「要塞の調査ですか?」
「そうだよ、ユリアン」
彼らが調査に向かうのは、イゼルローン要塞の動力部近く。その部分は設計図では、分厚い壁やコード、ダクトがあるだけなのだが、実際はその部分で多くの電力が消費されていることが判明した。
残された設備書類を調べてみたが何も見つからず。ただ動力炉の大きさに比べて供給可能エネルギー最大量が低く記載されていること、供給量と使用量を引いた差分が「そこ」に使用されていることが判明する。
彼らより要塞に詳しいであろうメルカッツに尋ねるも、彼も要塞の基礎部分については何も知らず。代々の要塞司令官ならばなにか知っているかもしれないが ―― 程度しか助言できなかった。
そのままにしておいていいものかどうか?
ことが要塞維持に直結するエネルギー問題なので、放置しておくわけにも行かず、ヤンは調査を命じる。
「同行してもいいんですか? ヤン提督」
状況からエネルギー漏れなどがあるとは考えられなかったこともあり、ヤンはユリアンが調査に向かうことを許可した。
「行っておいでユリアン」
本来であれば機械で調査するところなのだが
議論した結果、ダメージを最小限に抑えて調査できるのは「人間」だけとなり、技術士官五名と、荷物を運ぶなどの補助員三名。そしてローゼンリッターから五名の計十三人で向かうことになった。
「ユリアン。ブルームハルトのこと、頼むぞ」
「隊長!」
ダクトを通り抜け、ロープで壁を登り降りし、床を這うように進み、どうしても壁を壊さなくてはならない時は最小限の破損に留めを繰り返し ―― 図面には存在しない通路に到着した。
「明かりがありますね、ブルームハルト中尉」
通路の壁にライトが埋め込まれ淡い光で足下を照らし、歩くのになんの不自由もなかった。その明かりに照らし出されるのは、かなりの幅のある通路で天井は非常に高く、見渡す限りイゼルローン要塞の要人居住区と同じ豪奢なバロック調であった。
人目に触れない箇所に施すには、手が込みすぎている。
「嫌な感じがするな」
ブルームハルトは辺りを見回し、念のために持ってきたトマホーク握る手に力を込めた。
シェーンコップには及ばないが、彼とて歴戦の勇者であり、異変を察知する能力には優れている。
技術士官たちを先頭に、エネルギーが使用されている場所へと急ぐ。
「えっ」
通路を進んでいると、突然明かりが消えた。
「暗視ゴーグルを装着しろ!」
ブルームハルトが叫ぶ語尾にかかるように、大音量の音楽が流れる。
「”ワルキューレは汝の勇気を愛せり”か」
ここは帝国の軍事施設なのだから、銀河帝国軍軍楽曲がかかるのはおかしいことではない ―― 誰も来ないはずの場所でなければ。
「どうします?」
「技術士官、
使用量に音楽が見合っているのであれば調査は終了だが、
「いいえ」
技術士官の答えを聞かずとも分かっていることだった。
「そうか。ではもう少し進んでみよう」
嫌な予感はするが、なにが起こったわけでもない。唐突に音楽が流れ出したものの、この要塞を作った国の軍楽曲。ここで自由の旗・自由の民が流れてきたら違和感を覚えるが、現在流れている曲に対して違和感を持つ者はいない。
そして ――
「しっかりしろ! ユリアン」
ブルームハルトたちは時間になっても戻ってこず、通信にも応えなかったため、ローゼンリッターが部隊を編成して救出に向かった。指揮にあたったリンツは、意識を失っているユリアンと、正気を失っている補助員一名を救出する。
意識を取り戻したユリアンは、話を聞かれたが、ほとんど覚えていなかった。
「ダクトから出ると、照明のある通路に出て……そこから先は覚えていません」
余程怖ろしい目にあったのだろうことは分かったが、具体的なことは分からない。彼らは、まずは負傷者二名を連れて一度帰還し、再度部隊を編成して救出に向かったのだが、見つけられたのは血だまりだけで、後は何も発見することはできなかった。
