最弱無敗の弟子   作:雨夜狐

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今回、ちょっと長めです。


Episode7 警報

 

あれからリーシャ様は『依頼』と称してルクスさんをデートに誘い、

二人で控え室を出て行った。

それを境に残っていたメンバーもひとり、またひとりと控え室を出て行く。

(さて、俺も着替えて部屋に戻るか。流石にちょっと疲れた)

 

 

   †

 

 

装衣から制服に着替えて仕切りから出ると、

 

 

「どうしたんですか、クルル先輩?」

 

 

クルル先輩が、椅子に腰掛けていた。

制服のスカートからタイツを履いた綺麗な長い脚が覗いている。

 

みんな出て行ったと思ったが、彼女一人だけは何故か残ったらしい。

 

 

「入団した可愛い後輩にお祝いの言葉を贈るのは、いけない事かしら?」

 

 

「いえ、ありがとうございます……ですが先輩、年頃の男子に冗談でも『可愛い』とか言っちゃ駄目ですよ。地味に傷付くんで。」

 

 

「そうなの?、でも可愛いと言ったのは冗談ではないわ」

 

……はい?

 

「あなた、顔立ちがお姉さんにそっくりだから、女子の格好をさせたらとても似合うと思うわよ?」

 

「やめてください」

 

 

 

 

 

   †

 

 

 

 

 

「それで、俺に一体何の用ですか?」

 

これ以上からかわれ続けるのは辛いので、こちらから話を切り出す。

 

 

するとクルル先輩の眼が真剣な眼差しに変わる。

 

「……黒き英雄って、あなたは知ってる?」

 

 

黒き英雄……たった一機で装甲機竜(ドラグライド)千二百機を破壊し、帝国を壊滅させた所属、目的、正体などが一切不明の機竜使い(ドラグナイト)だ。

 

当然噂くらいは聞いたことがあるが、おそらく彼女が知りたいのはそういう情報ではないだろう。

 

「いえ、噂くらいのことしか知りませんね」

 

 

俺が答えると組んでいた脚を組み替えつつ、口を開く。

 

「………そう、新王国の王族の騎士であるあなたなら、もしかしたら何か知っているかもと思ったのだけど」

 

 

「いえ、俺は何も。……お力になれず、すみません」

 

 

「あなたが謝る事ではないわ、これは私の個人的な問題だから。 それじゃ、私はもう行くわね」

 

 

そう言ってクルル先輩は控え室の扉から出る……と思いきや扉の前で振り返り、

 

 

 

「ヨシノ君、さっき忠告してくれたから、私からもひとつ忠告してあげるわ」

 

 

「……?」

 

クルル先輩は優しく微笑みながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、さっきから私の脚をチラチラ見てたけど、見られてるほうは相手が自分のどこを見てるのかだいたいわかるから気をつけたほうがいいわよ」

 

物凄い事を忠告してきた。

というか

 

「俺……先輩の脚、見てました?」

 

 

「ええ、自分で気付いていなかったの?」

 

 

マジか……無意識だったわ

 

 

「なんか……ごめんなさい」

 

 

「別に構わないわ。いやらしい目つきではなかったから、嫌な感じはしなかったし」

 

 

どうやら、それ程気にしてはいないらしい。

 

 

 

「でも、あとであなたの性欲発散の材料になると考えたら少し複雑な気分ね」

 

「そんなことしませんから!」

 

この人サラッと凄いこと言うな……。

ちょっとコワいわ

 

 

「ふふっ、冗談よ。ヨシノ君の反応が面白いから、からかいたくなるのよ」

 

 

やめてください、本当に……。

 

 

 

   †

 

 

 

 

 

ゴォオオン!

 

 

 

「…ッ、なんだ!?」

 

大きな音で目が覚めた。

 

(……鐘の音……幻神獣か!)

 

 

朝焼けの城塞都市に、警戒を伝える鐘の音と、機竜の咆哮が響く。

 

 

学園では、教官と都市の上層部を集めた緊急会議が開かれている。

その間に、俺達士官候補生は、指令通り装衣に着替えて機竜格納庫に集まり待機していた。

 

 

城塞都市クロスフィード 第四機竜格納庫

学園敷地内にあるその建物は、それ自体がシェルターになっており、転送前の装甲機竜の保管所である。

有事の際は、ここが待機、及び避難場所になるらしい。

 

「では、全員が揃ったところで、士官候補生の君達に通達する」

真剣な声音で、ライグリィ教官(ルクスさんのクラス担任らしい)が出現した幻神獣の情報を告げる。

 

幻神獣の種類は大型一体。

出現場所は南西の遺跡(ルイン)、出現推定時刻は深夜。

城塞都市ー遺跡間の三つの砦のうち、第一砦は既に突破されている。

現在は第二、第三砦の機竜使いが討伐に向かっているが、突破され城塞都市に被害が及ぶ可能性に備え、

俺達士官候補生も部隊を編成し、戦闘に備えるとの事だ。

 

