仲間が欲しいだけであった
「はぁ?」
と霊夢が不機嫌そうに返す。いきなり宴会と言われたのもあるが、宴会と言えば博麗神社なのだ。必然的に宴会の後片付けをするのはそこに住む霊夢と魔理沙・・・なのだが、魔理沙は手伝う気はあまり無いらしく、基本的には霊夢1人で片付けをするのだ
そんな後のことを考えてめんどくさがる霊夢とはうらはらに、魔理沙はかなり乗り気だった
「おお、いいなぁ。最近は目立った異変とかもなくてなぁ。暇だったんだ」
「だろ?名案じゃないか」
と2人がはしゃいでいるのを横目に、霊夢はため息をついた
「そもそも今からやるって言っても、そう簡単には集まらないわよ」
突然の事なため、準備すらできてないのに言われても困る。人を集める為の呼びかけさえ、今からになるのだ。他の人達も準備をしてない為、その日にするのはかなり難易度が高い
「人を集めるくらいなら、私の能力でなんとかするさ」
鬼である伊吹萃香の能力は、密と疎を操る程度の能力であり、それで人、もしくは妖怪を集めて宴会を開くことは良くあったらしい。力こぶをつくり、そのこぶに手を載せ、やる気満々の様子を見せる
「人が来ても準備が出来てないのよ」
人がいくら集まっても、当事者側の準備が全くできてない為、例え集まってもかなりしょぼい宴会になってしまうであろう。それこそ何日も前から予告して、主催者と参加者双方が準備するのが普通なのだ。やってくる参加者の数も相当数になる為、博麗神社だけではまかないきれなくなる。その為参加者にも持参してもらうのが幻想郷の宴会である
「えー・・・やりたいやりたい宴会やりたーい」
としそうな駄々っ子ぶりを見せる萃香だが、2人はそれに屈することは無い。しかし幻想郷の人たちは、妖怪たちは、宴会が好きなのだ。それは2人とて例外ではない
「そんなにしたいなら、鬼の権限でも使ってあの新聞屋にでも頼んだら?」
そう、宴会と聞いて黙ってはいられない。むしろ宴会ならば幾らでも開きたい位なのだ
「今は権限なんてないさ。でも頼んでみるだけ頼んでみるかねぇ?」
「それがいいんじゃないか?1週間後にでも開こうぜ」
新聞屋というのは、烏天狗である射命丸文のことであり、伊吹萃香はそんな天狗の集まる妖怪の山でトップを張っていた時期がある。張っていたのは伊吹萃香だけではなく、鬼であり、縦社会の強い天狗コミュニティでは、鬼に逆らうことは出来ない。例え鬼にその気がなくても、逆らうことは出来ない。それこそ頂点に君臨していた萃香ともなれば、死んででも任務を達成するであろう
その為、萃香本人は本当に頼むだけ頼んで、ダメならなんとかしようと考えているのだが、頼んだ瞬間に行動に出るほど従順な天狗にはあっさり通ってしまうのだ
「えー?1週間?そんな待てないよぉ」
あからさまに嫌そうな顔をする。そう言われるのを見越していたらしく、霊夢が立ち上がり
「なら、今日は付き合うわ」
と、酒を取りに行く。ちょっと待ってくれよ霊夢!と魔理沙も付いて行く。萃香はウキウキになって、瓢箪を開け、一息に飲み干した
「嬉しいねぇ・・・飲み明かしたい位の気分だよ」
と、満面の笑みで呟く。2人はそこまでする気も無かったが、本当に付き合う位のことはしようと考えていた
「いつつ・・・あれ?何でここで寝てんだ?」
目が覚めると、見慣れていてそれでいて寝起きではなかなか見慣れない、外の景気が見えた。魔理沙が昨日のことを思い返すと、萃香と酒飲みをしていたのを思い出す。そして縁側で寝ていた事にも納得し、その瞬間に恐怖に包まれる。温もりがない。霊夢はどこだと。泣きそうになりながら周りを見渡すと、すぐ隣に霊夢がいて安心する。そして目から涙を零しながら、抱きつく
「よかった・・・霊夢がいた・・・」
と魔理沙は涙混じりにうわずきながら霊夢の腹部をホホで擦る。霊夢は突然の衝撃で目を覚ましたのだが、若干意識が混濁していた。そして魔理沙が強く擦る度に感じる腹部への圧迫感と、それに伴う膀胱への圧迫感で意識が覚醒する