二人を見つけて直ぐに帰還したのは、両者が真っ赤な血に染まっていたため、大けがを負っているのではないかと ―― 検査の結果、ユリアンは傷一つなく、正気を失っていた補助員は僅かな切り傷を負っていただけ。ではあの大量の血は? 調べたところ調査に向かった技術士官のものであったことが判明する。
侵入者を阻むトラップなのか、それとも意図せぬ機器の動きによるものなのか、未だ行方不明の者たちを助けるべく、リンツは部隊を率いて向かったが見つけることはできなかった。
救出された補助員は正気を取り戻すと怯え、病室を抜け出し
唯一の生存者で皆に心配されていたユリアンだが、大丈夫だと言い張りアッテンボロー艦隊の新兵訓練に同行し ―― スパルタニアンに搭乗し初陣するのだが、突然正気を失い奇声を上げて味方の戦艦に激突し戦死した。
コックピットの音声は記録されているが、使用されることはあまりなく、故人の家族が聞くことはないのだが、今回は特別にユリアンが死亡するまでの音声を再生し、家族であるヤンがそれを聞いた。
「……
ユリアンが正気を失う数十秒前に、敵の通信傍受システムが、ワルキューレは汝の勇気を愛せりを拾った。兵士の戦意を高め、維持するために、音楽を流すのは良くあることだった。
「これが切っ掛けなのだろうか。だが……」
新兵が初陣の際、コックピット内で発狂するのも珍しいことではなく ―― ユリアン・ミンツはごく有り触れた戦死となった。享年十六。
調査に向かった者たちも発見されることなく、彼らはイゼルローン要塞を放棄してランテマリオ星域会戦へと向かうことになる。
そしてバーミリオン星域会戦後、ラインハルトと対談したヤンは、最後に部下が行方不明になっていることを伝えた。
「閣下の奥方は、この要塞を作られた方の曾孫とお聞きしました。なれば何かご存じではないかと」
「分かった、妃に聞いてみよう」
もしも調査することがあったら、そこでなにか部下に関するものが見つかったら教えて欲しいとも。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ユリアンが戦死し、フェザーンで各国の三次元チェスの優勝者を集めて大会が行われていた頃 ―― その試合はイゼルローン要塞にも届いていた。また要塞内でも独自に賭けが行われた。
要塞内では同盟の優勝者が一番人気で、二番目はフェザーンの優勝者。帝国代表の公爵夫人は三番手に甘んじていた。
同盟の優勝者は国内では優れた頭脳の持ち主として有名であり、国内三次元チェスの高いにおいては成績を残しているので当然とも言える。
二番手につけたフェザーンの優勝者、俳優でもある彼は、同盟でもかなり顔が知られておりそれなりに人気もある。
要塞内で人気が皆無だった公爵夫人。理由はいくつかある。三次元チェスの大会において全く実績がないこと ―― 実績がなくても勝ち上がったのだから、それなりの実力者なのは分かるのでは? だがそれはパンフレットに書かれていた公爵夫人の経歴で打ち消された。
「公爵家当主」「大学に八歳で入学十二歳で卒業」「宰相の妻」「曾祖父は皇太子」と書かれていたため「あーこれは門閥貴族特権で出てきたんだな」と思われてしまったのだ。思われたところで、当の公爵夫人は気にもしないが ―― 結果は公爵夫人の圧勝。
公爵夫人に賭けた僅かな者たちは、高配当を得た。
「隊長、知ってましたね」
高配当を得た一人がシェーンコップは、部下から恨みがましい視線を浴びていた。
「まあな。俺が帝国に居た頃は、
むろんそんなことを気にするような男ではない。
「大ツークツワンク?」
「そうだ。大ツークツワンクの父親が小ツークツワンク。三十連勝くらいしていたそうだ。その連勝を止めて、連勝記録をも抜いたのが娘である大ツークツワンクだ。
「教えてくださいよ、隊長」
「聞かれたら教えたぞ、リンツ」
「メルカッツ提督とシュナイダー少佐もご存じだったんでしょうね」