既に王都にも救援要請をしているという話をきいて

何人かの女生徒は安堵の息をついていたが……

 

(正直、期待しないほうがいいだろうなぁ)

そう考えていると

 

 

「おいヨシノ。ちょっと来い」

リーシャ様が声をかけてきた。

 

「わたしたち騎士団はこれから幻神獣の討伐に向かう」

 

 

なるほど、じゃあ俺も準備しないとーー

 

 

 

 

 

「だが今回、お前は待機だ。城塞都市の防衛に残れ」

 

予想外の事を告げられた。

 

 

「え……何故ですか?」

 

「昨日の入団試験で気付いたが、お前はまだわたしたちとの連携がとれなさそうだからな」

 

言われて、納得する。

リーシャ様の言うとおり、入団したばかりの俺はメンバーとの連携がとれないだろう。

 

六竜鱗(シックススケイル)と騎士団とでは、なんというか、戦闘におけるリズム感が違いすぎるのだ。

 

一方は戦闘慣れした機竜使いの精鋭。

もう一方は実力はあるがまだ教育課程中の学生。

当然といえば当然だ。

 

昨日の試合ではリーシャ様とルクスさんが俺に合わせてくれたが、

恐らく他のメンバーでは殆どが全くついてこれないか、良くてついて行くのが精一杯という感じだろう。

逆に俺が彼女達に合わせようとしても、ぐだぐだになってしまうだろう。

 

そんな俺が一緒に行っても、味方を危険にさらしてしまうだけだ。

リーシャ様の判断が正しいだろう。

 

 

「わかりました。残ります」

 

 

 

 

「連携についてはこれから訓練していけばいい。それじゃあ、行ってくる」

 

 

「お気をつけて」

 

 

「大丈夫だ。わたしは強いからな」

 

そう言ってリーシャ様はルクスさんと少し会話して格納庫から出て行く。

よく見れば騎士団のメンバーが殆ど消えていた。

 

 

格納庫にはルクスさんの他、フィルフィ先輩、クルル先輩などが残っている。

フィルフィ先輩は俺と同じく城塞都市の防衛で、

クルル先輩はユミル教国からの留学生で、独自の戦闘基準が定められているのだとか。

出撃しようと思えばできるらしいが、教国から文句を言われるらしい。

他国の危機に戦って、貴重な機竜を失うわけにはいかない、という事だろう。

 

 

   †

 

 

ドオンッ!

 

 

突然、地鳴りのような振動が、格納庫を揺らす。

 

 

「うっ………なんだ今の!?」

舌噛んだ……いてぇ

 

 

少しして様子を見に行っていたクルル先輩が戻ってきて、現在の戦況を報告する。

 

ノクトから聞いたらしい、その内容は

新王国の警備部隊長が旧帝国の意志を継ぐ反乱軍の男であること。

そいつが幻神獣を操り騎士団を罠にはめたこと。

それにより騎士団が壊滅状態であること。

 

その事実を突きつけられ、女生徒たちは言葉を失っていた。

 

 

そんな中、俺は格納庫の外へでる。

 

 

「どこへ行くのかしら?」

 

扉の外にいたクルル先輩に呼び止められた。

 

 

「リーシャ様と騎士団のみんなを助けに行きます」

 

 

「そのお姫様に、ここに残るように言われたのでしょう?」

 

 

「ええ、ですが俺は王族の騎士ですから」

 

 

「いくらあなたが強くて、神装機竜の使い手だとしても、あの状況を一人でどうにかできるとは思えないけど」

 

俺の機攻殻剣(ソード・デバイス)を見ながらそんなことを言ってくる。

 

 

「関係無いです。それに、一人じゃありませんよ」

 

 

「え……?」

 

 

そのとき、ルクスさんとアイリが格納庫からでてくる。

 

 

「クルルシファーさん。お願いがあります」

 

 

「……何かしら?」

 

 

「あなたの《ファフニール》を起動させてください。リーシャ様を救うために」

 

 

「前にも言ったでしょう? 私はユミル教国の命で、戦いに出向くわけにはいかないのよ」

 

 

「『黒き英雄』の正体を僕は知っています。取引です。お願いを聞いてくれれば、教えます」

 

ルクスさんの後ろでアイリがルクスさんから視線を逸らす。

 

 

ルクスさんと『黒き英雄』になんの関係が……?

 

そこでルクスさんがもつ《ワイバーン》とは別の黒い機攻殻剣が目に入る。

(まさか、ルクスさんが……?)

 

「わかったわ」

 

 

「ヨシノも、一緒に来てほしい」

 

 

「ええ、もちろんです」

 

 

「では、行きましょう」

 

三人同時に機攻殻剣を抜き払った。

 




次回、ヨシノの神装機竜が出ます。


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