最弱無敗の弟子   作:雨夜狐

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投稿が遅くなってすいませんでした。
大学とかその他いろいろと忙しくてなかなか時間がとれなくて。



Ⅲ 災禍の激突
EpisodeⅢ‐1 王都への帰還Ⅰ


王都・アティスマータ城

 

城の敷地内にある六竜鱗(シックススケイル)専用の宿舎──その談話室に入り、ソファに倒れ込む。

 

「あー、疲れたぁ」

 

クロスフィードから王都まで機竜を使って、途中関所で休憩しつつ五時間程かけて来たが、

さすがに病み上がりの身体で長距離走行はきつかった。

 

「ヨシノ、お行儀悪いわよ」

 

「んー」

 

向かいのソファに座って紅茶をのんでいる、腰まで届く淡い金髪の少女に注意されて座り直す。

彼女はエレン・レインフォース。

俺より二つ年上で、隊長の妹だ。

 

「兄さま、ヨシノ、お帰りなさい」

 

「ああ、ただいま。エレン」

 

「ん、ただいま。先生は……いないのか」

 

「騎士長がどうかしたの……?」

 

「なんか話があるんだろ?」

 

エレンは少し考えてから、記憶にないのか首をかしげる。

 

「俺と隊長に手紙が届いたんだけど……」

 

俺が倒れて寝てた間に、俺と隊長宛てに手紙が届いたらしい。

昨日渡されたその手紙には“重要な話があるので六竜鱗全員に集まって欲しい”と書いてあった。

だが集合日時が書かれていなかったため、三日程かかる馬車ではなく、

数時間でいける機竜を使ってできるだけ早く来たというわけだ。

 

「私、何も聞いていないけれど……」

 

あの人、たまに大事なこと言い忘れたりするんだよなぁ。

なんであれで女王の騎士がつとまるのか……。

アティスマータ城七不思議の一つに加えてもいいんじゃないかな。

 

 

 

   †

 

 

 

先生を探して城の廊下を歩く。

と言っても居場所はだいたいわかってるけどな。

しばらく歩いてトレーニングルームについた。

扉をそっと開いて中に入ると、

長い金髪を三つ編みにした少女と藍色の髪が特徴的な男が木剣を打ち合っている。

二人とも集中していて俺の方を振り向く様子はない。

気付いてはいるだろうけどな。

 

金髪の少女がシャーロット・ブレイスフォード、エレンと同い年で俺の幼馴染だ。

そして、藍色の髪の男が先生──騎士長ブラド・エルステイン、女王の騎士であり、

六竜鱗を設立した人物で、俺と姉さん、シャーロット──シャロの三人に剣術を教えてくれた先生だ。

 

しばらく見学してると二人は動きを止め、こちらへ向かってくる。

今日の稽古はこれで終わりらしい。

 

「久しぶりだな、ヨシノ。一ヶ月ぶりぐらいか?」

 

「だいたいそれぐらいですね。お久しぶりです先生」

 

返事をしながら汗だくの二人にタオルをわたす。

 

「シャロも、久しぶり」

 

「ええ、久しぶり」

 

「思ったより早かったな。機竜で来たのか?」

 

「そうですよ。集合日時、書かれてなかったんで」

 

俺がイヤミっぽく言うと、

 

「あー……書き忘れてたか?」

 

──と、先生は笑いながらすまんすまんと軽い調子で謝る。

 

「……で、いつなんですか?」

 

「五日後あたりにする予定だったんだが、お前さんたち早く帰ってきたし、明日にするか」

 

「わかりました」

 

「長時間機竜を操縦して疲れたろ? 今日はゆっくり休みな」

 

そういって先生は部屋を出て行った。

 

「俺たちも行こうぜ。シャロ」

 

「ええ」

 

トレーニングルームを出て二人並んで歩く。

よく見るとシャロがトレーニング用に着ている青いシャツが汗で身体に張り付いて、

形のいい胸やくびれ、引き締まったお腹といった身体のラインが、

ハッキリとではないがわかってしまう。

なんか……体型がでる装衣とかよりもエロい気がする。

 

「ヨシノ……視線がやらしい……」

 

「えっ!?」

 

羞恥で頬を朱くしたシャロが両腕で自分の身体を抱きながらジト目で俺を睨んでくる。

エロさが増したような……。

 

「まさか、王立士官学園(アカデミー)の女の子にもそんな目を向けたり、ヘンなことしてるんじゃないでしょうね?」

 

