最弱無敗の弟子   作:雨夜狐

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EpisodeⅡ‐3 初めての依頼

 

争奪戦を終えて夕食を済ませた俺は、

学園長から話があるとアイリに呼び出された。

 

アイリの部屋のドアをノックすると、

 

「どうぞ、お入りください」

 

ノクトが出迎えてくれた。

そう言えばアイリと相部屋だって言ってたな。

 

中に入ると、ルクスさんがアイリにお説教されてた。

どうやらルクスさんがクルル先輩の恋人になったことで、

必要以上に目立ってしまったことに怒っているらしい。

けど……

 

「……アイリも俺の依頼書手に入れてそれなりに目立ったんじゃ?」

 

「私はたまたま見つけただけですから! それに恋人になってほしいなんて言ってませんよ、私は!」

 

「お、おう……とりあえず静かにしような、夜なんだし」

 

いきなり大声だすからびっくりしたわ。

そんなムキにならんでも……。

 

「は、はい……」

 

言われて恥ずかしくなったのか、アイリは顔を赤くしながら立ち上がる。

 

「恋人の件はまた今度聞かせてもらうとして、時間です。依頼の場所に行きましょう」

 

「あ……そ、そうだね」

 

話が終わることに安堵したらしいルクスさんと一緒に部屋を出る。

 

「学園敷地内の依頼だと聞きましたが、夜分ですので、お気を付けて」

 

ノクトがそう言って、俺たちを見送ってくれる。

 

 

 

 

アイリに連れられて来たのは、敷地内にある図書館だった。

裏口から中に入り、書架の通路を抜け、突き当たりの扉に辿り着く。

アイリが鍵を使って扉を開けると、地下へと続く階段があり、降りると石造りの広い空間にでた。

図書館の地下にこんなところがあったのか。

 

鉄製の作業台や、無数の実験器具が並んでいる。

それに、薬品みたいな匂いもするな。

ここは何かの研究室のようだ。

 

「この場所の存在は秘密にしてくださいね、二人とも」

 

アイリについて歩いていくと、

 

「待っていたわ、三人とも」

 

学園長が小さなテーブルの前にいた。

 

「ここから先は、他言無用でお願いするわ」

 

学園長は真剣な表情でそう言うと、テーブルの上に金属の小箱を載せ、錠に鍵を差し込む。

 

(えらい厳重だな…?)

 

箱の中には、奇妙な形の黄金の笛が入っていた。

 

「一応、上に報告はしたんだけど、こちらの方が遺跡(ルイン)に近いし、女王陛下からここで解析を進めながら研究してもらうよう言われたのよ」

 

「ベルベットは、これを異国の商人から買ったと自白したらしいわ。『角笛』と呼ぶものだそうよ。あなたたちは何かこれについて知ってるかしら?」

 

「いえ。僕もこうして、ちゃんと見るのは初めてです」

 

「俺も初めてです」

 

「あのベルベットという男は、他に何も知らなかったようですが、遺跡の調査と並行して、このアイテムも解析していく必要はあると思います」

 

「じゃあ、これを僕たちに見せたのは──」

 

「これを、持って行ってもらうことになるからよ」

 

学園長は静かに告げ、箱を閉じる。

 

「えっ……?」

 

「まだ皆に伝えてはいないけど──ここ数日、大陸でちょっとした動きがあるのよ。だから、騎士団(シヴァレス)のメンバーには、近いうちに遺跡の調査へ向かってもらうわ」

 

「どこの遺跡に行くんですか?」

 

「第六遺跡『箱庭(ガーデン)』よ」

 

『箱庭』か……。

王都にいたとき、軍の調査報告書を読んだことがあるが、

確かあそこは第二層までしか調査が進んでおらず、最深層へ進むには『鍵』とやらが必要なんだとか。

つまり、その角笛が鍵かもしれないということだろう。

 

その後も四人で話し合い、角笛はルクスさんが持つことになり、重要な案件なので他の生徒には秘密にすることなどを決めた。

 

 

 

打ち合わせも終わり、学園長と別れ、三人で図書館の外にでた。

 

「それじゃ、俺は工房(アトリエ)に顔出してくるんで」

 

「うん、またね」

 

「では、また明日」

 

 

   †

 

 

「なんか、えらい騒がしいな」

 

「Yes. 何かあったのでしょうか?」

 

翌日の放課後、騎士団の訓練があるので、

控え室で装衣に着替えた俺とノクトは演習場に向かっているのだが、

その演習場の方から女生徒たちの声が聞こえてくる。

 

「ノクト、シノっち、やっほー」

 

ティルファー先輩が後ろから声をかけてきた。

 

「ちわっす、ティルファー先輩。この騒がしいの、先輩は何か知ってます?」

 

「あー、たぶんあのお兄さんかな」

 

「お兄さん?」

 

 

先輩たちのクラスは今日の午後、実戦訓練だったらしい。

その臨時講師として、軍から三人の男の機竜使い(ドラグライド)たちが来たが、その授業内容は酷いもので、

途中でルクスさんが止めに入ったらしい。

それが気に入らなかった男たちはルクスさんに三人がかりで、

それもルクスさんの《ワイバーン》に重量超過のハンデがある状態で勝負を仕掛けたが、

ルクスさんのテクニックに翻弄され、倒すことができなかったそうだ。

苛ついた男たちのうち、一人がわざと客席に向かってライフルを撃ち、

障壁を張っていたティルファー先輩に直撃……

しかけたところで、その『お兄さん』が止めに入ったらしい。

 

「そのお兄さんとやらは……何者?」

 

