最弱無敗の弟子   作:雨夜狐

13 / 27
EpisodeⅡ‐4 ユミルの使者

 

アイリと出掛ける約束をした次の日の放課後。

 

「ではヨシノさん、一度部屋に戻って各自準備してから……そうですね、十五分後に校門前で待ち合わせましょうか」

 

「うん、わかった」

 

俺の返事を聞いてから、アイリは教室を出て行く。

 

「なるほど、アイリが昨日の夜から落ち着かない様子でしたが、ヨシノとデートでしたか。それはそれは楽しそうですね」

 

前の席に座るノクトからそう呟く声が聞こえた。

全然楽しそうって声じゃないんだけど。

 

「い、いや、デートじゃないよ? アイリの買い物についていくだけだから」

 

「…………」

 

そんな冷たい眼で睨まないでよ。

 

「まぁ、端から見たら完全にデートだよな」

 

「Yes. 完全にデートです」

 

やっぱそうだよな。

っていうかノクト、視線だけじゃなくて声音までだんだん冷たくなってるよ。

俺を冷凍保存するつもりなのかしら。

 

「あー、じゃあ、依頼書の期限が終わってからになるけど、行かないか? その……もしよかったら、だけど」

 

ダメだ、めっちゃぐだぐだになった。

 

「………?」

 

「だから、その、デート……誘ってるんだけど」

 

思い切って誘ってみたけど、めっちゃ緊張した。

ガッチガチな俺に対してノクトは、少し驚いたような表情をしてから少し微笑み、

 

「Yes.」

 

と答えた。

かわいいなちくしょう。

 

 

   †

 

 

自室で準備を済ませて校門前に行くと、

ルクスさんがいた。

 

「ルクスさんも出掛けるんですか?」

 

「うん、クルルシファーさんと……デ、デートなんだ」

 

「そうですか、仲が良いいんですね」

 

「ま、まあ。ヨシノもどこかへ出掛けるの?」

 

「はい、俺はアイ───」

 

“アイリとデートです”と言いかけたところで止めた。

“妹さんとデートします”なんてそのお兄さんに向かってサラッと言えねえよ。

 

「あい……?」

 

ルクスさんが困惑した様子で俺の顔見る。

 

「いや、えっと、あのですね……」

 

「ヨシノさんはこれから私とデートするんです」

 

ちょうど今来たらしいアイリが、俺の腕に自分の腕を絡ませながら俺の代わりに答えた。

というか、言いにくいことをサラッと言ったな。

そしてナチュラルに腕を絡めるな。

ちょっとドキッとしただろ。

 

「そうなんだ、アイリをよろしくね。ヨシノ」

 

「あ、はい」

 

「兄さん! 子供扱いしないでください!」

 

顔を真っ赤にしたアイリが、ルクスさんに向かって叫ぶ。

 

「まったく兄さんは……もういいです。ヨシノさん、もう行きましょう」

 

「ん、わかった」

 

「気をつけてね。二人共」

 

ルクスさんに見送られて出発する。

 

「それで、どこ行くの?」

 

「まずは書店に行きます。それからはいろいろ見て回りましょうか」

 

「ん、了解」

 

 

   †

 

 

二十分程歩いて、アイリの目的である書店についた。

歩きながら聞いたが、小説の新刊を買いに来たらしい。

 

「では、支払いを済ませてくるので、少し待っててくださいね」

 

「あいよ」

 

店の外に出て少しの間待っていると、アイリが店から出てきた。

 

「それでは行きましょうか。ヨシノさんも何か見たいものがあれば言ってくださいね」

 

「ああ」

 

と返事しつつ、少し離れたところにある、雑貨屋の看板から若干はみ出てる

“青”、“茶”、“黒”の三色を視界の端に確認する。

三和音(トライアド)の三人だ。

校門を出てすぐに、つけられていることには気付いていた。

尾行が完全に素人だし。けど……どうしよっかな、あれ。

………まぁいいや、何かされたわけでもないし、とりあえず放置で。

 

それから一時間程、洋服や靴なんかを見て回り、日が沈み始めた頃。

二人(と三人)並んで、学園へと続く道を歩く。

すると、

 

ドォン!!