賭けに誘われた二人は帝国人ならば当然と、公爵夫人に賭けた。
「そりゃ知ってるだろ」
イゼルローン要塞にて、公爵夫人の話はこれで終わる筈だったのだが ――
「メルカッツ提督はなにかご存じでしょうかね?」
「さあな。バグダッシュ、お前はなにをそんなに気にしているんだ?」
シェーンコップが公爵夫人のことを少し知っていたという話を聞きつけたバグダッシュが、知っていることを教えて欲しいと尋ねてきた。
シェーンコップはブルームハルトに語った以上のことは知らず、そして、どうして公爵夫人のことを調べているのかと聞き返す。
すると「フェザーンで帝国軍が大規模な諜報活動をしているらしい」との情報が入ったので ―― こちらも調べて損はないだろうと諜報員が活動していると聞かされた。
「状況は」
「芳しくありませんな。今回に限ってはフェザーンはかなり帝国寄りでして」
「ルビンスキーがか?」
あの黒狐が珍しいなと含みを持たせて尋ねると、バグダッシュは首を振って否定する。
「違います。元老院と公爵夫人の間に何らかの繋がりがあるようです」
元老院と自治領主は相容れぬ部分が多い。共闘することもあるが、片方のことなど考慮せず、自分たちの都合だけで動くことも多い。
「公爵夫人本人ではなく公爵家との繋がりということか」
「そうです」
ラインハルトの妻で三次元チェスが詐欺師も逃げ出す程に強いだけならば、同盟政府もそれほど興味を示さなかったであろうが、フェザーンの元老院と繋がりがあるとなると調査をする必要があるとされ ――
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「
会議室にて公爵夫人について聞かれたメルカッツは、正直に答えた。実際メルカッツは公爵夫人のことはほとんど知らない。もちろん一般的なことは知っているが【ラプンツェルにしてハイリゲユングフラオにしてフューラーでフェアローレネパラディースで
唯一知っている愛称は
これは戦地から帰還する
「
質問しているのはヤンなのだが、聞いているヤン自身、メルカッツが公爵家とフェザーンの繋がりを知っているなど思ってはいない。彼はそのようなこととは無関係な人柄であるのは、短い付き合いながら分かっていた。
「公爵家とフェザーンの繋がりなどは存じませんが、公爵家の方々の人となりなどは知っている範囲でお教えいたします」
公爵夫人の近親者はほとんど軍人なので、メルカッツのように長く軍に在籍している貴族ならば、ある程度のことは知っている。
「お願いします」
「それでは。まずはあの公爵家の始まりである
「あの名前か」
ヤンが呟く。定礎は司令室を出て直ぐの目に付くところにあるので、ものぐさで興味のないことには、とことん興味を持たないヤンでもその名前は知っている。特に姓がなく名だけなのが、彼の興味を引いた。
「皇帝の名を刻む際には、姓を除外するのが慣わしでしたな」
「
これがルドルフ、ジギスムント、リヒャルト、オトフリート、ユリウス、アウグスト、エーリッヒ、オットー・ハインツ、フリードリヒ、レオンハルト、マクシミリアン・ヨーゼフ、グスタフ、コルネリアス、マンフレート、ヘルムート、ウィルヘルム、エルウィン・ヨーゼフなどの名ならば過去の皇帝に対して敬意を払って名を刻んだのかもしれないと思うところだが、曾祖父の名前は歴代皇帝にはない名前のため ―― なにか縁のある人なのだろうくらいに思うくらいであった。(カスパーがないのは、
「なるほど」
「メルカッツ提督。イゼルローン要塞を作ったのはリューデリッツ伯では?」
「確かに現場の総指揮にあたったのは、グリーンヒル殿の言う通りリューデリッツ伯だが、要塞を作るに当たって必要なものを用意したのは
そこまで言ってメルカッツが
副官は頷き、補足するとまではいかないが、
「リューデリッツ伯にはトールハンマーのような大胆な兵器は思いつきませんよ」
