暗殺教室Another〜大海の様な暗殺者〜 作:コユキ@0324
「………んぁ?」
目が覚めたら、知らない天井にいた。
つか、どこだここ。病院…ってわけじゃなさそうだけど。
頭を悩ませていると、部屋のドアが開く音がして、人が入ってきた。
「おぉ。目が覚めたか」
キリッとした目つきの端正な顔立ちの男性は、俺を見るなりそう言ってくれた。
「どこか身体に異常はないか?違和感を覚えたり、骨が痛んだり」
「……骨。というか、身体全体がいたみます。というか貴方は?」
「あぁ。これはすまない。説明が遅れたな。俺は防衛省の烏間という者だ」
「これはご丁寧に、俺の名前は水湊です。海鳴 水湊」
「ミナト君、だな。単刀直入に言う。君はあそこで何をしていた?」
「あそこ?あそこって……」
と、そこまで言って、思い出した。あの夜のこと。崖から落ちたこと。そして、黄色い超生物のこと。
「覚えていないか?」
「いや…、確か公園で黄色い『アイツ』を見て、つけてきたって感じです。そしたら後ろから男性がやってきて…」
「そうか…『アイツ』を見てしまったか…」
そりゃあんな超生物、一度見たら忘れないでしょう。てか、この声どっかで聞いたことあるような…。
「いや、すまない。一から説明しよう。まず、あの夜君を追いかけたのはこの俺だ。結果、君を崖に落とし、怪我をさせてしまった。謝らせてくれ」
「いや、誰でも深夜にあんなとこに人がいたら声をかけますよ。防衛省の方ならなおさらだ。むしろ俺が謝るべきです」
頭を下げようとする烏間さんをなんとかして言いくるめる。実際、俺のあれはただの自爆だ。この人が頭を下げる道理は一つもない。
そして……。
「俺が聞きたいのはもっと他にあります。あの超生物のことです。『アレ』は、国が管理しているなにかですか?」
「そうだな…。『ヤツ』のことも話さなければならないな。そして、君自身のことも」
「俺?」
俺のことについて話すこと……。嫌な予感がした。秘密を知った者に与えられる処理。良くて記憶操作か。最悪な場合、口封じに殺される心配もある。
まぁ、崖から落ちた俺を救ってくれたのだ。後者の心配はないだろうが。用心するに越したことはない。
そんなことを思い、口を開こうとした時、窓から巨大な物体が、音も立てずに侵入してきた。
「ヌルフフフ…こっから先の会話は、私も参加した方がよろしいですねぇ」
「「!?」」
出た、UMA。全ての元凶。こいつは一体なんなんだ。
よく見れば、タコみたいな姿形をしている。なんか……気持ち悪っ!!
「おい!無闇に人前に姿を現すなと言ったろ!」
「にゅや…しかし彼には既にバレてる様なので大丈夫かなぁ。と」
「そういうことを言ってるんじゃない
!!」
烏間さんとUMAが会話をしている。中々にシュールな光景だ。
そして、結局UMAを入れた三人(二人と一匹?)で話を進めることにした。
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「暗殺教室?」
結局UMAは肝心なことは何一つ話さず、全て烏間さんが説明してくれた。
最近起きた、月が七割消滅するという世界的事件。その犯人が黄色に無数の触手を持つこの生物であり、さらにコイツは来年三月に地球も爆破すると言っているらしい。
そして、このタコ型生物が逃げ回らない代わりに出した条件が『椚ヶ丘中学校3ーEの担任をする』というものだった。最高時速がマッハ二十にもなる生き物を、一ヶ所に定住させることができるという理由で、政府もその条件を飲んだらしい。
椚ヶ丘中学校の『3ーE』と言えば有名だ。
通称『エンドのE組』。椚ヶ丘中学校の偏差値はものすごく高いが、内部は完璧な学歴制。
授業についていけない生徒や素行不良の生徒、問題のある生徒は一番下のクラスに落とされる。
その、一番下のクラスが『E組』。E組の生徒は、本校舎に通うことは許されず、山奥の旧校舎で学校生活を送る。
本校舎の生徒には馬鹿にされ、何をするにも見下される。だから生徒達は、『E組に落ちてたまるものか』と躍起になって勉強する。
一見効率のいい学校体制だが、実際E組に落とされた者達はたまったものじゃないだろう。
ふざけるなと。馬鹿にするのも大概にしろと。しかし、いくら文句を連ねても、『口で言うより結果で示せ』と言われてしまう。
そうすると何も言えなくなってしまう。落ちこぼれだから。ついていけなくて振り落とされたから。
なるほど。実によくできた制度だ。しかし……。
「なんでアンタはその椚ヶ丘中学校のE組の教師ならやっていいって思ったんだ?」
わからない。このタコとE組との接点が。いくら考えても全くわからない。
「いやぁ…頼まれたんですよ。ある人にね」
頼まれた?一体誰に?更に質問を重ねようとしたが、それを遮ってタコは続けた。
「さて!ミナト君!君は椚ヶ丘中学校で、E組の皆と一緒に勉強する気はありませんか?」
………は?