 

「────!?」

 

今の音は……機竜の戦闘か? 場所はそれ程遠くないな。

 

「ちょっと様子見てくる」

 

「えっ、ヨシノさん!?」

 

「多分機竜の戦闘音だ。反乱軍かもだし、無視は出来ないから。アイリは後ろの三人と一緒に先帰ってて」

 

「え……?」

 

少し後ろの建物に指先を向けて三人の居場所を教える。

いつバレたのかわからないという表情の三人が、

建物の陰から出てくるのを確認した俺は、

 

「じゃ、行ってくるわ」

 

そう言ってアイリと別れ、走り出す。

 

 

   †

 

 

戦闘音を頼りに進むと少し広い路地にでた。

 

ドゴォッ!

 

「うぉっ、アブね!」

 

目の前にドレイクが吹っ飛んできた。

障壁が砕かれたようで、すぐに機竜の接続が解除された。

 

「あ、シノくんだ。……危ないよ?」

 

声をかけられて振り返ると、フィルフィ先輩がいた。

巨大な紫の陸戦型機竜を纏っている。あれが先輩の神装機竜か。

確か《テュポーン》って言ってたな。

 

「あ、はい」

 

そう言いながら近くにいたルクスさんとクルル先輩のもとへ歩く。

《キメラティック・ワイバーン》を纏ったリーシャ様もいる。

 

……状況をみてなんとなくわかった。

ルクスさんとクルル先輩のデートをリーシャ様とフィルフィ先輩があとをつけてたんだろう。

 

「デート中に襲われるなんて、災難っすね」

 

「ええそうね。おまけにあとをつけられてたみたいだし」

 

「その二人のおかげで助かったけどね」

 

喋りながら戦闘の様子を見学する。

俺の出番なさそうだし。

それにしても、戦ってるとこ初めて見たけど、フィルフィ先輩結構すごいな。

 

フィルフィ先輩は手に武器を持たず、格闘術だけで戦っている。

機竜での格闘術はバランス感覚と操縦技術が要求される。

それに全身を使うので普通に操縦するよりも体力の消耗が激しい。

出来ないことはないが、かなり難しいのだ。

 

「そういえばアイリはどうしたの?」

 

「三和音の三人に任せてきました」

 

「そっか、ならよかった」

 

兄としては、やっぱり心配らしい。

アイリが聞いたら怒りそうだけどな。

 

そうこうしてる間に

リーシャ様とフィルフィ先輩によって、数人いた男たちは全員倒された。

 

「おい、天然娘。油断するな!」

 

装甲を破壊された機竜使い(ドラグナイト)たちを拘束しつつ、リーシャ様が叫ぶ。

 

「……あれ?」

 

周囲を見渡すと、空になったドレイクと、生身で走る男の姿があった。

その先には、細身の女性が立っている。

 

「動くな! そこの女!」

 

腰からナイフを抜き、そう叫ぶ。人質にするつもりなんだろう。

男が女性の胸にナイフを突きつけようとしたとき、

 

「随分と治安が悪いのですね。この国は───」

 

女性が呟いた直後、

キンッ!

男のナイフが宙を舞う。

 

「動かないでください。手元が狂いますから」

 

そう言って、その場で尻餅をついた男に長剣の切っ先を突きつける。

長剣の表面には、無数の銀線が走っている。

機攻殻剣(ソードデバイス)だ。

 

「ご無沙汰しております。お嬢様」

 

「えっ……?」

 

困惑してるルクスさんの隣でクルル先輩がため息をつく。

 

「彼女は、エインフォルク家の執事、アルテリーゼ・メイクレアよ」

 

「場所を変えてもよろしいですか? ここは話をするには不向きです」

 

遅れてやってきた警備兵に男たちを引き渡し、俺たちは彼女の後に従った。

 

