子供産んだら、身長の伸びって止まるものだと思ってた ―― そんなことはなかった☆
普通、子供三人も産んだら身長の伸び止まるよね! 普通は止まるよね! ……そうか、普通じゃないのか。
「ついにわたしの身長を超したのか」
何故か笑顔のラインハルト・フォン・ローエングラム三十二歳。
なにが嬉しいんですか! 何が楽しいんですか!
「ん? 身長を気にするあなたが可愛くてな」
身長が百八十㎝を越えた女を可愛いと言えるのは、あなたくらいかとラインハルト。
「そうか? それならばそれで良い。あなたの可愛らしさを知るのは、わたしだけで良い」
何時の頃からかラインハルトは、ごく一般的な男性の如く妻であるわたしを賛美するようになった。
なんでも優れている天才は、夫婦のコミュニケーション能力もめきめき発達したようで、最近では結婚当初はしていなかった、おはよう・おやすみのキスや、いってらっしゃい・おかえりなさいのキスなどもするようになった。
……気がついたら、それが習慣になってた。
わたしから仕掛けたわけじゃない、ラインハルトが……さすが策士! 戦略家ですな! なんの戦略かは知りませんけどね☆
「身長のこと気にしているあなたは可愛いが、気に病むことはない。わたしはあなたの身長が百九十㎝を越えようが、二百㎝を越えようが気にはならぬし、可愛らしさも変わらない」
銀河帝国始祖皇帝の目と脳の一部がヤバイことになっている☆おかしい。皇帝の主治医は銀河の名医を集めた筈なのに、皇帝がこんな重篤な状態になるまで気づかないとは! これは由々しき問題だ。責任の所在はどこ☆
「あなた以上の医師は存在しないがな」
あーわたし皇帝の主治医だったわー。わたし、なんか治療する際に間違った?
「あなたが治療すると、あなたが可愛く見える……か。だとしたら、あなたには誰も治療して欲しくないものだ」
昔、赤面していたラインハルトが懐かしいような、成長ぶりに感動すべきところというか……まあいいや。
「この辺りも寂れたものだな」
皇帝が住まなくなると、オーディンだってそうもなるでしょうよ。
それでも、アンネローゼが住んでるからまだマシな気がしますけれどね。
「そう言えば、遷都以来だから、十年近く来ていなかったな」
ラインハルト忙しいから、来てる暇ないもんね。わたしは恐竜が住んでいる惑星の生態調査の際、立ち寄って邸の様子を見に来たり。
ちなみに邸はアンネローゼに管理してもらっています☆オーディンを離れたくはないアンネローゼと、邸を維持管理しなくてはならないわたしの思惑が一致。
ちなみにアンネローゼ、三十五歳越えましたが、まだまだお美しいですぜ☆この姉弟、本当に凄いです。
「お手数をおかけ致しました? 気にする必要はない。わたしはあなたと二人きりで旅行が出来て嬉しいのだ……不謹慎だったな」
気にしなくていいですよ☆不謹慎でもなんでもありませんから。下男が死んだことに関して、そう気遣わなくていいですから。
そう、わたしとラインハルトがオーディンにやってきたのは、下男を埋葬するためです。長いこと我が公爵家当主に仕えた下男、ついにこの世を去りました。
一切苦しまず、眠るように。それも前日まで普通に生活をしていていたから吃驚した。
下男は「そろそろ召されそう」とは分かっていたのだが、曾祖父のように「明日死ぬ☆」までは分からなかったようで、死の気配を感じてから、遺書を認めて枕元において休み、そのまま永眠となりわたしが遺書に目を通すことになった。
遺書の内容なのだが短く「皇妃となられても変わらず最後まで仕えさせてくださり、ありがとうございました」「最晩年は特に楽しく忙しく、幸せな毎日でございました」といった内容。
奴隷の身分から解放したけれど、下男は最後まで奴隷だったなあ。
下男が人生を楽しめたのなら、それでいいのだけれど。
……で、以前下男に「どこに埋めて欲しい」と聞いたら ―― 最初はフェザーンでいいとか言ってたんだけど、本当のこと言わないと許さないぞと命じたところ「出来るならオーディンに」と。
ま、分かってたんですけどね☆下男が還るところはオーディンの、公爵邸の庭にある墓地なんですよ。分かってる分かってる。
まだ残っている公爵邸、その片隅に曾祖父が作った、粗末な棺があるんですよ。その棺に収めて埋めてくださいと ―― 埋める場所は聞かなかったので、曾祖父の隣にがっつりと埋めてやる。
それと曾祖父の遺言で、下男を最後まで面倒みるように言われていたので、わたし自ら埋葬することに……言われていなくたってしましたけど☆
「下男を埋葬したついでに、今年の恐竜生態調査してきます」と告げたところ、ラインハルトが同行すると。
いやいやラインハルト、忙しいでしょ? 下男の埋葬なんかに付き合うほど暇じゃないでしょ☆と言ったのだが、
「十年ちかく休みも取らずに仕事をしてきたのだ。誰も文句は言わなかろう」
たしかにそうでした。一応週休二日ですが、統治は生ものなので。休みだからといって災害が起こらないなどということはなく、また休日だから事件が起こらないわけでもなく ―― 結構休み潰れてたよなあ。
今回はなにがあっても呼び戻すなよと厳命して、やって来たとのこと。
そうなんだー。
それにしても二人きりで旅行って、あのイゼルローン要塞以来ですな☆
子供連れてこなかったのかって? 皇帝と皇太子と皇太子候補で、遠出するのは危険だからねー。もしも宇宙船で事故に遭遇したりすると……とかなんとか、ごちゃごちゃ言われてね。
皇太子さえ宮殿に残してくれたら……と言われたのだが、子供一人
子供と離れるの辛くない?
