目を開けると見えたのは……白い天井。
そして、薬品の匂い。
医務室……みたいな感じだな。
ああ、思い出した。
第六遺跡『
彼女との激しい戦闘の末──
…………。
どうなったんだ?
《ナルドブレア》の腕を蹴飛ばして、
《オロチ》が強制解除されて倒れたのは覚えてる。
…………。
俺、なんで生きてんの?
もしかして捕まった?
だが、俺を拘束している様子はない。
よくわからないままベッドから起き上がり、カーテンを開けると、
「あら、おはよう。ちょっと待っててね」
白衣を着た女性がいた。
この人……見覚えがあるな。
確か、
ってことは、学園に戻って来れたのか……?
†
女医の診察を済ませ、医務室を出る。
しばらくは絶対安静といわれた。
“みたいな”じゃなくて本当に医務室だったな。
聞けば、俺たちが遺跡調査から帰ってきたのは昨日のことらしい。
起きたのが今朝だから、俺は倒れてから一日弱ずっと寝てたということになるな。
一旦自分の部屋へ戻り、制服ではなく部屋着に着替える。
今日は祝日で授業はないからな。
さて、腹へったな……この時間なら食堂はまだギリギリ開いてるか。
気持ち速歩きで食堂に行き、朝食のメニューから料理を注文する。
適当に空いてるテーブルに座ろうと食堂を見回すと、
「ヨシノ君、目が覚めたんだな。身体はもう大丈夫なのか?」
三人が座るテーブルに歩いていくと、最初に俺に気付いたシャリス先輩が声をかけてきた。
「ええ、まあ。まだちょっと身体がだるいけど大丈夫です」
答えながらノクトの隣に座る。
「まったく……無茶はするなと言っただろう」
「シノっちが倒れているのを見つけたときはビックリしたよ」
「Yes. ですが、無事でなによりです」
「心配かけてすいません。それから、ありがとうございます」
そう言ったところで、さっき医務室で言われたことを思い出す。
「ところでさっき医務室の先生にノクトに……その、お礼を言っておきなさい……みたいなこと言われたんだけど、何かしてくれたの?」
本当は……なんというか、もっとスゴいこと言ってたけどな。
「No. たいしたことではありません」
「ノクトは一晩中シノっちについてたんだよ」
「ついさっき、私たちが医務室から連れ出して来たところなんだ」
「そっか。ありがとな、ノクト」
†
朝食を終えて、
さっき食べながら聞いたが、ルクスさんたちとバルゼリッドとの決闘、
勝ったのはルクスさんたちだそうだ。
だが、決着がついたあと、バルゼリッドは私兵を使ってルクスさんを始末しようとしたらしい。
戦闘中の不幸な事故を装って。
そんな、思考がとっても旧帝国なバルゼリッドの策略は、
リーシャ様やフィルフィ先輩、三和音のみんなに阻止され、
神装機竜《アジ・ダハーカ》は大破。
最終的にヤツは、
クルル先輩を脅迫、盗賊を雇った容疑、
決闘のルール違反と、相手の意図的な殺害容疑で逮捕され、
公には発表されていないが、少なくともあと五年は牢屋から出てこれないそうだ。
当然、婚約の話もなくなっただろう。
この件は一件落着だな。
だが、まだ落ち着いていないことが二つ。
一つはベルのことだ。
なんで俺を殺さなかったかはわからんが、それ以上に気になることがある。
アイツが現れたとき、俺を殺すように言われてきたと言っていた。
誰かに依頼されたのか、もしくはなんらかの組織に所属していて、
上の立場の人間に命令されたのかまではわからんが、
本当に俺を狙っているのは他のヤツってことだ。
用心しておかないとな。
昨日みたいに正面から勝負仕掛けてくるとは限らないし。
そして、もう一つは俺自身のことだ。
昨日の戦闘の最後、俺が
俺に向かって曲刀が振り下ろされるその瞬間、はっきりと見えた。
振り下ろされる曲刀と、それに刻まれた不思議な模様。
《ナルドブレア》の両肘から先が千切れ飛ぶ瞬間の、
装甲が割れるように砕け、破片が飛び散る様子。