 

   †

 

 

その場から十数分歩いて、学園にやや近い酒場に入り、軽く話をする事になった。

校則では酒場の出入りは非推奨となっているが、アルテリーゼさんが責任を持つとのことだ。

 

一つのテーブルに、ルクスさん、クルル先輩、アルテリーゼさんが、

すぐ隣のテーブルに、リーシャ様、フィルフィ先輩、俺が座る。

 

(っていうか、俺たちなりゆきでついてきたゃったけど、本来関係ないよな……)

 

アルテリーゼさんはユミル教国では特級階層(エクスクラス)、つまり最高位の実力者らしい。

因みに俺の周囲の人間では、姉さんと隊長が特級階層だ。

 

「まずはそうですね。ご壮健で何よりです、お嬢様。と言いたいところですが───」

 

アルテリーゼさんはルクスさんや俺たちはチラッと見て、そう切り出してくる。

 

「級友の前だからといって、余計な気遣いはいらないわ」

 

「では、率直に。もう少し気をつけてください。あなたの身体は、エインフォルク家のものなのですよ?」

 

「なら賊に狙われるのも、名家の宿命だから仕方がないわね」

 

「…………」

 

不機嫌そうなアルテリーゼさんの言葉に対し、クルル先輩は皮肉を混ぜて返す。

しかしこの二人、仲が悪い……というか、よくも悪くも、互いに遠慮がない感じだな。

 

「ところで──、その男性お二人はどなたなのですか?」

 

新王国の男の知り合いがいることが不思議だったのか、そんなことをきいてくる。

 

「私の後輩と恋人よ。素敵でしょう?」

 

「……確か王立士官学園(アカデミー)は女学園だったはずでは?」

 

「共学のためのテスト生として少し前に編入してきたのよ。黒髪の彼が新王国の王家に仕える騎士で、今は私の後輩、ヨシノ・クラウディウス。そして銀髪の彼は旧帝国の王子で、今は私の級友で恋人のルクス・アーカディアよ。何か問題あるかしら?」

 

「問題はあるぞ。ルクスはわたしとこれからいろいろと──むぐっ……!?」

 

「あ、後で聞きますから、今は静かにしてください」

 

口を挟むリーシャ様と、それを宥めるルクスさんを、

アルテリーゼさんは疑わしげに眺め、深呼吸をひとつしてから、呟いた。

 

「そうですか、それは困りましたね。実は──」

 

「これはこれは──、私も見くびられたものだな?」

 

「……!?」

 

突然発せられた男の声に、一同がはっと息を呑む。

金の刺繍が入った、赤い豪華な外套を纏った男が、アルテリーゼさんの背後に立っていた。

 

長い髪は金色で目鼻は整っていて割と美形だが、威圧的な空気を匂わせている。

自我の鎧を纏った騎士……という感じの男が現れた。

 

「バルゼリッド卿!? 何故、あなたがここに? 会食の予定は、明日のはずですが──」

 

「ああ、忘れたわけではないよ。アルテリーゼ殿」

 

驚くアルテリーゼさんに男は笑みを返す。

 

「これでもオレは、期日にはうるさい男なのでね。──だがそう、あえて欠点を言うならば、少しばかりせっかちなのだ。オレの未来の妻となる少女を、一足先に見ておきたくてね」

 

男はクルル先輩の顔から足先まで、舐めるように視線を這わせると、満足そうに頷いた。

 

「ほお。評判通りの美しさだな。これほどの華は見たことがない。少々肉付きが控えめだが、成長が楽しみだよ」

 

「お褒めに与り、光栄でございます」

 

そう返答したのはアルテリーゼさんだ。

 

「アルテリーゼ。その人は?」

 

「そうか。どうやらまだ話は通っていなかったようだな。では、名乗らせてもらおう。オレの名はバルゼリッド・クロイツァーという」

 




アイリとのデートシーン、結構短くなっちゃったな。
次にデートシーン書くときは、もうちょっと頑張ってみます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。