『始まり』   作:アイリスさん

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まあ、R-15ならこのくらいでしょう。

短めの回です。


その9 潜水艦の気持ちは分からない

 

鯨のようなイ級が横に三体繋がったような容姿の、軽巡ホ級。その砲が放たれ、漣は慌てて回避行動をとる。

間に合わず、漣の直ぐ側に幾つも水柱が上がる。音に驚き、恐怖もあって思わず首を竦めて瞳を閉じてしまった漣に、そのうちの一発が真っ直ぐに飛んで来た。

 

『避けてください!』

 

兎のヌイグルミに身を包んだ妖精さんの声に我に返った漣だが、反応出来なかった。左肩の辺りに直撃を受けて、大きく後ろへと飛ばされた。

 

「‥‥‥痛っ‥‥‥」

 

恐る恐る左肩に視線を向けた。良かった、傷だらけにはなっているものの、ちゃんと腕は付いていた。これが完全に装甲が揃った艤装の力か。

 

『3時方向!魚雷が来ます!』

 

妖精さんに言われるままに顔を向けると、ホ級が今当に魚雷を発射しようとしている所だった。なんとか回避しようと身体を起こすが、うまく舵が切れない。先程受けた砲撃で支障をきたしているようだ。

 

「駄目っ、動けないよ‥‥‥」

 

死の恐怖に目を瞑って震える漣の耳に聞こえてきたのは、前方から発する爆発音。助けてくれたのは雷。周りの駆逐イ級を片付けた雷が魚雷を放ち、それがホ級の発射管を直撃。誘爆を引き起こして沈ませた音だった。

 

「漣、大丈夫?」

 

「うん‥‥‥大丈夫。ありがとう」

 

尚も震える漣を、雷が正面から優しく抱き締めてくれた。

 

「大丈夫よ、漣。もう大丈夫」

 

「ごめんね‥‥‥」

 

艦娘としても、人としても雷の方が歳下の筈である。にも関わらずこうして優しく慰められ、助けられ。申し訳ないうえに情けなくて漣の瞳からは涙が溢れてくる。

 

「仕方無いわよ。死ぬのは誰だって怖いもの。それに、漣は一人じゃないわ。私や吹雪がいるじゃない。もし辛くなっても、私達を頼ってくれればいいのよ」

 

後輩の筈の雷の優しさに、今度は嬉しくて涙が後から後から流れてくる。

そうして一通り泣き腫らした漣は、雷に支えられて戦場を後にした。

 

深海棲艦の艦隊を片付けた帰り。雷は何ともないが、レン‥‥‥漣は被弾してしまい大破状態。身体のあちこちに傷をつくり、着ている服もボロボロ。セーラー服の上着を落ちないように右手で押さえ、雷に支えられながら走行している。

吹雪は待機。理由は、万が一3人が同時にやられてしまったら、深海棲艦に対抗する手段が無くなってしまうから。だから、南方棲戦姫と対する迄は常に二人での出撃となる。

 

「ねぇ、漣。私ずっと思ってたんだけどさ、どうして私達の出撃の制服ってセーラー服なのかな?」

 

理由は恐らく、水兵の制服といえばセーラー服だから。だがそんな事は雷も承知している。今問題にしているのは、そんな事ではない。

雷の視線は漣の腰の辺りを向いている。漣はミニスカートもボロボロで、苺柄がプリントされている下着がかなりハッキリ見えてしまっている。漣がどうしてそんな下着を穿いているのかは一先ず置いておくとして、問題はスカートがボロボロにならなくても雷にはそれが分かっていた事だ。

 

「すっごく今更だけどさ、どうしてミニスカートなの?まさか‥‥‥パパが決めたの?」

 

雷の疑問は尤もだった。海上で激しく動く必要があるばかりでなく、海では風もある。別に戦闘時に人の目が届く訳ではないが、雷達が動く度にスカートの中が見えてしまう訳で落ち着かないのは確か。

 

「ううん、これも艤装なんだって」

 

漣が言うには、この制服も艤装。ちゃんと装甲として機能しているそうだ。普通の人間よりも防御が高いとは言え、この制服を着ているお蔭で深海棲艦の砲の直撃を受けてもどうにか耐えられる。

 

「そっか‥‥‥じゃあ妖精さんの趣味なんだ?」

 

『違いますよ!』

 

雷の疑惑の視線に、漣の艤装の上で狼狽しつつも否定する妖精さん。妖精さんによると、艤装の設計図は妖精さん達が考えている訳ではないらしい。軍艦の意思‥‥‥とでも言うのだろうか。建造を担当する妖精さんの頭に別の次元から降りてくるイメージ、なのだそうだ。確かめようが無いので何とも言えない。

 

「それだとさ、もしその別の次元からのイメージが水着とかだったら、私達の服も水着に

なってたって事?」

 

雷の言うように水着で深海棲艦と‥‥‥と漣もイメージしてみるが、流石に恥ずかしい。今の大破状態と比べれば幾分マシかも知れないが。

 

「水着‥‥‥はちょっとヤダなぁ」と溢しつつ、漣は見えてきた陸にふと顔を向ける。何かが光った‥‥‥ような気がした。

その時は、何かの光が反射でもしたのだろうと大して気にしなかったのだが‥‥‥。

 

◆◆◆

 

2日後、事件は起きた。前日の夜戦のせいで昼まで眠っていて、まだ基地内の部屋で寝起きで頭がぼーっとしている漣に向かって、吹雪が勢いよく突撃してきたのだ。

 

「たっ、たっ、大変!大変だよ、漣ちゃん!!」

 

正面から両肩をホールドされた状態のまま、吹雪に前後に揺さぶられる。

頭がグワングワンと揺れて、漣の思考は完全に停止。死にそうな顔をしている漣にやっと気付いた吹雪が手を離す。

 

「漣ちゃん、見て!これ見て!」

 

吹雪が持っていたのは週刊誌。その中の折り目が付いているベージを開いてみて、漣は固まる。脳がそこに載せられている写真の内容を理解するのに数秒。それから、漣の頬から耳、太股に至るまでが真っ赤に染まった。勿論、羞恥心で。

 

「えっ?‥‥‥ちょっ‥‥‥えっ!?」

 

思い当たるものはある。あの時、雷に支えられて基地に戻る途中で陸でチラッと光ったそれだ。あれがまさかカメラの望遠レンズだったとは。写真は勿論、雷と共に海を走る『あられもない姿』の自分だ。下着の苺柄までハッキリと見てとれる‥‥‥。

 

「なっ、なっ、何これっ!?」

 

写真を撮ったのは、足木という記者らしい。怒りも勿論あるが、今は其れ処ではない。吹雪と雷に依れば、この記事のせいで基地近辺の海岸には所謂『カメラ小僧』が少なくない数居るらしい。勿論、狙いは漣や雷。

 

漣は誓った。必ず生き残ってみせる。生き残って‥‥‥この足木という記者を探しだして必ず文句を言う。言わないと収まらない。

 

そのあと実際出撃があって分かった。カメラ小僧共は毎日張っている。かと言って艤装であるセーラー服を外す事は、そのまま命の危険に繋がる。

 

‥‥‥以降、妥協案としてスパッツを穿く事になった。




でち公「ゴーヤ達の悪口はそこまででちぃぃ!!」
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