伝えられているリューデリッツ伯の性格からすると、ここまで大胆にして思い切った兵器を設置しようなどとは到底考えつかない。
「たしかに、こんな巨大兵器を作ろうと言い出して、実行させることが出来る人はそうそういないだろうね……建築する際に、太子公がフェザーン業者と交渉したのかもしれないな、バグダッシュ」
「その線はありそうですが、半世紀も前の受注業者と、発注皇族に繋がりというのが……」
「それを捜すのが君たち諜報部の仕事だろう」
「はい、ヤン提督。メルカッツ提督、他になにか
「士官学校を出た軍人であれば誰もが知っていることだが、第二次ティアマト会戦後の帝国軍の窮乏を救ったのが
多数の戦死者を出し壊滅的な被害を受けた帝国軍は、それを平民で補わなくてはならないのは分かっていたのだが、その段になっても貴族と同じ学舎で学ぶ必要はないのではという意見が多かった。
元から存在していた士官学校を上級と、平民が入学できる士官学校を下級として分けるべきでは? 下級の学校を卒業した平民は中将止まり……など、身分が定まっている社会では当然の意見なのだが、この意見を覆したのが公爵夫人の曾祖父。
「なにをどのように説得なさったのかは、小官は知りませぬが、一週間もしないうちに貴族の意見を変えさせたと聞き及んでおります。こうして平民と貴族が共に学ぶ空間を作り上げた
「やはり成績優秀者を?」
パトリチェフの問いにメルカッツは首を振り否定する。
「成績優秀者というよりは、根性があるのを集めたそうです。もちろん勉学は人並みに出来たが、日中は日雇い肉体労働で夜は入試対策、休みの日は行儀作法などを教え込んだと。こうして
上級と下級に分けられていたら、ミッターマイヤーはラインハルトに会える程出世はしていなかったであろうし、そうなれば麾下に入っていたかどうか分からない。特に彼は配下になった経緯がアレなので ――
「
シェーンコップが愉快とばかりに語る ―― それを見てムライが表情を険しくするが、他の円卓に座っている者たちは、いつも通り見て見ぬ振りをする。
「そうかも知れませぬ。スカウトされて入学した士官たちは、退役後皆、公爵家の通いの使用人となった。給金は要らぬので、仕えさせてくださいと
公爵夫人の「使用人はいたが、いつの間にか居なくなっていた」は、年を取って通えなくなったためである。
「メルカッツ提督。少々話題は逸れるのだが、大ツークツワンクは最終的には何連勝なさったのだ?」
「五十四連勝だ。最後の勝負を終えてから三日後に亡くなられた」
シェーンコップの問いに、かつて「時間つぶしに付き合え、そこの若者」と大ツークツワンクに指名され、完膚なきまでに叩きのめされたことのあるメルカッツは、あの時の勝負を思い出しながら答えた。
「そうか。息絶えるまで大ツークツワンクだったか」
ちなみにメルカッツは、なぜ負けたのか未だに理解はできていないし ―― 一生理解できない。
「シェーンコップ殿が大ツークツワンクに触れてくださったので、続けてお答えいたしますが、このイゼルローン要塞がある空間を領地としていた名門辺境伯こそ大ツークツワンクです。
【イゼルローン要塞の主】についてだが、公爵夫人当人はそのように言われていることは知らない。皇帝との約束で同盟を滅ぼしたら色をつけて領地を返却するとされてはいるが、本人としては微塵も欲しいものではないので、かかる公文書を焚きつけにして地上から消し去っている ―― 公爵夫人としては残念であろうが皇帝側が書類をしっかりと管理していたため、ラインハルトに「返せないが、その分の埋め合わせは……」などと異様に気遣われることになる(要らん時だけしっかりと仕事する宮内省:公爵夫人)
「メルカッツ提督。うかがいたいのですが」
「何でしょうかグリーンヒル殿」
「大会公式パンフレットにも書かれている”泉の姫君”の由来、お分かりになりますか?」