「ちょ・・・待ってやめて!」
と制止の声を出すと、魔理沙はそれに従い、やめる。内心あのままさせられたらと思うとぞっとする霊夢は、取り敢えず魔理沙の頭を撫でつつ、立ち上がる
「ど、何処に行くんだぜ?」
「・・・トイレよ」
困惑した魔理沙は、その返答で何故制止をかけたのかを理解した
「す、すまん。私のせいであやうく漏らすと」
そこから先は霊夢の拳が邪魔をして、言う事は出来なかった。羞恥で若干頬を赤らめる霊夢は、魔理沙に無言の圧力をかけるが、凄みはなかった
「・・・言うな・・・言わないで・・・」
と呟き、魔理沙の頭をぺしぺしと叩く。それに対して苦笑いしながら
「んじゃあ私が先に行くぞ?」
と言うと、いや、私が先に行く。と踵を返し、足早に歩いていく。それに遅れないように着いていく魔理沙の顔は、いつも通りの笑顔だった
「それで、どうして魔理沙ちゃんは私に抱きついたのかな?」
からかうように、しかし表情は柔らかく、例えるなら聖母といった表情だった
「だって・・・怖かったんだもん」
と、霊夢の膝に乗り霊夢に身体をあずける魔理沙は、若干むくれながら言う。霊夢は力を入れず自然な感じで魔理沙を抱いている。というよりはロックをかけていると言うべきか。その手を魔理沙は掴み、自ら離れないようにしていた
「ふーん。怖かったんだ」
魔理沙の耳元で囁く。聖母のような柔らかな表情は一変し、悪魔のような妖艶な笑みへと変貌する
「嬉しいわ・・・そこまで私を思ってくれるのは」
と顎を肩に乗せる。魔理沙としては嬉しくもあり、しかし恥ずかしくもあった
「う、うるさいな。どうせ霊夢だって先に目を覚ませば泣いて私に飛びつくに決まってる」
魔理沙が赤面しながら話す。霊夢は無言の肯定をみせる
間違いではない。それどころか本当になったことがある。酒に強く朝にも強い霊夢は、その時魔理沙より早く目を覚ました。温もりを感じれず、魔理沙も隣に居なかったために彼女が泣きそうになりながら周りを見渡せば、魔理沙が少し離れた所でぐっすりと寝ていた。見つけたことにより安堵し、涙を零しながら魔理沙と同じように飛びついたのだった。その時に魔理沙にされたことをまるごとやり返しているのだが、魔理沙は気づいてない
「まあ、そうかもね・・・」
「だろ?だから仕方ないんだ」
「でも・・・嬉しかった」
「・・・嬉しかったか・・・そうか・・・うん。そうだな」
一転して上機嫌になり、深く霊夢に身体をあずける。そして片方の手を霊夢の手から離し、霊夢の髪を触る。霊夢は突然の感覚に「ひゃっ!」と高い声をあげる。それを聞きながら、ダメ押しとばかりに
「霊夢の髪って、綺麗だよな・・・」
今度は霊夢が赤面する番だった
「・・・」
女性が何かを覗き込んでいた。その女性は金髪で、頭に被り物を被っており、紫を軸にした服を着ていた
彼女の名前は八雲紫。幻想郷の創造神のような存在であり、現実に幻想郷を創り上げている。幻想郷の母と言える妖怪である。能力である境界を操る程度の能力によって、幻想郷を孤高の楽園として創り上げた
「・・・」
そんな彼女はスキマと呼ばれる、境界を操り場所を繋げる事の出来る能力を使い、二人を見ていた
その眼に映っているのは、金髪と黒髪の、博麗の巫女と魔法使いだった
「・・・結婚しないのかしらこの2人」
八雲紫は2人が結ばれる事に対して肯定的であり、挙式はいつ挙げるんだろうと疑問を抱いていた。本来博麗の巫女は人と妖怪の中間に立ち、二つの存在を公平に保つのが役割なのだ。しかし博麗霊夢はスペルカードというものを創り、人と妖怪が共存出来るような世界を創った。未来では完全に隔たりが無くなるかもしれないと確信していた。そのため、何事にも捕らわれてはいけない霊夢が一人に入れ込む事について肯定的な立場を取っていた