「い、いや、そんなことはないぞ」

 

「ホントに? 女の子の匂いを嗅いだり、胸とか脚をいやらしく見してたんじゃないの?」

 

「そんなことするわけ──あっ……」

 

してたわ。

ノクトの匂い嗅いだり、クルル先輩の脚見てたわ。

 

「……してたのね」

 

「……はい」

 

視線が痛い。

 

「なんでそんなピンポイントで当てれるんだよ?」

 

「幼馴染だからね。ヨシノの好みはなんとなくわかってるわ。例えば……そこそこ大きい胸、タイツを履いた脚、それから首筋、鎖骨、肩、背中、腋──」

「ちょっ、ストップストップ!」

 

なんでそんな身体のパーツばっかりなんだよ!?

しかも全部当たってるし!

周りに誰もいなくてよかった……。

 

「ふふっ、まだまだあるわよ?」

 

「勘弁してください……」

 

 

 

   †

 

 

 

「ありがとうございましたー!」

 

女性店員の元気な声を聞きながら、店の扉を開けて外へ出る。

あの後、罰として王都でそこそこ有名なこの高級スイーツ店のレモンクリームパイを買ってくるように“お願い”されたのだ。

幼馴染って怖いね。いろいろと。

 

他にも個人的に欲しい物があったので、いろんな店を回り──

 

「さて、買うもん買ったし、城に帰るか」

 

と城のほうへ歩き出した瞬間、

 

「────」

 

「…………?」

 

今、何か、悲鳴が聞こえたような……。

街の雑音に紛れて聞こえにくかったが、間違いなく若い女性の悲鳴だ。

悲鳴が聞こえた方には、建物の間に人がギリギリ二人通れる程の細い路地があった。

路地を進むと、いたのは壁際に追い込まれ怯えた様子の茶髪の少女と、ガラの悪い二人の男。

 

少女が通りかかったところに運悪く男たちがいて、無理やり連れ込まれた──とか、たぶんそんな感じだろうな。

荷物あるし、できるだけ荒事は避けたいんだが、ここまで来た以上見逃す事もできん。

しゃーないか。

 

「なぁ、アンタら」

 

声をかけると、男たちがこちらへ振り返る。

 

「あ? なんだこのガキ?……おい、ちょっと黙らせるからお前は逃げられねぇ様にその女抑えとけ。先に手ぇ出すなよ」

 

「わーってるよ」

 

男たちは少し話した後、その内の片方──赤髪の男が俺の方へ来た。

うーん……こいつら俺の機攻殻剣(ソード・デバイス)に気付いてないのかな?

いやまぁ、こんなチンピラ相手に剣を抜くつもりはないけど。

 

「なぁボウズ、オレら今からお楽しみなんだわ。ジャマしないでくれよ」

 

「んー、残念だけど無理かなー」

 

「そうか、なら痛い目にあって──ぅぐぁっ!」

 

なんか喋ってる途中だったが、早く帰りたいので蹴飛ばしてやった。

だが──

 

「あー、ちょっとやりすぎたかな……?」

 

男は壁まで吹っ飛んで気を失っていた。

軽く蹴ったつもりだったんだが、思ったより力が入りすぎたらしい。

 

「テメーよくも! ぶっ殺してやる!」

 

仲間が倒されてキレたもう一人──黒髪の男が、怒鳴りながらこちらへ走ってくる。

その手には懐から取り出したナイフが握られている。

ていうか、ナイフを前に突き出したまま走ってくるんだけど……何アレ?

 

「えーっと……」

 

とりあえず手をトンッ──と軽く蹴ってナイフを落とさせると、

 

「ぐああぁぁっ!」

 

男は叫び声をあげながらコケた。

そのまま手と、コケたときに捻ったらしい足を抑えてうずくまる。

斬られたわけでもないのに……大げさな奴だな。

赤髪はどうか知らんがこの黒髪、いくらなんでも弱すぎない?

こっちがビックリなんだけど。

 

まあこれで一応二人とも動けないみたいだな。

とりあえず警備兵を呼んで──ッ!

 

──キンッ!

 

空いてた右手で咄嗟に機攻殻剣を抜き、後ろからの鋭い刺突を防ぐ。

振り向くとそこには、レイピア型の機攻殻剣を構えた少女がいた。

腰までかかる鮮やかな金髪と、深い翡翠の瞳。

その身に纏っているのは、王立士官学園の制服。

リボンの色は三年生を示す青。

なんで学園の生徒が王都に?

