その話を聞いてどういうことなのか、なんとなく推理できた。
つまり……
現在、新王国の機竜使いは不足している。
そしてここは王都の防衛拠点、城塞都市。
若くて才能と実力がある生徒を戦わせずにいるのは勿体無いので、
士官候補生ではあるが、特別に戦闘許可を持つ遊撃部隊『騎士団』が設立されたのだろう。
リーシャ様に連れられて俺達がやってきたのは、演習場の控え室。
装衣に着替えたり、軽い打ち合わせを行ったりする部屋だ。
控え室には既に装衣に着替え終えた二十名程の生徒達がいた。
顔見知りの生徒は、クルル先輩、フィルフィ先輩。
さらにシャリス先輩、ティルファー先輩、ノクト。
最近知ったが後の三人は幼馴染で三和音と呼ばれているらしい。
その他生徒は初めて見る顔だな。
その内の一人が俺達をみるなり
「本当に彼らを騎士団に入れるつもりなんですか、リーシャ様?」
と言ってきた。
「ああ、実力はこれから示してやる」
騎士団に所属すれば、数人で小隊を組み、軍からの任務を受けることで報奨を得られるそうだ。
「だけど、望めば誰でも入れるわけじゃないのよね」
小柄な少女がそう呟く。
入団の条件は
・校内戦の成績で、総合して高い評価を得ていること
・機竜使いの
・現騎士団メンバーの過半数が、実力を認め、入団の賛成に投票すること
の三つらしい。
だが俺とルクスさんは編入して数日、当然校内戦なんてやった事が無い。
ルクスさんも同じ事を考えていたらしく、そのことを指摘すると
「平気だ」
と、リーシャ様が自信たっぷりに言い切った。
「先の二つの条件など、ただの前提に過ぎないな。ここにいるほどの生徒なら、もう知っているはずだぞ?
一騎打ちでわたしと引き分け、単騎で幻神獣とやりあった、ルクスの実力をな。
それに、ヨシノの肩書きも知っているだろ?王族直属の騎士だ。あれは実力なしに入れるものじゃない」
「でも、今は三年生たちが、騎士団のメンバーが半数しかいないじゃない。何もそんなときに……」
小柄な少女がそう言うが、
「全体の過半数は、ちゃんとここにいる。仮にいない人間全員が否定派でも、ここの全員が賛成すれば、なにも問題はないだろ?」
リーシャ様は話をまとめてしまった。
「三年生がいないっていうのはどういう……?」
少し気になって近くにいたティルファー先輩に聞くと
「三年生は今、王都へ演習に行ってるんだよ。シャリスはちょっとワケあって残ってるんだけどね~」
そう言われてここに来る前に城で何度か学生を見かけた事を思い出す。
だが……
「別に三年生が戻ってからでもいいのでは?」
「No. それは逆でしょう。騎士団長がかなりの男嫌いですから」
「騎士団長?」
「Yes. 三年生のセリスティア・ラルグリス先輩です。公爵家の令嬢で、学園最強と呼ばれる実力者です」
ラルグリス……四大貴族の……。
つまり、その団長がいないうちに、話を進めてしまおうということか。
「おい、あまり妙なことを言うなよ。わたしはただ新王国の姫として、やるべきことをやっているだけだぞ?」
話を聞いたリーシャ様が反論する。
「先日の幻神獣の襲撃。ヨシノが調べてくれてはいるが原因は未だ不明だ。即戦力の確保は当然の判断だろ?」
そんな建て前、よくさらっと出てくるなぁ
「だが、何の手続きも無しに入団させられるとは、わたしも思ってない。今からチームを組んで、機竜対抗戦を執り行う。その結果で、二人の入団の賛否を決めるといい」
(俺達の意見は完全無視ですか?)
だが、もう断ろうとしても無駄だろう。
諦めよう。
ルクスさんも手持ち無沙汰という感じで幼馴染のフィルフィ先輩に話しかけてる。
よく見るとフィルフィ先輩の機攻殻剣は汎用機竜のものではない。
神装機竜の使い手なのだろう。他にはクルル先輩もそうらしい。
リーシャ様も含め二年生だけで神装機竜の使い手が三人……そこそこの脅威に値する戦力だな。
従って、危険な任務にも駆り出されるだろう。
なんて分析をしていると対抗戦の話がまとまったらしい。
「わたしとお前達が組んで、相手チームと戦うことになった。そこの仕切りに行って装衣に着替えて来い」
「あ、はい」
「…………」
「何だよ? 仕切りに隠れずに着替えてもいいんだぞ?」
「そんな事で悩んでません!」
「覗きはするけど、自分から見せたい派ではなかったようね」
リーシャ様とクルル先輩がルクスさんをからかってる。
というか…
「……ルクスさん、覗きしたんですか?」
「それはいいから! 着替えるよ!」
†
「それで、相手は誰なんだろ?」
「Yes. この場にいる、お二人と初対面のメンバーたちのようです」
「えええっ!?」
ノクトの言葉に隣にいたルクスさんが驚く。
つまり、クルル先輩、フィルフィ先輩、三和音を除くこの場の全員だな。
「大丈夫だ。これでも十分いけるはずだ。物足りないなら今からお前達の機竜を、攻撃特化に変えてやろうか?」
「……このまま頑張ります」
「俺のは既に攻撃特化なんでいりません」
「そっか? まあいい。どうせ多勢に無勢だ。すぐに防御特化のルクスも戦わざるをえなくなる」
準備運動をすませ、演習場に出る。
そして模擬戦が、始まった。
思ったより長くなりそうので
前・後編に分けたいと思います。