「さぁ? リーシャ様は知ってるみたいだったけど」

 

「どのような方なのですか?」

 

「んとね、金髪で、イケメンで、使ってる機竜は《エクス・ワイバーン》だったよ」

 

「なるほど」

 

リーシャ様が知っていて、

金髪、イケメン、《エクス・ワイバーン》……、一人だけ心当たりがある。

 

「ノクト、その人のこと気になるの?」

 

「yes. 学園に突然現れ生徒を助けた謎の男性、興味を持つのは当然でしょう」

 

「ほほう、なるほど」

 

ノクトの返答を聞いたティルファー先輩がニヤニヤしながら俺のすぐそばまで来て、

 

「シノっち、早く手を打たないとマズいよー」

 

耳元でそう囁いてくる。

 

「えっと……何の話です?」

 

「さっきの聞いたでしょ? このへんで何かアプローチしておかないと、ノクトが他の男に取られちゃうかもよ?」

 

「…………いや、さっきのはそういうことじゃないでしょ」

 

「でも今ちょっと考えたでしょー?」

 

「なんでもかんでも恋愛事に持って行くのはどうかと思いますよ。先輩」

 

そんなことを話しているうちに、演習場に出た。

そこには、装衣を着た十数人の女子と、一人の男がいた。

あの人が例の『お兄さん』だろう

機竜の操縦について、教えているらしい。

そして、

 

(やっぱり……)

 

 

「……隊長、何してるんですか?」

 

さっき予想した通り、『お兄さん』の正体は六竜鱗(シックススケイル)の隊長、

ジュリウス・レインフォースだった。

 

「ああ、ヨシノか。名前でいい、今は任務中ではない」

 

「そうか、じゃあジュリウス、何で学園に?」

 

「レリィに呼ばれてな。お前が学園生活を楽しんでいるか見にきた」

 

「……まぁ、楽しんでるよ」

 

「そうか、ならいい」

 

「で、何やってんの?」

 

「臨時講師……だそうだ。演習を見学しにきたら、レリィに押し付けられてな……」

 

「……なんというか、ドンマイ」

 

 

   †

 

 

あれからジュリウスと少しだけ話をして、別れた。

ジュリウスはしばらくクロスフィードに滞在するらしい。

『何かあったら頼ってくれ。力を貸そう』と、物凄くイイ声で言われた。

 

騎士団の訓練が終わった後、俺は図書館にやってきた。

調べものをするので手伝って欲しいという、アイリからの初めての依頼だ。

中に入って、アイリを探すと………いた。

目立つ髪の色のおかげで、すぐに見つかった。

 

アイリのそばまで来たが、集中しているのか、俺には気付いてないようだ。

机には、大量の本が積み上げられている。

邪魔しちゃ悪いので、声はかけずに静かに隣の席に座る。

 

 

 

「ふぅ……! いつからいたんですか!?」

 

ひと段落ついたらしいアイリが、やっと俺の存在に気づいた。

 

「えっと、五分くらい前……かな」

 

「……もしかして、ずっと私のこと見てたんですか?」

 

アイリがジト目で睨んでくる。

 

「えー、いや、まぁ………うん」

 

「……ノクトの次は私ですか」

 

「待って、俺がチャラい人みたいに言うのやめて!」

 

「違うんですか?」

 

「違うわ!」

 

「ふふ、冗談ですよ。そろそろ片付けるので手伝ってくれますか?」

 

「………わかった」

 

積み上げられていた本を半分取って一冊ずつ片付けていき、最後の一冊を戻し終えた。

 

辺りを見回し、アイリを見つける。

爪先立ちをして、本棚に本を戻しているところだ。

手伝ってやろうかと思ったが、なんとかできたらしい。

こちらに振り向きかけたところで、さっきの本が落ちてきた。

急いでアイリのもとへ駆け出す。

 

(───?)

 

その途中で、ある異変に気付く。

落下している本が、とてもゆっくり見えているのだ。

開いたページの文章が読めるほどに。

本だけじゃない、アイリの瞬きもはっきりと見えている。

 

よくわからないまま、右手で空中の本を閉じながらキャッチして、左手でアイリの頭を守るように抱き寄せる。

 

(……今、何が起こったんだ?)

 

自分の身に起こった異変に戸惑っていると、

 

「あ、あの……ヨシノさん?」

 

「ん? あぁ、悪い。けがはない?」

 

アイリに呼ばれて、抱き寄せていた手を離す。

恥ずかしかったのか、顔が赤いな。

 

「はい、大丈夫です。ありがとうごさいました」

 

アイリのお礼を聞きながら、本をしっかりと本棚にしまう。

 

「どういたしまして。じゃ、帰ろっか」

 

「はい」

 

二人で図書館を出て、女子寮に向かう。

 

隣を歩くアイリを見ると、なんとなくだがテンションが高い……ような気がする。

なんかいいことでもあったのだろうか?

 

 

「あ、ヨシノさん」

 

図書館と女子寮の中間辺りでアイリに呼ばれ、立ち止まる。

 

「ん?」

 

「明日の依頼ですけど」

 

「お、もう決まったの?」

 

「はい。明日の放課後、学外に出掛けるのでついて来てください」

 

「うん、わかった」

 

「では、よろしくお願いします」

 

そう言って再び歩き出す。

 

 

 

 

 

 

………………。

 

もしかしてこれって、デートじゃね?

 




隊長の名前が判明しましたね。
でも重要人物かと言われると、微妙なところです。

そして、ヨシノの異変。
これについては、またいずれ……。
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