すべてがスローに見えたのだ。
以前図書館で、アイリと本を片付けたときにも同じことが起きた。
アレのおかげで正確な位置やタイミングをあわせることができたので、
結果的に助かっているが、俺が意図的にやったわけではないので、正直少し気味が悪い。
また今度、人体──特に目に関係する本を図書館で探してみるか。
いろいろ考えてる内に工房にたどり着いた。
だが、
「あれ……?」
扉の鍵が閉まってる。
リーシャ様はまだ来てないのか。……今日は祝日なのに。
休日のこの時間ならとっくに作業を始めてるはずなんだが……。
「リーシャ様ならいませんよ」
後ろからの声に振り向くと、工房の入口にアイリが立っていた。
「そうなんだ?」
「エインフォルク家の執事さんが兄さんとクルルシファーさんに話があるとか。リーシャ様は二人の護衛として一緒に行ったそうです」
「…………な、なるほど」
たぶん、二人の仲が気になってついて行ったんだろうな。
「さてヨシノさん」
言いながらアイリが青い依頼書をチラッと見せる。
そういえば今日が七日目、最終日だったな。
「ん。何の依頼?」
俺が依頼の内容をきくと、アイリは手に持った依頼書を俺のほうへ突き出す。
「えっと………?」
「これはお返しします」
「なんで? 期限は日付が変わるまでだろ?」
昨日、一昨日と遺跡調査でいなかったから、今日はいろいろお願いされると思ったんだが。
俺もそのつもりだったし。
「ええ、わかってます。ですがヨシノさんのことですから、“昨日と一昨日いなかったから今日はそのぶんまで依頼をこなそう”みたいなこと考えていたんじゃないですか?」
あってんじゃねえか。
「どうやら図星のようですね」
アイリが勝ち誇った笑みを見せる。
「昨日、戦って倒れたと聞きました。そんなボロボロの身体で三日分の依頼がこなせると思いますか?」
…………そこまで考えてなかったわ。
「兄さんもですが、ヨシノさんは無茶しすぎです。自分の身体のことも考えてください」
「いやでも、昨日は無茶しないと「つべこべ言わない!」……はい」
「とにかく、今日はゆっくり身体を休めてください。ああ、これを最後の依頼にしましょうか」
「テキトーだなオイ」
†
あれから、自分の部屋で小説を読んだり、三和音の三人とボードゲームで遊んだり、
ノクトに長くなった俺の髪を切ってもらったりと、アイリの指示通りのんびりと過ごした。
そしてその夜。
夕食が終わって部屋に戻ろうとすると、
「あ、シノくん見つけた」
フィルフィ先輩に呼び止められた。
「何か用ですか?」
「お姉ちゃんが呼んでたよ。 学園長室に来て欲しいって」
学園長が………?
「わかりました。ありがとうございます」
とりあえず行ってみるか。
扉をノックして学園長室に入る。
中には学園長と三和音の三人、
それから──
「隊長……?」
数日前にも学園に来た、王族直属の騎士隊、
ジュリウス・レインフォースがいた。
三和音の三人は隊長を案内してきたのか。
「あなたを呼んだのは私じゃなくてジュリウス君なのよ」
「それはなんとなくわかりますけど………」
(新しい任務か? なら……)
ここへ来た理由を予測していると、隊長が口を開いた。
「王都へ帰るぞ。副隊長」
実はこの話を書いてる途中で気づいたことがありまして……。
日数を間違えて原作と一日ズレてしまいました。
ルクス争奪戦があった日を一日目として、バルゼリッドが現れた日が、
原作では四日目のはずが、今作では三日目として書いてしまい、
その結果、特別依頼書の最終日が、
ルクスとバルゼリッドの決闘の日になるはずがその次の日になってしまいました。
修正しようとも思いましたが、ストーリーに大きな影響はないので修正はせず、そのままでいくことにしました。
今後はこのようなミスが起きないよう、今まで以上に気をつけますので、どうかこれからもよろしくお願いします。