そもそも人や妖怪関係なく博麗の巫女と仲良くなるのはよっぽどで無ければなれず、人の身で親密な関係を築けた魔理沙に対して紫は尊敬の念を抱いていた。言ってしまえば八雲紫でさえ仲良くなるのは難しいのに、魔理沙は容易く仲良くなり、博麗霊夢を虜にさえしたのだ。その上霊夢があそこまで妖怪にも平等に接することが出来るのも、魔理沙の存在による影響は少なからずある
「・・・可愛いわぁ二人共・・・」
「紫様、何をしてるんですか?」
若干呆れ顔で聞くそれは、何本と生えた尻尾を見せ、見るからに人間ではなく妖怪だと分かる。九尾の狐である妖怪は、全てを悟りながら答えを待つ
「分かるでしょ?藍。監視よ監視」
藍と呼ばれる妖怪は八雲紫の式神であり、紫から八雲の性を授かり、八雲藍と名乗っている。八雲藍は紫の返答を聞いてため息をつく
「入れ込むのは分かりますが、もう少し自制と自重をですね・・・」
「あら?貴女は何時から私に物申す立場になったのかしら?」
口から出る言葉には威圧感があったが、態度や雰囲気はその真逆の嬉しさが滲み出ていた。表情は柔らかい。式神ではあるが、藍は紫に対して良く異論を唱えている。それを紫は嬉しく思っていた。殆どの妖怪は紫に対して畏怖や恐怖と言った、マイナスのイメージしか持たない為、式神とはいえ対等に接してくれるのはその主としても誇らしく、また一個人として嬉しくあった
「まあ、確かに貴女からすれば、私は保護欲の強すぎるおばあちゃんのように見えるでしょうね」
「・・・ま、まあ、そうですが・・・」
「でも、あの子は本当に実の娘のように思ってるの。いえ、あの子達2人、ね」
完全にスキマから顔を離し、そっとスキマを指でなぞり、あいたチャックを閉めるようにスキマを閉じる。その動作はどこか妖艶にも見えた
「まあ大妖怪の戯れとでも考えてもらって構わないわ」
「戯れ・・・って」
「元々はあの娘達2人を道具としか思ってなかったのよ?今でさえ良好な仲で他の妖怪からもそう見られてるけど、元々そのつもりだった・・・なんて聞いたら、どう思うかしらね?」
博麗の巫女は幻想郷の維持の為に、魔法使いはその補佐として。そう考えていた。そして、それがいつしか変わっていった。今では道具なんて思っていない。愛おしい家族の様に想っている
「まあ、正直なところ他の妖怪も知ってると思いますよ?」
「え?それ本当に?」
「本当の本当です」
小さくうっそーえーバレてたのーうわーほんとうに?などとブツブツ呟く。それをみながら藍は、変わったなぁと感慨深く感じていた。良いか悪いかは別として
「まあ、あの二人を狙ってる妖怪は多いですけどね」
霊夢への代表格といえば、東風谷早苗やレミリア・スカーレット。魔理沙への代表格はアリス・マーガトロイドやパチュリー・ノーレッジ。人里では誰しもが一度は聞いたことのある名前がズラズラと並ぶ。それほどに二人は名のある妖怪にも愛されていた。むしろ名のある妖怪の方が、名のない妖怪よりも好いている
「でもあの二人はお似合いだってのもわかってるでしょう?届かぬ淡い愛の記録・・・それでも愛は身体を蝕むようにじくじくと・・・」
「要するに自らも叶わぬ恋だからざまーみやがれってところですか?」
ちょっとカッコよく決めようとしていたところに図星されてしまう。それまでの優しい表情を一変させ、悲しみに満ち、目に涙を浮かべると、紫は藍に飛びついた
「あーん!魔理沙はいいなぁ!霊夢とあんなにもラブラブでさぁ!霊夢は霊夢で魔理沙とラブラブでズルイ!!」
結局は大妖怪である八雲紫も同じだったのだ。2人が大好きでたまらない、一個人だったのだ
正直自分で見返すの恥ずかしいですね・・・本当はそれまでの限界の3万を目指してたんですが、今思うとその為だけにこんなノロノロした展開で良かったのかと思います
基本的に自分は長々と、ゆっくりと話を進めるタイプかなと、そう解釈してます。もう少し話をサラッとさせて、それでかつ3万を目指してはみます。勿論改訂した場合ですが
色々と怒れそうではありますが、勿体ないので投げておきます。次に出すのはしっかりしたものであることを願い、今回はこのあたりで・・・お疲れ様でした