いや別に……というか、わたしがあのくらいの年の時には、母さんや父さんはもう前線に復帰していたからね。それに銀河帝国は大きいから「ちょっと出張」で半年コースなんてザラ。だからみんなそんなこと気にしない。
……で、気にはしないけれど、子供が居ない旅行でも、話題は子供のことになるじゃないですか☆
現在七歳の皇太子アレクを筆頭に五歳、三歳の三児息子のがいるのですが、ラインハルトは父親感がまったく無い。いや、忙しいながらも良い
ちなみに五歳と三歳の息子は七歳になった皇太子とよく似ている、兄弟なので当然と言えば当然ですが ―― 三人ともラインハルトとロイエンタールの間に出来た子にしかみえない事案が継・続・中。金銀妖瞳強い☆強すぎる☆
ちなみに子供は最低あと一人は産む予定。アレク以外の子は養子というか、半分臣下に下る的な感じになる。まあ姓が「フォン・ローエングラム」から「フォン・オーベルシュタイン」「フォン・ロイエンタール」「ミッターマイヤー」になるのですよ。そう、子供のいない元勲の家を継ぐ形。ミッターマイヤー家は、おそらくうちの子を迎え入れる時には「フォン」の称号を受けるかと思われます。
元勲も年上から配置するので、五歳の息子はオーベルシュタイン、三歳の息子はロイエンタール、まだ生まれていない子はミッターマイヤーとなります。
きっと後の世では「義眼公」「金銀妖瞳公」「疾風公」とかいう異称が付くんだろうなあ……恥ずかしいかもしれないが、諦めろ。大丈夫、耐えられる。わたしが言うんだから、間違いない。
もっと子供が生まれたらどうするの?
他の元帥たちの養子にするつもりだったのですが、三元勲以外は……となり、わたしが所持している爵位を継ぎ、元帥が後見人になったらどうだろう? 的な話が進んでいます。
子供はいくらでも産めますが、
「わたしは二十三歳で即位したのだ。皇太子も二十三歳で即位させる」
え? ラインハルト五十そこそこで引退……じゃなくて退位しちゃうの?
「二十三歳といえば、充分な大人だ。問題はなかろう」
獅子は我が子を千尋の谷から突き落とすものですが、ちょっとその谷深過ぎはしませんかね☆登ってこられるのかね、皇太子。
いや、まあわたしの息子なので、物理的に谷に突き落としたところで登ってこられるだろうけれど、”獅子は~”ってこれ、物理だけの話じゃないからな!
「公爵家を十三で継いだあなたの息子だぞ。それに、継がせてもバックアップはする。わたしもあなたも、後見人のような者はいなかった。それを考えれば、帝国の皇帝であろうとも楽であろうよ」
確かにまあ下男はいたけれど、確かに公爵家一人きりだったなあ。わたしの背後には
すっぱりと退位と譲位の期日を決めて、それに向かってかあ……ラインハルトらしい。となるとわたしは皇太后になるのか。ラインハルトは上皇……違うなあ、なんて言うんだろ? まあいいや☆
「退位したら、あなたとやってみたいことがたくさんある。付き合ってもらえるか」
喜んでご一緒します。といいますか、是非こちらから!
退位したら何をして遊びましょうかね。今から色々と計画を練りましょう。それこそ、百歳越えなくては終わらないくらいの計画を。
「そうだな。きっとあなたのことだ、宇宙を飛び回るような計画を立ててくれるのであろう。だが一つだけ、頼みがある。退位して最初の三年は、二人きりでのんびりと過ごしたい。そうだ、誰もいない惑星で二人きり。人がいると人殺しが起きて、あなたが呼ばれる可能性もあるからな」
えーそんなこと……あ、そう言えば、こっちに来る前に昔フェザーンで放置していたジャーナリストが面会を希望とか。会ってやらねばなあ☆……たしかに、人殺し関係で呼び出されるというか、連続猟奇殺人犯
わたしとしても、そんなのとは付き合いたくないので、三年くらい引っ込むのも悪くはな……でもラインハルト、三年ものんびりできるの? ラインハルトの性質上、一週間ものんびりできないような気がするのですが。
「是非ともわたしを、のんびりさせるような計画を立ててくれ。ああ、邸が見えてきたな。あの邸は変わらないな」
うん、本当に変わらない。アンネローゼ、管理ありがとう。
曾祖父、お前の奴隷を連れてきてやったぞ。ありがたく思え、感謝しろ ――
「髪の長さが戻ったあなたとこうして歩いていると、あの日のことを思い出すな」
あの日とは?
「あなたが俺に結婚を申し込んだ次の日。あなたをこうして送ってきただろう。そうしたら、あの門のところに下男が立ってあなたの帰りを待っていた」
そんなこと……あったのか?
思い出せない。あ……
「あなたは急いで駆け寄って……どうした? 覚えていない? そうか……泣くな。その思い出は下男にくれてやったと思えばいい。そうだ忘れてしまったものは、全て下男に褒美としてくれてやったと思えばいいのだ。わたしと俺はこれから幾つもの思い出を作れるのだからな、髪長姫」
あの時どんな気持ちで帰途に就いたのか思い出すことは叶わないが、きっと隣にラインハルトがいたのだから、幸せな気持ちだったに違いない。それがなくなってしまったのは悲しいが、ラインハルトが言う通り褒美としてくれてやろう。
【完】
皇妃のお仕事、続き書きますので(というか書いている)のんびりとお待ちください。