何を言っているのか理解するのに、数秒かかった。
何を言っているんだコイツは?まず俺は大学生だぞ?もう18歳だぞ?中学に通えるわけがないだろうが。そもそも、やっと苦労して大学に入ったんだ。そんなのお断りだ。
俺の疑問を理解したのだろうか。黄色いタコはこうも言ってきた。
「何を言っているのかよく分からない。という顔をしてますねぇ。それもその通りです。しかし、18歳の貴方でも通える方法があるんですよ。ねぇ?烏間さん?」
「………お前。それはもう少ししてから、彼の精神状態が落ち着いた状況で提案すると言っただろうが。いきなり何を言うんだお前は」
「いいじゃありませんか!それに、既に彼は落ち着いているみたいですしね」
「何を……」
「あぁ。大丈夫ですよ。一瞬戸惑いましたが、話を聞くだけ聞いてみようと思います」
「君は……適応力が高いな。普段からそんな感じなのか?」
「いや、普段こんなイレギュラーな事態は起こらないのでわからないです」
「それもそうか…。では、説明させてもらおう。」
そう言って、烏間さんは切り出した。
自分の怪我が、全治3ヶ月程度の大怪我だということ。
しかし、国が開発した薬を飲めば、1週間で完治するということ。
そしてその薬は、飲んだ副作用として、身体が若返るということ。
…………いやいやいやいや、なんてものを開発してるんだよ日本。
てか、すごいな日本。若返りの薬かよ。ヤバいな。どこの黒の組織だよ。
「とまぁ、こんなところだが…。先に言っておくが、強制はしない。ただ、念の為記憶操作はさせてもらうが」
そして、と烏間さんは続ける。
「この薬のことだが…。まだ、実用されたことは一度も無い。よって、危険度ははかりしれない。もしかしたら死ぬ可能性もある。それでも、やるか?」
「………やらなきゃ記憶操作されて記憶なくしちゃうんでしょ?」
「まぁ俺としても記憶処理操作もあまり完璧ではなくてな。ただ、明らかに安全性で言えば記憶処理操作の方が上だ」
「……俺は大学どうすればいいんですか?」
「一年だけ休講という形を取ってもらい、来年からまたキャンパスライフを送ってもらうことになる。もちろんその分の経費は、国が保障する」
「大学一年分の授業を私が教えて差し上げますよ。そして、来年からは二年生として復帰すればいいでしょう。国の力ならそれくらい余裕でしょう」
「まぁ本人が了承してるならいいが…」
まぁもっとも、とタコは告げる。
「殺される気は微塵もないですがね。ヌルフフフ」
タコの顔が緑のしましまに変わっていく。気持ち悪っ!
烏間さん曰く、相手をナメている時はこの表情になるらしい。
コイツ、ポーカーフェイスとか無理そうだな…。ババ抜きとかクソ弱そう。
なんだかとても面倒なことに巻き込まれたみたいだ。けど、俺は何故だか憧れていたキャンパスライフより、こっちの方がはるかに
それにこの
「………分かりました。その薬とやらを飲んで、中学生に戻って、このタコ殺します」
ニヤッ、とタコが笑った気がした。
「ヌルフフフ。ではでは、よろしくお願いします。楽しい一年にしましょう」
「あぁ。よろしく。タコ教師」
こうして、俺の暗殺教室は幕を上げたのだった。