公爵夫人は当人の知らない渾名を幾つも持っているが、直接呼びかけられたわけではないが、本人が知っている渾名もある。
「それは
公式パンフレットに目を通した際「姫君って……」と、新たなる渾名に「仮とは言え既婚者なんだが」とは思ったが、「
「原点……ですか?」
「皆さま方も
「聞いたことはある。総面積六十平方キロメートルを越える巨大建造物だと」
「ヤン提督が仰る通り、総面積は約六十六平方キロメートル。回廊の総延長は約四百キロメートル。完成まで二十余年を費やした宮殿です。その新無憂宮が建築されている間、皇族の方々が住まわれる仮皇宮がおかれましてな、それが泉の宮殿です。泉の宮殿は建物を移築したもので、元は銀河連邦中央博物館だったとか」
公爵夫人の生家は、本編の後半に登場し炎上する柊宮と同じく仮宮だった経歴がある。
「わざわざ運んできたのか」
「なんでもルドルフ大帝の好みの建物だったとか。その頃にはルドルフ大帝が権力を握っておりましたので、嗜好に合った建築物が建てられていたかと」
歴史だけならば新無憂宮をも凌ぐ宮殿だった。
「なるほどねえ。それにしても前代未聞の移築だな」
移築は惑星上のみで行われるのが普通。別の惑星に移築することは費用や手間を考えてまず行われない。そんな珍しい宮殿なので、欲しがる者も多く、リッテンハイム三世の祖父もこの宮殿を欲して乗っ取りを仕掛けたのだが、曾祖父に阻止された。
「メルカッツ提督は
「小官が公爵家でもっとも詳しいのは
「どんな方でした」
「まあなんと言いますか”逆らったら殺される。逆らわなかったら殺される”……というのが、同期たちとの共通した意見でした。決して嫌いではありません、むしろ皆心酔しているのですが……とにかく恐いお方でした」
メルカッツの士官学校同期で主席だったミュッケンベルガーは、主席ゆえに特に厳しくされた結果、自邸に飾っている祖父の写真を見ると、未だに数多の恐怖が蘇ってくるという ―― 写真を見なければいいようなものだが、心酔しているため写真を飾らないという選択肢はない。
「よく分からないが、何となく分かる」
シェーンコップの後継者として同席していたリンツは、自分の上官が脳裏に浮かんだ ―― 決して嫌いではなく、尊敬しているが、それなりの恐怖がある。だが悪いものではない。
「厳しいお方でしたが、
”ヤンだったら完全に死んでるな”キャゼルヌが呟く ―― が、呟きというものは得てして響くもの。この呟きも出席者全員の耳に届いた。
もちろん誰もなにも言いはしなかった。当のヤン自身も。
「小官も聞いたことがあります。
時代がかなり下ったシュナイダーの頃にも、その話は残っていた。その後も祖父や祖母、父親や母親についての話は続き ――
「
証明写真さながらの正面から撮影された顔写真は、遺伝するのは稀と言われている
「
これまたほとんど遺伝しないとされている特徴を、母親から受け継いでいた。左右の瞳の色が違うので、光によって変化しても左右が同じ色になることは滅多にないのだが、ごく稀に同色になることがある。
「”衛兵泣かせ”と、密かに呼ばれていたそうです。今はそんなことはないでしょうが」
「あれ達にとって、ここは離宮だ」と皇帝により公爵家の面々は、新無憂宮の出入りが無条件に許されていた。
なにせ写真一枚配られず「
無理難題にも程があるのだが、仮にも皇族待遇の貴族、それも姫君の写真を下さいと言える猛者はおらず、
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ローゼンリッターの面々は調査に向かい消えてしまった仲間の捜索を続けていたが、見つけることができないまま。そしてヤンたちがイゼルローンを去る時がやってきた。彼らは去り際に長期保存が可能な水や食糧を隠し通路に積んだ。
もう生きているとは彼らも思ってはいないが ―― それでもという気持ちを込めて。