──と思ったが一人だけ当てはまる人物を思い出した。

彼女は──

 

「今すぐ機攻殻剣を捨て、投降することを許可します。あなたに拒否権はありません」

 

「えっと…………」

 

いや、それよりもこの状況をどうにかしないとな。

どうやらそこの二人と同じ暴漢と思われてるみたいだし。

 

「……………?」

 

………と思ったら、俺の顔をじっと見つめてるんだけど。

何かついてる?

 

「………! あなたは、もしかして──いえ、だとしても見逃すわけにはいきません。彼の為にもきちんと更正させてあげないと……そうだ。あの精神矯正方法ならば──」

 

俺の顔を見て何かに気づいたらしい。一人で何かぶつぶつ言ってる。

俺のこと、知ってんのかな?

たぶん初対面だと思うけど……まぁ、知っててもおかしくはないか。

ところで今ものすごーく不穏な単語が聞こえたんだけど。

 

「あなたは先輩──ミヤ・クラウディウスの弟の──」

「ヨシノですよ」

 

「やはりそうでしたか。私はセリスティア・ラルグリスと申します」

 

やっぱりか。

それにしても俺に気づいてから急に雰囲気が柔らかくなったな。

大の男嫌いって聞いてたんだが……。

 

「ヨシノ。男性は、その……いろいろと大変なのだと私の友人やミヤ先輩から聞いたことがありますが、だからといって女の子に乱暴していい理由にはなりませんよ」

 

悪戯をした子供を窘めるような口調で、セリスティアさんがそう言ってくる。

 

「は、はぁ……」

 

「そういうことはその、好きな異性と恋人や夫婦になってからするべきことで、きちんと相手の女性の同意を得てから──って、私は何を言っているのでしょう!?」

 

ホントに何言ってんだアンタ。

恥ずかしいなら最初から言うなよ。

 

「──とにかく、あなたにはラルグリス家の家臣たちによる精神矯正方法で心を鍛え直してもらいます。二週間ほど人気のない山奥に行く必要があるらしいですが、すぐにきれいな心を取り戻せるはずです」

 

戻ってきたら絶対俺じゃなくなってるだろそれ。

 

「いや、あのー、セリスティアさん?」

 

「私のことはセリスで構いません。何でしょうか?」

 

「じゃあセリスさん。ちょっと勘違いしてるみたいですけど──」

「あの、彼はワタシを助けてくれたんです!」

 

今まで俺の後ろで大人しくしていた茶髪の少女が俺を弁護してくれた。

 

「………え?」

 

少女の言葉にセリスさんは一旦沈黙してから、周囲を見回し──

 

「………! 失礼しました!」

 

状況を理解したらしい。

 

「ああいや、わかってもらえればそれでいいです」

 

 

その後警備兵を呼んで男たちを引き渡し、三人で路地裏から出る。

 

「先程は酷い勘違いをしてしまい本当にすいませんでした。それでは、私はこれで失礼します」

 

そう言ってセリスさんは去っていった。

噂で聞いたほどトゲトゲしい感じはしなかったな。姉さんの関係者だからか?

まあいいや。

それよりも──

 

「どこへ行くのかな? ベル」

 

「ぅぐっ」

 

さっきは路地裏で男たちに絡まれて、

二日前には第六遺跡『箱庭(ガーデン)』で俺と戦った茶髪の少女──ベルがそーっと静かに立ち去ろうとするのを呼び止める。

 

「ちょーっとお話しようぜ?」

 




今回から第三章です。
原作と照らし合わせると、二巻と三巻の間の話になります。
そして、新オリジナルキャラクターが何人か出てきましたね。
六竜鱗は六人中、隊長のジュリウス、その妹のエレン、
そしてヨシノの幼馴染のシャーロットの三人が金髪と金色率高めです。
その上セリスも出てきて超ゴールデンな話に……なってるような、なってないような。
金髪といってもみんな同じ色ではなく、それぞれ微妙に違う金色になっています。
ジュリウス・エレン兄妹は同じですけどね。

因みに私は金髪よりも銀髪の方が好きなんですが、
この作品の設定上、基本的にオリジナルで銀髪キャラは出せないのはちょっと辛いです。
……まあ、絶対に出せないわけではないんですけどね。
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